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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep11合流~The last Jewel seed~

†††Sideクロノ†††

なのは達がアースラのスタッフ達との顔合わせをした後、ご家族にこれから留守にすることの了承を得るために、彼女たちを1度自宅へと帰した。
その間に僕たちは、“ジュエルシード”の確保に動いているゼフィ達のことを調査する。まずは、臨海公園で対峙した、ゼフィという少年の魔術をもう観る。僕はさっきから「魔術師か。厄介なのがいるな、本当に」溜息と愚痴しか口にしていない気がする。

「そうだね~。ほら見て、この銀髪の男の子、ゼフィ君だっけ。魔力値の平均ランクとしてはAA+。なのに、この黒い影のようなやつになったら、クロノ君のAAA+ランクを超えてニアSランクになっちゃうんだよ」

キーボードを操作しながら、魔術師の少年ゼフィの情報を口にするのはエイミィ・リミエッタ。このアースラの通信主任で、僕の執務漢補佐もしてくれる、少しクセのある年上の友人だ。

「ああ、魔術師にはそういったランクに大きな揺れが出るのが常らしい。そのときそのときで、備蓄分や供給できる魔力によって差異が出るからとのことだったが・・・。まぁ魔導師のように出力限界があるのは間違いないそうだ」

「つまり、魔力値が常に変動して、本来のランクが知られにくいってこと? 確かにそれじゃあアースラの切り札であるクロノ君も苦労するね~」

「反論は出来ないな。最大値が判らない以上、下手に手を出して返り討ちだなんて御免だ。だがこちらにも魔術師のシャルが居てくれる。彼女が彼を止めてくれるらしいから、その間に僕たちがジュエルシードの封印にあたることになっている」

「女の子に頼るのもカッコ悪いね」

「それは言わないでくれエイミィ。僕もそれには傷ついているんだから」

管理局の執務官である僕が、何が悲しくて一般の少女に頼らなくてはいけないのか。確かにシャルは魔術師で、ゼフィに唯一対抗できる戦力だ。だからと言って任せきりは辛いものが。2人で溜息をついていると、母さん・・・艦長が来た。

「これはゼフィ君のデータ、ね。確かにすごいわね、彼は」

ゆっくりと僕たちの元へと歩み寄り、映し出されているゼフィの魔術を見て艦長はそう呟く。

「はい、今のところはニアSランクが最高みたいですが、もしかするとそれ以上の魔力を扱えるかもしれません」

「それは本当に厄介ね。管理局の高位魔導師でさえもAAA+以上は少ないというのに」

艦長は右手を頬に添え、「どうしましょう? 困ったわぁ」なんて、困っているようには聞こえない声色で悩み始めた。しかしそれもすぐに終わり、もう1つの不明瞭な問題を口にした。モニターが分割され、ゼフィの仲間と思しき黒衣の少女と獣の耳と尾を生やした使い魔、その人間形態時の少女が映し出される。

「あの子たち――なのはさんとシャルロッテさんとユーノ君がジュエルシードを集めている理由は判ったけど、この黒い服の子たちはどうしてかしらね?」

「彼女たちの話では、彼はこの2人の幸せのためだと言っていたらしいです。それが本当かは判りませんが」

「2人の幸せのため、か。まだこんなに小さい子供なのに、他の人の幸せのために戦っているだなんて、一体彼は何を思っているのかしら?」

ゼフィという少年の目的。それは黒衣の少女と使い魔の幸せのためだけに動いている、らしい。真実かはどうかは判断できる要素が少ないため何とも言えないが、自分自身のことはどうでもいいと思っているのだろうか?
何ひとつ答えの出ない問いに苦労している最中、ユーノから、なのはがアースラに滞在するための了解をご家族から得られた、との通信が入ってきた。

「判った、すぐ迎えに行くから待っていてくれ。それでは艦長、彼女たちを迎えに行ってきます」

「ええ。お願いするわね、クロノ」

「いってらっしゃ~い♪」

艦長とエイミィに見送られながら、僕はなのは達を迎えに行くために踵を返した。

†††Sideクロノ⇒ルシリオン†††

「さすがにもうまずいよ、フェイト、ルシル」

アルフが管理局が干渉してきたことで弱音を吐く。まさか彼女が弱音を吐くとは思わなかった。俺も「確かにまずいかもな」とアルフに同意する。もちろんアルフの心配とは別の心配で、だが。当然、俺が弱音を吐くと思ってもいなかったフェイト、素直に同意されるとも思っていなかったアルフが「ルシル?」とキョトンとして俺を見る。

「ちなみに俺の心配は、アルフの心配とは別だ。アルフは組織としての戦力が心配なんだろう?」

しかし俺は違う。俺が恐れているのは「俺は組織としての探索能力の方が心配なんだ」と肩を竦める。

「あ、そっか。組織だって探索されたら、すぐに残りを集められちゃう」

フェイトが俺の弱気な発言の意味を知り、納得する。そう、組織の強みは人数とサポート班の存在で、人海戦術などですぐに探索されてしまうだろう。となれば、たった3人、しかも封印できるのがフェイトだけとなる俺たちが圧倒的に不利だ。そんな俺とフェイトの管理局の戦力性危機感を度外視している態度に、「でも!」とアルフが縋ってくる。

「アルフ。執務官とはそれなりの実力を備えたエリートなんだろう? なら、あの程度が管理局の凄腕なら俺ひとりで十分に無力化できる」

クロノと名乗った少年は、見た限りでもそれなりの危険を潜り抜けてきたことくらいは判る空気を持っていた。だが、たかが十数年の生きただけの子供に、数千年と存在し幾たびの死線を越えてきた俺の経験に勝てるわけがない。
空戦に持ち込んでしまえば、空を飛ぶことの出来ないシャルは無力化され、なのはやクロノにも遅れをとることはないはずだ。

「大丈夫だよアルフ。この前のルシルの強さを見たでしょ。あの執務官だって、あんなに簡単に倒しちゃったんだし。1対1でなら、ルシルは本当に最強だよ」

「そうかもしんないけどさ!」

「なら、アルフ。これからの戦闘は全て俺が引き受ける。君はフェイトのサポートにだけ回ってくれればいい」

迷い始めたアルフは足を引っ張る可能性がある。ならば、極力フェイトの側に付かせて護衛として動かす方がいい。

「え? あ、ちょっと待ってルシル! ルシルひとりでなんて、さすがに任せれないよ!」

フェイトは俺の心配をしてくれるが、さっき俺ひとりでも大丈夫って言ってなかったか?

「問題ないよ。フェイトとアルフはジュエルシードの封印にだけ集中してほしい。アルフもそれで構わないな? もうそれしか道はないと一応言っておくがな」

アルフに諦めて最後まで付き合えと言う。

「アルフ・・・? ごめんね、嫌だったらアルフだけでも・・・」

「フェイト、違うんだよ。あたしはフェイトとルシルのためを思って・・・!」

アルフは俺たちのことを思ってと泣き始めてしまった。

「アルフ、大丈夫だよ。フェイトとアルフは何が何でも俺が守るから。だから、そう心配せずにフェイトに付いていてあげてくれ」

そっと優しく撫でながら諭すと、ようやく諦めたのか、アルフは「・・・判ったよ、あたし達の背中は任せたよ」と軽く頷いた。

「了解だ。それでいいな、フェイト?」

「う、うん」

2人の了承は得た。それじゃあ、今日はこれで休むことにしよう。

†††Sideルシリオン⇒なのは†††

私とシャルちゃんは、お母さんにしばらく留守にすることの許可を得るために、ユーノ君との出会ってからの今日までのこと、魔法のことやユーノ君の正体のような言えないことは省いて説明した。そして、お母さんから快く許可が下りたので、夕ご飯、それにシャルちゃんと一緒にお風呂を済ませた私たちは、心置きなくアースラに戻ることが出来た。

「お待たせ、クロノ君」

「いや、大して待っていない。それじゃあ3人とも、その場から動かずに居てくれ。これから転送を行う」

私とシャルちゃん、ここに来る途中で男の姿に戻ったユーノ君のところに、クロノ君が近付いてきた。そして「エイミィ」って、オペレーターのエイミィさんに通信を繋げた。

『はいはーい! 今からサクッと転送しちゃうね~!』

私たちの足元に魔法陣が展開されて、その光に飲まれると、そこはもうアースラっていう船の中。

「君たちの部屋を用意したから、今日はそのまま休んでくれ」

「ええ、ありがとう。お世話になるわね」

「ありがとう、クロノ君」

「ありがと」

シャルちゃんに続いて私とユーノ君もお礼を言う。そして、これから過ごすことになる部屋へと案内されて、「失礼しま~す」自動ドアがシュッと開いて、私は部屋に入った。明かりも自動で点いて、決して狭くない内装をぐるりと見回した。

「割と広いんだね・・・って、あれ?」

部屋に入ったのは私だけ。ドアが閉まったのを見て、頭の上にクエスチョンマークを浮かべちゃう。

「シャルちゃん? ユーノ君?」

すぐにドアを開けて通路へと戻って、ここから去ろうとしてたシャルちゃんとユーノ君とクロノ君に「ねえ! シャルちゃん、ユーノ君、どこ行くの?」って声を掛ける。すると3人は振り向いて私を見た。

「ん? シャルやユーノには別の部屋を用意しているんだが」

「同じ部屋に2人だと狭いでしょ?」

クロノ君とシャルちゃんがそう言ってきた。でも用意された部屋は、2人ならまだ大丈夫な広さだし。さすがに3人は無理だけど。私とシャルちゃんなら十分に快適に過ごせるし、ユーノ君もフェレットに戻ればいいと思う。

「え~? 一緒じゃダメなの? 私はシャルちゃんと一緒に寝たいな~」

私は「一緒の部屋にしようよぉ~」ってシャルちゃんに頼み込む。シャルちゃんとクロノ君は顔を見合わせて、「部屋割に関しては2人の方で決めてくれていい」とクロノ君が任せてくれた。私はシャルちゃんをじぃーと見つめる。するとシャルちゃんは「・・・まぁ、私もどっちでもいいわ」って折れてくれた。断られなかったことが嬉しくて、シャルちゃんに駆け寄って両手を取って上下に振る。

「うん! じゃあ一緒に寝ようねシャルちゃん!」

「え、ええ。・・・すごく嬉しそうね、なのは。まぁ、私も・・・嬉しい、かな」

「にゃはは♪」

シャルちゃんが苦笑い。でも少し照れてるみたいで頬がちょっと赤くなってる。

「ユーノ君は・・・」

「僕? 僕はもうこの元の姿でいようと思うから、以前シャルに言われたとおり7歳以上は男女別々ってことで」

「そもそも風紀的に僕が許さないけどな。ほら、ユーノ。君の部屋はこっちだ。少し離れたところになるが、これも男性区画と女性区画で分けているからだ。このルールに従ってもらうぞ」

「解かってるよ。それじゃあ、なのは、シャル。おやすみ。また明日」

クロノ君に連れられて部屋を後にするユーノ君に、私とシャルちゃんは2人に「おやすみなさい」挨拶して見送った。

「じゃあ私たちも明日に備えて寝ましょうか」

「うん!」

パジャマに着替え終えて、私とシャルちゃんは同じベッドに入る。布団の中で向かい合って、「シャルちゃんと一緒に寝るの久しぶりで、すごく嬉しい♪」今抱いてる思いを伝える。

「ふふ。そう言えば、こうして同じ布団で眠るのは、私があなたと出会った初日だけだったものね。なら、これからも何度か一緒に寝る?」

「いいの?」

「なのはさえ良ければ」

シャルちゃんからの嬉しい提案に、思わず私は「うん! 約束!」シャルちゃんの両手をギュッと握った。シャルちゃんも「ええ。約束」優しく握り返してくれた。
久しぶりにシャルちゃんと眠れて、それにこれからも一緒に寝てくれることを約束できてご機嫌な私でした。

†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††

さて突然だけれど、私たちがアースラに来てから10日が経過したわ。
やっぱり組織の力というのは良いものね。あれだけ苦労していた“ジュエルシード”の探索が順調に進んでいるのだから。たった今も、管理局が発見した“ジュエルシード”をなのはが封印し終えたところよ。

「ジュエルシードの封印も順調、なのはの魔導師としてのレベルも上がってきているし、良いこと尽くめってこのことね」

「にゃはは、そうだね~♪」

私は少し離れたところで、なのはの様子をゆっくり見学中。理由としては、いつルシルと戦うことになるか判らないための魔力温存。そしてなのはのレベルアップのためね。実際、なのははこの10日間で目まぐるしい成長を遂げている。“レイジングハート”と新しい魔法も組んだらしいしね。どういうものかは見てのお楽しみにしよう。

「でも、この10日間は全然フェイトちゃん達と会えなかっなぁ」

「まぁね、向こうも好き好んで管理局とぶつかろうなんて思っていないはずだもの。だから遭遇することは、あまりないと思うわよ」

そうなのだ。この10日間でフェイト達とは1度も遭遇していない。こちらが向かった時には封印を終えて、すでに立ち去った後ということが続いていた。喜ばしいことなのかどうかは微妙だけれど、もうちょっとなのはがレベルアップしてからの方が良いかもしれないわ。地力で言えば、まだなのはが負けているもの。

「う~ん、フェイトちゃんとゼフィ君とお話して、お友達になりたいんだけどな~」

「友達・・・ねぇ。まぁいいんじゃないの?」

フェイトはともかく、ルシルがこちらの味方となるのは正直助かるわ。このままずっとルシルと敵対するのはまずい。私のように少しずつ制限が解除されているとしたら、最終的には真の意味での現代最強になる。

「そうだよね! うん!」

なのはは嬉しそうにしながら、私たちはアースラへと帰艦した。

†††Sideなのは⇒ルシリオン†††

「やっぱり、なかなか見つからないな~」

フェイトはボソッと呟いて、「はぁ」と溜息を零す。管理局が出てきてからは発見率が悪くなってしまったから、気持ちは解からないでもないが。

「管理局と極力出遭わないようにしているから、自然と外れを引いてしまうことが多くなってしまう。戦闘覚悟で行くことも出来るが、可能な限り戦闘は避けたい」

「うん、それは仕方ないよね。ルシルなら大丈夫って思うけど、やっぱりあまり戦いたくないし、戦わせたくないから」

私はフェイトの頭を撫でながら「優しいな」と微笑みかけると、フェイトは「むぅ、子供扱いしないで」と頬を膨らませるが、嫌がっていないのは一目瞭然。フェイトは事実優しい子だ。あんな母親の目的のために全力で、でも他人を傷つけたくないって頑張っている。ああ、だから彼女の苦しみが少しでも軽減されるなら、俺が戦うべきなんだろう。しかしそれも許されない。フェイトの優しさがそれをさせない。

「けどさぁ、こんなに探しても見つからないなら、地上にはもう無いんじゃないかい?」

アルフが的確な疑問をぶつてきた。さすがフェイトの使い魔、時々オツムが優秀になるな。

「お、判っているなアルフ。それについては俺も考えていた。地上はほとんど探したから、残るのは・・・」

「海、だね」

フェイトが俺の発言の後を継いで答えを口にした。

「そういうこと。だが、海中のジュエルシードの回収をどうするかなんだが、何か策はあるか? フェイト、アルフ」

聞かずともこの2人なら以前と同じように、強制発動する、とか言いそうだ。まぁ、実際それしかないと俺も思うが、あれはあまりやりたくはない。残りが海だとすると、一斉に覚醒しては間違いなく苦労する。たった1個の暴走で、俺は死にかけた。次は複数個。あぁ、間違いなく酷いことになる。

「えっと、前みたいに魔力流を撃ち込んで、強制発動するしか・・・ないかな」

「そうだね~、もうそれしかないんじゃないかい?」

やっぱり、それしかないか。なら覚悟を決めよう。

「・・・判った、ただし魔力流を撃ち込むのは俺がやる。フェイトはジュエルシードの封印に全力を尽くしてくれ。アルフはフェイトのサポートに全力であたってくれ」

「ルシル!?」

「ちょっと待ちな!? あんたに出来るのかい!?」

2人が驚いているが、この役割を変更するわけにはいかない。それに複製術式を使えば、フェイト以上の魔力を扱えるから、強制発動させるのは俺でも十分に可能のはずだ。

「ジュエルシードを封印できるのはフェイト1人だけだ。封印する前に魔力が切れては意味が無いからフェイトはダメだ。アルフもまた、フェイトの使い魔だから主をサポートするのは当たり前。なら消去法で俺がすることになる。拒否は認めないぞ。今度は俺のわがままを聞いてもらうからな」

「でも、でも」

フェイトはあまり納得していない様子だな。一方アルフは納得しきれていないが仕方ないといった感じか。

「大丈夫だよ。失敗はしないし、何があっても2人は俺が守るから」

「そうじゃなくて!」

フェイトが怒鳴りながら詰め寄ってきたがそんな場合じゃない。

「フェイト、何を心配しているのか判らないけど、変更はない。少し休憩をしたら海上に向かう、いいね?」

「む~」

フェイトの機嫌が一気に急落したが、こればかりはどうしようもない。アルフはフェイトの機嫌取りに必死だ。すまないアルフ。それから俺たちは弁当を広げ、昼食を摂り始めた。フェイトは弁当を食べ始めると機嫌が良くなった。やはり女の子は、美味しいものには目がないのだろう。花より団子だな。言ったら怒られそうだから言わないが。

†††Sideルシリオン⇒フェイト†††

昼食と休憩を終えた私たちは、残りの“ジュエルシード”が眠ってるって考えられる海上へとやって来た。結果として推測は的中。海中に魔力反応。間違いなく“ジュエルシード”がある。魔力察知に長けるルシルも「当たりだな」そう言うから間違いない。

「ルシル、本当に大丈夫?」

今回、魔力流を撃ち込むことになっているルシルに言葉を掛ける。ルシルは大丈夫だって言ってたけど、やっぱり心配だ。

「フェイトは心配性だな。本当に問題ないよ。それじゃあ始めるから、準備してくれ2人とも」

だって気になるんだもん! また無茶されて血がいっぱい出たら、とか思っちゃうよ。そんな私の気持ちに気付かないルシルが魔力流を撃ち込む用意をし始め、「フェイト、封印の準備を。アルフもその補佐を」って私たちにも準備するように言ってきた。

「う、うん!」

「あいよ!」

私とアルフは指示通りに、いつでも“ジュエルシード”を封印することが出来るように準備を始めた。

「我が内より出でよ。貴き英雄よ」

ルシルが呪文を唱える。

「来たれ! 雷光の化身ヴォルティエ!」

その言葉と共に強烈な光が生まれて、一瞬だけ目の前が真っ白に染まる。光が治まって、私たちの前に現れたのは、見たこともない蟲?のようなもの。ルシルって召喚魔法も扱えたんだ・・・。
私とアルフは、召喚されたソレが一体なんなのかと注意深く、その・・・一言では言い表せない、金色で平たくて丸ばっていて、体中に目のような模様があって、蟲のような羽を持ってる正体不明の様子を窺がってみる。

『ねぇ、アルフ。この蟲?・・・たぶん生きてる蟲じゃない気がする』

『あたしもそう思うよ。理由は判らないけど、何ていうか本能がそう訴えてきてるような感じなんだ』

生き物じゃない。ただ直感が告げてくる。私たちがおかしな顔をしていたのか、ルシルがこの蟲?のことを説明してくれた。

†††Sideフェイト⇒ルシリオン†††

フェイト達がヴォルティエを見て困惑しているのに気付き、コイツのことを話す。

「ああ、コイツの名前はヴォルティエといって、魔力だけで構成された一種の使い魔みたいなものなんだ。味方だから、刺さないし噛まないからそんな引かなくても大丈夫だよ」

それを聞いた2人は未だに少し警戒している感じだ。まぁ、仕方ないか。いきなりそんなことを言われても困るよな。しかし、先程の説明には嘘はない。魔力で構成された使い魔、これは本当のことだ。

俺が保有する創世結界の1つ、“神々の宝庫ブレイザブリク”の上位術式である“英雄の居館ヴァルハラ”から呼び出した、数多くいる“異界英雄エインヘリヤル”の1体。
俺が複製した武装は“ブレイザブリク”に貯蔵され、術式は“アルヴィト”に登録される。“英雄の居館ヴァルハラ”とは、それらを複製した時点での使用者を、その2つの結界の中にある複製した物から読み取り、“エインヘリヤル”として生み出すものだ。ゆえに全員が俺の従者となる。だから使い魔と言っても間違いではない。とはいえ今の俺の状態では、中位以下の連中しか召喚できないが。

「そ、そうなんだ。ルシルにも使い魔がいたんだね。でも、何で今まで呼ばなかったの?」

「そうだよ! こんなことが出来るなら、早く呼んでほしかったもんだね!」

「いや、これには深い訳があるんだよ」

これを使えることに気付いたのは、ほんの2時間前だった。“ブレイザブリク”と“アルヴィト”の使用制限を再確認していた際に、“ヴァルハラ”の使用も可能になったと“界律”から連絡が来たんだ。

「なんだいそりゃ?」

「そんなことより! さっさと始めるぞ!」

最大召喚時間がたったの3分となってしまっているため、急いで“ジュエルシード”を強制発動させなければ。

「あ、うん! いつでもいいよ!」

「はぁ。・・・あたしもいつでも構わないよ」

フェイトは元気に返事をしたが、アルフは1度溜息を吐いてから準備万端の返事をした。

「それじゃあ、始める。ヴォルティエ」
 
「☆Д@ШΠ」

――雷業顕正――

顕現せしは天を裂き、海を割る絶大たる雷光。周囲1kmに雷撃が振り注ぐ。さすがは下位の魔族とはいえ雷撃系の魔蟲。下位の“エインヘリヤル”だが、なかなかの威力だ。

「ありがとう、もういいぞ」

ヴォルティエの召喚を解き、次の段階へと進むために俺も準備に入る。強大な雷撃によって次々と目覚める“ジュエルシード”。吹き荒れる複数の竜巻。フェイトとアルフがあまりの光景に絶句しているがすぐさま立ち直り、“ジュエルシード”の封印へと移る。 
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