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気まぐれな吹雪

作者:パッセロ
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第一章 平凡な日常
  番外2、学力と性格は紙一重?

「では、この課題を終わらせてくださいね。一問でも解けなければ、落第です」

『えぇ~~~』

夏休み真っ盛りな今日、蒸し暑い教室に少人数のブーイングが響く。

赤点補習組であるオレたちは夏休みであるのに拘わらず、こうして学校に来ていた。

て言うか、勉強できないから来てるのに課題できなかったら落第って、ホントないよ~~~!!!

そんなオレたちの気持ちを知ってか知らないでか、先生はブーイングを完全無視で教室を出ていった。

「ツナ!」

「あ、山本。どうしたの?」

「課題、一緒にやんね? 一人より二人の方がはかどるだろ」

「そ、そうだね!」

さすが山本!

さてと、あとはどこでやるかだけど……。

「ウチでやればいいだろ」

突然背後から聞こえてきた声。

この声ってまさか……。

振り返ると、そこにいたのはリボーンだった。

「お前、勝手に決めんなよ!」

「山本、霜月のやつも呼んどけ」

「話聞け!」

全く、こいつにだけは何を言っても無駄なんだよなぁ……。

赤ん坊の癖に。

山本は山本で、何か普通に了承して霜月さんのこと呼ぶことになってるし。

て言うか、これ以上あの人の機嫌損ねたくないんだけど!

確かにさ、頭いいし、オレだってこの前頼んだけど、リボーンが関わるとなんか機嫌悪くしちゃうじゃん!

「んじゃ、決まりだな。山本、オレのことは言うなよ。言ったら来ねぇからな」

自覚あるんじゃん!

ハァ~……一応獄寺君とかやちるちゃんにも連絡取っておこう。



†‡†‡†‡†‡†‡



ほ、ホントに来てくれたよ……。

まぁ、山本が騙してきたらしいけど。

「ごきげんよう、霜月さん」

「何で長谷川までいんの?」

うわっ、早速険悪な雰囲気!?

「ほら、やちるちゃんも頭いいから手伝ってもらってて」

「だったらオレいんなくね?」

「そんなことありません。100点と80点では大きな差ですから」

やちるちゃんはそう言うけど、80点も充分すごいって。

「マジで詰まったら言ってくれ。それまで寝る」

そう言うや否や雑魚寝をし始めた霜月さん。

その寝顔は、いつもの険しい感じはなかった。

むしろ、より女の子らしいと言うか。

いつも着ていて見慣れてきたその学ランと腕章が不自然に思えるほど、普段の彼女とはかけ離れていた。

「要の寝顔ってかわいいのな」

「ギャップ萌えってやつでしょうか」

「うん……って山本、やちるちゃん! ほっぺつつくのは止めようよ! 起きてバレたら怒られるって!」

そのほっぺをつつこうとする二人を必死で止める。

いや、ホントにバレたら不味いって!

て言うか、やちるちゃんまでやるとは思わなかったよ……。

その直後に獄寺君が来た。

「10代目、お呼びですか!」

「獄寺君。うん、補習の課題教えてもらえないかなぁって」

「任せてください! あ、やちるさんもおはようございます!」

「隼人、今はお昼ですけどね」

「で、何でこいつがここで寝てるんすか?」

そこで獄寺君が、寝ている霜月さんに気づいた。

オレ達で事の経緯(いきさつ)を話す。

「リボー ンさんが、ですか。でもこの様子じゃ教える気ないんじゃないっスか?」

「ま、まぁ、一通りは自分達でやれって言われたし、詰まれば教えてくれるって言ってたし」

なんだか今日はいつもに増して機嫌悪そうな気がするけど、大丈夫だよね?

「とにかく、こんな課題、チャッチャと終らせましょう」



†‡†‡†‡†‡†‡



「「「詰まった……」」」

獄寺君とやちるちゃんのおかげで、ほぼ全ての問題を解き終わったオレ達だったが、ある問題で詰まってしまった。

問七の問題だけが、どうしても解けない!

「やべぇな、これできなきゃ落第だっけか?」

こんなときに山本が目を逸らしたい現実を突きつけてきた。

そうなんだよなぁ、落第なんだよなぁ……。

「なんだと!? 何でそれを先に言わねぇ!」

「ご、獄寺君落ち着いて。時間はまだあるんだし」

「実は10代目、オレ、これから用事なんです!」

え、えぇ~~~~!?

獄寺君帰っちゃうの!?

そんな呼び止める暇もなく、獄寺君は帰ってしまった。

とほほ……。

やちるちゃんを見ると、申し訳なさそうに首を振った。

仕方ないな。

「要に頼るしかないな」

「そう……だね」

山本が霜月さんを揺り起こす。

眠そうにしながらも、彼女は軽く辺りを見回すと、差し出した問題用紙に目を通した。

その口角が、僅かながらに持ち上がる。

「沢田、紙とペンを貸してくれ」

「は、はい!」

慌てて余っていたシャーペンと紙を渡す。

すると、霜月さんは鞄からイチゴ牛乳を取りだし、くわえた。

……え?

ズズ、と飲んでる音がする。

そして、

ジャコッ

空になると同時にペンを走らせた。

ものすごいスピードで問題を解き始める。

す、すごい……。

書いてある式とか、何がなんだかさっぱりだ。

「ほらよ、答えは4だ」

「す、すごい」

前から思ってはいたことだけど、霜月さんってただの頭がいい人じゃない気がする。

だって、あんなに頭のいい獄寺君でさえ解けなかった問題を……。

正直、何者なんだろうって思うときがある。

初めて会ったあの日から、何か他とは違う何かがある気がしてた。

「何で要ってそんな頭いいんだ?」

と、山本がみんなの疑問をぶつけた。

すると霜月さんは、何か自嘲するように笑った。

「西条考古学院って、知ってるか?」

「「西条考古学院?」」

「初めて聞きましたが」

「知ってるぞ。世界でも指折りの、超難関校だ」

聞きなれない言葉だったけど、どうやらリボーンは知ってるみたいだった。

「オレ、前はそこに通ってたんだ」

「「なっ!?」」

「進学校からですか?」

え、ちょっと待って。

その難関校に通ってたって言ったの?

じゃあそこって小学校なのかな?

いやでも、世界でも指折りの、ってことは、そんなんじゃないよな?

どういうこと?

「そんじゃ、オレは帰るな」

そう言って、霜月さんはアクビをした。

さっきまで寝てたのにまだ眠いんだ……。

眠そうな霜月さんが、部屋のドアノブに手をかけたときだった。

「待て」

リボーンが呼び止めた。

なんだか、重たい嫌な空気になる。

「何故あの問題が解けた? あれは大学レベルの問題だ。それに、そんな所にいながら、何故並盛に来た? お前は本当に中学生か?」

「ちょっリボーン!?」

「ツナは黙ってろ」

はあ!?

意味がわかんないんだけど!

あの問題が大学レベル?

て言うか、霜月さんが、本当に中学生かなんて、その質問が意味わかんないよ!?

山本もやちるちゃんも、同じように不思議そうな顔をしていた。

「何故問題が解けたか。それは自分で言っただろ? 『世界でも指折りの、超難関校だ』。そこに通ってたんだぜ? 解けない方がおかしいだろ」

ニヤリと笑いながら答える霜月さん。

確かに難関校に通っていれば頭がいいのは納得なんだけど、それとあの問題と、どう関係するんだろう。

「だったら尚更だ。どうして並盛に来た」

さらに追い討ちをかけるようにリボーンが問いかける。

確かにそうだ。

並中なんて言うところよりも、もっとちゃんとした進学校に行けたはずなのに。

「理事会に追い出された」

『は!?』

「追い出されたんだよ。オレの学力を恐れた理事長によってな」

理事会に追い出された?

ダメだ、もう頭が追い付いていかないよ。

そんなことをグルグルと考えているうちに、霜月さんは帰ってしまった。

「ちなみに、オレは正真正銘中学生だ」

その一言だけを残して。



†‡†‡†‡†‡†‡



「なぁリボーン。あれどう言うことだよ」

風呂から出たあと、部屋のハンモックに寝転がっているリボーンに質問してみた。

だってあまりにも気になるから。

「なにがだ?」

「西条考古学院だとか、追い出されただとか、本当に中学生なのかだとかってはなし」

「ああ、それか」

するとリボーンは、起き上がることなく説明を始めた。

「西条考古学院ってのはな、あんときも言った通り世界でも指折りの、超難関校だ。ただし、大学なんだけどな」

「なっ!?」

だ、大学!?

あの人、そんなところからここに来たの!?

「大体理解できたみてーだな。そんでもって、あそこは何年生までって言うのがねーんだ。しかも全寮制だからあいつみたいなずば抜けた天才にはもってこいの学校だぞ」

これで、二人の会話が理解できた。

でも、それはそれで疑問がないわけではない。

何で大学に通ってたのかとかその他諸々……。

やっぱりただ者じゃないってことは分かったけど、何かスッキリしないなぁ。  
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