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BLUES OF IT

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第二章


第二章

「バーボンよね、それ」
「ああ、そうさ」
 俺はキザなふりをしてその女にも答えた。
「軽いものさ」
「言うわね。じゃあもう一本いける?」
「いったらどうするんだ?」
 こう言ってきたので逆に問い返してやった。質問に質問で返したのは挑発だ。もう勝負に入っているのがわかった。それなら逃げない、俺のやり方だ。
「それで」
「そうね。考えてもいいわ」
 女は楽しそうに笑って俺に答えてきた。
「これからのことをね」
「今更言葉の取り消しはできないぜ」
 俺はそれを念を押した。少し睨みつけてやって。
「わかってるよな、それは」
「わかってるわ。わかってて言ってるのよ」
 向こうも強気だった。笑って答えてきた。
「こっちもね」
「よし、じゃあ乗った」
 その言葉を受けてマスターに顔を戻す。そうして言った。
「それでな。それでいいよな」
「ええ、望むところよ」
 勝負は決まった。こうして俺はバーボンをもう一本空けた。
 丁度そのボトルを受け取ったところでさっきのボトルのが回ってきた。それが少し辛かったがそれでも飲んだ。先より勢いは弱かったがそれでも飲み干してやった。
「どうだい、これで」
 俺は飲み干してから女に顔を向けて言ってやった。
「飲んだぜ、言葉通り」
「ええ、飲んだわね」
 女もそれを見て言うのだった。見ればその顔が楽しそうに笑っている。
「やるじゃない」
「約束、わかってるよな」
 話を本題に入れた。そうして女に問うた。
「俺は飲んだから」
「ええ、いいわ」
 俺の今の言葉を待っていた感じだった。楽しげに笑って答えてきた。
「じゃあ。デートしましょう」
「ああ」
 俺はそれを受けて席を立った。かなり酒が回っているがそれでも構わなかった。
「じゃあ行くか」
「ただし」
 ここで女はまた言ってきた。やっぱり楽しそうに笑いながら。
「今のバーボンはあくまで今のだけよ」
「それはどういう意味だ?」
「デートをはじめるだけのバーボン」
 そう言うのだった。
「それだけだから。わかるわね」
「じゃああれか」
 それを聞いてまた問い返す俺だった。どうやら思ったよりずっと手強い女らしい。俺はかなり酔いが回ってきた頭でそう考えた。
「これからはまた別の勝負か」
「当たり前よ。女は安くないのよ」
 随分聞き慣れた言葉だ。キザだが実際にそうだ。こうした場所じゃ誰でもこう言う。それが本当かどうかはまた別の問題にしてだ。
「わかってるわよね」
「わかったうえで受けるぜ」
 それで逃げるんだったら最初からここには来ない。俺もわかっていたからここにいる。
「それもな」
「随分威勢がいいのね」
 女はそんな俺に対して。不敵に笑ってきた。また随分とあからさまな挑発だった。
「珍しいわね、そういうのも」
「へえ、俺は珍しいのかよ」
 その言葉に俺も乗った。売り言葉に買い言葉だ。
「じゃあその珍しい男と今夜は」
「勝負よ。いいわね」
「ああ」
 頷いてやった、そうして勝負がはじまった。
 相手にしてみると。これが滅法手強い。こんな相手ははじめてだった。
「駄目よ、まだ」
「まだなのかよ」
 俺はそう反論した。デートをしながら抗議をする。
「今二時間だぜ」
「それで?」
「二時間で胸までかよ」
「結構やるわね」
 しれっとした感じだった。またかなり自信があるようだった。
「胸までたった二時間なんて」
「たったかよ」
「ええ」
 またしれっとした感じで答えてきた。
「そうよ、たった二時間」
「ちっ」
 思わず舌打ちした。そうして気持ちばかりが焦る。
「言ってくれるよな」
「言ってくれるついでにね」
「何だよ」
「キスはもっとかかるわよ」
 楽しそうに笑いながら言ってきた。やっぱり俺を挑発していた。
「それはわかるわよね」
「わかるかよ」
 俺はこう言い返した。
「そんなのよ」
「わからなくてもいいわ」
 まただった。随分余裕だ。
「わからなかったらそれはそれで」
「あんたの勝ちっていうのかよ」
「そういうこと。それでもいいの?」
「ふざけるな」
 それに対する俺の返事は一つだった。
 
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