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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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炎の翼


「エルザーーーー!?」

ティアと入れ替わるように、グレイ、エルフマン、ルー、アルカ、ミラが走ってきた。

「何でこんな所に・・・!?」
「あっ!アイツ!」

ルーが倒れるアリアを指さす。

「まさか・・・お前がアリアを・・・?」
「いや・・・そいつを倒したのはティアだ」
「ティアも来てるのかよっ!?」

エルザがここにいる事も驚きだが、まさかティアまで来ているとは、と驚愕するエルフマン。
ジュピターを真面にくらっておいて動けるなど、正直言って有り得ないのだ。

「お前達にこんな情けない姿を見られるとはな・・・私もまだまだだな」

そう言って苦しげだが微笑を浮かべるエルザ。
すると・・・。

「「「「「「!」」」」」」

怨霊の様な不気味な魔力が宙を流れ、それを察知したエルザ達はゾッと背筋を凍らせる。

「な、何だ、この感じは!?」
「ぬおおっ!漢にあるまじき寒気がっ!」
「何、コレ・・・」
「怖い・・・こんな怖いの、殺気を全開にしたティアくらいしかいないよ・・・」

グレイ、エルフマン、ミラ、ルーが驚愕の声を上げる。
そこに手を叩く音が響く。

「いやいや・・・見事でしたよ、皆さん」

その声に全員は声の主に目を向ける。
その声の主はこの不気味な魔力の主でもあった。

「まさかここまで楽しませてくれるとは、正直思っていませんでしたよ」
「マスター・ジョゼ!」

そこに現れたのは、ニッと不気味に笑うジョゼ。
その周りを怨霊の様な魔力が漂う。

(こいつが・・・)
(ファントムのマスター・・・)
(なんて邪悪な魔力なんだ・・・!?)
(向かい合ってるだけで吐き気がする・・・)
(こんなの有り得ない・・・怖すぎる・・・)

ルーはあまりの恐怖に身を震わせる。

「さて・・・楽しませていただいたお礼をしませんとなァ・・・たっぷりとね」

そう言いながら、ジョゼは一歩一歩こっちに近づいて来る。
それを見たグレイ、エルフマン、アルカはミラの前に立ち塞がり、ルーは一気に魔法陣を展開させる。
どんな魔法を放ってきても防ぐつもりだ。
ジョゼは右手をかざす。

「よけろォ!」

エルザが叫ぶ。
そしてジョゼは・・・右手を天に向けた。

「がはっ!」
「ぬぁあっ!」
「ぐはっ!」

その右手からバリバリと音を立てて魔法が発動され、3人を襲う。

「エルフマン!アルカ!グレイ!」
「ミラ危ない!」
「く・・・」

続いてジョゼは右腕を横に薙ぎ払う。
グレイ、エルフマン、アルカはその攻撃に気を失い、ルーは慌ててミラを抱えて後ろに避け、エルザは痛みを堪えながら立ち上がった。
エルザは勢い良く地を蹴り、換装する。

「!」

ジョゼの左手から魔力が発射され、エルザはそれを避ける。
空を斬る音と共にエルザが剣を振り、ジョゼはそれを避け、エルザの足を掴んだ。

「っ!」

壁が砕けるほどの威力でエルザを叩きつける。
しかしエルザは砕けた壁の欠片を蹴り、着地した。

「貴様・・・確かジュピターを真面にくらったはず。なぜ立っていられる!?」

ジョゼの問いに、エルザは息を切らしながら剣を構えた。

「仲間が私の心を強くする。愛する者達の為なら、この体などいらぬわ」

その答えに、ジョゼは不気味に微笑んだ。

「強くて気丈で美しい・・・なんて壊しがいのある娘でしょう・・・」







一方、エルザと別れたティアは、だだっ広い部屋にいた。
ただ広いだけ、特別何かが置いてある訳ではないこの部屋に、ティアは1人佇む。

「っ来る!」

短く言い放ち、跳躍する。
その先ほどまでティアが立っていた床に、真っ赤な蛇の模様が走った。
軽い身のこなしでその蛇模様から距離を取る。

「そこにいるのは解っている・・・出てきなさいっ!」

ティアが吼えると、しゅるっと煙のように姫カットの少女・・・シュランが現れる。
両者の目には、闘志だけが輝いていた。

「解っていたなら、もっと早く言えばよかったのでは?」
「アンタに私と戦う気があるか見ていたのよ・・・どうやら、かなり私を倒したいようね」
「・・・別に、貴女でなくても構いません。私はただ・・・」

そこで一旦区切り、シュランは綺麗に切りそろえた前髪から闘志だけの瞳を覗かせる。

「ガジル様の敵となるであろう妖精を、ガジル様が相手する前に狩っておきたいだけですわ。あの方には・・・火竜(サラマンダー)しか似合わない。そう、火竜(サラマンダー)を堕とすのが、あの方には似合うのです」

どこか優しげな笑みを浮かべ、そう言い放つシュラン。
それに対し、ティアは挑発的で妖艶な笑みを浮かべた。

「あら、そう・・・アンタ、あんな厳つい男のドコがいいの?」
「・・・それはガジル様に対する侮辱、と受け取ってよろしいのでしょうか?」
「さぁ?どう受け取ろうとアンタの自由よ」

肩を竦めるティア。
シュランの髪が揺らめき、赤い光を2つ灯した。
それをティアが見逃す訳が無く、「それ」が何か解っているかのように溜息をつく。

「あの方を侮辱するのであれば、私は貴女を葬らなければなりませんね」
「男1人にそんな事するかしら、普通」
「私にとってあの方は全てですもの。私を助けてくれたあの日から・・・私の全てはガジル様の為にあります」
「・・・考えられない」

自分は自分、他人は他人、の考えのティアにとって、シュランのガジルに対する『感情』は理解不能、未知の世界だ。

「・・・一応、名を聞いてもよろしいですか?海の閃光(ルス・メーア)
「あら、別名は知っているのに名は知らないの?・・・悪いけど、私が名を名乗るのは相手の名が解ってからよ。まずはアンタが名乗りなさい」

ティアはそう言いながら戦闘態勢を取る。
シュランはティアの言葉に恭しく頭を下げた。

「シュラン・セルピエンテと申します。以後、お見知り置きを」
「・・・ティア=T=カトレーン」

表情1つ変えず、ティアが名を名乗る。

「ティア様、ですか」
「覚えておくわ・・・シュラン」

互いが互いの名を確認する。
そして。

「蛇に魅入られ朽ちていきなさい!」
「愚者は妖精の前で堕ちなさい!」

その言葉を合図に、閃光と蛇が激突した。








一方、ここは巨人の操縦室。

「んっ」

ルーシィは壁に張りつけにされていた。
手首の拘束を外そうとするが、ビクともしない。
すると、そんなルーシィの顔の左側に鉄の刃物が突き刺さる。

「あっぶねー、今のは当たっちまうかと思ったぜ。ギャハハハ」

刃物を投げた張本人・・・ガジルは楽しそうに笑い声をあげる。
それを見ているファントムメンバー達は「う・・・」「あう・・・」と小さい声を上げていた。

「ガジル・・・も、もう止めとけよ・・・本当に当たっちまうぞ」
「あ?だってヒマなんだモンよ」

キィン、とガジルの手にまた刃物が現れる。

「次はどの辺にしよっかな~」
「よ・・・よせって・・・」

見るに見かねた男がガジルを止めようとする。

「えぽぉっ!」
「うるせぇよ」

が、その男にガジルが頭突きを決め、男は地面に沈んだ。

「この女がどこのお嬢だろうが、俺にとっては尻尾(ケツ)のクズ野郎だ。死んじまってもどうって事ねぇ」
「そ、そんな事になったらマスターに怒られる・・・」
「ま・・・ますよ!」
「いいよ・・・お前のせいにするから」
「そんな~」
「ったく、くだんねぇな。この女が金持ちって知って、尻尾(ケツ)の奴等も必死だぜェ。ギャハハハハハッ!」

ガジルが高笑いする。
それを見たルーシィは、小さく笑みをこぼした。
普通の人間なら聞き逃してしまいそうだが、ここにいるのは視覚・嗅覚・聴覚の優れた滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)
ガジルにははっきりと聞こえていた。

「んー?なんか言ったか?女ァ」

ガジルが顔の半分だけをルーシィに向ける。

「アンタ達って本当にバカね。かわいそうで涙が出てくるって言ったのよ」
「へぇー・・・この状況で虚勢が張れるとは大したタマだ」
「アンタ達なんか少しも怖くないし・・・」

ルーシィがそう言った瞬間、ルーシィの顔の右横に刃物が突き刺さる。

「「「ひっ!」」」
「何だって?」

それを見たファントムメンバーが声を上げた。
滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)であるガジルには聞こえていたのだろうが、ガジルはわざとらしく耳に手を当て聞き返す。

「あたしが死んだら困るのはアンタ達よ」

そう言うルーシィの足は、握られた手は、震えていた。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)は決してアンタ達を許さない!そういうギルドだから」

本当は怖い。
この状況で怖くない訳が無い。
が、ルーシィはうっすらと笑みを浮かべ、言い放った。


「世界で1番恐ろしいギルドの影に毎日脅える事になるわ。一生ね」


怖さを乗り越え、笑みを浮かべ、ルーシィはそう言い切った。

「そいつは面白そうだな。ちと試してみるか?」

ガジルは笑みを浮かべ、刃物を勢いよく投げる。

「ギヒッ」

・・・ルーシィの顔めがけて。

「ガジル!何を!」
「当たるーーーーーーーーっ!」

それを見て慌てふためくファントムメンバー。
その場にいた誰もが・・・否、ガジルを除く全員が当たると思った、その時・・・。





炎を足に纏った、桜色の髪の妖精の火竜(ナツ)が床を突き破った。





「!」

その口には、ルーシィに投げられた刃物。
その光景にファントムはもちろん、ルーシィも驚く。
ぐりん、と突き破った床の上で回転する。

「がああああっ!」

そして・・・ドガガガガッと床を一気に爆発させた。
否、床『だった』物を一気に爆発させた。

「おおお!?」
「痛!」

落ちてくる瓦礫に慌てるファントムメンバー。

「やはりな・・・匂いで気づいてたぜ」

視覚・聴覚・嗅覚の優れる滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)であるガジルは、近づいて来る匂いに気づいていた。
だん、と力強く着地する火竜(サラマンダー)は、全身に炎を纏う。
その姿は勇ましく、怒りが燃えている。
それを見たルーシィは堪えていた涙を目に浮かばせ、小刻みに震えながら呟く。

火竜(サラマンダー)
「!」

そしてナツは目の前にいるもう一頭の竜に向かって・・・

「だらあぁっ!」

怒りに身を任せ、ガジルを殴り飛ばした。





遂に・・・最終決戦が始まった。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
「ティアとシュランを戦わせてほしい」という意見が多かった為、戦わせてみました。
ただ・・・戦闘描写はあまり得意ではないんで、期待しないで下さい。

感想・批評、お待ちしてます。
前回の長ったらしいアンケート、まだまだ意見募集してるんで、どんどん意見下さい。 
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