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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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2人の滅竜魔導士


左拳に炎を纏い、ガジルを殴り飛ばすナツ。
まさか突然攻撃されるとは思っていなかったガジルは防御態勢を取れずに吹っ飛ばされる。

「うぎゃっ!」
「ぐおっ!」

それを喰らったガジルは、後ろにいたファントムメンバーも巻き込んで倒れる。

「大丈夫だった?ルーシィ」
「ハッピー」

その間にハッピーがルーシィの左手首の拘束を外しにかかる。

「どけっ!」
「ぎゃぶっ!」

殴り飛ばされたガジルは戦闘態勢に入る為、一緒に倒れた仲間を押し退け、立ち上がる。
が、ナツはすぐさまガジルの近くまで接近し、右拳に炎を纏った。
そしてそこからその右拳で顎を殴り付け、ガジルは宙を舞う。

「あんなナツ見た事ない・・・」
「オイラもだよ」

ハッピーはルーシィの右手首の拘束を外しながら、答えた。

「今のナツは、強いよ」

キュポン、と右手首の拘束が外れたと同時に、空中に投げ飛ばされたガジルは天井を蹴った。

「調子に乗りやがって!」

勢いよく天井を蹴り、右腕を鉄の棒へと変換させる。
そしてその腕でナツに殴りかかった。

「鉄竜棍!」

が、当たる前にその鉄の棒に手を置き逆立ちし、その状態でぐりんと回転する。

「オラァ!」
「!」
「火竜の鉤爪!」

そしてその体制のまま、足に炎を纏ってガジルの顔面に蹴りを決める。
そのままナツは鉄の棒を掴み、ガジルを投げ飛ばそうとした。
が、ガジルは邪悪な笑みを浮かべる。

「鉄竜剣!」
「うぎっ!」

その瞬間、ガジルは鉄の棒を刺々しい鉄の剣へ変換させた。
それを掴んでいたナツはその棘の部分が原因となり、ダメージを受ける。

「な、何アレェ!」
「鉄の滅竜魔法!」

ハッピーによって拘束から解放されたルーシィは、ガジルの魔法を見て驚愕する。

「痛・・・」

痛みに耐えきれず、ナツは鉄の剣を持つ手を緩め、放す。

「がっ!」
「ナツ!」

それを待っていたかのように、ガジルはすぐさま右足を鉄の棒へと変え、ナツの頭を蹴る。
ルーシィが叫び、ナツは少し吹き飛ばされたが、何とか踏み止まった。

「やっと決着をつけれるな。火竜(サラマンダー)

ガジルが笑みを浮かべ、ナツに向かって言い放つ。

「燃えてきたぞ。鉄クズ野郎」

それに対し、ナツも笑みを浮かべて答えた。

(お互いが自らの体を竜の体質へと変換させる滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)。竜迎撃用の魔法をもって人間同士が戦うっての?)

ルーシィは笑みを浮かべるガジルと、そんなガジルを睨むナツを見つめる。

(ちょっ・・・ちょっと・・・どうなっちゃうのよ・・・)






火炎の蛇(ファイアスネーク)!」

一方、ファントムギルドの別室では、ティアが幽鬼の支配者(ファントムロード)最強の女、シュランと戦っていた。

「無駄よ!」

迫りくる幾千もの赤い蛇は、ティアをすり抜けその背後の壁へと撒き付く。
ティアの背後の壁は様々な色や太さ、長さの蛇模様で埋め尽くされていた。

「その体・・・厄介ですね」

シュランは呟くと、姫カットの髪と同じローズピンクの魔法陣を展開させる。

迅速の蛇(クイックスネーク)!」
「何度やっても結果は同じよ!」

先ほどより明らかに素早い蛇も、ティアには通用しない。
高く跳躍してその蛇を避け、右手に魔法陣を展開させた。

大海白虎(アクエリアスタイガー)!」

そして魔法陣を通して水で構成された虎を放つ。

爆発の蛇(バーストスネーク)

するとシュランの蛇が虎に巻き付き中に入り、中から虎が爆発した。
煙が晴れると、シュランが一気にティアへと向かってくる。

無効の蛇(インバリットスネーク)

紫色の蛇がティアの腕に巻き付く。
・・・が、何も起こらない。
爆発する訳でも、雷が落ちる訳でも、頭上からタライが降って来る訳でもなく。

「・・・何よ」
電撃の蛇(ライトニングスネーク)

そこにまた蛇模様が走る。

「こんなモノ・・・」

ティアは通常通り体を水に変換して無効化しようとするが、少し目を見開いた。

「っ!?」

そして横に転がり、蛇を回避する。
そこから跳躍し、綺麗に着地を決め、シュランを睨んだ。

「アンタ、何をしたの?」
「・・・と、おっしゃいますと?」
「恍けないで・・・さっきの無効の蛇(インバリットスネーク)、あれは喰らっても攻撃されなかった。あの蛇は、私が『体を水に変換する』のを『不可能』にする・・・つまり、私の唯一の防御法を『無効化』した・・・違う?」

ティアが淡々と説明すると、シュランはにっこり微笑んだ。

「えぇ。その体は厄介ですもの。無効の蛇(インバリットスネーク)は発動者が『無くしたい』モノを『無くす』・・・簡単に言えば『無効化』する魔法です」
「厄介な事してくれるじゃない・・・」
「私にとってはその体の方が厄介でしたけどね」

つまり、これで現在のティアはどんな攻撃でも受けてしまうのだ。
いつもならすり抜ける攻撃も、今のティアが喰らえばダメージを受ける。
火竜の咆哮を喰らえば火傷を負い、剣で斬られれば傷を負う。

「ま、これで対等って訳ね」

ティアは肩を竦め、薄く微笑む。

「では・・・始めましょうか。今ガジル様は火竜(サラマンダー)と戦っているでしょう。この真上で・・・」
「真上?」

ティアが首を傾げると、シュランはご丁寧にも説明を始める。

「今私達がいるのは、ガジル様のおられる操縦室の真下の部屋・・・いえ、正確には斜め右下、と言うべきでしょうか」
「なるほど。だからドタバタうるさいのね」

はぁ、と溜息をつく。
と、同時に、蛇が巻き付いた。

「っ!」
「私がただ説明をしていたとでも?」
「不意打ち、ってヤツ・・・?」

その蛇はティアの全身に巻き付いていく。
シュランは魔法陣をティアに向け、魔力を込めた。

「さようなら。光り輝く閃光の妖精・・・」

その部屋から、ソプラノの悲鳴が響いた。







一方、その斜め左上の操縦室では。
ピキピキ・・・とガジルの右腕の肘辺りまでが鱗のような鉄を纏う。

「竜の鱗!?」

ハッピーが驚いたその時、ガジルは一直線にナツに向かっていき、鱗を纏った拳を振るう。

「!」

それを見たナツは慌てて左腕で防御態勢を取り、その拳を防ぐ。
防いだ、のだが・・・。

「ぐあああっ!」

ボキッという不吉な鈍い音と共に、後ろに吹き飛ばされた。

「折れ・・・」
「あの鱗は鋼鉄で出来てるんだ!」
「ギヒッ」

ガジルは笑みを浮かべながら、今度は鱗を纏った足で蹴りを放つ。
それをナツはバッとしゃがんで避けた。
だが次の瞬間、凄まじい風圧がルーシィとハッピーを襲う。

「きゃあっ!」
「おぽっ」
「うぱっ」

その風圧でルーシィのスカートが捲れ、ファントムの男共は目をハートにする。
ここにティアがいたら、どうなっていた事やら・・・。

(嘘でしょ!?これが蹴りの風圧!?)
「鋼鉄の鱗が攻撃力を倍加させているんだっ!」
「どらぁっ!」

ガジルの蹴りを避けたナツは炎を纏った右拳でガジルの顔面を殴る、が。

「ギヒッ、鋼鉄の鱗は全ての攻撃を無力化する」
「うああああっ!」

ガジルの鋼鉄の鱗の前では歯が立たず、顔面に拳は当たっているが、しゅうっと炎が消える。
それどころか、ナツがダメージを受けてしまった。

「そんな!防御力も上がってるの!?」
「があっ!」

ナツはそのままガジルの頭突きを喰らい、床に倒れる。
そこを狙ってガジルが鉄の爪を振り下ろすが、ナツはそれを間一髪で避け、構えた。

「火竜の・・・」
「鉄竜の・・・」

2人は大きく息を吸い込み、頬を膨らませる。

「あいつも(ブレス)が使えるのか!」
「ふせろォォーーーーっ!」
「ひいいっ!」

ハッピーが驚愕し、ファントムメンバーは一気に伏せ始める。



「「咆哮!」」



その瞬間、ナツの灼熱のブレスとガジルの鉄クズのブレスが激突し、辺りに信じられないほどの衝撃が拡がる。
当然、周りにいた人間は耐え切れず、吹っ飛ばされた。

「お互いの竜の性質の違いが出ちまったなぁ、火竜(サラマンダー)

煙が晴れると、そこにはナツのブレスを喰らったのに無傷のガジルが立っていた。

「たとえ炎が相手を焼き尽くす(ブレス)だったとしても、鋼鉄には傷1つつけられん。逆に鉄の刃の(ブレス)は貴様の体を切り刻む」
「う・・・ぐ・・・」

対するナツは、立ってはいるものの、体中に鉄の欠片が突き刺さっていた。

「ナツ・・・」
「あいつ、強い・・・」

そんなナツを見て、ルーシィとハッピーが声を漏らす。

「あ?」

・・・が、ナツは怒りを含んだ目でガジルを睨みつけた。

「!」

するとその時、ガジルの額が割れた。

「う・・・」
「俺の炎もただの炎じゃねぇぞ。火竜の炎は全てを破壊する」

そう言いながら、ナツは立ち上がる。

「本気でこねぇと砕け散るぞ、鉄竜(くろがね)のガジル。探り合いはもう十分だ」

身体全体から炎を吹き出し、ガジルを睨む。

「え?」
「探り合い・・・て・・・」
「お互い本気じゃなかったんかー!」
「こいつらバケモンだー!」

ナツのその言葉に驚愕するルーシィとファントム達。
そう・・・先ほどまでの激しい戦いは、全く本気ではなかったのだ。

「この空に竜は2頭もいらねぇ。堕としてやるよ・・・火竜(サラマンダー)のナツ」

ガジルがナツにそう答えた、その瞬間!





「きゃあああああああああああっ!」




悲鳴が響いた。
それを聞いたナツ達は動きを止める。
ガジルは何があったかをすぐに察知し、ニヤリと笑った。

「今のって・・・」
「ティア・・・か?」

そう。
この声の主は、シュランによって体を水にする事を封じられた・・・ティア。

「どうやら、シュランのヤローにやられたみたいだな。そのティアとかいうヤロー・・・死んだんじゃねぇか?アイツが自分から戦いに出る時は、相手を確実に仕留める時だけだからな」

ガジルが不敵な笑みを浮かべる。
・・・が、ナツは全く動じず、逆に笑った。

「何言ってやがんだ。ティアは死んでなんかねぇぞ」

そう。
ナツにははっきり聞こえていた。
悲鳴の後の、いつものティアの自信に溢れた声が・・・。







「・・・大した事ありませんでしたね」

シュランは溜息をつき、その部屋を去ろうとする。
その近くには傷だらけで倒れるティア。
その姿を見てシュランは微笑み、ドアノブに手をかけた、その時。

「・・・何を言っているの?」

声が、聞こえた。
慌ててシュランが振り返った瞬間、その顔に圧縮された水が直撃する。

「あら・・・まだ生きていたんですか」
「当たり前でしょ。この斜め右上でアイツが戦っているのに、私が先にやられる訳にはいかないの」

髪を払い、ニヤッと微笑む。

「そうでしょうか?火竜(サラマンダー)はガジル様に殺されてしまったのでは?あの方は手加減を知りませんから」

そのシュランの言葉に対し、ティアは呆れたように溜息をついた。

「悪いけど、アイツの頑丈さは凄いわよ。頑丈さ・破壊癖・そして根性。この3つは私も認めてるし・・・」

最後の方をもごもごと呟く。
そして偶然か、それとも互いに相手の声が聞こえたのか・・・。
ナツとティアの声が綺麗に重なった。






「俺はアイツを信じてる。アイツは相手を倒すまで倒れねぇ」

「私はアイツを・・・少しだけ、信じてる。少しだけだけど」




「「絶対にアイツは勝つ!だから・・・」」




以心伝心、とはこういう事を言うのだろうか。
7年もの間同じギルドで過ごしてきた2人の息は、ぴったり合っていた。


「俺はお前を・・・」
「私はアンタを・・・」

「「絶対に倒す!」」

 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
最後の2人の声が重なるシーン、やるか迷ってやってみました。
下手ですいません。

感想・批評、お待ちしてます。 
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