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仮面ライダーディザード ~女子高生は竜の魔法使い~

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epic10 対決!ディザードVSデスザード

謎の黒宝石の魔法使い…デスザードの登場により、更に混沌としてきた両者の戦い。

「黒宝石の魔法使い…デスザード?それに主って…。マック、聞いた事はありますか?」
『…うーん、そんな魔法使いなんて、聞いた事がないね。いや、それよりも背後の力…やはりあいつか。』
「あいつ?」
『エリカちゃん、気をつけて。目の前にいる魔法使いは、間違いなく…今までのどの敵よりも強いよ!』

エリカはディザーソードガンを構えながら慎重に相手の出方をうかがう一方、マギカドラゴンだけは何かを感じ取ったのか警戒を更に強め、エリカにも気をつける様警告した。
無理もないだろう、マギカドラゴンにとってその力ははるか昔に封印した、()むべき存在のものなのだから。

一方パワードタイガーはデスザードを見て今朝町中に行ったゼロの事を思い出し、はたと手を打った。
ははーん、なるほどな…主が呼んできた援軍って、主本人の事だったのか、と。
確かに考えてみれば、朝ゼロが町中に向かうふりをして近くに身を潜め、こっそり変身して後を付けていく事も無くはないだろうし、また考え様によっては、町中で姿を消す魔法で姿を消し、見えない場所で変身した…と考えても推測としては間違ってはいない。
どのみち俺達を驚かしてやろう、という魂胆(こんたん)は見え見えだ…パワードタイガー達は軽く考えていたが。
しかし、デスザードはパワードタイガーの心の中を読んだのかテレパシーでパワードタイガーに話しかけ、それをキャッチしたパワードタイガーもテレパシーで話し始めた。

(パワードタイガー、待たせたな 。心配をかけてすまなかった。)
(あ、主ですか?でも姿は一体どこに…。)
(俺は今、デスザードの適合者の肉体と融合している。ようやく適合者が見つかったので、急いで来た。)
(なるほど、適合者を探し出すために町中へ向かったのですか。)
(あぁ、その通りだ。ここから後の事は俺にまかせて、お前達は引き続き暴れまわってくれ。)

テレパシーを受け取り納得したパワードタイガーは、チェーンコブラとスパイクディアーに「さぁいくぞ、暴れまわれぇい!」と告げるや大剣を再び振りかざし、進撃を開始しようとした。
しかし、チェーンコブラとスパイクディアーだけはあまりにも唐突に先へ行こうとするパワードタイガーにとまどい気味であった。

一方パワードタイガーの動きを見たエリカは、デスザードのオーラに押される事なく左手のリングをディザードライバーにふれディザードに変身し、デスザード同様左手のリングを見せつけ戦闘開始を宣言する


「ですが、このまま敵を逃がす程間抜けではありません!変身!!」
『ディザード…プリーズ!ディーディー、ディーディーディー!!』
「イッツ…ショータイム!」

ディザードの登場にいきり立ったチェーンコブラとスパイクディアーは更に興奮し、チェーンコブラが『現れたでヤンスね!!』と意気がりながら己の得物…コブラ型のロングチェーンを振り回し攻撃しようとしたが、パワードタイガーは二人の前に立ちふさがって待ったをかけた。
チャンスを潰されたと誤解した二人は、パワードタイガーに抗議するが。

『何をするでヤンスか!?』
『…無礼な!!』
『まぁ待て、ここはあの魔法使いにまかせよう。お手並み拝見、ってやつだ。』
『えっ、あの魔法使いが?あっしら達の味方!?…絶対反対でヤンス、いやな予感しかしないでヤンスよ!』
『…私も同意だ。とてもではないが、信じられん!』
『まぁ…信じたくないとは思うけどな。しかし、これは事実だ。そんなにあの魔法使いの事が心配なのか?』
『そうでヤンスよ、あんな訳もわからぬ魔法使いに後をまかせて、本当に大丈夫か保証できないでヤンス!!』
『やはりここは我々が戦わねば、どうしても割に合わない。』
『むぅ…。』

それでも戦いたいと喰い下がる二人に、パワードタイガーも二人の気持ちがわからなくもなかった。
光あふれる世界を手にし、荒れ果てた異世界から脱出したい…それは全てのホムンクルスの夢であり、切なる願いでもある。
しかしディザードや世界各地にいる魔法使い達により多くの同士が消され、異世界にいる残り少ない同士もベルフェゴールが来なければ完全に滅んでいた。
だからこそ、何とかして竜の魔法使いを倒し(うれ)いを除かなくては…と思い二人は覚悟を決めてパワードタイガーの元にやってきたのだ。
それを見ず知らずの魔法使いに出番を取られ、溜飲(りゅういん)が下がる訳がない。
そもそも彼らにとって魔法使いは敵であるるため、そう簡単には信用してくれないだろう。
だがそれでも、パワードタイガーはあの魔法使いを信じてくれと言い、更に説得を続けた。

『大丈夫、あいつは…きっと勝つ!勝って、俺達の願いをかなえてくれる!だから信じてくれ!!』
『…そう言われてみれば、あの魔法使いから出ている魔力は ケタ違いに強力でヤンス。』
『そりゃそうだろう、何故ならあの魔法使いには俺達の主…カラミティドラゴン様が力を貸しているからな。』
『えぇぇぇっ!あのお方が!?それなら負ける事は絶対あり得ないでヤンスよ!』
『…ほぅ、あのお方が!ならば、私も信じよう。』
『ありがとな、二人とも。…さぁ行こう!』

カラミティドラゴンがデスザードに協力している事を知り、ようやく理解した二人は互いに面と向かい合ってうなずき、そしてパワードタイガーの「さぁ行くぞ!」の一言と共に走りだした。
だがパワードタイガーも本音を言えば、竜の魔法使いと決着を何としてもつけたかったのである。
本当なら、俺が竜の魔法使いを倒して皆の仇を討ちたかった…しかし、今の俺達には主が力を貸している魔法使い…デスザードがいる。
たとえ俺達がやられても、主が俺達の仇を討ってくれれば、それこそ本望!
今は主を信じよう…それしかない!
パワードタイガーは、そう自分自身に言い聞かせ再び進撃を開始した。

デスザードはパワードタイガーを見送った後、その(よこしま)な瞳をディザードに向け、右手に握られた鎌…アークソウルを右手で振り回しながら空を滑る様に走り出し、奇声を上げながら一気に間合いを詰めていった。

「キシャアァァァァァ!!」
「くっ、来た!」

ディザードは近づいて来るデスザードにディザーソードガンをソードモードに切り替え、がら空きの左ななめ上から斬撃を繰り出したがデスザードが先を読んだのか右に少しずれて回避し、左手から錬成された魔力弾を至近距離から腹部に決め、ディザードを弾き飛ばした。
だが、ディザードも自らの魔力を解放し地面に叩きつけられる前に浮遊してブレーキをかけ、そしてデスザード同様に空を走りディザーソードガンを振り下ろす。

…ガキィッ!!

両者の刃が激しくぶつかり、バチバチと火花を散らす…だが互いに一歩もゆずらず、むしろ気合い十分に押し合っている。
今、数百年の時を越え…光の魔法竜と闇の魔法竜が、世界の存亡を賭け再び激突する!!

『カラミティドラゴン、もう一度その肉体を粉砕し異世界に封印してくれる!あの時と同じ悲劇は、もう見たくない…!!』
『マギカドラゴン、かつての借りを今ここで返す!俺こそが地上最凶の暗黒竜だ!!』




一方、パワードタイガー達はイベント広場を早足で駆け抜け、二階に向かって階段を走り出していた。
主を守るために、もっと人間から負の力を引き出さなくては…そうでないと、ベルフェゴールとの約束が無駄になってしまう!
その思いを胸に、パワードタイガー達はがむしゃらに走るが。

ヂュンッ、ヂュンッ!

またしても足元に銃撃を受け足止めされたパワードタイガー達。
これで今日二度目の足止めである。
しかし、今ディザードはデスザードと激しくぶつかり合っているため来れるはずもなく、しかも砲撃がどこからきたのかでさえ全くわからない。

『一体どこから弾が…?』
『気をつけろ、おそらく敵は近くにいるはずだ!!』

三人が辺りを見回しながら慎重に武器を構えると、二階のフロア奥から何者かが武器を構えてゆっくりと歩いて来る音が聞こえた。
二階はすでに避難済みなのか誰もおらず、足音だけが静寂なフロアに響き渡る。

カッ、…コッ、…カッ、…コッ。

三人は足音が急に止んだ事を確認し、二階を登りきり足音のした方を向くと…そこには白いローブをまとった魔法使いが、ディザードの物とそっくりのディザーソードガンを手に立っていた。
そう、エリカの叔母…通称「白い魔法使い」こと天王寺 サヤカである。
普通なら会長の仕事で忙しいはずのサヤカが、なぜここにいるのか?
実は、エリカが負の力の流れをたどってここに向かっていた頃、サヤカも『エーテル』本部で同じ負の力の流れを感じ、すぐさまテレポートリングで移動してパワードタイガー達を待ち伏せていたのだ。

「やはりあんた達の仕業かい。もう少し他人の迷惑を考えんか、このバチ当たりが!!」
『そんなの俺達の知った事じゃねえ!のされたいのか、この白マント!』
『また魔法使いでヤンス…もういい加減にしてほしいでヤンスよ。』
『…しかし気を抜くな、あの老人は結構な切れ者と見た。油断するな!』
『とどのつまり、戦えと…わかったでヤンス。こうなれば誰だろうと構わない、当たって砕けろでヤンス!』

パワードタイガーはサヤカに向かって吠え立て、チェーンコブラは頭を抱えてげんなりとしていたがスパイクディアーに励まされ、何とか立ち直っていた。
ここで負ける訳にはいかない…ベルフェゴールとの約束を果たすため、三人は腹をくくりサヤカに向かって一斉攻撃を開始した。

『えぇい、戸惑っていてもらちが開かない!二人とも、いくぞ!』
『『了解!』』
「ふん、かかって来なさい。逆に叩きのめしてコテンパンにしてやるよ!!」

まず先にチェーンコブラが腕に巻き付かせてあったロングチェーンをサヤカに繰り出し、続いてスパイクディアーの技…全身のスパイクを敵に放つニードルシャワーでゴリ押しし、最後にパワードタイガーの大剣でフィニッシュする…はずだった。
実際にはロングチェーンもニードルシャワーも全て紙一重でかわされ、大剣による一撃もサヤカがディザーソードガンをソードモードに変更する事で対応され…おまけに。

「そぅれ、これでもか!」
『ボム…ワォ!』
『『『ぎゃーすッ!!?』』』
「ほれ、どうしたどうした。そんな事で伸びてるんじゃ情けないぞい!」

逆に三人がボムリングで丸焼けになり、情けなく大の字になって焦げていた。



その頃、ディザードとデスザードの戦いは更にヒートアップしていき、両者共につばぜり合いをしながら空中高くジャンプし。

「…はあぁぁぁぁっ!!」
『コオォォォォォッ!!』

ガシャアァァァァンッ!!

ついにはイベント広場を飛び出し…ガラス張りの屋上をぶち抜いて互いににらみ合っていた。
双方疲れはあまり見られないが、気合いと気合いが激突する戦いだけに、後は精神が持つかどうかで全ては決まる。
と、ここでディザードは左手のリングをナイトリングに変更し、ディザードライバーを操作して左に切り替え手形にふれ変身した。

「力で互角なら、手数の早さはどうです?」
『ナイト!プリーズ!!…セイバーセイバー、セイヤーセイヤーセイヤー!!』

そして間髪入れず右手のリングを新しいリングに変更し、ディザードライバーを右に操作すると手形にふれ魔法を発動させた。
今使ったリングは、以前サラがサヤカからもらい受けた魔法石をリングに加工した物で、リングには右手に剣、左手に盾を装備した竜の絵が彫られている。

『ガーダー!プリーズ!!』

するとディザーソードガンが魔法陣の中に消え、代わって左腕に魔法陣が現れ、全長50cm程の六角形をした白く輝く盾が魔法陣を通って装備された。
これこそ、DZナイトスタイルの新しい装備…クィーンガーダーである。
DZナイトスタイルは、ガーダーに刺さっている翼をかたどった(つば)と白く輝く刀身を持つ剣『キングスソード』を引き抜くと、一気にデスザードとの間合いを詰め、鋭い一撃を右から繰り出した。
あまりの素早さに対応できず、アークソウルで防御しようとしたが…結局間に合わず正面からもろに喰らい、何とか魔力を解放してブレーキをかけた。
そう、ヴァルムンクが使用可能になった影響は他のスタイルにも少なからず及んでおり、ナイトスタイルの場合は機動力が大幅に向上し…斬撃の速さも更に軽やかになったのである。

『ガアァァァァァッ!?』
「効いた!?…よし、これなら!」

ディザードはキングスソードの軽さと威力に手応えを感じ、更に斬撃を繰り出してデスザードを追い詰めていった。
なおもアークソウルを巧みに操り防御に徹するデスザードではあったが、さすがに長柄のアークソウルでは分が悪いのか、デスザードは黒光りするリングをリングホルダーから外し天高く投げドライバーを左手で右に操作、そして落ちてきたリングをタイミングよく右手中指に装着しドライバーにふれた。

『コネクト…フフフ。』

不気味な笑い声と共に、アークソウルはデスザードの右横に浮かび上がった黒い魔法陣の中に吸い込まれ、代わりに悪魔の翼をかたどった(つば)と少し長めの柄を持つ刀身80cmの剣『ティルウィング』を取り出し、ブンブンと振り回して構えた。

「また新しい武器が!?」
『エリカちゃん、気をつけて!… あれは、ヴァルムンクと威力を二分する剣、ティルウィングだ!!』
「ティルウィング…噂には聞いていましたが、あれがそうなのですか!」

DZナイトスタイルはクィーンガーダーを構え防御しつつ、キングスソードに少しずつ魔力を蓄積させデスザードの出方をうかがっていたが。

『…甘い!!』

シュッ!グワアァァァァァン!!

何と、デスザードが片手でティルウィングを振り下ろしたかと思うやいきなり遠方から斬撃が繰り出されたのである。
ディザードはクィーンガーダーで防御するものの、かなりの衝撃がガーダーに伝わり姿勢が崩れてしまった。
幸いにもガーダーやDZナイト自体は無傷であったが、たった一振り…しかも片手で繰り出してこれだけの威力を発揮するティルウィングは、なかなかあなどれない剣である。

「…ッ!」
『エリカちゃん、大丈夫?』
「な、何とか…。」

がデスザードの追撃の手はゆるめず、一瞬で消えたかと思うとディザードの目の前に現れ、追撃の一太刀を加えてきたのだ。
DZナイトもそれに反応してクィーンガーダーで防御、キングスソードで迎撃するが相手はヴァルムンクと互角のティルウィングである、
そう簡単に牙城を崩せる程甘くはない。
高速の斬撃VS伝説の魔剣の戦いは、互いに精神と体力を消耗し、更に続いていく…。

かたやサヤカはと言えば、とても年寄りとは思えない健脚と体力でホムンクルス三人を翻弄(ほんろう)し、休む事なくディザーソードガンで砲撃を続けていた。
パワードタイガー達も攻撃を仕掛けてはいたが、あまりの素早さと銃の正確さに手こずり実力の程を見せつけられ、地団駄を踏むばかり。
とここで、さすがに攻撃がワンパターンだと感じたサヤカは、一気に勝負を決めるべく狙いをパワードタイガーに絞り、右手のリングを新しいリングに変更しディザーソードガンをソードモードに変形、手形を展開した後魔法を発動させた。

「一気に決めるぞい!」
『カモン・タッチング・スラッシュ・ゴー!…プロミネンス!スラッシュ・ストライク!!』
「多少威力は大きいかも知れんが、やむを得ん!」
『なっ、あれは…うおぉぉぉぉッ!!』

サヤカの前に魔法陣が現れ、そこから繰り出された斬撃により巨大な龍を模した炎がパワードタイガー目がけて放たれ、一気に飲み込んでゆく。

ゴガアァァァァァン!!

パワードタイガーは大爆発を起こし、この世界から消滅した。
すると、燃え尽きたと思われていた肉体は灰になってもなおその場に渦巻いており、そしてガラス窓の隙間から外へと舞っていった。
その場に残されたスパイクディアーとチェーンコブラは、自分自身の力なさにひざを突き床をガンガンと叩いて悔しがるばかり。

『なんてこった…くそぅ…ちっくしょおぉぉぉぉ!!』
『パワードタイガー…。』

残されたチェーンコブラとスパイクディアーは憎しみを込めた眼差しをサヤカに向け、
己自身の得物を振りかざして『死なばもろとも!!』と怒鳴りつけながら己自身の得物で反撃したが、冷静さを欠いた攻撃が当たる訳がなく全て回避され、サヤカは魔力を込めたディザーソードガンを右から来たスパイクディアーに向けて右横一線に斬りつけ、続いて左から来たチェーンコブラを返す刃で左下から斬りつけ撃破した。
結局何も出来なかった…その無念を抱き、二人は光と化し異世界へと帰って行った。

ディザードとデスザードの戦いもクライマックスに近づきつつあり、DZナイトの鋭くシャープな太刀筋に大剣のティルウィングで立ち向かうデスザードは徐々に追い詰められていた。
何よりカラミティドラゴン自身が精神体のまま異世界に封印されていた事もあり、久々に使う肉体に慣れていないのもマイナス要素の一つである。

『くっ、このままでは…!!』
「逃しません!」

ここでDZナイトは左手のリングをディザードリングに変更し手形を操作してそこにふれディザードに再変身、続いて右手のリングをヴァルムンクリングに変更し、手形を再操作した後右手をふれ、ヴァルムンクリングを発動させた。

『オーケイ・ユータッチ・ヘンシーン!…ディザード・プリーズ!!ディーディー、ディーディーディー!!』
「これで決めます!」
『ヴァルムンク・プリーズ!!』

すると空中にディザーソードガンが現れ、それに合わせてディザードのリングホルダーにあった属性リングがディザードから分離して定位置につき、魔法陣を形成した後ディザーソードガンがゆっくりと降下して魔法陣を通過、中央の手形から伸びる大天使の6つの翼を模した鍔が美しいヴァルムンクに姿を変えてディザードの手に収まった。

『ヴァルムンク…だと…!!?』
「これで…フィナーレです!!」
『ナイス・タッチング!セラフィム・ストライク!!』

ディザードはヴァルムンクを手にしたと同時に手形に右手をタッチし魔法を発動させ、両手で握りしめ大きく振りかぶる。
刃が光り輝くと同時にディザードの背後から白く輝く翼が伸び、そしてデスザード目がけて走り始めた。

『…もはやこれまでか。ん?』
「!?」

その時だった、城北579の方から黒い灰が舞い込み、デスザードの体を包み込んだのである。
その灰はデスザードを軸にらせんを描いて渦巻き、漆黒の壁を形作る。
ディザードは黒い灰に一瞬ひるんだが、迷う事なくヴァルムンクをデスザードに向けて振り下ろし、勝負を決めようとした。
だが。

ガキィィィィィンッ!!バチィッ!!

光の刃は漆黒の壁にさえぎられ、弾き返されたのだ。
最初は何があったのか全く知らなかったデスザードであったが、やがてその漆黒の壁から何者かの意志を感じ取り、ようやく全てを知った。  
そう…先程サヤカの攻撃により撃破されたパワードタイガーが、デスザードを守るべく灰となってもなおディザードの前に現れたのである。
あの時ベルフェゴールと交わした約束を守るために…。

ゼロ、ベルフェゴールとの約束は守ったぜ…。

そして灰は役目を終え、風に乗っていずこかへと飛び去っていった。
まるで、鳥かごから解き放たれ自由を得た鳥の様に…。
灰を見送り再びディザードと向き合ったデスザードは、ティルウィングを魔法陣に収納するとカラミティドラゴンの声で話し始めた。

『今回は体を慣らすための軽いウォーミングアップだ、次に会った時は万全の体制で貴様を倒す。』
「その時は、私も遠慮なく戦いますよ…人々の平和を守るために!」

そしてデスザードは暗黒のオーラと共に姿を消した。

戦いを終え変身を解除したエリカは、青空を眺めながら改めてデスザードの実力を思い知る。
強い…確かに、デスザードは強い。
私ももっと精進しなくては!
そんな固い決意を胸に秘めたエリカの体を、風は穏やかに過ぎていった。

丁度その頃、城北町の森林で新たな異変が起ころうとしていた…。


 
 

 
後書き
次回、epic11 「衝撃!?謎の森ヘルヘイム」 
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