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仮面ライダーディザード ~女子高生は竜の魔法使い~

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Epic9 誰?…黒宝石の魔法使い

ベクターノイドと竜の魔法使いとの戦いから数日後…ベルフェゴールとパワードタイガーは転送の魔法陣を使い異世界の丘の上へと来ていた。
そう、洞窟内にあった『あの』カプセルを持ち込み、誰かを待っていたのである。

異世界…それは人造人間ホムンクルスが封印されている、もう一つの地球。
ただし完全な暗黒の世界ではなく赤茶けた大地が地平線まで続き、灼熱の太陽が容赦なく大地を照らす、乾いた世界なのだ。

『なぁベルフェゴール、一体誰を待っているんだ?』
「ふふふ…今にわかります。」

パワードタイガーは頭に?マークを浮かべながら腕組みし、ベルフェゴールと共に待つ事数十分。
すると彼らの頭上に巨大な黒い影がさしかかり、そのまま旋回を開始していた。

「…来ました。」
『あれか!』

その影は二人を見つけるや灼熱の息を吐き、血に染まったかの様な巨大な翼を広げながら急降下してきた。
あまりの巨体にパワードタイガーは思わず見上げてしまい、ベルフェゴールは感嘆の吐息をもらす。

『で、でかい…。ま、まさかあんた!』
「これはこれは…あなたが来るのを待っていました、かつてヨーロッパを恐怖のドン底に叩き落とした厄災の化身、カラミテイドラゴン!!」
『やはりそうだ、俺達の主を復活させようとしていたのか!』
「…いかにも。」

そう、ベルフェゴールは黒い影…カラミティドラゴンと極秘にコンタクトを取り、ここに来る様頼んでいたのである。
カラミティドラゴンは翼を羽ばたかせ砂塵を巻き上げながら乾いた大地に降り立つと、まるで商品を品定めするかの様に二人を見回し、仁王立ちでにらみつけるベルフェゴールに質問した。
その漆黒の巨体から立ち上がる圧倒的な迫力と魔力は、あのマギカドラゴンに勝るとも劣らず、「暗黒の竜王」と呼ぶにふさわしい。
だがしかし、ベルフェゴールは臆する事なく真っ向から挑んでいく。

『…汝か、我を呼んだのは。我に一体
何の用だ?』
「はい、実はあなたに朗報をお持ちしました。」
『朗報?』
「はい、実は肉体のないあなたのためにホムンクルスを用意しました。それをさし上げたいと思いまして…。」
『何?我に肉体を提供するだと!?』

カラミティドラゴンはベルフェゴールの言葉に引きつけられ、目をらんらんと輝かせて喰いついた。
無理もない、彼ははるか昔に竜の魔法使い•ゴダードにより肉体を滅ぼされ、霊体のまま異世界に封印されていたのだから。
しかしカラミティドラゴンとて何もわからない程馬鹿ではない、彼には彼なりの交渉条件があり、それを満たさなければベルフェゴールとて…条件次第ではただで済む訳がない。

『では汝に聞こう。我に肉体を提供する理由は何か?話次第では容赦はしないが。』
「理由はただ一つ…私がホムンクルスを増やしている間に、竜の魔法使いを倒してほしいためです。」
『竜の魔法使いを?我が?』
「はい、あなたがかつて受けた雪辱を晴らし、そして減ってしまった同士を増やすには…これしか方法はありません。」
『うむ…、それは確かに。』
「それに、私はホムンクルスを増やすための秘儀を知っています。後の事は私に任せて、あなたはここにある肉体を使って持てる力を打倒竜の魔法使いに発揮して下さい。」

この言葉に、カラミティドラゴンの長らく揺るがなかった心が大きく揺れた。
この世界に封印された当初、彼は単独で異世界をめぐり長い時間をかけて同士を探し求めた…しかし、どこへ行っても誰にも会えずさびしい思いをしていたのだ。
だが、数百年が過ぎホムンクルスがこの世界に封印された時、彼は自らの魔力と様々な能力をホムンクルスに与え数を増やす努力を続けてきたのであった。
当然ホムンクルス達も次第にカラミティドラゴンを主としてあがめる様になり、徐々にこの世界で勢力を伸ばしてきた。
だが、近年ゲートの発達により表世界にホムンクルスが現れる事が増え、しかも各地にいる魔法使いに撃退され数が激減してきている…。
それを食い止めるためには、やはり自ら出向いて魔法使い達を倒さねばホムンクルス達に未来はない…しかしそのためには肉体が必要となる。
ベルフェゴールの提案は、彼にとってまさに願ったりかなったりである…もはやカラミティドラゴンに迷いはなかった。

『いいだろう、我も力を貸そう!この世界で生きているホムンクルス達の未来を守るために!!」
「交渉成立ですね。では、こちらにある肉体をどうぞ。後はあなたのご自由にお使い下さい。」

ベルフェゴールとの交渉が成立し、まさに虎に羽がついたような気分で身が軽くなったカラミティドラゴンは、目を閉じ軽く念ずると。

グオォォォォッ!!

まさに大地を揺るがさんとばかりの雄叫びと共に、その身を黒い炎の塊と化しベルフェゴールのかたわらにあるカプセルに向かって突っ込んできた。
そして…。

ズガアァァァァァ…ン!!

カプセルが大爆発を起こし、巨大なキノコ雲が発生した。
カプセルが破片を盛大にまき散らして砕け散り、もうもうと立ち上がる爆煙の中…一つの影が上空に舞い上がり大地に降り立つ。
そう…今ここに、カラミティドラゴンが完全復活を果たしたのである。
ベルフェゴールとパワードタイガーは、ホムンクルスの主の新たな姿に自分達の未来を感じ、互いに喜び合った。

『ベルフェゴール、ついによみがえったぜ!俺達の主が!』
「えぇ、これで目標の一つは達成しました。次は、私の番ですね。」



『ベルフェゴール、ここが俺の故郷だけど…本当に大丈夫なんだろうな?』
「はい、ホムンクルスの増殖につきましては私におまかせを。」

赤茶けた大地に二十数名の人型ホムンクルスが、まるで家族の様に寄り添い暮らしている世界の一角…今ベルフェゴールら三人は、そこに来ていた。
彼は、聖書に偽装した魔導書とは別に用意した、妙にドス黒い色の魔導書…『ネクロノミコン』を使い、ホムンクルスの増殖に着手しようとしているのだ。
ちなみにこのネクロノミコンこそ、魔導士特務機関『エーテル』とベルフェゴールが争うきっかけとなった書物であり、先程カラミティドラゴンに与えたホムンクルスの肉体を造る時に使用した魔導書でもある。

「ベルフェゴール、俺の仲間に下手なまねしたら…どうなるかは、わかっているな?」
「心配には及びません、カラミティドラゴン…いえ、今はゼロと言うべきでしょうか。」

今ベルフェゴールに意見した、パワードタイガーの横にいる男…そう、彼こそホムンクルスの肉体を得たカラミティドラゴンことゼロである。
キリッ細いとしたマスクにニヒルな口元、銀色のショートヘアーに真紅に燃える様な瞳、そして細身の体つきからにじみ出る邪悪なオーラ…まさに、暗黒の化身と呼ぶにふさわしいたたずまいである。

『主、心配しなくともベルフェゴールは嘘は言いませんから。』
「それに、私としても彼らがこのまま滅びるのを指をくわえて見ている訳にはいきませんので。」
「うむ…それを聞いて安心した。汝なら残された我が仲間を任せてもよさそうだ。」
『ベルフェゴール、ゼロの事は俺に任せてくれ。絶対に守ってみせるぜ!』
「それは心強い。では、後の事を頼みます。」

ベルフェゴールは大地に手をつき、二人の足元に転送の魔法陣を展開させると
呪文を詠唱し、二人を元の世界へと戻した。
そしてベルフェゴールはホムンクルス達の方を向くと、にっこりとほほえみ彼らに話しかけた。

「では皆様、早速始めましょう。この世界を…そして未来をバラ色に明るくするために…!」



二人が元の世界に戻ってから数日後の朝、深く霧が立ち込める中ゼロは洞窟の入り口に立ち軽く深呼吸すると、ズボンのポケットから一つのリングを取り出しニヤリとほくそ笑んでいた。
そのリングは、別世界のライダー…仮面ライダーウィザードの使うフレイムドラゴンリングに似た形をしているが、魔法石自体は黒く邪念に満ちており、使われている台座も欲望をかき立てる程にまぶしい黄金で出来ている。
そのためなのだろうか、暗黒の力を たたえた非常に禍々しい力を秘めていた。

『ふわぁ~…お、主。朝から早いですな。』
「パワードタイガーか。朝早くからすまないが、ちょっと出かけてくる。」

洞窟内からだらしなくあくびをしながら現れたパワードタイガーの方を向き、ゼロは一言告げると獣道をスタスタと歩き始めた。
どうやら先程のリングと関係があるらしい。

『あの、一体どこへ?』
「戦力を調達してくる。俺達二人だけではたとえ天地がひっくり返っても、絶対竜の魔法使いは倒せないからな。」
『それは、そうですけど。それで、俺はどうしたらいいので?』
「お前は適当に町中を暴れ回っていればいい、そのうち向こうから竜の魔法使いがやってくるはずだ。後の事は俺にまかせろ。」

なるほど…と納得したパワードタイガーは、とりあえずもう一眠りするため洞窟内に引き返し、ゼロはそのまま城北町へと歩いていった。
その口元に邪悪かつニヒルな笑みを浮かべながら…。



時は過ぎ、午後1時25分。
この日エリカはソファーに腰かけサラやセシリアと「たちばな」で買ったドーナッツを食べながらのんびりとくつろいでいたが、途中から急に落ち着かない様子で窓から外をながめ難しい顔をしていた…いやそれだけではなく、体内にいるマギカドラゴンも外から流れる邪悪な気配を気にしているのか、先程から全く落ち着かないでいた。
二人もエリカのただならぬ事態にいやな予感を抱えつつ、彼女に声をかける。

「エリカちゃん、どうしたの?」
「さっきから外ばかりながめてて、何かあったの?」
「今、負の力が館の上空を通過しました…向こうから何だかいやな予感がします。」
『僕もそうだよ、エリカちゃん。それに、この邪悪な魔力…まさかとは思うけど、大昔に僕とゴダードで倒した敵がよみがえったのかも知れないね。』

エリカはマギカドラゴンの言葉に力強くうなずき、更に魔力を研ぎ澄ませて気配を感じ取っていく。
ヴァルムンクを手に入れ、更に魔力も大幅に向上したエリカは、最近になって負の力の流れを肉眼で見る能力を会得した。
そのため、今負の力がどこに行き着くのかが手に取る様にはっきりとわかるのである。
するとキイィィィィ…ンと言う音と共に、ある方角からすさまじい量の負の力が渦を巻いて流れ込んでいるのが感じられた。
負の力が流れるその先には、つい最近完成した大型複合レジャー施設『城北579』があり、しかも今日に限って片桐もおじの宇佐美も東京での警察幹部による会合に出席しているため城北署におらず、今戦えるのはエリカしかいないのである。

「この力…ただの力ではありません。セシリアちゃん、先輩をお願いします。」
「エリカちゃん、まさかその力って…かなり強いの?」
「はい、とてつもなく強力です。おそらく私でないと踏み込めないくらいのすさまじい魔力が、ものすごい勢いで一点に流れていってます。」
「そう、そんなに強大な力が…。わかったわエリカちゃん、もし何かあったら連絡をちょうだい!」
「えぇ、すぐにでも。」

エリカはセシリアに後をまかせ、玄関を抜け表へ出ると急ぎコネクトリングを右手に装着し、緊急でディスクを引き出すとそれにふれた。

『コネクト…プリーズ!』
「急がなきゃ、被害者が出ないうちに!」

そして魔法陣からマシン・アバタールを取りよせヒラリと飛び乗ると、城北579を目指して走りだした。
大事(おおごと)にならなければいいのだけど…
と心の中で祈りながら。

エリカの懸念していた通り、その城北579ではパワードタイガーと2体のホムンクルスが暴れ回っており、人々も右往左往しながら逃げ回っていた。
2体のホムンクルスはベルフェゴールが異世界から新たに送り込んだ最新型で、一体はコブラをモチーフとした全身に無数の鎖を巻きつけ武装している『チェーンコブラ』、もう一体はヘラジカをモチーフとした、屈強な体に大量の針を生やす『ニードルディアー』。
いずれも最新型にたがわぬ強さを見せつけ、パワードタイガーも2体のホムンクルスの活躍に満足していた。

『こいつぁすごいや、この2体がいれば竜の魔法使いなど恐れるに足らずだぜ!!…さぁ、もっと暴れろ!竜の魔法使いをおびき出すんだ!』
『了解でヤンス!』
『イエッサー!』

そして、三人が城北579のイベント広場にたどり着き、各々の得物を手に今まさに飛び込もうとしていた…その時。

ヂュンッ!ヂュンッ!

『ムッ…ようやく現れたな!』
『誰でヤンス!』
『…あれは!?』

足元に弾丸が命中し、完全に足止めを喰らいいきどおる三人が同時に振り向くと、その先に…いつの間にか現場に来ていたエリカが、ディザーソードガンを構えて仁王立ちしていた。
しかも、パワードタイガーから負の力を大量に感じているのか眉が片方引きつっており、いつもより威圧感が半端ない。

「待ちなさい、パワードタイガー。それまでです!」
『くっ、毎回毎回俺達の邪魔をしやがって!…と言いたいところだが、今日の俺達はいつもとひと味もふた味も違うぜ!』
「さては、また何か企んでいますね…いい加減あきらめなさい!」

パワードタイガーに啖呵(たんか)を切られた彼女は普段通りのゆったりとした足取りで歩み寄り、ディザーソードガンを左手に持ち替え右手にドライバーオンリングを装備し直すとディスクにふれ、ディザードライバーを出現させた。

『ドライバーオン…プリーズ!』
「今日こそは許しません…変身!」
『オーライ・ユータッチ・ヘンシーン!…』

そしてディザーソードガンを真上に投げ、すでに装備済みのディザードリングをディザードライバーにふれさせようとした…その時。

ドガアァァァァァン!!バリバリバリ!!

「…くっ、今のは一体!?」
『おい、今のは一体?』
『な、何でヤンスか…今のは!?』
『…む?』

双方の間に黒い雷が落ち、そして闇よりも暗い竜巻が勢いよく巻き起こり、それが数十秒も続いた。
周囲を派手に巻き込む竜巻に双方がひるみ、やがて竜巻が止むと…そこから一人の黒い色をした魔法使いが、右手に派手な黄金の装飾が施された巨大な鎌を手に現れ、それを肩にかつぎながらエリカの前に立ちふさがった。
新しい魔法使いの登場に、双方は戸惑いを隠しきれないでいる。

「…あれは?」
『ディザードに似ているが、まさか…!!』

『また魔法使いが増えやがった!ちくしょう!!』
『まさか我々の敵なのでは?』
『にしては、ちと様子が変でヤンスね…。』

見た目は別世界の魔法使い…仮面ライダーウィザード・フレイムドラゴンに似てはいるが、全体的に漆黒を基調としたカラーリングに金のフレームが映え、より禍々しさが強調されている。
また、腰に装備された『黒宝石ドライバー』には赤く長い爪状の縁がついた手形がついており、禍々しさが より一層増幅された 感じだ。
エリカは急遽真上に投げたディザーソードガンを受け取ると、黒い魔法使いに銃口を向け、にらみを利かせながら質問したが…黒い魔法使いはしゃべれないのか答える気配が全くない。

「…あなたは何者ですか?答えなさい!」
「……。」
「黙っていては何もわかりません、答えてください!」

すると、黒い魔法使いはエリカに左手に装備された黒いリングを見せながら自信満々に口を開いた。
しかも、大人びた女性の声と共に背後から強大な負の力を発しながら。

「私の名はデスザード…黒宝石の魔法使い。そして、ホムンクルスの主なり!!」
 
 

 
後書き
次回、epic10 「対決!ディザードVSデスザード」 
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