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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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夢の続き


「村を消して来い」
「はっ!」
「了解!」
「おおーん!」

零帝に命令され、3人は走り出す。

「何!?」
「村の人達は関係ないのにっ!ど・・・どうしよう!?」
「どうもこうもないよっ!」

突然の事に慌てるナツ、ルーシィ、ルー。

「血は好まんのだがな・・・」
「この声・・・オイ・・・ウソだろ・・・」

薄い笑みを浮かべて呟く零帝を驚愕の目で見るグレイ。
するとナツは覚悟を決めたように隠れていた場所から姿を見せる。

「もうコソコソするのはゴメンだ!」

そして頬をぷっくぅ~と膨らませる。

「邪魔しに来たのは俺達だァ!」

ナツの口から一気に炎が噴き出た。
それに気づいた零帝、シェリー、ユウカはそっちを向き、トビーはズボンのベルトをユウカに捕まれ強制的に止められる。

「もう・・・なる様にしかならないわね!」
「うんっ!」

ルーシィ、ハッピー、ルーも姿を現す。

「あの紋章!妖精の尻尾(フェアリーテイル)ですわ!」
「なるほど・・・村の奴等がギルドに助けを求めたか」
「何をしている。とっとと村を消して来い」
「お?」
「え?」
「へ?」
「何で?」

ナツ達が姿を現し「邪魔しに来たのは俺達だァ!」とまで叫んだのに、零帝は先ほどと同じ命令を出す。

「邪魔をする者、それを企てた者、全て敵だ」
「何でぇっ!?」
「てめえぇぇっ!」

先ほどまで微動だにしなかったグレイが突然、零帝に向かって駆け出していく。

「そのくだらねぇ儀式とやらを止めやがれぇぇ!」

そう叫ぶと冷気が溢れる両手を地につける。
そこから一気に氷が現れ、地面を伝って零帝に向かっていった。

「氷!?」

シェリーが驚いたように呟く。

「フン」

だが零帝は驚く事もせず、左手を地につける。
そしてグレイと同じように氷を地面に伝わせ、2つの氷がぶつかった。

「こいつも氷!?」

ハッピーが驚く。
そして2つの氷はほぼ同じ高さまで登り、パキィンと音を立てて崩れた。

「リオン・・・テメェ、自分が何やってるか解ってんのか?」
「え?」
「リオン?」

グレイが零帝に向かってリオンという名を発する。
それを聞いたナツとルーは小さく驚きの言葉を呟いた。

「ふふ、久しいな。グレイ」

そして零帝からもグレイの名が発せられる。

「知り合い!?」
「えぇっ!?」

まさか敵・・・しかも中心的存在とグレイが知り合いだと思っていなかったメンバーは当然驚く。

「何のマネだよ!コレぁ!」
「村人が送り込んできた魔導士がまさかお前だとはな。知ってて来たのか?それとも偶然か?まぁ、どちらでもいいが・・・」

仮面で顔は確認できないが、零帝の口元は笑みを湛えている。

「零帝リオンの知り合いか?」
「おおっ!?」
「早く行け。ここは俺1人で十分だ」
「はっ!」
「おおーん!」

止まっていた足を動かし走り出すシェリー達。

「行かせるかっての!」
「!待ってナツ!この空間は・・・!」
「よせ!ナツ!動くなっ!」

そんな3人を追う為走り出すナツをルーとグレイが止めるが、時すでに遅し。
キラキラと何かが煌めき、途端に冷気がナツを包み込む。

「うおっ」
「何!?」
「ぬあっ!がっ!うああっ!」

その冷気はナツを逃がす気はないようだ。
あっという間にナツの体を覆う。

「ハッピー!ルーシィを頼む!」
「あい!」
「ちょっ・・・」

ハッピーは即座に翼を出し、ルーシィの服を掴んで飛ぶ。
それを零帝は目で追っていた。

「つああっ!」
「!」

ルーシィ達から目線を外させる様にグレイが氷を零帝に向け、それを零帝は盾で封じる。

「くっそォ!動けねぇ!」
「ナツ!今助けるからねっ!」

ピキピキピキ・・・と音を立て、それはナツを包んでいく。

「ハッピー!ナツを見捨てるの!?」
「アイツは空間を冷気の魔法で包んでいた!あのままじっとしてたら、次はオイラ達が氷にされてたよ」
「でも・・・このままじゃナツが・・・」
「全員やられたら、誰が村を守るんだよぉ!」

ハッピーが叫んだ。
その目には涙が浮かんでいる。
ハッピーにとってナツは大事な相棒だ。そのナツを見捨てるなんて普段なら絶対にしない。
本当はナツを助けたいのだ。でも、そんな事をしていたら誰も村を守れない。

「ハッピー・・・ごめん・・・ナツを助けたいのガマンしてたんだね・・・」

だから・・・ナツを見捨てたのだ。
いつもなら見捨てないが、今はそれどころではない事をハッピーは解っているから。

「きっとナツなら大丈夫よ!火竜(サラマンダー)に氷なんて効くもんですか!」
「あいっ!」

そのまま2人は村へ向かって飛んでいく。

「隙を作って女と猫を逃がしたか・・・まぁいい・・・奴ら如きじゃシェリー達は止められんだろう」
妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士を甘く見るんじゃねぇぞコラァ!」

ナツが叫ぶ、が。

「あ」
「どぅおわぁぁぁぁぁっ!」

グレイがナツを覆っている氷を蹴り、そのままナツはゴロゴロゴロ・・・と凄い勢いで坂を下りていく。
ルーはナツを追いかけるかここに残るか迷い、何となく本能で身を顰めた。

「相変わらず無茶をする。仲間じゃないのか?」
「アレはその気になれば氷ごと中身を破壊できる魔法だろ」
「なるほど。それで俺の魔力の届かない所へやった訳か。やれば出来るじゃないか」
「いい加減先輩ヅラすんの止めてくんねぇかな」

グレイの顔に怒りが表れる。

「リオン。お前はもうウルの弟子じゃねぇ」
「お前もさ、グレイ。ウルはもうこの世にはいないのだからな」
(え?ウルさんって・・・そっか、命をかけて封じた悪魔って・・・)

ルーはグレイとリオンの方を物陰から見つつ、納得する。

「デリオラを封じる為に命を落としたんだ!ウルの残したものをテメェは壊そうとしてるんだぞ!」

グレイが叫んだ。
リオンは仮面をカポッと外す。

「記憶をすり替えるな・・・」

リオンが呟く。
薄い水色の髪に光の無い目、歳はルーと同じくらいだろう。

(何かあの人・・・雰囲気がティアに似てる。あんまり感情が見えないトコとか・・・あの氷みたいな冷たい目とか・・・)

ルーのリオンに対する第一印象はこれだった。
そしてリオンは驚愕の言葉を口にするのだった。







「ウルはお前が殺したんだ、グレイ」







「え!?」

思わず大きい声が出て、ルーは慌てて口を塞ぐ。
リオンはそれに気づいたようだが、気にも留めない。

「よくおめおめと生きていられたものだな」









一方その頃、グレイに蹴られ転がったナツは頭から落ちていた。
何とか起き上がり、顔から火を噴く。

「グレイ・・・あのやろォ・・・覚えてやがれぇ!」

こんな状況でもグレイへの怒りは忘れない。

「しっかし、火で溶けねぇってのはどうなってんだ!この氷!」

そう。
先ほどから左手に纏った炎を氷に当てているのだが、一向に溶けやしない。

「んな事言ってる場合じゃねぇ!早く村に行かねーとな!くそっ!走りづれぇっ!」










「ウルを殺したのはお前だ。グレイ」

リオンはもう1度言い放った。

「名前を口にするのもおこがましい」

そう言ってカッと目を見開く。
すると氷が飛び出て、グレイに直撃した。
突然の事に防御すら出来なかったグレイは吹っ飛ぶ。

「リ・・・リオン・・・」
「どうした?うしろめたくて手が出せんか?ならば邪魔をしないでほしいな。俺はデリオラを復活させる」

それを聞いたグレイはゆっくりと顔を上げ、リオンを睨む。

「させねぇよ」
「それでいい。久しぶりに手合わせをしよう」

リオンが持っていた仮面を放った。
そして右手を前に出す。

「アイスメイク、大鷲(イーグル)
「アイスメイク、(シールド)!」
(氷の造形魔法!?・・・でも、なんか違う・・・?)

リオンの右手から氷の鷲が造形され飛び立つ。
それをグレイの氷の盾が防ぐが、鷲は盾をヒュンヒュンと器用に避けた。

「お前は物質の造形が得意だった『静』のアイスメイク。俺の造形は生物・・・『動』のアイスメイク。動き回る氷だと忘れたか」
「ぐはぁっ!」

盾を避けた鷲が容赦なくグレイを襲う。
それから逃れる様にグレイは飛び出し地面を転がり、右の拳を左掌にのせた。

「アイスメイク、大槌兵(ハンマー)!」

造形された氷のハンマーがリオンの頭上に現れる。
だがリオンはそれに驚く事もせず、左手の人差し指と中指を揃えて空に向けた。

「アイスメイク、大猿(エイプ)

すると巨大な氷の猿が現れ、ハンマーを止めた。
猿の手首辺りに当たったハンマーはパキィンと崩れる。

「話にならん。造形魔法に両手を使うのも相変わらずだ」
(あ、そっか・・・さっきから感じる違和感は、リオンが片手で造形してる事か・・・)
「ウルの教えだろ。片手の造形は不完全でバランスもよくねぇ」
「俺は特別なんだ。ウルの力もとうの昔に超えてしまった」
「うぬぼれんなよ・・・」
「その言葉、お前に返そう。1度でも俺に攻撃を当てた事があったかな」

確かにそうなのだ。
先ほどからリオンの攻撃はグレイに当たる。だが反対にグレイの攻撃はリオンに当たらない。

「あの頃と一緒にするんじゃねぇ!」

ばすっとグレイは造形魔法の構えを取る。
そして両掌を地につけた。

氷欠泉(アイスゲイザー)!」

地面を突き破り、氷が空高く昇っていく。

「・・・一緒だ」

辺りを舞う煙の中からリオンの声がした。

「俺はお前の兄弟子であり、お前より強かった。俺は片手で造形魔法を使えたが、お前は出来なかった」

煙が晴れ、無傷のリオンが姿を現す。

「何も変わらん。互いの道は違えど、俺達の時間はあの頃のまま凍りついている」

ばおぉぉっと一気に煙が晴れる。

「ぐああああっ!」

油断していたグレイの足元から氷で出来たドラゴンが現れる。

「だから俺は氷を溶かす。塞がれた道を歩き出す為に」

どん、と音を立ててグレイの身体が地に落ちた。

「ウルは俺の目標だった。ウルを超える事が俺の夢だったんだ」
(何か語り出した・・・)

ルーはひょこっと顔を完全に出し、2人を見つめる。

「しかしその夢をお前に奪われた。もう2度ウルを超える事は出来ないと思っていた・・・だが、1つだけ方法があった」
「・・・」
(まさか、それが・・・)

グレイが起き上がる。

「ウルでさえ倒す事が出来なかった、あのデリオラを倒す事が出来たら・・・俺はウルを超えられる。夢の続きを見られるんだよ」

そう言うリオンの顔は、先ほどまでとあまり変わっていない。
だがその顔を見たルーは、何故だか寒気を感じた。

「正気か・・・!?そんな事が目的だったのか!?デリオラの・・・恐ろしさはお前もよく知ってるはずだ!」

ピクッとリオンが反応する。

「や・・・止めろ・・・無理だ・・・!」

それを聞いたリオンはカッと目を見開いた。

「うあああっ!」

その途端、氷がズガァァッとグレイを囲むように飛び出す。

「『止めろ』『無理だ』・・・だと?」
「がはっ!」
「あの時・・・俺達もお前に同じ言葉をかけた。忘れた訳ではあるまいな」
(あの時・・・?)

そしてリオンは、叫んだ。









「お前がデリオラなんかに挑んだから、ウルは死んだんだぞ!」










(!グレイがデリオラに・・・挑んだ!?そしてデリオラを命をかけて封じたウルさん、は死んだ・・・!?)

ルーが驚愕の事実に目を見開いている間にも、リオンの攻撃が続く。

「お前にウルの名を口にする資格はない!消えろ!消え失せろ!」










それからしばらくして、倒れるグレイの近くに1人の人が現れた。
それはリオンではなく、ルーシィでもなく、シェリーでもユウカでもトビーでもない・・・。

「だせぇな・・・ハデにやられやがって」

氷に体を覆われたナツだった。

「ナツ・・・お前・・・何で・・・ここに・・・」
「村がどっちか解んねぇから高いトコまで戻ろうとしたんだよ。そしたらルーが『グレイが大変だ』とか言って村まで走って行って・・・でもやっぱ村がどっちか解んねぇから戻ってきた。あっちだ!ホレ・・・行くぞ」

そう言うとナツはグレイの服を引っ張り、引きずるような形で前に進む。

「リオン・・・は・・・?」
「知らん。誰もいなかったし儀式も終わってた。くそっ!ルーシィが苛められてたら俺達のせいだぞ!」

どさっとグレイを背負うような形で持ち上げる。
グレイはふと、あの時の事を思い出していた。

『よせ!デリオラになんか勝てる訳ないだろ!お前じゃ無理だ、グレイ!』

叱るような顔つきでそう言うのは、師匠のウル。
続いて脳裏に浮かんだのは、この仕事に行く前、ハルジオンでのあの会話。

『俺はS級クエストやるんだ!』
『オメーらの実力じゃ無理な仕事だからS級って言うんだよ!』

それを思い出したグレイは小さく口を開く。

「ナツ・・・」
「あ?」
「俺にはお前の事・・・言えねぇ・・・何も言えねぇ・・・」

グレイは、泣いていた。
思い出したのだ。自分も昔、ナツとルーのような事をした事を。
そんな自分がナツ達に『止めろ』と言えるか?
・・・グレイが出した答えは『NO』だった。
それを聞き、グレイの涙を見たナツは叫ぶ。

「負けたくれぇでぐじぐじしてんじゃねぇ!俺達は妖精の尻尾(フェアリーテイル)だ!止まる事を知らねぇギルドだ!走り続けなきゃ生きられねぇんだよ!」

そう叫び、ナツは森の中を走り出す、が。

「くっそ~!余計走りづれぇ!」








一方こちらは村。
ここにはルーシィとハッピー、合流したルーがいた。

「・・・という訳でね。これから攻めてくる奴等は皆をそんな姿にした犯人なのよ。捕まえて元に戻す方法を聞くチャンスだわ」

それを聞いた村人たちはざわざわとざわめき出す。

「捕まえるって言ってもあの3人、多分魔導士だ。簡単にはいかないよ」
「うん。あのリオンって奴はかなりの実力者だし・・・」
「そうね・・・こっちの方が人数が多いとはいえ・・・魔導士はルー1人」
「え?」
「ルーシィは戦わないって設定なんだ」

するとルーシィは何かを思いついたように微笑んだ。

「いー作戦、思いついちゃった♪」










時を戻そう。
グレイとリオンの『久しぶりの手合わせ』が始まる丁度少し前・・・。
ガルナ島付近の海で、一隻の海賊船が存在していた。
見る限り普通に近い海賊船なのだが、船員はほぼ全員伸びており、舵を取る船長でさえかなりボロボロだった。

「あ・・・あんな島に何しに行くつもりでぇ」
「いいから舵をとれ」
「従わないのなら撃つわよ」
「ひっ」

船に乗る船員ではない女2人の威圧感に圧倒され、船長は小さく悲鳴を上げた。
何故怯えるか?
船員を倒し、船長をもボロボロにしたのがこの2人の女だからである。

「勘弁してくれよ・・・ガルナ島は呪いの島だ・・・噂じゃ人間が悪魔になっちまうって・・・」
「興味が無い」
「同じく」

船長の言葉をバッサリ斬り捨てる。

「悪魔の島だか何だか知らないけど、私達の目的はただ1つ」
「掟を破った者共へ仕置に行く。それだけだ」

そう呟く2人の女・・・。
ナツ達が掟を破った事を知られる事を恐れていた2人。




妖精女王(ティターニア)の異名を持つ、エルザ・スカーレット。

海の閃光(ルス・メーア)の異名を持つ、ティア=T=カトレーン。





2人は掟を破った者を仕置に行くため、ガルナ島へと向かうのだった。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
ガルナ島編もようやく中盤位でしょうか?
私的には早くファントム編のグレイVSジュビアが書きたいです。
あの勝負、個人的に好きなので。

感想・批評、お待ちしてます。 
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