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占術師速水丈太郎 五つの港で

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第十一章


第十一章

「それでなのですが」
「何でしょうか」
「お食事は採られましたか?」
 このことを尋ねてきたのである。
「それは」
「あっ、それについでですが」
「はい」
「こちらで考えがりますので」
 こう返す速水だった。
「ですから」
「それはいいのですか」
「はい、そうです」
 これが彼の返答であった。実際に彼は彼で考えているのだ。
「ですからお気遣いなく」
「わかりました。それでは」
「はい。それでなのですが」
「事件のことですね」
「そうです。現場は」
「もうすぐです」
 こう返答が返って来た。彼は速水より二歩程先に進んで歩いている。
「もうすぐその現場です」
「そうですか」
「おかしな事件です」
 三原は言いながら首を傾げさせた。速水はそれを後ろから見る。
「あれは」
「おかしな、ですか」
「はい、そうなのです」
 三原の言葉がいぶかしむものになっていた。そのうえでの言葉である。
「これがですね」
「ええ、それが」
「それが?」
「押し潰されていたのです」
 そうなっていたというのである。
「これが」
「押し潰されていたのですか」
「それも奇怪なことにです」
 三原の言葉にあるいぶかしむものがさらに強まっている。そうした言葉であった。
「あの、心臓がです」
「心臓がですか」
「後ろから押さえつけるようにして潰されていたのです」
「そうだったのですか」
「おかしな死に方ですね」
 あらためて速水に問うてきた。
「これは」
「心臓の部分だけをですか」
「そうなのです」
「ふむ。それは確かに」
 おかしいと。速水も言うのだった。彼の頭の中ではそれだけで彼が扱うのに相応しい事件であると納得するものがあった。
「妙なことですね」
「その現場がです」
 ここで立ち止まる三原であった。
「ここです」
「ここなのですか」
「はい」
 そこは丁度桟橋の真ん中であった。そこで死んでいたというのである。
「真夜中に傍にあった護衛艦で当直をしている若い士長が見つけまして」
「当直のですか」
「海上自衛隊では各艦で当直がありまして」
 これは海上自衛隊だけではない。どの海軍でも同じである。無論あの帝国海軍でも同じである。各艦自体が一つの部隊なのである。
「それで橋の入り口のところに場所を設けて一晩そこで交代で当直をしているのですが」
「その士長が見つけたのですね」
「はい、そうです」
 まさにそうだというのである。
「ですがその死体はです」
「急に出て来たのでしょうか」
「おわかりなのですか」
「ええ、何となくですが」
 今までの経験からの予測だったがその通りだった。しかし速水は彼の本来の職業や経歴を隠して捜査をしているのでそれは隠して応えるのだった。
 
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