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占術師速水丈太郎 白衣の悪魔

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3部分:第三章


第三章

「喜んで。それでは場所は」
「札幌です」
 警部は答える。
「すぐに航空便も用意してありますのですぐにでも」
「また話が早いのですね」
「行動は迅速に、ですよね」
 警部はうっすらと笑って答えてきた。あまり表情は見せないがそれでも笑みは浮かべていた。
「ですから。すぐにでも用意を」
「はい。それでは明日すぐに」
 速水はその言葉に応える。こうして彼は札幌に向かうことになったのであった。
 札幌は一面雪化粧であった。北の街は見渡す限り白く染め上げられていた。その白い世界の中で速水は警部に付き添われて街に一歩踏み出したのであった。
「銀色の世界ですか」
 速水は札幌のその街並を見て呟く。
「これはまた。いいものです」
「札幌の雪はまた独特でして」
「そうなのですか」
 警部の言葉に顔を向けて問う。
「東北の雪と比べても小さくサラサラとしているのです」
「粉雪ですか」
「はい。ですから他の銀化粧とはまた趣が違うのです」
「成程」
 速水はその言葉を聞いて納得したように頷く。
「魔人もまたその異なる銀化粧の中にいるというわけですね」
「そういうことです。一度酷いことになりましてね」
 警部はここで口を嫌悪感で歪ませてきた。そのうえで言おうとする。しかし途中でそれを止めたのだった。
「いえ、まあそれは後でね」
「現場で、でしょうか」
「はい。その元木の事務所があった場所に参りましょう」
 そう述べてきた。二人はまずは市内にあるかつて元木の事務所があったビルに向かう。そこに着いて階段をあがり部屋に入るとそこには何もなかった。がらんとして殺風景な広いだけの何もない場所がそこにあるだけであった。
「ここは」
 速水は部屋の中に入るとすぐにその顔に嫌悪感を漂わせてきた。
「何か?」
「気をつけて下さい、ここは」
「何かいますか!?」
「はい、それもかなりのものが」
 そう言いながら警部の前に出る。そうしてその右手にカードを掲げてきた。
「見えますね」
「いえ・・・・・・ってあれは」
 警部にもそれが見えた。見れば無数の悪霊達が部屋の周りを漂っていたのだ。生前と変わらない姿形と服装であったがその身体は透けており宙を漂っていた。
「悪霊ですか」
「そうです。どうやら彼等は本当に悪事の限りを尽くしていたのですね」
 宙を漂う悪霊たちを見上げて述べる。その右目で見据えていた。
「この邪悪な気配を見ていると」
「中々尻尾を現わしませんでしたけれどね」
 警部は速水の後ろで述べてきた。
「相当なことをしているのは。わかっていました」
「東京でお話したことですね」
「はい、そうです」
 その言葉にこくりと頷く。
「根っからの屑ばかりでした。死んだのは正直嬉しいですね」
「実は悪党というのは厄介なものでしてね」
 カードを掲げてまた言う。
「大抵は因果応報で死んでしまうのですがそうした輩に限って逆恨みをしてこうした悪霊になり果ててしまうのですよ」
「迷惑ですね、本当に」
「そうした仕事をすることも多いのですよ」
 襲い掛かって来た悪霊の一人にタロットカードを投げた。手裏剣のように切り裂いたそれで悪霊を消し去ってしまった。
「そちらの方もね」
「そうなのですか」
「ですからお任せ下さい。ですが」
「ですが!?」
「数は尋常ではありませんね」
 見れば周囲に無数の悪霊達が漂っていた。その中には元木の姿もあった。
「彼ですね」
 速水は一際大きな悪霊を見て言った。見れば悪相をした醜い悪霊が二人の上に漂っていた。
「元木、また出て来たのか」
 警部は彼の姿を見て呻く。苦い顔で苦い声を出してだ。
「どうしてまた」
「生きたまま心臓を出されたのが相当苦しかったのでしょう」
「あれですか」
「はい、御覧下さい」
 警部に対して言う。
「他の悪霊達も。姿が時々変わりますね」
「えっ!?」
 それを言われて悪霊達に目をこらす。今までは恐怖であまり確かに見てはいなかったがその通りだった。普通の姿と惨殺された最期の姿の二つが交互に現われていた。それは実に奇怪な姿であった。
 
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