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占術師速水丈太郎 白衣の悪魔

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4部分:第四章


第四章

「二つの姿が一緒に」
「ええ。御覧になられましたね」
「何故こんなことが」
「それだけ恨みを飲んだということです」
 そう述べる。述べながら元木達を見ている。
「殺された時にね」
「それじゃああの姿は恨みを現わした姿」
「はい」
 また警部の言葉に頷く。
「しかし。本当に無残ですね」
 あらためて悪霊達の死んだ時の姿を見て述べる。腕や首がない者や腹を裂かれた者、何処かが半分無い者等実に多かった。明らかに殺戮を楽しんで殺されたのがわかる。
「人間のやった跡ですがその力は人間のものとは思えませんね」
「やはりそう思われますか」
「はい。これも異形の者のようですね」
「やはりそうですか」
 速水のその言葉に応えて顔を暗くさせる。
「この事件は」
「他にもこうした事件は起こっていますか?」
 カードを投げて悪霊達を打ち消しながら問う。
「この事務所以外でも」
「はい」
 警部の返事はあまりよくないものであった。しかし速水はそれを聞いても表情を変えはしない。
「何件か。怪しいものがありまして」
「何件もですか」
 その言葉に思わず声をあげる。
「そのことについて詳しいお話を御聞きしたいところですね」
「はい。ですがそれは」
「ええ、わかっています」
 警部が何を言いたいのかはわかっていた。その言葉に応えて言う。
「ここを切り抜けたらですね」
「大丈夫ですよね」
「御安心下さい」
 涼しげな笑みを浮かべて言葉を返す。そしてまたカードを投げて悪霊を消していく。気付けば悪霊達は殆どいなくなってしまっていた。
「早いですね」
 警部は見る見るうちに悪霊達が消えていくのを見て声をあげる。
「あっという間に」
「慣れです」
 涼しげな笑みのままでまた述べる。
「これもね」
「慣れでこんなのの相手ができるんですか?」
「できますよ。そうした世界にいれば」
「あまりぞっとしない世界ですね」
 それを聞いて身震いしながら言う。
「そういう世界は。私怪談とかは苦手でして」
「じゃあ今出て来ているのは」
「正直勘弁して欲しいです」
 よく聞けば声も震えていた。本当に怖がっているのがわかる。
「こういうのは」
「もうすぐ終わりますので。ただ」
「ただ?」
「あの人は少してこずるでしょうね」
 おぞましい断末魔の姿を晒している元木を見て言う。
「妖気も尋常ではありません」
「根っからの悪党でしたからね」
 警部はそれに応えて忌々しげに述べる。
「それはまあ当然かと」
「けれどこの程度なら」
 また違うタロットカードを出してきた。見れば太陽のカードである。
「これで大丈夫ですね」
「あら、それには及ばないわ」
 しかしここで急に女の声が聞こえてきた。
「この声は!?」
「悪いけれど私が頂くわ、いいわね」
「いいも悪いも」
 速水はその言葉を聞いて苦笑いを以って後ろを見た。するとそこには黒い髪を上で束ねた切れ長の奥二重のブラックルビーを思わせる瞳を持つ白面の美女がいた。黒いスーツとズボンとコート、白いシャツに赤いネクタイを身に纏っている。彼女が誰か、速水はよくわかっていた。
「貴女も来られていたのですか」
「仕事でね」
 その白い整った顔に妖艶な笑みを浮かべて美女は答えた。
「ここにいる人達を何とかして欲しいって言われてね」
「残念ですがそれは」
「そうね。先にこうなってしまっては」
「あの」
 警部はその美女を見て速水に問う。
「あの方は一体どなたですか?お知り合いのようですが」
「お知り合いも何も」
 速水はうすらと笑って警部の言葉に応える。それからまた述べる。
「私の恋人です」
「それは嘘ね」
 当の美女からすぐにそれを否定する言葉をかけてきた。速水はその言葉を聞いて苦笑いを浮かべた。
「私はそんなつもりはないから」
「全く。困ったものです」
 その言葉にまた笑って返す。
「少しは素直になって頂かないと。私が焦れてしまいますよ」
「あら、私は平気よ」
 美女はうっすらと笑って答えてきた。
「私は花という花を無尽蔵に倒していくから」
「やれやれ。それは相変わらずですね」
「この街でもね。そうするつもりだけれど」
 不機嫌そうに悪霊と化した元木を見て言う。
「その前に一仕事しておかなければいけないわね」
「どうされるおつもりですか」
「生憎。遊んでいるつもりはないのよ」
 そう言うと両手に青い氷の刃を出してきた。それを元木に向かって投げる。

 
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