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占術師速水丈太郎 白衣の悪魔

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11部分:第十一章


第十一章

「極限まで出せばこうなります。これは人の仕業なのでしょう」
「本当ですか!?それは」
 警部はその言葉にいぶかしむ顔を見せてきた。
「これが人間の仕業だと」
「ただし」
 だがここで彼は付け加えてきた。
「その心は。人ではあって人ではない」
「といいますと」
「魔人です」
 彼は何かを吐き出すようにして言うのだった。
「人でありながら人の心ではないものも持っている存在」
「それが魔人であると」
「そうです。どうやら私をこちらに御呼びしたのは正解のようですね」
「ええ」
 答えたのは警部ではなかった。沙耶香であった。彼女は屍の黒い花びらをもう消していた。既に調べたいことは調べ終えたようであった。
「これは確かに魔人ね。花びら達が教えてくれたわ」
「やはり」
 速水は沙耶香のその言葉を聞いて自身の言葉が間違ってはいないことを確信した。その確信は彼にとっては驚くようなことではなかった。
「そうでしたか」
「妖気も感じるわ。尋常ではない程の」
「高田さん・・・・・・ではないですね」
 二人にとって共通の宿敵である高田依子の名を出してきた。しかしそうではないのは考えずともわかることであった。依子は無差別に人を殺すようなことはしない。必ずそこには何らかの意図、彼女なりの意図が存在するのだ。ましてこうした無残な殺し方はしない。必ず美しい殺し方をするのである。それは彼女の美学なのである。そうした意味で速水にとっても沙耶香にとっても依子の行動はわかるものであった。だがこの魔人についてはあまりにも不可解なものも感じていたのだ。
「これは」
「彼女だったらまだずっといいわ」
 沙耶香はそう述べる。
「無差別にこうした殺し方はしないから」
「そうですね。それだけは」
 速水もその言葉に同意して頷く。
「あの方については安心していいでしょうね」
「ええ」
 沙耶香もまた頷く。
「そうしたことに関してはね。それを考えると今度の相手は」
「厄介なものがあります」
 二人はそう言い合う。
「とにかく魔人であることはわかりました」
 警部も二人の話を聞いた後で言ってきた。
「ただ。ここでお話するのも何ですし」
「そうですね。では行きましょう」
 速水はハンカチで手を拭き続ける警部にまた述べる。
「いえ、戻ると言うべきですか」
「はい」
「会議室に」
 こうして二人は一旦会議室へ向かう。そうして一旦事故現場から離れるのだった。


 
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