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友人フリッツ

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第二幕その二


第二幕その二

「大好きだよ」
「ですからどうぞ」
 こう言うのだった。
「御願いします」
「有り難う」
 その花束を笑顔で受け取るフリッツだった。
「喜んで飾らせてもらうよ」
「はい、それでですね」
 さらにであった。スーゼルの言葉は続く。
「あの、今度は」
「今度は?」
「これを」
 言いながらだった。上を指差す。するとそこには。
「差し上げたいのですが」
「さくらんぼをかい」
「いけませんか?」
 指差した後で彼に問い返した。
「これは」
「いや、有り難い申し出だよ」
 フリッツはにこりと笑って彼女の今の言葉に返した。
「じゃあ御言葉に甘えて」
「受け取って頂けるのですね?」
「この真っ赤に熟したさくらんぼ」
 フリッツは笑顔でスーゼルに言葉を返しだした。
「是非受け取らせてもらうよ」
「有り難うございます」
「さくらんぼを二人で食べて」
「そうです」
「そして幸せになるんだね」
「御願いです、幸せになって下さい」
  スーゼルは言いながら側にあった脚立に登った。そのうえで上にあるさくらんぼを一つずつ摘み取る。そのうえで足元に来たフリッツに手渡すのだった。
「どうぞ」
「うん、有り難う」
 受け取った側からそのさくらんぼを食べるフリッツ。その味は見事なものだった。
 甘酸っぱく口の中を忽ちのうちに支配していく。それが一つではない、幾つもある。それが彼をいたく喜ばせたのである。スーゼルは次々とそれを手渡す。
「お好きなだけどうぞ」
「頂くよ。それに君も」
「私もですか」
「そうだよ。食べて」
 スーゼルを見上げての言葉である。
「そして二人で幸せになろう」
「私も幸せになっていいのですね」
「幸せは一人だけのものじゃないよ」
 フリッツらしい言葉だった。
「だから君もね」
「有り難うございます。それでは」
 彼女もその言葉に応えてさくらんぼを食べる。それは先程と変わらず美味しかった。
 二人でそのさくらんぼを食べて幸せになっているとだった。馬に挽かれた台車に乗ったダヴィッド達がやって来た。彼の他にフェデリーコ、ハネゾー、ペッペもいる。ペッペはその手に持っているバイオリンで陽気な音楽を奏でてそれを果樹園の中に聴かせていた。
「さあ皆さん」
 ペッペは明るく果樹園の中にいる皆に声をかけていた。
「陽気に歌いましょう」
「この世は楽しいことばかり」
「悲しみよさようなら」
 フェデリーコとハネゾーも能天気なまでに明るい。
「ですから楽しみましょう」
「明るく騒ぎましょう」
「やあフリッツ」
 ダヴィッドはスーゼルと一緒にさくらんぼを食べていたフリッツに気付いて声をかけた。
「そこにいたのかい」
「ダヴィッド、来てくれたのかい」
「うん、楽しませてもらっているよ」
 こう友人に返すラビだった。
「おかげでね」
「それは何よりだよ」
 フリッツは友人が楽しんでくれていると聞いてその顔を綻ばせた。
 
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