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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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無印編 破壊者、魔法と出会う
無印~A's 空白期
  22話:男子小学生と文学少女

 
前書き
 
今回は時間を少しさかのぼって。
もう一話、ハロウィンネタの話を入れようと思っていたんですが、オチがしまらないということで保留にしています。なので、先にこちらを乗せていただきます。
  

 
 

時間は少しさかのぼり、五月下旬。フェイト達と話をした日から一ヶ月経っていない頃の話だ。

場所は海鳴市内にある図書館。その中で俺は簡単な小説を読んでいた。
外は生憎の大雨。その量はまさに、鬱になりそうな程だ。窓から見えるその雨を確認しながら、俺は深いため息を漏らす。

「や~になるよな~…この時期の雨って」

頬杖をつきながらもう片方の手でページをめくる。

なのは、アリサ、すずかの三人は塾だ。俺は通ってない為、暇を持て余しているのだ。よって俺の思考は、久しぶりに図書館へ向かう、というものとなった。

久しぶり、というので分かると思うが、俺はこの図書館によく通う、いわば常連の一人だ。最近のゴタゴタで来る回数が減っていたが、前はそれなりに通っていた。
読んでいるのは大抵小説だったり漫画だったり。まぁ普通の小学生が読むようなものだ。

「ふ~……次、何読もうかねぇ…」

そう呟きながら俺は席を立ち、本を戻すべく元の本棚へ向かう。

「えっと……こいつは、この棚だったな…」

本に貼られている登録番号を確認しながら本棚へと戻す。
さて、次はどうすっか…ミステリーにでも手を出してみるか?

「ん~、別ジャンルも見てみるか…?」

と頭をかきながら歩いていると、本棚の本と本のほんのわずかな隙間から、人影が見えた。どうやら本棚に手を伸ばしているようだ。

(俺より二つぐらい年下…かな…?)

一瞬しか確認してないが、なのはよりも濃い茶色の髪がかなりしたの方にあったので、そう思った。
………ん?これは…?と一瞬視界の端に見えた文字に、意識が向かう。

「ハ○ー・○ッター……この世界にも存在したか…」

そう言いながらその本を手に取り、その表紙をまじまじと見る。昔読んだな~、懐かしいな……

「もっかい読み直してみるのもありかな…」

懐かしいものを見て、少し俺の表情は柔らかくなる。そして本を二冊程手に取り、時間がある事を確認しながら図書館のテーブルへ向かう。

その途中、先程の少女がいる本棚の列の横を通るのだが……さっき考えた事を俺は恥じた。

(車いす、だったか…)

そう、先程の茶髪の少女は車いすに乗っていたのだ。そうなれば当然背も低く見えてしまう。これはさすがに車いすを使う人には失礼だよな。

そう思いながら見ていると、少女が上に向けて手を伸ばしているのがすぐに分かった。どうやら本が取りたいらしいのだが、これも車いすのせいで届かないようだ。
その様子を見ていた俺は、さすがに見ていられなくなり、その少女へ歩み寄った。

「大丈夫か?」
「へ…?あ、えっと…」
「取れねぇんだろ?どれだ?」
「あ…あ、あぁ、えっと…アレです。その青い背表紙の…」
「っと…これか」

少女が分かりやすく指示してくれたので、すぐに目的の本を取り出すことができた。
その本を少女に渡そうと本人を見て、一瞬思考する。その結果、俺はその本を俺が持つ本の上に置いた。

「え…?」
「席、どこがいい?そこまで持っていくけど」
「あ、はい!ありがとうございます!」

俺の言葉に対し、少女はうれしそうに笑顔を見せる。その時、俺はある事を思い出した。

(この子…そうだ、あの時の…!)

そう、その少女こそあの時……一ヶ月前に勃発していた事件中に、俺が怪人の攻撃から守った、あの車いすの少女だった。


















「私、『八神 はやて』と言います」
「俺は門寺 士だ」

簡単に挨拶を済ませ、俺は少女―――もとい八神の車いすの横にいすを持ってきて座る。同時に一緒に置いた本の一番上にある本を、八神へ手渡す。

「ありがとうございます。ほんま、助かりました」
「別にいいさ。俺がしたかったことだからよ」

俺は八神のお礼の言葉にそう答え、背中をいすに預ける。

「それよりも、俺には敬語じゃなくていいぞ。見る限り同年代ぐらいだし」
「え…?失礼ですが、今年いくつですか?」
「俺は九才だが」

俺がそういうと八神は大きく目を開けた。

「え?同い年!?」
「あ、本当に同年代?」

そこで数秒の沈黙が俺達の間に流れる。
そして先に反応を見せたのは、八神の方だった。

「はぁ~…なんか変に緊張してたんやけど…少し年上だと思うとったから」
「それは悪かったな」

車いすの背中を預け、天を仰ぐようにため息をつきながら天井を見る。俺はそれを見ながら、また頬杖をつく。

「それじゃ、そうさせてもらうわ」
「おう」

俺はそれをそれを最後に持ってきた本に意識を集中させようとすると、何かに気づいた八神がまたしゃべりだす。

「あ、その本おもろいやつや」
「ん?読んだ事あるのか?」
「もちろんや!私はここの常連やからな!」

トンッと胸を張りながら拳を当てる八神。

「そうか、お前もか。俺もよく来てたんだけど、今まで会わなかったのが不思議な位だな」
「そうやねぇ」
「なんかおすすめの本とかあったりする?」
「あ、それだったらいいのがあるよ!」

と、八神はそういうと車いすを動かそうと手をかける。

「あ~、いいよいいよ。今はこっち読みたいから題名だけでいいよ」
「そう?じゃあいいけど、いいか?」
「おう」
「私のおすすめの本の題名は……」

必要なのかどうか分からない間を数秒置き、八神は俺を指差し宣言する。



「―――『天道語録』や!」


「………はい…?」

八神の一言に、俺は戦慄する。…今……なんと言った…?

「その本はやな、とある人の名言が解説付きで載せられた本なんや。これが色々役に立ったり、心に残ったりおもしろいんよ」
「…へ、へぇ~…そんな本、あったんだ~…」
「?大丈夫か?変な汗出とるけど?」
「ん、まぁ…大丈夫、だと思う…」

うん、本当は大丈夫なんかじゃない。
なんで『天道語録』がこの世界に存在するんだ?まさか俺が世界に存在することでできた、所謂イレギュラーだというのか?ていうか、本がイレギュラーとか……

「まぁそれは今度借りてみるかな」
「そうなん?…ん~…ほな、あたしはこれで失礼させてもらおうかな?」
「今雨だぞ?誰か迎えにくるのか?」

さすがにこの大雨の中、車いすの少女一人で自宅まで帰れるとは思えない。家族の誰かが迎えに来るのだろうと、俺はふんでいた。
しかしそれとは裏腹に、彼女は先程まで見せていた笑顔に影を落とした。

「……ううん。誰も来ぃひんよ」
「?誰もって…」

まさか、と思ったが、八神の顔がそうだと語っているようだった。

「私には…家族がいないんよ。だから、迎えなんか来ぃひんよ」
「………」

その一言は、俺の胸を抉るように体に染み渡った。
この年にして、家で一人。それはもう、計り知れない何かが、彼女にある筈だ。だが、彼女はそれをどこか隠すように、俺に振る舞っている。

「……それじゃ、私はこれで」
「っ、待て!」

八神はそういうとせっせと手を動かし、車いすを動かす。俺は慌てて車いすの後ろにあるハンドルを掴み止める。

「わわっ!?な、なんや!?」
「俺が送ってく!丁度傘持ってるし!」
「い、いいよ、そんなん!門寺君に悪いし!折りたたみ傘持ってるし!」
「それじゃ動きにくいだろ!俺の事はいいから!ここで会って、同じ常連の仲だ。俺自身別に用事がある訳じゃないし、送るぐらいなら大丈夫だから!」

俺は車いすの正面にまわり、八神の顔をまっすぐ見る。どこか寂しげな目が俺の言葉で少しばかり大きくなり、その後顔が俯く。

「……わかったわ。それじゃあ、頼んでもええやろか?」
「いいって言ってるだろ?遠慮すんな」

そして八神は顔を上げ、笑顔を見せながらそう言う。俺もそれを受け、笑みをこぼす。

「じゃ、本戻してくるから待ってろ」
「う、うん…」

そう言って俺は本を持って本棚へ向かう。


















「それにしても…まったく酷い雨だな」
「そうやなぁ……てか肩濡れてへんか?」
「これぐらいどうってことねぇよ」

俺はそう言って折り畳み傘を持ち帰る。前で車いすに座る八神の両手には、少し大きめの傘が握られている。

まぁ、普通に言えば俺の傘を八神が、八神の傘を俺が使っているだけの話だ。

「ごめんな、門寺君」
「ん?」
「いや、家まで送ってくれるなんて…」

顔だけこちらに向け、申し訳なさそうに言う八神。

「皆まで言うなって。さっきも言ったが、俺がやりたくてやってるだけだ」

そう、ただ俺の中に流れるお人好しの血が、八神を放っておけなかっただけだ。別に八神が気負う必要性はない。

「あ、そこ曲がるとすぐや!」
「よし、了解した」

と、そんな風に会話している間に到着したようだ。そこでふとある事が思い浮かぶ。

「そう言えば、お前夕食とかいつもどうするんだ?」
「それは勿論、私が作って食べとるよ。私一人やもん」

顔を前に向き直しながら呟く。その後ろ姿は、どこか寂しさを滲みだしていた。

「…………」
「…あ、ここやここ」

そう言われ見ると、結構豪華そうな一戸建て住宅がそこに建っていた。一人で住んでいるって言ってるが、家自体は家族向け。いや、当たり前か。子供一人で家の話云々など、できる訳がない。

「ほな、ありがとうな。ここまで送ってくれて」
「あ、あぁ…」

持っていた傘をそれぞれ交換し、八神はそのまま自宅へと帰っていく。
………くそっ!

「八神、ちょい待ち!」
「…?」

俺は八神にそう言い放ち、ズボンのポケットから携帯を取り出す。呼び止められた八神は丁度雨に当たらない場所にいるため、普通に顔だけ振り返る。

俺は取り出した携帯である番号に電話をかけ、携帯を耳に当てる。

『―――はい、こちら翠屋です』
「あ、桃子さん?今いいですか?」
『士君?どうしたの?』


















「あ、桃子さん?今いいですか?」

いきなり家の前で呼び止められ、振り返ると呼び止めた本人は携帯で電話をしている。
少し疑問を抱きながら、門寺君の行動を見ていた。

門寺君は何度か頷きながら、こちらを何度かチラッと見てくる。なんやろう?なんかあるんやろうか?会話が聞こえない分、少し気になってしょうがない。

そう思っていると、携帯を耳から離しボタンを一つ押すと、携帯を仕舞いながらこちらへとやってくる。

「え…?」

そう、私の家に向かってやってくるのだ。そして雨に当たらない場所に来ると、傘をたたむ。

「どう…して…?」
「自分で作ったのを自分で食うなんて、味気ないだろ?だからさ……―――」

そう言って、肩にポンッと手を置き、

「俺が飯作ってやるよ」

と言ってきた。











ジュージューと音が響く部屋。それを聞きながらじっと待つ私。

(…門寺君、料理できたんだ……)

外見に似合わず家庭的だなぁ…。そんな風に思っていると、台所から二つの皿を持った門寺君が現れる。

「できたぞ。ちょっと自慢の一品」

そう言ってテーブルに皿を置く。
その上にあるのは、ドーム状に乗せられたごはん達。その中には黄金色に輝く卵もある。
そう、それは何処にでもありそうなチャーハンだった。ただ、所々赤みを帯びている。

「門寺君、これは?」
「俺特製、キムチチャーハン。冷蔵庫の中にある材料でできるものを作ってみた」

ほい、と私に向けレンゲを渡しながら門寺君は私の疑問に答えてくれた。

「……なんか不安なんやけど…」
「なんだそれ。まずい飯でも作ったと思ってんのか?」
「いや、見た目に反して…ねぇ?」

先程思った事をそれとなく言うと、門寺君は不満そうに顔をしかめる。

「いささか心外だな。少し精神的に効いたぞ」
「あ、ご、ごめん」
「いいから。そこまで疑うなら食ってみればいい」

確かにそうや。疑うぐらいなら食えばいいんや。
そう思った私は受け取ったレンゲでチャーハンをすくい、口に運ぶ。

…………これは…!

「おいしい……」
「そうかい。どうやら口に合ったようでよかった」

頬杖をつきながら少し不機嫌そうに門寺君は言う。
確かにおいしい。塩加減とか、卵の柔らかさとか、キムチのピリ辛さとかが……絶妙でおいしい。

「……大丈夫か?意識ありますか?」
「へ!?あ、あぁ…大丈夫や。ちょっと予想外すぎて…」

門寺君の声で思考から戻ると、またチャーハンを口に運ぶ。

「ほれ、水もあるからな」
「あ、ありがと」

一口、また一口と食べていると、いつの間にか皿の上に何もなくなっていた。

「ふぅ。ほんと、おいしかったわ~。ごちそうさま」
「お粗末様でした」

というと、門寺君はいつの間にか食べ終え空になった自分の皿と、私の皿を持って台所へと向かう。

「あ、洗い物なら私もやるのに!」
「いいからいいから。お前はそこでじっとしてろ」

しばらくして洗い物を終えた門寺君が台所から出てくる。

「ありがとな、門寺君」
「あぁ。まだ時間あるし、軽く話そうか」

そう言って車いすのハンドルを掴み、ソファーの近くまでやってくる。

「さてと。お嬢様、少し失礼」
「え?」

いきなり何を?
そう聞こうと口を開こう思った時に、門寺君が私を抱きかかえた。それも私の足への負担を考えてか、片腕を膝裏に、もう片方を首にまわして抱える、いわばお姫様だっこや。

「へ!?ちょっ!?」
「まぁまぁ、動かないで動かないで。すぐ済むから」

そのまま門寺君は私をソファーの上に置いて、自分は私の隣に座った。

「ふ~、久しぶりだからか、以前より手間がかかったな。なまらない程度にやっておくべきかな」
「にしても驚いた~。門寺君料理できるなんて。しかもあんなおいしいの」
「ちょっとした事情があってな。料理ができないといけない状況に置かれて、仕方なく習得した」
「仕方なくって…」

どんな状況やねん。と心の中で突っ込んでおいた。

「にしてもお前本当に一人で住んでんだな」
「なんや、嘘やとでも思っとったんか?」
「む、そういう訳じゃ…ないかな」

と困った表情で答える。
ふと思い返し、一つの疑問を門寺君に投げかける。

「そういえば、なんでここまでしてくれるんや?私、門寺君に何もできひんよ?」

本を取ってくれて、家まで送ってくれて、さらにはご飯まで作ってくれる。
こんな私に、なんでここまでしてくれるのか?気になってしまった。

すると門寺君はさも当たり前のように、

「決まってる。お前を放っとけなかっただけだ」

と答えた。

「このご時世、一人で生きていくなんてそうそうできる訳が無い。ましてや同い年、小学三年生がだぞ?心配にならない方が可笑しいだろ?」
「そらぁ、まぁそうかもしれへんけど…だからってここまでする?」
「普通の人ならそうかもな。でも……」

そこで一旦言葉を切り、今度は私の方を向く。そして笑顔を見せて、口を開く。

「俺は人よりお人好しだってことだな」

その言葉に私は………

「……ぷっ、ふふふふ…!」

思わず笑ってしまった。

「なっ!なんで笑うんだよ!?」
「だって…自分でお人好しなんて言う人…ふふっ、会った事なかったから…」
「そんなんで笑うかぁ?」

そう言う門寺君も薄く笑みを浮かべている。


それから私達はしばらくの間、お互いの近況を話し合った。
最近出たこの本が面白かったとか、門寺君が住んでいるお家で一緒の女の子がドジな事をしたとか。門寺君の両親がもう亡くなってる事も、このとき知った。

「そういえば、最近人に助けられたんよ」
「ふ~ん……それは何?図書館でか?」
「ううん、道ばたでや。ちょっと不良もどきに絡まれて、そのときにや」
「何そのよくありそうなパターン」

そんな事も話しながら、長い夜は過ぎていった。

そしてやはり、物事には終わりというものがあり、それは唐突に訪れた。

『~~♪~~~♪』
「うおっ!?誰からだ…?ちょっとごめんな」

門寺君のポケットから、音楽が流れた。それを取り出しながら席を立ち、私から少し離れる。
離れる途中に開けた携帯の画面を見た門寺君の表情は―――若干眉をひそめた。

「もしもし、なんだ急に……え?桃子さん伝えてない?俺は友達の家で夕食をごちそうに……聞いてないって言われても…桃子さん絶対わざとだろ……
 え、ちょっ!?速く帰ってこないと『オハナシ』だって!?ちょ、待った!それだけは勘弁!わかった、分かった!すぐ帰るから、頼む!それだけは…!
 あっ、切れやがった…」

そう言うとすぐに携帯を仕舞いながら私の近くに寄ってくる。

「悪いな。急に家族の方から呼び出し食らっちまった。俺としてはもう少し話してたかったけどな。楽しかったよ」
「あ……うん、私も楽しかった」

門寺君は早口でそう言って私を抱え、車いすに乗せてくれる。そして一緒に玄関へ向かう。

「……よし、それじゃあな」

靴を履き、玄関の扉に手をかけながら門寺君は振り向く。すると何かに気がついた門寺君が少し難しい顔をした。

「なんだ、そんな顔しやがって」
「え……?」
「俺がいなくなるのがそんなに寂しいのか?」

そう言われて、初めて気づいた。確かに、私の心の中にそんな感情がある事に。まだまだ、一緒にいたい。ずっと話していた。そんな気持ちが。

「……たく、一生会えない訳じゃないだろ?」
「そうやけど……また私、一人になってまう…」

一緒に過ごした時間は短いのに、なんかすごく印象が残っている。だからまた、一人になってしまうのが嫌になってしまっている。
すると門寺君は体を私に向き直した。

「じゃあ、約束でもしようか?」
「え…?」
「今日は俺が飯作ったから、いつかまたここに来たら、今度はお前の飯でも食おうか」

軽い調子でそう言い、門寺君は笑いかけてきた。

「…うん、分かったわ。約束や!絶対おいしいご飯作ったるからな!」
「おう!楽しみにしてる」

そしたら門寺君は、手を差し伸べてきた。

「?えっと…?」
「ちょっとしたおまじないだ。手ぇ貸せ」

そう言われ、おずおずと手を出すと、門寺君は私の手を無理矢理な感じで握手し、さらに形を組み替え、手を離すと今度は拳を数回打ちつけてくる

「…今のは?」
「ある人の真似なんだけど、その人曰く『友情の証』だって」

友情の証……なんかうれしい、かな?いきなりやらされたけど、悪い気はしない。

「これで俺とお前は友達だな」
「へ…!?」

門寺君の発言に、私は驚いてしまう。友達…確かに、今まで学校にも行けへんかったし、友達になってくれるのはうれしい。でも……

「自分なんかが友達でいいのか、なんて考えてねぇだろうな?」
「っ、い、いやこれは…」
「難しいこと考えんなって。ま、一緒に飯食ってて友達じゃない、てのも俺的に気に入らないし」

はは、なんか読まれとるなぁ…なんでもお見通しって感じや……
そして最後に門寺君は、笑いながら扉に手をかけ、


「それじゃ―――またな!」


と言って私の家を出て行った。
またな……かぁ……

そんな事を考えていると、ふとある事に気づいた。

「門寺君の雰囲気って……どこかあの人に似てる、かな?」

『あの人』。あのとき、私を怪物から電撃から守ってくれた、あのヴァンパイヤのような姿と、マゼンダ色の姿をした姿のあの人。名前は―――『ディケイド』。

あの人の正体って、もしかしたら……

「いやいや、ないない」

そこまで考えて、私は自分の考えを否定した。ただ雰囲気が似てるだけだからって、そんなことを考えてしまうなんて……だいたい、あの人は大人だったんだから、同年代の子がなれるわけがない。

まぁ……なんにしても。

「楽しい一日やったな…」

雨上がりの少し暗い雲を見上げながら、私は小さく笑った。














その後、高町家では


「なんでこんなに遅くなったのかな?士君」
「ちょ、待てなのは!友人の家との距離が長かったんだ!戻ってくるのに時間がかかってたんだ!」
「O☆HA☆NA☆SHI…する?」
「待てって!頼むからまっ―――のあぁあぁぁあぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」


一夜限りの地獄絵図が繰り広げられていた。

 
  
 

 
後書き
 
この後、A`s編へ行こうかな、と。
ハロウィンの話はどうしようか迷ってますが、おそらくそのままいくと思います。

楽しみにしていてください
  
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