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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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A's編 その想いを力に変えて
  23話:新たな物語 始まりは襲撃より

 
前書き
 
A`s編、開始です
  

 
 
 
季節は移り行き、紅葉綺麗な秋から冷たい風流れ込む冬。

太陽が昇って、間もない朝頃。海鳴から程近い裏山にて、桃色の光がそこにはあった。

「リリカルマジカル!福音たる輝き、この手に来れ。導きの元、鳴り響け!」

詠唱を終えると、手に持つ空き缶を放り投げ、指先に魔力弾を形成する。

「ディバインシューター!シューーット!」

そのかけ声で打ち出される桃色の魔力弾。まっすぐに空き缶へと向かい、衝突する。

「コントロール…」

そう小さく呟くと、意識を集中させ魔力弾を操作する。
縦横無尽に動き回る魔力弾は、空中で回転する空き缶に何度も衝突し、地面へと向かわせないようにしている。

〈ⅩⅦ(17)…ⅩⅨ(19)…ⅩⅩ(20)…ⅩⅩⅠ(21)…〉
「アクセル…ぅっ…!」

小さく呟かれた言葉と同時に、桃色の魔力弾はスピードを上げる。

〈ⅩⅩⅩⅤ(35)…LⅩ(60)…LⅩⅣ(64)…LⅩⅧ(68)…LⅩⅩ(70)…LⅩⅩⅢ(73)…〉
「う…うぅっ…ぅ、うぅ…!!」
〈ⅩCⅧ(98)…C(100)〉
「はぁ…」

カウント数が百に至り、息を吐く。見上げる空には桃色の魔力弾がぶつかって空を飛んでいる空き缶が見える。

「ラスト!」

指先を大きく振り、自分の横まで落ちてきた空き缶をまた魔力弾と衝突させる。空き缶はぶつかった勢いでゴミ箱へと向かう。
だが、ゴミ箱のふちに当たってしまい、空き缶はゴミ箱へ入る事無く地面に落ちてしまった。

「あぁ……失敗しちゃった…」
〈Don`t mind, my master(良い出来ですよ、マスター)〉
「ほんと、上出来だろ。もう…俺心折れそうだよ…」
「にゃはは…ありがとう、レイジングハート。士君も…ありがとう、かな?」
「何故にそこで疑問形…」

俺の目の前でそれをやってのけた少女、なのはがこちらを振り向きながらお礼?を言ってくる。
なのははレイジングハートを首にかけ、先程使っていた空き缶のもとへ歩いていく。俺もなのはの持ってきていた荷物を持って後に続く。

「今日の練習、採点すると何点?」
〈About eighty points.(約八十点です)〉
「そっか!」
「俺なんかどうせ百回もいかねぇダメな奴だよ…」
「え、え~っと…大丈夫、いつかは私のようにできるから!」

空き缶をちゃんと捨てたなのはに荷物を渡しながら言うと、慰められた。

そう、あれから練習してんのに、百回どころか八十回にもいっていない。もうどうしたらいいんだろうか……五十回ゴミ箱ダイレクトシュート(さっきなのはがやってた奴の五十回版)ならできるようになったのに……

そう悲観しながら、俺達は学校に向かうため家へ戻った。


















その日も学校の方は滞り無く、いつも通りの睡眠授業。しかしながら今日ばっかりは何故か授業が終わる度にアリサに叩かれた。これが意外と痛かったりした。

そんな事より、時間は夜中。良い子は寝ててもいい頃だが、俺は違う。

「じゃあ、俺はここで上がります」
「あぁ、お疲れさま」
「気をつけて帰れよ」

場所は再び裏山。声をかけてくれたのは士郎さんと恭弥さんだ。
この頃、二人の…いや、今日はいないが美由希さんも含めた三人の夜の鍛錬に、少しだけ付き合い始めている。もっと俺自身が強くなる為だ。

ん?辛くないかって?
そりゃあ最初のうちは、この人達本当に人間か?なんて思っていた頃もあったが、今は何とかついていけている(途中までだが)。

で、夜の海鳴を走りながら家へ帰っている訳だが…

「こうも人が少ないと、逆に怖いものを感じるな」
[〈まぁよくありますよね。昼間はかなり人が多いですから〉]

念話で話しかけてきているのは、俺の腕についている相棒、トリス。毎度の事ながら、ついてきてもらっている。
そんな会話をしながら、いつも通りに帰るつもりだった。

そう、いつも通りに……

[〈マスター、魔力反応です!〉]
「何…?」

だが、その日常が急激に変化し始めた。
まわりの空気が変わり、極端に人気がなくなる。この感じは……

「結界の一種、か?」
〈そのようです〉
「トリス、その反応は?」
〈待ってください……っ!?マスター!反応がなのはさんの方へ、急速に近づいてます!〉
「っ、狙いはなのはか?」

トリスの言葉を聞き、俺は意識を集中させなのはに念話を繋ぐ。

[おい、なのは!聞こえてるか!?]
[士君?]
[今そっちに魔力反応が]
[分かってる。私は、迎え撃つつもり]
[……分かった。俺もすぐにそっちに向かう]

そう言い残し、俺は念話を切る。そして走りながら手首にあるトリスに手をかける。

「行くぞトリス。速めにな…」
〈了解です〉

トリスは光へと変わり、俺の手の中に。そしてそれを腰に当て、バックルを開く。
ベルトとなったと同時に現れたライドブッカーからカードを取り出す。

「変身!」
〈 KAMEN RIDE・DECADE!〉

走りながらカードを挿入し、ディケイドへ変身。その姿を変える。

「ディケイダーで一気に…」
〈マスター、新たな魔力反応です!後方50メートル!〉
「っ!?」

新たにディケイダーのカードを取り出そうと、ライドブッカーに手をかけると同時に、トリスから声がかけられる。

だが、起こったのはそれだけじゃなかった。
トリスの言葉を聞くと同時に、俺が長い人生で培った危機察知センサー(?)が、後方より殺気がある事を脳内に知らせてきた。

すぐその殺意に反応し、すぐライドブッカーを手に取りソードモードへ。後ろへ振り返りながら剣を振るう。

ギィイン!

目の前で衝突する金属達と、一瞬生じる火花。そしてその奥には、美しい桃色のポニーテイルを揺らす女性がいた。

「くっ!」
「っ…」

俺は体勢の悪い状態で攻撃を受けた為、立て直そうとライドブッカーを押し出し、相手側を後退させる。
飛び退いた桃色ポニーテイルは、持っていた剣を腰に括りつけられた鞘に納め、抜刀術のような構えを取る。

「(こいつは…魔導師か?)いきなり襲ってくるとは、さすがに失礼だと思うけど?」

俺は少しふざけた口調で言うが、相手側はそんな事を全く気にしていない様子だ。
それどころか、

「悪いが、お前と話す気はない……お前の魔力、貰い受ける」

とか若干脅迫めいた事を言ってくる始末だ。

「お~、怖い怖い。ていうか、魔力って奪えるもんなの?」
「―――ふっ!」

俺の質問という名のボールはキャッチされず、代わりと言わんばかりに彼女は俺に向かって走ってきた。いや、走るというより地面すれすれを飛んでいるようだ。
全く、会話のキャッチボールぐらいしっかりやって欲しいものだが……

「はっ!」
「くっ、この!」

再び鳴り響く金属音。鞘から抜かれ横に一閃された彼女の剣を、俺は軽く後ろに飛びながら受け止め、そのまま受け流す。

左足のみで着地し、そのまま左足で地面を蹴り彼女へと向かう。右足で踏み込み、今度はこちらが横に一閃。それを彼女は剣を斜めに構え、剣の峰を腕で支えながら防ぐ。

ぶつかった衝撃で双方の剣は弾ける。そして今度は同時に左から袈裟切りを放つ。当然お互いの攻撃は目の前で衝突し、そのまま鍔迫り合いが始まる。

「ぐぬぬ…!(こいつ、本当に魔導師か!?なのは達と全然タイプが違うぞ!)」

ここまで戦ってみての感想がそれだ。なのは達とは違う、近距離タイプ。俺が知っている中では、フェイトがそれに近いが、あいつだって遠距離魔法を使う。

だが目の前にいる彼女はどうだろうか?遠距離魔法を使えるなら最初の時点で使って、牽制しつつ接近するのが定石だ。

それがどうだ。彼女は使ってくるどころか、そんなそぶりも見せない。ただ敵を、剣で叩き斬る事のみ。
近距離戦闘においては、フェイト以上のものを持っているのは間違いない。その体から醸し出す雰囲気はフェイトやクロノ達とは違い、どこか剣士や武士と似通ったものを感じさせる。

「っ、はぁっ!」
「うおっ!?」

そんな事を考えていた所為か、先程とは逆に今度は俺が剣ごと押される。
押された事でできた隙を、彼女が見逃す筈がない。押した事で振り上がった剣を、力強く握りしめているのを、俺は確認する。

だが……

(なめるなよ!)

こっちだって近距離はお手の物。ただの魔導師に負けるのは、プライドが許さない。
押された事で後ろに下がっていた左足を軸に、素早く右足を反時計回りに移動させる。そして彼女が剣を振り下ろすと同時に、今度は右足を軸に左足を右足と同じように回しながら、体を捻りながら右斜めに剣を振り下ろす。

ガギィイン!
「なっ!?」
「でりぃやぁぁ!」

三度お互いの剣が衝突する。彼女は自分の一撃が防がれた事に驚いてか、声を上げるが、知ったこっちゃない。俺はそのまま剣を振り抜き、彼女の剣を弾く。
隙が見え、一撃与えようと左下から斬り上げる。

決まった、と思った瞬間、目の前にいた彼女の姿は視界から消える。斬り上げられた剣はそのまま何もない場所を切り裂く。

「くっ、どこへ…!?」
〈マスター、上です!〉
「っ!?」

トリスの声に反応して上を見上げると、正しく剣を振り下ろそうと落下している彼女の姿がそこにはあった。
俺はすぐにその一撃を剣で防ぐ。だが、落下のスピードも加わってか、先程よりも重くなった一撃に、少したじろんでしまう。

「ぐっ、このぉぉ!!」
「っ!」

しかしその一撃を、俺は体全体をさらに強化する事で押しのける。
弾かれた彼女は空中で静止し、こちらを見下ろしている。

「はぁ…はぁ…ったく、意外とやるじゃねぇか」
〈敵を褒めてどうするんですか〉
「別にいいだろ?褒めるぐらい」

少し息を整えながらトリスと軽くやり取りする。

「にしてもよぉ……あれ、でかいと思わねぇか?」
〈戦闘中に何考えてるんですか。バカなんですか?〉
「男としては当然の思考だと思うが?」

ふざけてこんな事を言っているが、新たに問題が発生したのもまた事実だ。

それは彼女が空を飛べる事。
ある程度は予想していたが、彼女は空を飛べる魔導師―――確かクロノは空戦魔導師とか言っていたか―――だった。飛行魔法を駆使し、空中での戦闘に長けている魔導士。

飛行能力のないディケイドのまま戦っても、不利なのは目に見えている。

「―――お前は、空を飛べないのか?」
「……え?」

そう思考していると、なんと彼女から声をかけてきた。俺は思わず驚愕の声を漏らす。

「先程までの戦い、非常にいいものだった。ここまで心躍る戦いは、本当に久しぶりだ」
「は、はぁ……」

いきなり語り始めた彼女の表情は、先程までとは違って少し緩んでいた。こっちが素の顔だろうか。いやはや、意外と硬そうな人だと思っていたが、こんな表情もするのか。見かけによらないとは、この事だ。

「だがこちらも、やらねばならない使命がある。こんな状況でなければ、どれだけ良かったものか……」
「………」

やらねばならない事…か……

「……わかった。だが俺も、ここで易々とやられている訳にはいかない。だから、今の全力で行かせてもらう」
「………」

俺はそう言いながら、ライドブッカーから二枚のカードを取り出す。
取り出したカードの内一枚をバックルへと挿入し、

「変身!」
〈 KAMEN RIDE・BLADE!〉

発動する。目の前に光のゲート、“オリハルコンエレメント”が現れ、俺はそれ向かって走り出す。
それを通ると、俺の体はマゼンダ色のディケイドから、銀や青を中心とした色合いの装備で、胸にスペードのマークがある“ブレイドアーマー”を装着した姿、
“仮面ライダーブレイド”へと変わる。

「姿が…変わった?」
「まだまだ!」
〈 FORM RIDE・BLADE JACK!〉

さらにもう一枚を挿入し発動。前に金色のエンブレムが現れ、胸のスペード紋章と重なると紋章は鷲の形を刻印された“ハイグレイトシンボル”となり、
マスクやアーマーの各部は黄金の“ディアマンテゴールド”へと強化された姿、“ブレイド・ジャックフォームへと変わる。

「トリス、オリハルコンウィング展開!」
〈 Open 〉

変身を終えた俺はトリスに指示を出し、勢いよく地面を蹴る。
背中に装備された、鷲をモチーフにした黄金の翼、“オリハルコンウィング”を広げ、俺は彼女へ向かって飛行する。

「飛んでくるか…」
「はぁぁぁああっ!」

彼女が驚いている隙に、俺はライドブッカーで彼女に斬りつける。
彼女はそれを剣で防ぐが、今はブレイドの強化形であるジャックフォームだ。ディケイドの時とは、パワーもスピードも飛躍的に強化されている。さっきと同じように防いだだけでは、止まる訳がない。
俺はそのまま剣を振り抜き、彼女を後退させる。

「くっ…!」

後退した彼女は空中で体勢を立て直し、剣を構える。

「へっ、同じ土俵に立ってやったぜ」

それを見た俺は仮面の下で薄く笑みを浮かべながら、ライドブッカーの切っ先を彼女に向ける。

「さぁ、こっからが本番だ……全力でいくぞ!」


  
 

 
後書き
 
さぁできましたA`s編!
皆さん、大変長らくお待たせいたしました。遂に念願のブレイド登場です!

俺はこのマッチングがしたかった!!どうしても姐さんと戦わせたかった!!

待たせてしまってほんと申し訳ない。これが書きたかったんですか……満足いただけたでしょうか?
次回は姐御とのバトルです。お楽しみに!
  
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