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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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無印編 破壊者、魔法と出会う
無印~A's 空白期
  21話:宿題?ナニソレオイシイノ?

 
前書き
 
できました空白期第二話。
  

 
 
 
〈やっぱり完全には決まりませんね?〉
「ん~…そうだなぁ……」

と、頭をかきながら地面に転がっている空き缶を見る。
この空き缶は、俺が今日やっている魔法の練習で使ったものだ。所々にへこみも見える。

「…もっかいやるか」
〈了解です〉

俺はそう言いながら空き缶を拾う。それをほいっ、と空中に放り投げ、ライドブッカーを構える。

〈 Shoot bullet 〉
「ふっ!」

足下にマゼンダ色の魔法陣を展開し、ライドブッカーから魔力弾を打ち出す。意識を集中させ、魔力弾の軌道を変える。

〈……Ten…………Twenty…………Thirty………〉
「くっ…!」

打ち出された魔力弾は何度も空き缶と衝突する。だがその速度は段々と落ちていっている。操作精度も同時に下がってきている。

「あっ……!」

だが、不意に魔力弾と当たった空き缶が思わぬ方向へ飛んでいき、地面に落ちる。
それを見た俺は、はぁ~、と深いため息をついて空き缶の元へ行く。

「やっぱりダメだな~、四十回まででどうしても止まっちまう…」
〈ディケイドの時とは勝手が違いますからね〉

そう。ディケイドの時の方が魔力の操作能力が格段に上がる。だけど生身でできない。その為生身でもできるように訓練をしているのだが……

「アイツはあんなだしな~…」

〈Forty……Fifty ! 〉
「フィニッシュ!」

そのかけ声と共に空中にある空き缶に魔力弾が当たり、弧を描きながらゴミ箱へホールインワン。見事な出来前だ。

「やった!」
「すごいよなのは!」
〈 Very good 〉
「ありがとうユーノ君、レイジングハート!」

栗色のツインテールを弾ませながら喜ぶなのは。どうやら目標の五十回リフティングからのゴミ箱入れが成功したようだ。

「こちとら五十にも行ってないのになぁ…少々へこむ……」
〈気長にいきましょう〉

トリスに励まされながら、俺はあのときの事を思い出していた。









事の発端は、クロノの一言からだった。

『君は、射撃魔法とかは使わないのかい?』
『………はい?』

フェイトとの別れの後、何度か取り合っている連絡の中で、クロノが唐突にそんな事を聞いてきた。
確かに、俺の中にはこの世界において魔法を使う為に最も重要な物、「リンカーコア」がある。その魔力を使って、ディケイドに変身しているのだから、なければないで困る。

逆に、そのリンカーコアがあるのなら、この世界の魔法も使えるのではないのか?というのがトリスの見解だ。そこで、なのはのついでにとクロノに魔法に関する教科書を受け取り、ユーノのご指導の元、やってみたにはみたのだが……

『魔力を銃口に集めて、固める感じで…』
『くっ…この……!』

とまぁ、かなり苦戦した訳ですよ。
難なくいけるのは、身体強化や魔力運用の基礎のみ。射撃系はこの三ヶ月かかって、ようやくここまできたぐらいだ。

ディケイドになればある程度は使える事はわかっているのだが、それでもなのは達が使う物には劣る。フェイトへのプレゼントとして打ち上げたアレだって、魔導士に対してはかなり低レベルの物。はっきり言って実践で使えるような物じゃない。

〈マスターの場合は、後は実践あるのみ、としか言えませんね〉
「その実践があまりできないから困ってるんだよなぁ…」

なのはと模擬戦をやる、という手があるが、それだと俺自身ディケイドにならないといけないから、なのはに危険が多いという事でしていない。
クロノからの話によると、ディケイドの状態だと常に魔力による身体強化が施されているらしい。まぁ子供の筋力のままあいつらと戦う訳にもいかないしな。

「士君、そっちは終わった?」
「んぁ…あぁ、まぁ一応な。そっちも終わってるみたいだし、帰るか?」
「そうだね」

まぁ、深く考えるのはよそう。楽しい夏休みもそろそろ終わるんだ。残りの間を、少しは楽しまなくては。
宿題?なにをおっしゃるかワトソン君。そんなもの、ものの数日で終わらせてやったさ!フハハハハ!小学校の宿題だのとるに足りんわ!

そう思いながら先に行くなのはに追いつくべく、少し小走り程のスピードで歩いていく。




















「夏祭り?」
「そう、夏祭りよ」

アリサのアポなし発言に、疑問形で返す。その言葉をオウム返しのように返すアリサは、ドカッと席に座り、目を閉じ腕を組む。

今俺達いつもの四人組は、翠屋にて夏の暑さを凌いでいた。それぞれの目の前にはケーキや飲み物が置いてある。因に俺の前にはコーヒーがある。

「そういえば行ってないよね、この四人だと」
「そうだね~…」

と、上からなのはとすずか。確かに、こいつらと馴れ始めてからは一度も行ってないかもな。昔は恭也さんや美由紀さんと一緒に行ってたりしてたけど、その後は二人の受験とかが重なってあんま行ってなかったな……

「だから四人で行ってみようって話よ」
「うん、いいと思う!」

そのままキャイキャイと女子トークを始めてしまった三人。さすがにあの輪の中に入る度胸はないので、俺はコーヒーを手に取りズズッとすする。

「あら、面白そうな話じゃない?」
「桃子さん、いきなり現れてくるのは止めてくれますか?心臓に悪いので」
「そんな風には見えないけど?」

突然現れ、笑いながらそう言ってくる桃子さん。この人、悪ノリすると一番怖いからなぁ……。ていうか、仕事はいいのか?

「大丈夫、今そこまで混んでないから♪」
「勝手に人の心読まないでくださいよ……」

はぁ、とため息をつく。昔からそうだよな、この人。ある意味怖い……

「そうだ!三人共、夏祭りに浴衣で行ってみたらどう?」
「「「それいい!!」」」

と、桃子さんの提案に身を乗り出して反応する三人。あぁ…そんなキラキラした目をしないでくれ…俺には眩しすぎるよ……

「アタシはパパに頼めばあると思うし…」
「私のも一着ぐらいはある筈…」
「お母さん、私のは…」
「大丈夫!いいのがあるわよ♪」

そして今度は桃子さんも混ざって話し始めてしまった。はぁ…また一人だ……

(……まぁ、こういうのも…ありかな…)

キャイキャイと楽しく話すなのは達を見て、俺は静かに微笑みながらそう思った。

「何よ士。勝手に笑って、気持ち悪い」
「ふざけてんのか、てめぇ…?」
「まぁまぁ…」


















ともかく、そういう訳で夏祭りに行く事になった訳ですけど……

「遅くね…?」

翠屋の前にて待ち合わせの筈なのに、俺以外誰も来ていないとは。アリサはともかく、真面目なすずかはおろか、すぐそこにいる筈のなのはまで来ないとは。

「たく……待つ事自体は嫌いじゃないからいいんだが…」
「士く~~ん!」

その声と共に手を振やってくる影。紫色の髪が走るたび揺れている。あれは……すずかだな。
俺の目の前につくと同時に、膝に手をついて肩を上下に揺らしている。

「ご、ごめんね……浴衣着るのに時間かかっちゃって…」
「あ、あぁ…大丈夫、大丈夫…」

ちょっと乱れた髪を整えながらそう言うすずか。
今のすずかの浴衣は、紫を基調としたものに、白い花…名前はわからないが、とにかく白い花がいくつもプリントされているものだ。腰には白の帯。

まぁ、なんと言いますか……

「似合ってるな、紫ってお前らしい」
「そ、そう?あ、ありがとう…」

俺の言葉に、すずかは少し顔を赤くして俯いてしまう。
そんな会話をしていると、俺達の横に黒いリムジンが止まる。うん、この車は、あれだな。
止まった車のドアが開き、オレンジ色の何かが出てくる。

「フフン…」
「アリサちゃん!」
「遅ぇぞアリサ。もっと速く来いよ」

出てきたのは勿論アリサだ。腰に手を当てて女子らしからぬ、仁王立ちにも見える立ち姿をしている。

「…………」
「……何か言う事ないの…?」
「あ…?」

少しムッとした顔で俺を睨んでいるアリサ。なんか言えと言われても…なぁ……

「似合ってるとかなんとか言いなさいよ!」
「あぁ、そういう?」

指を指し、少し顔を赤くしながら言う。そこで、俺は失礼ながらアリサの姿を観察する。
すずかとは違い、アリサのはオレンジを基本とした色地に、ひまわり模様が散りばめられた浴衣だ。帯はかわいらしいピンクだ。

「かわいいんじゃないのか?似合ってると言うより、かわいい」
「そこは普通ににかわいいって言えばいいんじゃないの、そこは…?」

感想言えっつったのお前だろ。
と心の中でツッコミながら深いため息をつく。

「後はなのはだけなんだが―――」
「ごめ~~ん!!」

俺の言葉を遮って翠屋の扉が開く。その奥から聞こえる声は、まさしくなのはの声だ。

「はぁ~……たく、遅いぞなの…は……」

そういいながら振り返ると、そこには眩しいぐらい白い浴衣を着たなのはがいた。
よく見ると、その白い色地に桃色に近い赤色をした花…おそらく桜の花だろうか?
それがいくつもある浴衣だ。

「…………」
「…あ、あの~…士君?どうしたの?」
「あ、あぁ…わ、悪い…」

やばい…ちょっと意識飛んでたか?何ボ~ッとしてんだ?

「きっとなのはの浴衣姿があまりに似合ってたから言葉がでなかったのね♪」
「なっ!桃子さん!?」

なのはの後ろにいた桃子さんが言った言葉に、俺は思わず慌ててしまう。それに応じてか、若干顔が熱い。もしかして、俺の顔赤くなってる?

「…そう、なの?」
「ぐっ……!」

首を傾げながらなのはは聞いてきた。さすがに桃子さんの言ったのが効いたのか、少したじろんでしまう。
……あぁ、もう!くそったれ…!

「……そう…だよ……悪いかよ…」
「い、いや……あ、ありがとう……」

頬をかきながら言う。なのはも恥ずかしいのか、顔を赤くしている。

「フフフ…」
「……フン!」
「あらあら♪」

その様子を見ていたすずかは微笑み、アリサは鼻であしらった。桃子さんはそんな二人も含めた俺達の様子を見て笑っていた。

「…ほ、ほら!全員そろったし、行くぞ…!」
「あ、うん…!」
「いってらっしゃ~い♪」

さすがに空気が変になっているのを感じた俺は、少し焦りながら夏祭りの場所へと足を進める。他の三人も慌ててついてくる。

「にしてもアンタの服の文字、何それ?海人(うみびと)?」
「あ?知らないのか?これ海人(うみんちゅ)って呼ぶんだぞ」
「知らないわよ!何処の言葉よ!?」
「沖縄だ」
「でもなんか字が格好いいね」



















そんなこんなで、やってきました夏祭り。
ついてみると人がうじゃうじゃいて動きづらい動きづらい。

それでもまぁ四人で色々回った訳ですよ。夏祭り恒例の金魚すくいでアリサに勝負挑まれたり、綿飴買ったり、たこ焼きでなのはが舌を火傷したり、等々。

「ふぅ~……楽しかったな…」
「にゃはは、そうだね!」

と、現在はなのはとベンチにて休憩中。目線の先には射的をしているアリサと、それを応援するすずかがいる。
そんな光景を見て、なんか微笑ましいな、と思ってしまう。中身が大人だからそんな事を思うのだろうか。

「士君、また笑ってる」
「え…?」
「翠屋の時と同じ感じで笑ってるよ?」

まずい、表情に出てたか…。そう思いながら口を覆うように手を当てる。確かに頬が上がってるな。

「士君のその笑顔、私いいと思うけどなぁ…」
「それは褒め言葉として受け取っておこう」

そういいながら俺は空を見上げる。そこには光り輝く星達。そんな中でも夏の大三角が一段と輝いている。いい眺めだな……

「…ねぇ士君。質問、聞いていい?」
「ん~…?」

視線を元に戻し横を見る。そこには当然、なのはがいる訳なんだが、その表情はどこか物寂しい雰囲気を醸し出していた。

「どうして私を…フェイトちゃんや私を、助けてくれたの?」
「……どうして?って言われてもなぁ…人を助けるのに理由なんかいるか?」

なのはの質問に、俺は頬をかく。そしてまた空を見上げる。

「…まぁ、強いて言うなら…そうだな……お前もフェイトも、俺にとって大切な存在だからだよ」
「大切な…存在…?」
「なのは達だけじゃない。アリサもすずかも…勿論士郎さん達も。俺にとって大切な存在だからな」

俺がこの世界に来て、本当に大切だと思う事ができた人達。本気で守ろうと思った人達の中の、一番身近な奴が…危ない事に首を突っ込もうとしている。それを見てみぬふりをするのは、俺にはできなかった。

「それを無くしちまうの、俺嫌だから。これが理由。……これじゃダメか?」
「…ううん。十分だよ」

俺の答えを聞いて、なのはは俺と同じように空を見上げる。そこには変わらない星達が、宝石みたいに光っている。

「綺麗だね……」
「あぁ、そうだな…」

こんな星空、昔(前世)じゃ見なかったなぁ……

そこに急に光が放たれる。その光は爆発し、綺麗な花を空に咲かせる。

「あ、花火だ!」
「あぁ、綺麗だな」
「私達が上げたのより、やっぱり綺麗だね…」

花火の光に照らされて、花火の色がなのはの表情を染める。

「…フェイトちゃん達、見てるかな?」
「どうだろうな?」

「士ー!アタシ七発で落としたわよ!」
「また勝負か?たく……俺に勝負を仕掛けた事を後悔させてやる」
「にゃはは…」



















「かぁ~!結局一勝二敗でアタシの負けか~!」
「フハハハハ、我に勝とうなど数年早いわ!」
「そこは百年とかじゃないの?」

夏祭りから少し離れた場所にある石階段に座りながら、まだ大きな音を立てながら俺達を照らす花火を見上げる俺達。
アリサの言葉に俺は三人より高い場所で腕を組んで笑い声を上げる。そこにすぐなのはのツッコミが入る。

「あ~~!でも楽しかったな~!」
「そうだね~」

ぐ~っと両手両足を石段に座りながらも、器用に伸ばしながらそう言アリサに、すずかが同意する。
すると夜ながら花火の光でよく見えるようになっている視界に、見覚えのある黒い車が止まった。運転席側の扉が開き、車から鮫島さんが出てくる。

「どうやら迎えが来たようだな」
「そのようね」

それを言うと同時に、アリサは石段から立ち上がる。俺達もそれに倣い立ち上がり、迎えにきてくれた車へ向かう。







「それじゃ、また明日ね」
「うん、また明日」
「それじゃあな」

アリサの車の窓が閉まっていき、出発していく。曲がり角を曲がって姿が見えなくなるまで、俺達は家の前で見届けた。

「……よし、戻るか」
「うん」

俺はそう言い、高町家の門扉をくぐる。なのはも俺の後に続く。










……………そう言えば、


「お前、夏休みの宿題の方はどうだ?」

「……………えっ……?」









その翌日からなのはの宿題に付き合わされたのは、言うまでもない。




  
 

 
後書き
 
それぞれの浴衣は妄想……だけという訳ではなく、実際のものだったり、なのはのは抱き枕(?)のやつだったり。
その他夏祭りの内容は作者の偏見や個人的なものがほとんどです(苦笑)

空白期は後二話ぐらいやろうかと。お楽しみを。
  
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