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コシ=ファン=トゥッテ

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第一幕その十三


第一幕その十三

「よし、大丈夫だ」
「僕達は勝ったぞ」
「どうかな。だから最後の最後までわからないぞ」
 アルフォンソの態度はここでも変わらない。
「まだまだな」
「まだそんなことを言うんですか?」
「もう僕達は勝ってるのに」
 フェランドもグリエルモも得意そうに笑っている。
「僕達はもう勝利を収めていますよ」
「大勝利じゃないですか」
「笑っているけれど自分達で理由はわかっているのかい?」
 アルフォンソは楽しそうに笑っていた。
「どうして笑っているのか」
「勿論ですよ」
「わかっているから笑うんですよ」
 フェランドもグリエルモも余裕で笑い続けている。
「それだけですよ」
「お金の用意はできていますね」
「おいおい、君達はまだおしめをしているのかな?」
 アルフォンソはまた笑ってみせてきた。
「これからだよ、明日の朝まで時間はあるのに」
「まあわかってますよ」
「それはね」
 二人は余裕のまままた話す。
「僕達も軍人ですし」
「その誇りにかけて誓った通りに続けますよ」
「それではです」
 アルフォンソはそれを聞いて二人に告げるのだった。
「ここを出て庭に行って」
「庭に?」
「あそこで?」
「そうです。そこでお待ち下さい」
「それじゃあそれで」
「行きますけれどね」
 二人はそのまま向かうのだった。フェランドはそこで話した。
「僕達の恋人からの愛のそよ風は心に優しい慰めを与えてくれる。愛の夢に育まれたこの心にこれ以上に望むものはありません」
「そうだよ。じゃあフェランド」
「行こう」
 もう勝利を確信してそのうえで庭に向かうのだった。しかし一人になったアルフォンソはにやにやとしてそれでまた呟くのだった。
「まあすぐにわかるさ。女性の操があるかどうかはね」
「あれ、御二人は?」
 ここでデスピーナが戻ってきたのだった。
「どちらに行かれたの?」
「ああ、庭にね」
 にこにことなって彼女にも話す。
「行かれたよ」
「そうなの。お嬢様方も同じよ」
「ふむ、それは都合がいい」
 アルフォンソはそれを聞いてまた笑うのだった。
「実にね」
「そうね。庭に庭だから」
「そしてだ」
 アルフォンソはここでデスピーナに問うてきた。
「どう思うかね?」
「どう思うかとは?」
「この劇の結末だよ」
 彼が問うのはこのことだった。
「この劇は。果たしてどうなると思うかね?」
「私なら笑ってるけれどね」
 こう返すデスピーナだった。
「この状況でだと」
「笑えるんだね」
「だって今の彼氏がいなくなっても次がいるじゃない」
 実にあっけらかんとしている。
「そんなの。一人消えたら二人捕まえないとね」
「君本当に十六かね?」
 アルフォンソもそれが少し信じられなくなった。目をしばたかせてさえいる。
「随分と恋愛経験豊富なようだが」
「十歳で告白してされて」
 子供の頃からだった。
「もう三桁はいってるわよ」
「ううむ、三桁か」
「そうよ、これでわかったわね」
 あらためて話すデスピーナだった。
「私の恋愛経験。このことなら誰にも負けないわよ」
「見事なものだ」
「下は八歳から」
「これは幾つの時の話だね?」
「十歳の時よ。その時十三歳の彼氏と二股だったのよ」
 のっけからそれだったのである。
 
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