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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第八十八話




「姫はちゃんとやっているかい?」

「ん? あぁ猪々子か」

 食堂で昼飯を食べていると猪々子と斗詩がやってきた。ちなみに袁紹の訓練から既に五日が経過していた。

「途中で諦めようとしてたけど、太るのかと言ったら俄然やる気を出してたな」

「姫……乗せられすぎだよ……」

 斗詩が頬を引くつかせたが俺は気にしない気にしない。

「あ、そうだ兄貴。美羽様から招集命令が来ていたぜ」

「美羽が?」

 はて、何だろうか?

「分かった。直ぐに行くから」

 俺は焼き飯を口に入れて大急ぎで玉座に向かった。

「盗賊の討伐?」

「うむ、荊州との国境付近の村々を襲う輩がおってのぅ。軍を派遣しようにも国境付近じゃから向こうが戦を仕掛けてくると勘違いをしてはならんからの」

「それなら荊州側に通告したらいいんじゃないのか?」

 そこへ七乃が申し訳なさそうに口を開いた。

「実は荊州側には何度か使者を送っているんですよ長門さん。でも荊州を治めているのが関羽なんです」

「……大体読めてきたぞ。もしかすると関羽は俺らが侵略しようと企んでいるから相手にしないと?」

「……その通りです。しかも使者を斬りつけようとまでしたので……」

 ……おい北郷。関羽の手綱はしっかりと握っておけよな。

「それで荊州側の法正という軍師が少数なら構わないと言ってきたので少数精鋭でやる事にしたんです」

「それに呼ばれたのが俺だと?」

「済まんのじゃ長門。雪蓮や祭とかが暴れては国境を越えそうで任せられんのじゃ」

 美羽はそう言った。ちなみに玉座にいた雪蓮と祭は口笛を吹いていた。お前らな……。

「分かった。なら此方で編成してみるから」

「頼むのじゃ」

 結果、盗賊の討伐には俺、袁紹、猪々子、斗詩、白蓮、夏蓮、蓮華、雪風の八人で行く事になった。

 霞や桜花を連れて行こうかと思ったけど、二人は曹操の対策として健業から離れるわけにはいかなかった。恋も同様である。

 最初は夏蓮と蓮華はいなかったが、夏蓮が「たまには暴れたい」と言ってきたので仕方なく同行を許可して夏蓮の抑え役として蓮華も来させた。

 蓮華の出陣に思春は難色を示したが、「蓮華の実践経験を積ませるため」と思春を納得させた。流石に思春は劉備の出方を探るために蜀へ向かわせないと判断したからだ。

 まぁ途中まで同行出来るからそれで勘弁してくれよ。

「さて、それじゃあ行くか」

 俺は馬に跨がって皆に言う。皆も馬に乗っている。

「じゃあ美羽、後は頼んだよ」

「うむ、長門も済まんのじゃ」

 俺は気にしない気にしないと言って、国境付近まで出発した。

「……これは酷いな……」

 国境付近の村に到着すると、村はほぼ廃村に近い状態であった。それでも村人はおるらしく村長が俺達を出迎えた。

「盗賊の住処とか分かるか?」

「へぇ、荊州に近い砦を住処としています」

「砦? そんなのあったのか?」

「へぇ、十五年くらいまでは孫呉が警備していましたが砦が別のところに築かれてから廃れています。盗賊達はそこを住処にして儂らの村を……」

 そこまで言った時、村長の肩が震えていた。悔しかったんだろうな……。

「分かりました。我々が殲滅致します」

「おぉ、ありがとうございます」

 村長が俺達に頭を下げた。そしてそのまま砦に向けて出発した。

「数は約五十……腕が鳴るわね」

「無茶しないで下さいお母様」

 ウキウキしている夏蓮に蓮華はそう釘を刺していた。

「し、見えてきた」

 白蓮がそう言って目の前の小規模の砦を見つめる。ちなみに近くの草むらで隠れている。

「どうする長門? 正面突破をするのか?」

 蓮華が俺に聞いてきた。

「いや……正面突破したら盗賊は散り散りに逃げるだろう。俺達は奴等を殲滅しなくちゃならんよ」

「……思春がいれば……」

「無いものねだりしても仕方ないぞ蓮華。思春もわざわざ盗賊の数を調べてくれたんだ」

 盗賊の数が五十だと分かったのも思春がわざわざ調べてきたおかげだ。

「雪風は弓矢での狙撃に専念してくれ。護衛は白蓮だ。頼むぞ」

「はい、お任せ下さい」

「うん、任しておけ」

「猪々子と斗詩は砦の裏から。俺達が正面から攻撃するから後ろから奇襲してくれ」

「分かったよ兄貴」

「分かりました」

「それで私はどうするのですの?」

「……今言っただろ? 俺達と正面から攻撃するんだ」

「な、何ですってッ!?」

『(聞いてなかったのか?)』

 袁紹の発言に全員がそう思ったのであった。

「まぁええや、それじゃあ作戦を始める。皆、死ぬなよ」

『おぅ』

 皆は頷いて所定の位置についた。

「んじゃやるか」

「ウフフフ……」

「……はぁ……」

「何で私がこんな事を……」

「……大丈夫かな……」

 俺は溜め息を吐いたがそれは直ぐに杞憂に終わった。

「こ、江東の虎だッ!?」

「何で奴が此処にいるんだッ!!」

「逃げろッ!!」

「アハハハハハッ!! 逃がすわけないでしょッ!!」

「……怖いなおい」

 俺は夏蓮を見てそう思った。何せ夏蓮は盗賊の返り血を多数浴びて鬼みたいな表情をしているからな。

「くそがァッ!!」

「ふッ!!」

「がぁッ!!」

 一人の盗賊が俺に斬りかかろうとするがそれを避けて摺り足で移動して袈裟斬りで盗賊を斬り倒した。

「きゃッ!!」

「袁紹ッ!!」

 その時、袁紹が血で滑って転けた。勿論盗賊はそれを見逃さない。

「死ぬやァッ!!」

「ひいィッ!?」

「ちぃッ!!」

 俺は右手に氣を送って落ちていた盗賊の短剣を拾って盗賊に投げた。

「くぎゃッ!?」

 短剣は盗賊の左こめかみに命中した。







 
 

 
後書き
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