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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第八十九話

 
前書き
おかしいな、袁紹にはフラグ建てるつもりはなかったのに……。 

 





 全く、名家である袁家の私が賊の退治をしなければなりませんの?

 それに太ったからと言って私を死ぬ程だと思う訓練をさせたあの王双はとんでもない人ですわ。

「早く戻ってお風呂にでも入りたいですわ」

 鎧の重さで身体が汗臭くなりますし、早く帰りたいですわ。

「きゃッ!!」

 いたた……盗賊の死体から流れ出た血で滑りましたわ。今日は運が悪いですわね。

「死ねやァッ!!」

「ひいィッ!?」

 それを見ていた一人の盗賊が剣を抜いて私に襲い掛かろうと……し、死にたくありませんわッ!!

「ちぃッ!!」

 その時、左の方向からそのような舌打ちが聞こえましたけど今の私に確認する余裕はなく、目を瞑る事で精一杯ですわ。

「くぎゃッ!?」

 そして盗賊の短い悲鳴が聞こえて顔に何かベチャッと付いた。

「な、何ですの……」

 私の顔に付着していたのは盗賊の血で盗賊の左こめかみに短剣が突き刺さっていましたわ。

「大丈夫かッ!!」

 そして私に駆け寄る男がいましたわ。


「大丈夫かッ!!」

「え、えぇ。私は大丈夫ですわ」

 俺の言葉に袁紹は少し慌てた様子でそう返事をした。まぁ無事ならいいか。

「さて状況はっと……」

 辺りを見渡すが、そこは盗賊の死体がゴロゴロと転がっていた。う~ん……夏蓮の奴め、暴れすぎだ。

 後の事を考えてやれよな……。

「長門」

 その時、南海覇王を鞘に納めた蓮華がやってきた。

「おぅ蓮華。そっちの状況はどうだ?」

「既に終わったわ。盗賊の生き残りは無しよ。全て母さまが処理したわ」

「……後の事を考えろよ夏蓮……」

「無理ね。母さまが戦闘状態に入ったら止められないもの」

 まぁそれはそうだけどな……。ま、終わった事だから仕方ない。

「なら村に戻るか」

 俺達はまだ戦いたそうな目をしていた夏蓮を引き摺って外にいた雪風と白蓮に合流して村に戻った。

「王双様、この度はありがとうございます」

「いやいや。本当ならもっと早くに来れば良かった」

「いえいえ、王双様のせいではありませね」

 村長はそう言って俺達に一晩の宿を提供してくれた。

「ふぅ、取りあえずは盗賊退治は終了したな」

 小さい部屋だが一晩だけなので問題はない。

コンコン。

 ん? 誰だこんな時間に?

「誰だ?」

「わ、私ですわ……」

 扉を開けるとそこには袁紹がいた。いきなりどうしたんだ? しかも少し頬が赤いしよ。

「どうしたんだ袁紹?」

「……今日の事ですわ」

 今日の事……あぁ盗賊から助けた事か。

「あの時は……その……ありがとうございましたわ」

 袁紹はそう言って俺に頭を下げた。……おいおい、かなり怖いんだけど……明日は雨、いや雪かもしれんな。

「頭を上げろよ袁紹。お前が頭なんか下げたら驚くぞ」

「……そうですわね。でも、私は貴方に助けてもらったのですから頭を下げるのは当然ですわ」

「そ、そうか……」

 凄く調子狂うなマジで。袁紹に何があったんだ?

「私、今まであのような場面で助けてもらったのは猪々子さんと斗詩さんくらいで男の人は初めてでしたの」

 袁紹はそう言って俺に近寄る……ん?

「袁紹……お前酔ってるな?」

 袁紹から酒の匂いがしていた。恐らく此処に来る前に酒でも飲んだのだろう。

「酒に酔わないと此処まで来れませんわ。私、あんな華麗に助けて頂いたのは初めてですわ」

 ……普通に助けたはずなんだが、袁紹の眼は何かおかしいな。

「それは違うぞ袁紹」

「袁紹とは呼ばないで下さいませ。麗羽で宜しいですわ」

 そう言って俺に寄り掛かる袁紹……もとい麗羽である。

「と、兎に角落ち着け麗羽。ほら水でも飲んで冷静に……」

「えぇいままよですわッ!!」

「んむッ!?」

 麗羽がキスをしてきた。勢いあまってカチンと歯と歯がぶつかったが麗羽はそれを気にせず自分の舌と俺の舌を絡み合わせてきた。

 ……もうこうなると腹括るしかないよな。俺も麗羽の舌に絡み合わせるが不意に麗羽が止まってキスを止めた。

「ん?」

 よく見れば顔は徐々に真っ青になってきた。それに口が膨らんできたが……まさかッ!!

「麗羽ッ!! 桶は此処だッ!!」

 俺は直ぐに麗羽に木の桶を差し出す。麗羽はそれを見て安心したのか、膨らんでいた口は大雨で防波堤が耐えきれなかったように決壊した。

 まぁ戻したのである。下品に言えばゲロ吐いた。

 てか麗羽、飲み過ぎだ。

「ほら大丈夫か?」

 俺は麗羽の背中を撫でつつ聞くと麗羽はゆっくりと頷いた。そして置いてあった手拭いで汚れていた口の周りを拭いてやる。

「全部出したか?」

「(コクコク)」

 頷いているから全部出したのだろう。

「水を持ってきてやるからな」

 俺は井戸がある場所まで行って水を持ってくる。水を差し出された麗羽は水を飲み干した。

「……申し訳ありませんわ」

「気にするな麗羽」

 申し訳なさそうにする麗羽に俺は頭を撫でてやる。麗羽も恥ずかしそうではあったが嬉しそうであり俺に身体を寄せ付ける。

 そして数分、撫でていると麗羽が寝息が聞こえてきた。恐らくは酒のせいだろう。

「全く……」

 俺は溜め息を吐いて麗羽を備えてあった寝台に寝かす。

「そういや片付けないとな」

 俺は麗羽がした後片付けをしてから椅子に座り、机にうつ伏せをする感じで寝た。何せ寝台は麗羽が占領しているからな。

「寝よ寝よ……」

 瞼を閉じて睡魔に襲われるのであった。







 
 

 
後書き
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