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DQ1長編小説―ハルカ・クロニクル

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Chapter-1 第2話

Dragon Quest 1 ハルカ・クロニクル

Chapter-1
旅立ち~ガライの町 
第2話

「まずは旅支度、だな」
ハルカが城から出て、最初に向かった場所、それはラダトーム城下町である。
アレフガルド王国の中で最もにぎわっている町である。
特に大通りは食料品店、食堂、衣服を売っている店、日用品を売る店、診療所などが揃っており、たくさんの人で賑わっている。
何かのご加護が強いのか、竜王軍の襲来は全く来ない(城にはローラ姫誘拐で来たのに)。だからといって、人々は全く怯えていないわけではないが。
そこには武器や防具を売る店も旅に必需品ももちろんあった。
「さて、武器と盾を調達しなければ、ね」
ハルカはまず、武具を売る店を訪れた。
「おお、お前は確か国王から竜王討伐を命じられた者か」
武具屋の親父はハルカを見るなり、そう言った。武具屋の親父は恰幅のいい中年男性であった。
ハルカは武器や防具を見る。銅の剣は所持金が足りなくて買えない。盾も買えることは買えるが、まずは武器を優先すべきだとハルカは考えていた。
「ええ。…うーん、僕の所持金じゃあまりいいものは買えませんね」
ハルカの言葉に武具屋の親父は豪快に笑った。
「しょうがないぜ。国王も疲労困憊って感じだったしな。棍棒を薦めるぜ。俺は竹竿の方が好きだがな」
「どうしてです」
「棍棒って不細工なトロールが振り回しているイメージが強くてな、何かダサいイメージがあるんだよ。竹竿は弱いが、使い様によっては格好よく闘える感じがするぜ」
「じゃあ、僕は竹竿で」
「おいおい、いいのか?」
陽気にカッカッと笑いながら、武具屋の親父は聞いた。
「色々他にも買わなければならないんです。準備にはお金がかかるんですよ。弱い竹竿でも無いよりはましでしょう?」
ハルカも笑い返しながらお金を渡す。そして竹竿を受け取る。
「まいど!まあ、魔物はお金を生み出す力がある。どういう原理で生み出しているかはいまだに不明だが。魔物を倒しまくって金稼ぎするしかないな」
「ええ、そうですね」
ハルカは武具屋の親父に礼を言うと、武具屋を後にした。

次にハルカは道具屋に寄り、薬草、松明をまずは買った。
道具屋は少し散らかっている様子だった。
「ああ、最近掃除していなかったからな」
小太りの道具屋の男は豪快に笑う。ハルカは少し呆れていた。
「…掃除してくださいよ」
「すまんすまん」
ふとハルカは見慣れないアクセサリーを目にする。
「これは?」
美しい緑色が光るペンダント状のアクセサリーだ。
「ああ、“竜の鱗”だよ。身に着けると少しだけだが防御能力が上がるんだ。ラダトーム戦士団がドラゴンを倒して、竜の鱗をたくさん採ってくるんだ。まあ、その戦士団って言うのは乱暴者で出来の悪いメンバーがやるんだがな。戦士団の者でも知らない奴は多いし」
道具屋の男はそう答えた。
「僕も知りませんでした」
「ああ。それじゃお前は出来が良かったんだな。それか真面目だったか」
どことなく、武具屋の親父と似ている、とハルカは思ってしまった。まあ、どちらも中年男性で、違いは体格と髭の有無だけなのだが。
「…かもしれませんね。では、それ、頂けませんか」
「まいどっ。結構売れているんだぜ、“竜の鱗”。買って損はしない。盾を嫌う奴は必ずこれを買う。人によっては皮の盾より経済的という奴もいるくらいだからな」
「へえ、じゃあ、僕もいただきますよ」
ハルカは竜の鱗を購入し、首にかけた。
「似合ってるぜ」
「ありがとうございます」
「あ、これはサービスだ」
道具屋の男はハルカに氷水の入ったのビンを渡した。ビンは青透明で、丈夫に出来ている。職人が魔法をかけているため、保冷保温効果がある。
「今日も暑いからよ。ぶっ倒れないよう気をつけな」
「心遣い、ありがとうございます」
目的の一つ、道具屋を後にした。

旅に必要な食料品や日用品も購入後、ハルカは城下町の外に出ようと宿屋にさしかかった時だった。
「あら、あなた、竜王討伐を命じられた人でしょう?格好いい格好しているし。ローラ姫も助けるんでしょう?」
突然、小柄な少女が話しかけてきた。見た目は茶髪で茶眼、町娘らしいシンプルな五分袖のワンピースを着ていた。
「…そうですが?あなたは一体」
「私?この町に住むマーラよ。あなたの事、気に入っちゃった…きゃっ」
ハルカはマーラの積極的な様子に困惑気味であった。
「ついていっちゃおっかな。いい男だし」
「……好きにしてください」
断っても無駄だろうと判断したハルカはそう答えておいた。
「やった!ねえ、お兄さん名前は?」
どうやらハルカより年下のようだ。
「…ハルカ」
「ハルカね。素敵な名前じゃない」
「それはどうも…」
やはりハルカはマーラに困惑していた。
(どうも……ねえ)
積極的なマーラに苦笑しながら、町を歩く。

その後もいくら歩いてもマーラは付いてきた。
町の人がからかうとハルカは、
「違います。この人が勝手についてきただけです」
とキッパリと強く返した。
マーラはそんなハルカの態度にも全く気にすることはなかった。
「その通りよー」
と楽しそうに言うだけだった。
(変わった人だなあ)
ハルカは苦笑いしていた。

そんなこんなで10分近く歩いたところ。
「あ、」
「どうしたの?」
「ゴメンだけど、君はどこかに言ってくれないかな。僕は用事を思い出した」
マーラは少しふくれっ面を見せたが、しつこい女ではなかったようで、
「分かった。楽しかったわ!」
すぐに笑顔で手を振り、走り去っていった。
「はあ…」
突然現れた積極的な少女マーラにただ苦笑いしながら、町の外に出ようとしていた。

「あ」
ふと足を止めた。忘れ物をしたような気分になった。
「そうだ、イアンさんに会ってこよう」
ハルカが唯一、友人と呼べる人物、イアンだ。
イアンはいつも墓碑の前に立っている。負傷してラダトーム戦士団を自ら退団した。今でも戦士のような鎧は身に着けているが、利き腕でない方には大きな傷跡が残っていた。まだ戦える力は残ってはいるが、遠出できるほどの力ではない。
「イアンさん、挨拶しに来ました」
「おお、ハルカか。聞いたぜ。竜王を倒す旅に出るんだそうだな」
イアンはいつものように笑いながらハルカを出迎えた。
「ええ。…なんか僕が勇者ロトの子孫らしくて」
周りは信じている者、疑っている物、半信半疑の者様々である。
「そうか。確かにお前は不思議な感じはするな。俺は信じるぜ。……しかし心配なものだな。多くの者が竜王を倒すため、また姫を助けるために旅立って、ほとんどの者が死んだり大怪我を負ったりした。お前はまだ若い。ハルカ、お前を死なせたくないものだな」
そういうとイアンはハルカの兜を取り、優しくなでた。ハルカが抵抗しないのはそれだけイアンに気を許しているということなのだ。
「…僕は死にませんよ。絶対に死んでたまるものですか」
ゆっくりと力強く、そう答えた。
「そうだな。信頼しているぜ」
「武器…こんなのですけど、もっと稼いだらいい武器を買いたいです」
「あはは。竹竿は俺も好きだ。若い頃の俺も棍棒より竹竿派だったぜ。棍棒はダサいからな」
「武具屋の親父さんも同じ事言ってました」
「ハッハッハッ」
ハルカはイアンといるときは今の所、唯一心から笑い合えるのだ。
「さて、僕はもう行きますね。鍛えなければ」
「あせるなよ」
「解ってますよ」
ハルカは兜を被りお互い頷くと、握手をして、イアンの元を離れた。

城下町の外へ出た。やはり暑い。
ハルカは少し塩飴をなめると、歩き出す。
「…スライム、か」
この世界では弱いとされている青くプルプルしたスライム。しかし、侮ってはいけない。
非力な人間だとスライムにボコボコにされるとハルカは聞いている。
(でも、僕は)
スライムに向かって竹竿を振り下ろす。そこそこダメージを与えられたようだ。
スライムの反撃。しかし、ハルカにはそれほどの痛手にはならなかった。
(やはり弱いのか)
ハルカがもう一回スライムを突くと、スライムはつぶれるようにして気絶してしまった。
(初勝利!)
そして落ちているゴールドを拾う。少ない金額ではあったが、ハルカはこんなものだ、とさほど気にはしていなかった。
(それより、もっと鍛えないと)
ハルカは歩き出す。
(…目指すは、あそこの洞窟。たしか、伝説の勇者ロトが祀ってあるんだっけ?)
ロトの洞窟と呼ばれる洞窟はハルカの視界に小さく入っていた。それほど遠くではない。
(まずはそこに言って、やるべきことを)
汗を拭きながら、水分を取りながら、モンスターを倒しながら、ハルカはロトの洞窟へたどり着いた。
 
 

 
後書き
鎧の概念、この小説ではあれを除いて省略しています。
公式のあの鎧兜です。ただし、若干のアレンジ入っていたりします。暑い時期は半袖になっていたりなど。 
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