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DQ1長編小説―ハルカ・クロニクル

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Chapter-1 第1話

 
前書き
説明にもあるとおり、短編とはまた違った設定です。 

 
Dragon Quest 1 ハルカ・クロニクル

Chapter-1
旅立ち~ガライの町 
第1話

ラダトーム暦400年8月1日(ペリドットの月最初の日)。
とても暑い真夏の日。
この日はハルカ=R=ドランスフィールドの16回目の誕生日である。
とはいっても、ハルカは今まで誕生日をまともに祝ってもらったことがない。ケーキを食べさせてもらったり、ちょっとしたプレゼントを貰ったくらいで、パーティなどは開いてはもらえなかった。……他のラダトーム戦士団(ラダトームをはじめ、アレフガルドを守るための、ラダトーム城兵とは違った存在の団体である)のメンバーはパーティを開いてもらったというのに。
「やっぱり、みんな僕のこと嫌いなのかな。普通に接してはくれるけど。…僕だけよそ者扱いされてる気がする。気のせいかな」
ハルカは中庭の草むしりを一人で黙々と行っていた。戦士団に入団して2年、まともな仕事をあまりやらせてもらえなかった。剣術の練習はさせてもらったものの。
友人にも恵まれなかった。皆、ハルカを特別な目で見ていたようだ。
「こいつ、俺達とは違う」
そう考えていたのかもしれない。
ハルカは最初嫌だった。傷ついていた。しかしすっかり慣れてしまった。
それに、まったく友人がいないわけでもなかった。ラダトーム城下町に住むイアンという男戦士だ。彼は50代、戦士団を負傷で引退した男だ。しかし、50代にしては身長180cmのハルカより高い身長の大男。ハルカにとって、イアンは唯一の友人なのだ。
ただし、町の外に出られるのは限られた時間であり、イアンとも会話する時間も限られている。
……ハルカは常に孤独感を感じていた。
「今日も、何もなく16回目の誕生日迎えるんだろうな、僕は」
そう諦めのため息を、ハルカはついた。

ところが、その予感は外れた。
「おい、ハルカ、こっちへ来い」
突然、ハルカは戦士団のものではなく、城の兵士によってとある部屋に連れて行かれた。
「僕は、何か悪いことでもしたのでしょうか?」
「……それだったら牢屋行きだ。お前に特別な命令が下されたのだ」
「特別な命令?」
特別な命令、どういうことか分からなかった。
褒美なのか罰なのか、それさえ分からなかった。
ハルカは兵士の命令に従い、部屋に入る。
目の前には戦士団とは全く異なる紺色の鎧(赤いマント付き)、角突きの立派な兜、鎧の下に着るアンダーシャツとズボン。白いグローブ、そしてブーツ。
「え…?」
「これを身につけ、国王に会え。国王がお呼びだ」
「え??」
ますます分からない。自分に言った何が起きたのか。鎧兜は高いランクの戦士団のものともデザインは違う。
……僕は一体何をされるのか?
ハルカは疑問を持ちながら、言われるまま用意された物を身に着ける。

そして長い廊下を歩く。廊下の壁は美しいステンドグラスで飾られており、ロトの紋章や勇者ロトをイメージした人の姿が描かれていた。
ふとハルカは自分の鎧についているベルトを見た。
……ロトの紋章がある。これは一体?
「あの、僕は一体、」
「まずは城に住む大賢者に理由を聞くことだな。俺もよく分からんから」
兵士はあまりやる気なさそうに頭をボリボリかいた。ハルカは少し不快に気分になった。
「はあ…」
城に住む大賢者とはロトの伝説に関する書物を管理している老人だ。また、予知能力や魔力を回復する等不思議な力を持つ者だ。
このとき、ハルカはまさか、と思った。
生みの母親が遺してくれた手紙には「あなたのお父さんはこの世界の住人ではなかった。だから貴方は特別な人だから絶対に生きて」と書かれていた(更にはフルネーム、誕生日も書いてあった)。
そして養母が亡くなる寸前にハルカに託した書物。少し見てみたのだが、中には伝説の勇者ロトの話が書かれていた。…僕が知らないような話も載っている、よくは見ていないがハルカはそう感じた。
(僕は……ロトの子孫!?)
ハルカは勇者ロトが元の世界に帰ったと言う話を聞いたことがある。本当かどうかは分からないが。
もし、それが本当だとすると、生みの父親が異世界から来たのは、ロトの子孫として異世界から召喚された、ということになる……。
「おい、お前、着いたぞ。何ボケッとしてんだ」
「あ、はい」
兵士の態度にイラッとしながらも、大賢者のいる部屋へハルカは入っていった。

その部屋は城の内部とは思えないほど地味で質素な部屋だった。おそらく大賢者は派手な物は好まない性質なのだろう。
ハルカは緊張しながら、大賢者に挨拶する。
「あ、おはようございます」
「おお、勇者ハルカか。待っておったぞ」
勇者ハルカ……大賢者はそう呼んだ。“勇者”…。
いや、勇者というのは勇気ある者と書く。勇者ロトと関係があると深読みしすぎたのか?それだとしたら、鎧のベルトの紋章は何なのだろうか?
「勇者……僕が」
「ああ、おぬしも解っているかも知れんが、おぬしは古の勇者、ロトの血を引く物なのじゃ」
「僕が……!!確かに、僕の生い立ちは妙だったんです。僕を生んだ母さんが遺した手紙には父さんが異世界から来たこと、僕が特別な人ということが書いてあったんです…それって」
大賢者はハルカの言葉に大きく、ゆっくりと頷いた。
「ああ、そのとおり、お前の父親は異世界から精霊ルビスによって召喚されたのだ。本来ならあの人が竜王を倒すはずだったが…」
「……魔物に殺された…」
「その通りだ。だからわしはラルス16世と相談してお前を呼んだ。次はラルス16世に会うのじゃ。……おぬしをわしは期待している。光あれ!」
大賢者は手をあげると、ハルカの体は一瞬光に包まれた。何かのまじないなのだろう。幸運を祈るまじない。

ラルス16世は見た目の割には若い男だ。しかし、最愛の妻(王妃)を病気で亡くし、さらに、愛娘が竜王軍にさらわれてしまったことでだんだんとやつれ、老けていった。
「よく来た、勇者ハルカよ。そなたを呼んだのは解るな?」
「僕が、いいえ私がロトの血を引く勇者なんでしょう?それで…この世界に恐怖を与える竜王を倒すということでしょう?」
国王相手には「私」を使うのが礼儀だと、ハルカ自身は考えている。
「ああ。ここに厳重に保管していた勇者ロトが大魔王ゾーマと暗黒の闇を封印した光の玉が竜王軍に奪われたのだ。そしてこの世界の魔物が凶暴化した。既にいくつかの町が滅ぼされているのを知っているだろう?」
「はい。……私の故郷も滅ぼされました」
「…ドムドーラだな。大賢者から話は聞いておる」
大賢者から。他の物にはない特殊能力を持つ彼のこと、特におかしいとも感じなかった。また、2年前にここに来たときに、ハルカについての情報もいくらか城の者は知っているのもある。
「……そなたが竜王を倒してくれるのならば褒美をやろう。そして、古の勇者ロトの伝説の再来の宴を開こうではないか」
「はっ。解りました。私に出来ることならば」
「そうか。では援助金だ……少ないがな」
ハルカが貰った金額は確かにいい金額とはいえなかった。しかし、ハルカは兵士やラダトーム戦士団が竜王を倒すため、そして国王の愛娘の王女を助けるために旅立っていったが、皆命を落とすか大怪我をおって帰ってくるだけだった。遺族へのお詫び金や負傷した兵士や戦士の治療費等で費用がかさんでしまった故だと理解し、納得した。
「後はこれも」
もう一つ、松明をもらった。
洞窟内は暗い。竜王の魔力により、本来の姿――光が届かない真っ暗な――の洞窟を歩き回るのに必要なものである。
「店でも買える。必要なときに買い足しておくといいだろう」
ハルカは頷き、国王に敬礼をした後、謁見の間を去ろうとした。

「勇者ハルカ殿」
ある人がハルカを呼び止めた。それは大臣であった。
大臣は国王より年上だが、国王より若く見える。頭の毛が薄い以外。
「ローラ姫のことをご存知か?」
「……ラルス16世の愛娘、ラダトーム王女でしょう。解っていますよ」
「そうか。王妃を亡くされて、国王は王妃に似た美しいローラ姫を大変可愛がっていた。それが竜王軍にさらわれてしまったんだ」
「城の雰囲気が沈んでいるのはそのためですよね。私も感じています」
「その通りだ。既に数ヶ月が経っている。口にこそ出さないが国王は大変苦しんでおる。ハルカ殿!ローラ姫を…ローラ姫を救出してくだされ!」
大臣の声は震えていた。国王の気持ちを代弁しているようにハルカは聞こえた。
「ええ。解りました」
当然、ハルカはこれも承諾した。ローラ姫はまだ14歳で、12月に15歳になる。ハルカより年下の姫君だ。まだこの世界では未成年に当たるのだ(16歳、ハルカの年齢から成人と認められる)。いや、さらわれたのはどんな人間であろうと、竜王軍にさらわれた者は救出しなければ。竜王軍を少しでも苦しめるためにも。
それが、ロトの血を引く者の使命だから。

王との謁見から戻ろうとしたとき、戦士団の者の視線を感じる。
嫉妬の視線、哀れみの視線、羨望の視線。
しかし、誰もハルカに声をかけなかった。
罵りの言葉も激励の言葉も無い。
(やはり僕のこと…)
そう思い、ハルカは目を伏せた。
しかし、城の兵士や女性は「頑張れよ!」「お気をつけて」と声をかけてくれる。
ハルカが古の勇者ロトの子孫であることを信じているかどうかは別として(信じている人もいれば、疑っている人もいる)。
ハルカはそれに対して、微笑しながら軽く会釈をした。
そしてまた、前を見て歩き出した。

今のハルカには不安と期待が入り混じっていた。
「……」
何も言わず、ハルカは旅の第一歩を踏みしめた。
孤独な旅の始まりであった。

 
 

 
後書き
ゲームの一部の概念とか変えていたり、オリジナル入ってますね。はい。
長編は初挑戦だったりします。 
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