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DQ1長編小説―ハルカ・クロニクル

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Chapter-1 第3話

 
前書き
ロトの洞窟編。そしてオリキャラ登場。モデルはモブです。 

 
Dragon Quest 1 ハルカ・クロニクル

Chapter-1
旅立ち~ガライの町 
第3話

ふと、ハルカは空を見る。
青いが、きれいな青ではない。濁った青だ。夜も星があまり見えない。
十数年前に竜王軍が襲来して以来、空は濁ってしまったのだ。
太陽も本来なら直視は出来ない。しかし、今は多少なら出来るのだ(それでも見すぎてはいけない)。
「それなのに、凄く暑いってどういうことだよ」
ハルカは少し呆れた様子で小さくため息をつきながら、洞窟の入り口を見る。
いくらか装飾がなされており、風化して誰か分からないが、人間の石像もある。
中は真っ暗だ。松明は必要だろう。
「…中に明かりは付けられなかったの?」
誰もいない為、ハルカは自然と独り言が多くなる。
魔法の道具袋から松明を取り出し、火をつけて、中に入ることにする。

ロトの洞窟は、ロトが上の世界に戻って以来、幾つか人の手が加えられた。しかし、それであれば何故明かりは付けなかったのか…。色々理由も聞いたが、ハルカの納得する理由は聞けなかった。
魔物の気配は一切感じられなかった。ルビスのご加護か、聖なる力が働いているものだと思われる。
(昔はここに入ると魔法が無効化されると聞いたな)
足音は響く。しかし、それだけで他は何も起きない。
(物足りない気がするけど、僕は何か間違っているのか?)
死体も落し物もお宝も何もない。壁もただひたすら石壁が続くだけ。
それだったら洞窟の意味はあるのだろうか?とハルカは苦笑いしながら奥へと進む。

魔物のいない洞窟を進んだ奥、少し開けた場所に出た。
ロトの石碑が近い証拠だ。
しかし、書いてある文字はでたらめに書いたような滅茶苦茶な文字で、誰も読めなかった。
そのせいか、誰かがいたずらで追加した偽物説まで浮上したのだ。
人によっては、暗号みたいなものだと言う人もいる。
実際のところ、誰も真実は分からない。
もちろん、石碑を読む前のハルカも。
(で、僕は何しに来たんだ、という話になるけど)
ロトが祀ってあるというので、子孫といわれるハルカは訪れないわけにはいかなかったのだが。
(僕も読めなかったらどうするの)
しかめっ面になりながら、ハルカは石碑に顔を近づける。
(……!)

ハルカには、石碑に書かれた文字が文章となり、こう見えた。
“私はロト。 私の血を引く者にはこの文章が読めるであろう。
 ラダトームから見える魔の島に渡るには3つの物が必要だった。
 私はそれらを集め、魔の島に渡り、大魔王ゾーマを倒した。
 そして今、その3つの神秘なる物を3人の特別な賢者に託す。彼らの子孫がそれを守ってゆくだろう。
 再び魔の島に悪が甦った時、それらを集め戦うが良い。
 3人の特別な賢者はこのアレフガルドの地のどこかでそなたの来るのを待っていることだろう。
 行け!私の血を引きし者よ!”
勇者ロトからのメッセージであった。ハルカが竜王軍を倒す為には、勇者ロトからのメッセージに従い、3つの神器を集めなければならないということなのだ。
ちなみに、訂正された箇所も見られた。ハルカがよく見ると、「私はロト」の部分、元々は「私の名はロト」だったのだ。
(勇者ロトは名前ではない、称号なんだ。ロト様の本名は誰も知らないって聞いた。あ、もしかして、養母さんの残してくれた本に書かれて…いたら大変だろうな)
そして、読めないといわれていたはずの石碑、ハルカにはしっかりと読めた。
(じゃあ僕は本当に勇者ロトの子孫って事なのかな)
石碑の文字が勇者ロトの血を引く者にしか読めないとしたら。ハルカは確かに勇者ロトの血を引く者、なのだ。
何故勇者ロトがこのような処置を施したのかはよくは分からない。しかし、ロトの血を強いているかどうかの試している、ロトの勇者として竜王を倒せる資格があるかどうかの試金石のようなもの、とハルカは考えた。
つまりそう考えると、ハルカは認められたことになる。
しかし、ハルカは自分がロトの血を引くものだと確定はしていても、それを軽々しく他人に言うのをやめようと思った。伝説の勇者ロトはアレフガルド神話の中で存在は大きい。子孫だとしても大物と扱われることだろう。
(今の僕にはそれはない。言った所で信じてくれる人はいるのだろうか?恐らく、3つの神器のような証拠品がないといけないのかもしれない)
ハルカは肯き、ロトの石碑にお祈りをした。そして、ロトの洞窟を後にした。

――ハルカ、僕は信じてるから――
(…?)
声が聞こえたが、辺りには誰もいない。ハルカに似た、穏やかな男性の声だった。
(僕の空耳?…でも、確かに聞こえた。誰なんだろう…)
けれど、ハルカは何か温かいものが体を駆け巡っていく気がした。
もしかしたら、と思ったが、これ以上は何も考えないことにした。
また、何か分かる時がくると思うから。

フィールドでいくらか魔物と戦い、鍛えた後、ハルカはラダトーム城に戻り、図書室を訪れた。
図書室は広く、町の人にも開放されている。今の時間帯は人が少ない。
ハルカは伝説の勇者ロトに関する書物をいくらか読んでみた。
しかし、本によって内容はバラバラで、どれが真実が、どれが嘘かは判らない。けれど、どの本も、勇者ロトは一人で大魔王ゾーマを倒したと記されている。
(でも、どこか矛盾を感じる。何だろう)
そう思ったハルカは養母から託された一冊の本を取り出す。そして読んでみる。
すると、今まで知らなかった事実がそこにはあった。
伝説の勇者ロトには、……仲間がいたのだ。
その本には勇者ロトは3人の仲間と共に大魔王ゾーマを倒し、世界に光を取り戻したと記されていた。
さらに、勇者ロトは仲間の女僧侶と恋仲で、将来は結婚するであろう、とも書かれていた。
(もしかしたらこれが真実なのかもしれない。この本の内容になぜか違和感は感じられない。そもそも、子孫がいるということは勇者ロトは相手の人もいたはず。ルビス様とは結ばれてはいないとはこの本にも図書室の本にも書いてあるということは、間違いない。勇者ロトはしばらくして、異世界へ帰ったのだから。…)
しかし、疑問が浮かび上がる。何故、本当のことが書かれたこの書物を養母が持っていたのか。実は、勇者ロトに仲間がいたとかかれていた書物はすべてラルス13世によって焼却処分されたはずなのだ。
(表装を変えることによって乗り切ったということか。でも何故養母さんは持っていたのか?僕が勇者ロトの子孫だと見抜いていたのか?いや、ラルス13世の時代は100年ぐらい昔のはず。そんなことなど予見出来ていただろうか?)
ハルカは悩みながら書物を閉じる。一体養母はどこで書物を手にしたというのだろうか?
(闇市…とかかな)
とりあえずそう考えることにした。あまり考えすぎるとますます訳が分からなくなって旅に支障を出るかもしれない。

「お、ハルカじゃないか」
顔をあげると長身の男、イアンがいた。ハルカは驚いて椅子から転げ落ちそうになった。
「おいおい、俺は何も見てないぞ。勇者ロトに関する勉強か?」
イアンは大声を立てないように、しかし顔は豪快に笑っていた。
「ええ、まあ。ついでにこの日記を読んでいたんです」
ハルカはそんなイアンに微笑み返す。
「そうか。色々と大変だな。俺も何か力になればよかったのだが…。例えばお前の戦いの手助けとかな。勇者ロトは一人で大魔王を倒したと思っている奴が多いが、俺は誰か仲間がいたんじゃねえかとおもうんだ。おっと、誰にも言うなよ」
イアンは小声で誰にも聞こえないようにハルカにそう言った。
「え、イアンさんもそう思っていたんですか?実は僕…」
ハルカは正直に、日記ではなく、禁じられたはずの歴史書を読んでいた、と話す。
「そういうことか。実は俺の親父も持ってたんだよ。残念ながら、俺がお前ぐらいのときに火事に遭い、消失してしまったんだがな」
「何処で手に入れていたんです?」
「闇市だよ。ドムドーラで月一で行われていたんだ。多分お前が持っているソレもそうだぜ」
なるほど、とハルカは納得した。まだ疑問点は残ってはいるが、この書物の入手ルートはなんとなく掴めたのだ。
「ハルカ、ただな、そのことは誰も言うんじゃないぞ。もしかしたら処刑されるかも知れん」
「分かってます。僕も誰も言う気はありませんよ」
言われなくとも解っている、ハルカとイアンはお互いそう思い、頷いた。
「そう考えると、俺ももっと若ければなと思うわけだ」
「どうしてです?」
「お前の旅に同行できたものを。お前に援軍はなく、一人で旅しているのだろう?」
「そうですね…。でも、僕は一人で頑張ってみようかと思います。仲間は確かに欲しかった。でも、これも一つの運命だと受け入れるのです。イアンさん、あなたは僕の親友で、素敵な相談相手ですよ」
「そうか。俺も応援してるぜ。ハルカ、信じてるからな」
「はい」
イアンとハルカはがっちりと固い握手をした。イアンの手は大きく、力強いものだった。
 
 

 
後書き
ロトの石版の文章はゲームとは若干異なっていたりします。
ハルカに聞こえた、謎の男性の声は、あの人です(何)。 
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