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ジークフリート

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第一幕その七


第一幕その七

「それが母さんの名前か」
「これでよいな」
「もう一つ聞きたいことができた」
 ところがまた顔をあげるジークフリートだった。
「いいか」
「もう言えることはないぞ」
「いや、ある」
 そう言ってさらに問うのだった。
「聞きたいことはまだある」
「ではそれは何じゃ?」
「父さんのことだ」
 次に聞くのはこのことだった。
「御前が僕の親じゃないことはわかった」
「うむ」
「それなら父さんもいる。それは誰なんだ?」
「それには会ったこともない」
 お手上げといった動作で応えるミーメだった。
「生憎じゃがな」
「母さんは何も言わなかったか?」
「殺されたとか言っていたのう」
 腕を組み首を捻りながら記憶を取り出した。
「そういえばじゃ」
「殺されたのか」
「それでじゃ」
 ここでたまたま自分の横にあった折れた剣を出してきた。見事に横で真っ二つになっている。
「この剣じゃが」
「ずっと前からあるその折れた剣だな」
「そうじゃ。これじゃが」
 また話すミーメだった。
「その父親が持っていたというのじゃ」
「父さんの・・・・・・」
「その御前の母親が言っておった。最後の戦いで使っておったと」
「じゃあこれが父さんの形見なんだな」
「そうなるのう」
 よくわからないといった調子のミーメだった。
「よくは知らんのじゃがな」
「そうだったのか」
「そうじゃ。知らんのじゃ」
 今度は正直に言うのだった、
「わしが知っているのはここまでじゃよ」
「ならミーメ」
 ここでジークフリートは身を乗り出してきた。
「御前に言いたいことがある」
「もう本当に何も知らんぞ」
「知っていることじゃない」
 それは否定するのだった。
「いいか、その折れた剣じゃが」
「どうするというのじゃ?」
「その剣を元に戻してくれ」
 こう言うのだった。
「いいな、すぐにじゃ」
「この剣をか」
「そうだ」
 言葉はさらに強いものになった。
「その折れた剣だけを信じられる」
「どういうことじゃ、それは」
「いいか、すぐに元に戻すんだ」
 有無を言わせぬ口調だった。
「わかったな、今日中にだ」
「今日中だというのか」
「そうだ、そして」
 語るその目が明るいものになっていた。
「この森から出て世の中に出るんだ」
「世の中じゃと」
「御前から離れて自由になるんだ」
 立ち上がっての言葉だった。
「その為にもだ、いいな」
「おい、待て」
 何処かに行こうとするジークフリートを呼び止める。
「一体何処に行くんだ」
「少し出て来る」
 こう言って去るジークフリートだった。
「それじゃあその間に元に戻しておくんだ、いいな」
「一体何なのじゃ」
 突拍子もない彼の行動に今は困惑するしかない彼だった。
「あいつは。本当に」
 しゃがみ込んでまた不平を言う。
 
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