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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第17話 冥王教会の謎

 
前書き
こんにちはblueoceanです。
最近深夜の3時を過ぎると睡魔が凄いです………

集中して書けるのは夜なのに……… 

 
「………」
「どうしたんだ先輩?鳩が豆鉄砲喰らった様な顔して?」
「………これを見たら誰だってそんな顔するわよ。スカさんって誰かしらと思っていたら最近名前を全く聞かなくなった次元犯罪者、無限の欲望ジェイル・スカリエッティだったなんて………」

………確かに先輩の言う通りだな。
はやてやフェイトがここに来たら先輩と同じ様に凄い顔するんだろうな………

あの後スカさんと連絡を取った俺達は直ぐにスカさんのアジトへと向かった。
途中、疲れて眠るアギトを肩に乗せながら先輩に不安を抱かせないように話しかけながら来たが、先輩は静かに俺達に付いてきてくれていた。しかし途中から普通なら中々見ない様な場所へと連れていかれ、自然に俺を掴む手の力が強くなっていた。

やっぱり不安はあったのだろう。

「先輩はお茶とコーヒーどちらがいい?」
「あっ、フェリアちゃんありがとう。じゃあコーヒーを………って違う!!」

先輩がノリツッコミとは本当に珍しい。
普段見せない姿を見せるほど、混乱しているのだろう。

「ノーヴェ………課題………」
「自分でやれ」
「セイン………」
「何円出す?」
「500円でどうっスか?」
「却下」
「うええ!?ウェンディどうする………このままだとダーリンとデートも行けなくなる………だけど課題をやらないと大幅に減点するって言ってたし………どうすればいいんスか!!!」
「自分でやれ」

そんな手厳しいノーヴェの言葉に垂れるように机に突っ伏すウェンディ。

「いや、何であなた達普通にここで馴染んでるのよ………」
「何言ってるんスか会長?ここは私達の実家っスよ?」

そんなウェンディの発言に唖然とした先輩だが、ウェンディは不思議そうな顔で先輩を見ていた。

「え?じゃああなた達もクローンとか何か?」
「似たようなものです、私達は戦闘機人なんです」
「戦闘機人………?」

フェリアから聞き、観察するように先輩はウェンディ達3人を見るが………

「………どう見ても少し変わった女子高生にしか見えないわ………」

そう呟いて見るのを止めた。

「零治君、一体何があってこんな風になったの?次元犯罪者なんて肩書き微塵も感じさせないわこのアジト………」
「まあスカさんもすっかり娘LOVEだから」
「頭痛い………」

まあ普通はそうだよな。

「さて、そこの3人もこっちに来てくれ。話を始めよう」

そんな話を先輩としているとスカさんが、後ろにウーノさんとメガーヌさんがリビングにやって来てウェンディ達を俺達が座っているテーブルの方に呼び寄せた。

「スカさん、ゼストさんやセッテ達はまだ掛かりそうなのか?」
「調整は明日まではかかるね。流石の私もまさかいきなり話を聞ける人物を連れてきてくれるとは思ってなかったから」

そう苦笑いしながらキッチンに居たフェリアからコーヒーを受け取り、席に座る。

「チンク、後は私が代わるわ」
「分かった」

フェリアは持っていたお盆を渡し、エプロンを取って俺の横の席に座った。

「あれ?ディエチとクアットロは?」
「泊まりがけで調査をお願いしててね。まあちょっとした息抜きもかねてミッドの街を定期的に調査しているんだよ」
「へぇ………何か旅行みたいで楽しそうだね!!ねえレイ、僕達って遠くへ旅行とか行った事無いよね?」
「………言われてみればそうだな。沖縄も修学旅行でだし、家族全員では無いな」
「私も行きたいっス!!温泉なんてどうっスか!?」
「温泉か………」
「温泉まんじゅうとか美味しいものも多いしね………」

俺とライの話にダメっ子3人も混ざってきた。
しかし温泉か………確かに良いなぁ………湯上りでしかも浴衣姿の3人。

「レイ、ニヤニヤしないで下さい。話も脱線してますよ?」
「お、おおう………」

星に冷たい目で見られて我に返る。
ダメっ子やライも星に睨まれ、静かになった。

星の恐ろしさは未だに健在である。

「あらあら………」

楽しそうに俺達のやり取りを見るメガーヌさん。
その雰囲気はまさにみんなのお母さんだ。

「さて落ち着いた事だし、それじゃあ単刀直入に聞くけど、知っている事を話してもらっても良いかい水無月君?」
「はい………」

スカさんがそう切り出すと、皆の視線が水無月先輩に向けられた。

「先ず私の家について話そうと思います。私の親は冥王教会の一員でした。何故所属したのか理由は知りません。だけど両親は私が物心つく前には既に所属していたみたいで、それに気がついたのは中学に入った時でした。それまでは両親はよく家を開けるけど仕事が忙しいんだなってそう思ってたんです。そして中学に進学して直ぐの事でした………」















「えっと判子………判子………」

その時の私は学校で提出しなくてはいけない書類に判子が必要なので、それを探していた時でした。

「あれ?何かしらこれ………?」

リビングには何処にも無かったので両親の部屋を探していた時に母親の化粧台から隠し棚を偶然見つけたんです。

「何これ………」

そこで見つけたのは古ぼけた本でした。
見たことのない素材で出来ていて思わず興味が出てきて中を読んでしまったんです。

「えっ………これって………」

その本に乗っていたのは研究記録でした。
………それも人体実験の。

「何でこんな本が………?」

後に気がついたのですが、この本は日本語で書かれており、この時の私が読めたのはその為でした。恐らくもし管理局に見つかっても簡単に解読出来ない様にするためだと思います。
地球ブームの今ではあまり効果は無いでしょうけど………

「聞いてみないと………」

信じられなかった私は直接両親に聞くことにしたんです………











「こうして組織について私は知りました………」

ごく淡々と話す先輩。
その顔は真面目だが、少し悲しそうに見えた。
初めて知った当時、衝撃が凄かったのだろう。
自分の両親が人道を誤った事をしていたと知ったのだ、俺だったらどうなっていたか分からない。

「そしてその後が大変でした。心酔している冥王教会の事、そのために家の財産を提供し続けている事。そして両親も手を染めてしまっている事。私はどうすれば良いか分からなかった。両親は止めてと言っても聞いてくれなかったし、既に手遅れでした。どうやら両親は私の事も既に組織の人達に言っていたみたいで、組織の人達がわざわざ会いに来る時もありました」

「監視って事?」

「ライちゃんの言う通りよ。私が組織の事を漏らすんじゃないかって。事実耐えきれなくなった私は両親の事、冥王教会の事を管理局に通報しようと思ったわ。だけど彼らは………」

そう言って悔しそうに唇を咬む先輩。

「親を人質に取られのかな?」
「………はい。」

スカさんの問いに少し間を空けて頷いた先輩。

「先輩、奴等の居所は分かるか?」
「いいえ、恐らく私の知っている場所にはもう居ないと思うわ」
「そうか………」
「両親はどうなったんだい?」
「分かりません………今では連絡もつかないです」

先輩から話を聞いて押し黙る俺達。
話は聞けたには聞けたが、有力になりそうな情報は無かったな………

「それでは別の質問だけど、今の冥王教会の教皇は誰だい?」

そんな中スカさんが次の質問を切り出した。

「分からないです。組織の中でも教皇を見たことあるのは上の一部だけです。ただ、以前のベヒモスの事件で前教皇が捕まり、若い人が就いたって噂です。そしてその人の近くにはクレイン・アルゲイルも居るって聞きました」
「えっ、水無月先輩それって………」
「恐らく教皇は管理局にいる………」

そんな先輩の一言に皆が驚いていた。
俺は大悟から話を聞いて、管理局の中に協力者がいるとは思っていたので皆ほど驚かなかったが、まさか組織のトップが管理局にいるなんて………

スカさんも大きくため息を吐いただけで特に動じた様子もなかった。

「それともう1つ気になることがあるの」
「気になること?」
「冥王教会からクレイン・アルゲイルに連絡が取れないようなの」

ライの問いに先輩が答えたがどうも不自然だ。

「しかし現に冥王教会はバリアアーマーを使って事件を起こしている。ならばこれはどういうことなのですか?」

夜美の言う通りクレインが発明したバリアアーマーが今でも時々海鳴市で暴れている。
スカさんを始め、ここにいる全員がクレインが何か企んでいると思っていたのだ。

「いいえ、あれは他の科学者がバリアアーマーのデータの一部を盗んで何とか完成させた模造品よ。だからこそ中途半端な出来になってしまってるのよ」
「………なるほど、あの完成度の低さはそれが理由だったのだね」

先輩の話に納得しながらもコーヒーを飲むスカさん。

「………で、これからどうするんです?」
「そうだね………水無月君、君はどうする?」
「………私は大学を休学しようと思います。地球から撤退する様な事を言ってましたが、もしまた来たら大学に行っても組織の連中に捕まるかもしれないですから」
「まあそれを利用して彼らを捕縛し、情報を聞き出すって手もあるが………新しい情報を得られる可能性は少なそうだし、わざわざ危険な思いをする必要は無いだろう」
「ですね」

スカさんの答えに他の皆も満足の様で反論するものはいなかった。
何だかんだ俺達みんな先輩にお世話になっている。これ以上先輩に危ない事をさせたくない。

「だけど私達は冥王教会と敵対していくだろう。その内、君の両親とも戦う事もあるかもしれない。それだけは済まないが………」
「分かってます、零治君達に情報を教えている時点で覚悟をしていました。お願いします、両親を止めてください。私はリンカーコアも無いので役に立つかどうか分かりませんが協力はするので………皆さんどうかお願いします!!」

席を立って深々とお辞儀をする先輩。
そんな先輩の姿に呆気に取られる俺達だったが、皆で顔を見合わせてからクスクスと小さく笑い始めた。

「な、何が可笑しいのよ………」
「い、いや、先輩がそんな姿を見せるとは思ってなかったからさ………」
「凛々しい先輩が恥ずかしがって可愛らしいです」
「確かに珍しいね!」
「いいものを見せてもらった」

「あ、あなたたちね………」

顔を赤らめ、怒りを見せる先輩。
そんな姿も可愛く見える。

「ギャップ萌え、おそるべし………」
「くだらない事言ってないでさっきの課題の続きするよウェンディ」
「セイン、手伝ってくれるんスか!?」
「やっぱり妹の面倒を見るのも姉の仕事だからね」
「………で、どのくらいぼったくる気だ?」
「3000円」
「鬼っスーーー!!!」

ノーヴェの質問に答えたセイン。ちゃっかり6倍になっている辺り抜け目がない。

「それじゃあ取り敢えず今日はこれで終わりにしよう。水無月君の大学の件は私が何か対策を考えるから少し待っていてくれ」
「あ、ありがとうございます………」
「零治君達も今日はもう遅いので泊まっていって下さい」
「ありがとうございますウーノさん」

こうして俺達は話を終え、スカさんのアジトに泊まるのだった。

「よし、なら徹夜で格ゲーバトルっス!!」
「その前に課題なアホ」













「ほう、これが………」
「ええ。博士が開発した対バリアアーマー武装、コード『ゲシュペンスト』です」

ディスプレイに大きく展開された映像には黒い鎧の姿をしたアーマーが写っていた。
零治のブラックサレナよりは装甲は厚くなく、スタイリッシュに見え、右腕に桐谷のアルトアイゼンのステークに似たプラズマステークを備え、背中には大きな2つのブースターとブーメラン型の質量兵器、スラッシュリッパーがある。

「魔力を持たない者でも飛行を可能にし、魔導師だけでなくバリアアーマーを装着した者であっても対応出来るバリアアーマーとは………で、私にこれを見せて貴様は何がしたい?」
「博士の完成させた量産型バリアアーマーの宣伝………まあ売り込みですね」
「貴様のバリアアーマー、アルトアイゼンを売り込めば直ぐに管理局に採用させられるのにな………」
「これは特別性なので………それに情報の公開は博士に禁じられていますので………」
「まあいい。………で私はこれを上層部に売り込めば良いのか?」
「はい、俺の部隊で運用したいと思ってます。そして出来ればクレイン博士ともお目通りをお願いしたい」
「クレイン・アルゲイル博士と?しかしクレイン博士は私でさえ面会をすることは中々出来んのでな、あまり期待するなよ?」
「………はい」
「よし、ならば話は終わりだな、訓練に戻れ加藤桐谷」
「はい、レジアス中将」

そう返事をした桐谷は静かに部隊長室を後にした………








「はっはっは………」

機動六課の隊舎。
時間帯も夕方に入り、部隊の皆も仕事が終わっていくる時間。
そんな中、1人の少女が一生懸命走り回っていた。

「ヴィヴィオちゃん、危ないから走っちゃダメよ!」
「ごめんなさい!」

注意されたヴィヴィオはダッシュから早歩きになり、機動六課の中を歩く。

「バルト何処かな~」

気持ちが高ぶり、早歩きが徐々にダッシュに変わっていく。

「あっ、いたー!!!バールトーーー!!!」

訓練が終わって一息ついていたバルトに向かってヴィヴィオはダイブした。

「………んあ?何か用か?」

渾身のダイブだったヴィヴィオだが、いとも簡単に止められ少し悔しそうな顔をする。

「どうしたのヴィヴィオちゃん?」

バルトの隣にいたヴァイスも声をかけてきた。

「バルトに用があるの!!」

邪魔物は消えろと言う具合に睨むヴィヴィオ。

「………ヴァイス、お前何かやったか?」
「何にもしてないっすよ………ヴィヴィオちゃん、俺何か気に障ることしたかな?」
「直ぐに一緒にタバコ吸いに行くから邪魔!!」
「ああ、成る程ね………」

と言いつつポケットから煙草を取り出すヴァイス。
実はこの2人、ちょうど一緒に喫煙所へと向かっている最中だった。

「じゃあバルトさん、先行ってますよ」
「おう」

ヴァイスはそう言い残して喫煙所へと向かった。

「で、何の用だ?」
「明日って訓練休みなんだよね?」
「正確に言えば午後から自由ってだけだな。それがどうした?」
「これこれ!!」

そう言ってヴィヴィオが見せたのは近頃ミッドで流行っているアニメのイベントの案内のチラシだった。

「明日、ミッドのドーム会場であるんだ!!」
「へぇ~気を付けて行ってこいよ~」
「バルトも行くの!!!」
「久しぶりの休みなんだ、ゆっくりさせてくれ」
「嫌だ!!行きたい!!!」
「はぁ………」

ため息を吐きながらごねるヴィヴィオを見る。

「なのはに頼めば良いだろうが………明日、ヴァイスとパチンコ行った後、麻雀する予定なんだが………」
「バルトも行くの!!!!」

思わず耳を塞ぐほどの大声に流石のバルトもタジタジになっていた。

「おい、我侭言うなよ………ほんのたまにしか休みがねえんだこっちも………なあヴィヴィオは良い子だよな?」

そうなだめるように滅多に見せない優しい声でそう言うバルト。

「バルトの…………バカーーー!!!!!」

ビンタしたヴィヴィオはそのまま走り去ってしまったのだった………












「ねえどう思う!!?」

次にヴィヴィオ向かった先は、訓練を終え、くつろいでいるライトニングのメンバーがいる談話室だ。

「パチンコか………俺もやりたいな………エリオ、明日ゲーセンでも行かね?」
「ごめん、明日フェイトさんと一緒に買い物に………」
「俺も行く!!」
「アンタは来なくていい!!」

ルーテシアにパンチを喰らい三回点半ローリングして床に倒れたのだった。

「相変わらず綺麗に倒れるね………」
「信也君もはや芸術の域だね………」

「みんな聞いてーーーー!!」

話が脱線し続けるエローシュ達にヴィヴィオは怒りを爆発させた。

「ごめんごめん。でも確かにバルトさん、酷いね」
「お父さんなのに………」
「そうでしょキャロ、雫!」

やっと賛同を得られ嬉しそうに落ち着くヴィヴィオ。

「私も一緒に頼んでみるからもう一度言ってみよう?」
「うん、私も協力するよ!」
「キャロ………雫………ありがとう!!」
「それじゃあちょっと行ってくるね」
「何言ってるのよ、私も行くわ」
「僕も協力するよ」
「ルー………エリオ………みんなありがとう。これならバルトもきっと折れるよ!!」

そう言ってヴィヴィオを含めた5人はバルトの元へと向かった。

『………時々お前が哀れに見えてくるよ』
「う………るせ………」

そう呟き、エローシュはガクリと気を失ったのだった………










「バルトさん本当に忙しいっすね」
「この野郎他人事だと思って軽く言いやがって………タバコだって制限されてんだから味わって吸いてえのによ………ったく」

そう言いながらタバコの火を消し吸い殻入れに入れ、喫煙室を出る。

「………で、揃いも揃って何の用だ?」
「ヴィヴィオちゃんをドーム会場へ連れていってあげてください!」

直球勝負とはまさにこの事だ。
見た目もそうだが、バルトの雰囲気に気軽に話せる人は少ない。
そんなバルトに動じず、キャロは少し怒り気味で言ったのだった。

「たまにキャロって凄いことするよね………」
「本人は自覚してないでしょうけど」

そんなこそこそと話すルーとエリオを置いて更に話を続ける。

「ヴィヴィオちゃんはこのアニメが大好きなんです。ずっと楽しみにしてたんです!!」
「だ、だけどみんな忙しいからって諦めていたんです………だから………」

キャロの言葉に真白も続き、バルトに言い続ける。

「いや、別に明日行く必要ねえだろう」
「明日しかやってないんですよ!パチンコはいつも行けるじゃないですか!!」
「と言うよりバルトさん、普通に抜け出して行ってるじゃないですか」
「エリオ、あれは飲みに行ってんだ。それにはやてに許可はもらってるぞ」

そんなバルトの発言にその場にいた全員が驚いた。

「夜間出歩いちゃいけないんじゃないですか?」

エリオの言う通り、機動六課の宿舎で生活している者は就寝12時となっており、外に出ることは禁止とされている。
ロングアーチを含め、宿舎で生活している人が多いので、12時過ぎると六課は静寂に包まれる。

と言っても外に出なければ良いだけで、宿舎の方は自由なのだ。
ヴァイスとバルトとエローシュはよく集まり、3人で麻雀をしていたりするのだが………

「許可さえ得られれば問題ない」
「でも何て言って許可を得ているんですか?」
「ああ?普通に飲みに行くから許可くれって言ったらくれたぞ?」

キャロの質問に淡々と答えるバルト。
そんな答えに呆気にとられる面々。

「いや、そんな簡単に取れないですよ普通………」

流石のヴァイスも信じられないのか喫煙所から出てきて恐る恐る話しかけてきた。

「そうなのか?はやての奴普通に『良いで~だけどエッチな店だけは問題になるから止めてな~あっ、それと3時までには帰るんよ~』ってな感じで」

バルトの口真似はともかく、自分との対応の違いに落ち込むヴァイス。

「俺、この前出したら一喝されたんだけど………」
「はやての決定は気分で変わるからな………それが原因じゃないか?………まあ俺なら無理やり取るけど」
「それが出来るのはバルトさんだけっすから………」

そんなヴァイスの言葉にバルトは『当たり前だ』と言ってヴァイスの背中を思いっきり叩く。
その関係はまさに先輩後輩。実際2人でよくいることがかなり多い。

「バルト!!そんな事どうでもいいの!!連れてって連れてって!!」

そんなヴィヴィオの言葉に何故ここに来たのか思い出すライトニングの面々。
そしてそこに最後の1人も現れた。

「バルトさん………」
「エローシュか、お前も俺に言いに来たのか?」
「バルトさん、案外そのイベント良いかもしれないですよ………」
「何だと?」

そう言ってバルトは手招きするエローシュ。

「実はそのイベントで………」
「何だと!?こんな格好で………おおっ………」
「凄いっすよね………出来ればその時の際どい写真を………」
「ああ任せとけ。これはパチンコ所じゃねえな………」

そう言って互いにサムズアップする2人。

「ヴァイス、お前もどうだ?」

そう言ってヴァイスを手招きするバルト。

「おお………これは凄いっすね………」
「どうだヴァイス?」
「すいません、さっき俺、ラグナからお呼びの連絡があって………」
「「このシスコンが!!」」
「………何でエローシュまで言うんだよ!?」

そんなこんな男3人で話が進み………

「分かった、明日一緒に行ってやる」

ヴィヴィオのドーム会場行きが決まったのだった………










次の日………


「わぁ………」
「でけえな………」

ミッド中央区の南側にあるドーム会場。ここでは様々なイベントが行われている。
今回みたいなアニメのイベントを始め、ライブや管理局の演習など、使われ方は様々だ。

「私は一回教導官研修でこのドームを使いましたけど、地球のドーム3個分位広いですからね………」

そう答えるなのは。
いつもの制服姿では無く、白いワンピース姿で度数の入っていない眼鏡をかけサイドテールを真っ直ぐ下ろしているなのはは、いつもと雰囲気が違い落ち着いた大人の女性の雰囲気があり、近くの男達の視線を釘付けにするほど華がある。

何故こんな変装が必要かと言うと、管理局の広告塔となっている六課のメンバー、それもスターズ、ライトニングの両隊長はかなりの人気がある。
その人気はアイドルにも負けないほどで、元々管理局でも人気のあった2人の人気が更に高くなったのである。

今やなのは、フェイト、そしてエース・オブ・エースの神崎大悟は管理局だけでなく、一般市民にも知名度が高くなっていた。

「くそっ、こんなに広いとは聞いてねえぞ………」

パンフレットを貰ったバルトはそう呻く。
なのはの代わり映えした姿を見ても、お隣さんとの事もあり、例え眼鏡をかけていようが、髪を下ろしていようが特に感想を抱かない。

「バルト!!先ずはここに行きたい!!」

そう言ってヴィヴィオが指差した場所は、巷で人気の少女向けアニメのブース。
今回のイベントは様々なアニメがブースを出して、色々とイベントを行なっている。
その中にヴィヴィオの大好きなアニメもあり、ヴィヴィオはそのブースに行くのをとても楽しみにしていた。

「待てヴィヴィオ、俺にも行きたい場所があるんだ。取り敢えずはだな………」
「行・く・の!!」
「お、おい!!」

そんなバルトの手を無理やり持って引っ張っていく。

「くすっ、待ってよヴィヴィオちゃん、バルトさん!!」

そんな2人を嬉しそうに見ながらなのはも付いていくのだった………






「あれ?何やこれ?」
「休暇届です!………あれ?なのはちゃんが『はやてちゃんには前もって言ってあるから渡しといて』って言われたんですけど………」
「リイン、私そんな話聞いとらんよ?それになのはちゃん、今日訓練学校から教導の助っ人頼まれていた筈やけど………」
「私は知りませんよ?」

そんなリインの言葉に首をかしげるはやて。

「いや、せやけど連絡が来てへんって事は既に断りの電話入れてんのかもしれへんなぁ………もしかしてなのはちゃん、バルトさん逹について行った………?」
「ありえそうですね………」
「はぁ………まあええか。たまには息抜きせえへんとな」

そう言ってはやてはなのはの休暇届に了承印を押すのだった………









「ふんふんふ~ん」

なのはとバルトと手を繋ぎ、御機嫌な様子でイベント会場を歩く。

「ふふ、次はどこに行く?」
「あそこー!!」

なのはに問われ、ヴィヴィオは即答する。
そこは今ミッドで1、2を争う人気アニメのブースで、既にお客さんがたくさん集まっている。

「………」
「バルトさん、さっきから時計をよく見てますけど何かあるんですか?」

チラチラと自分の腕時計を見ていたバルトになのはが声を掛けた。

「ああ、いや何でもない」
「?」

今日のバルトは所々時間を確認することが多かった。
いつもとは違い、文句も言わずヴィヴィオの面倒を見ているバルトに問題は無く、特に気にしていなかったが、ここに来て何度も確認しているみたいだ。

そして………

「悪い、ちょっとトイレ行ってくるから先に2人で回っててくれ」
「え~、待ってるよ~」
「こんな人混みだぞ?良いから2人で先に行ってろ。後で俺も向かうから」

そう言ってバルトはさっさと1人で行ってしまった。

「ヴィヴィオちゃんどうする?」
「もう………さっきトイレの近くに行ったとき行けば良かったのに………いいや!なのはお姉ちゃん行こう!!」

少し寂しそうにしながらヴィヴィオはなのはの腕を引っ張るのだった………







「さて、さっきの奴らの話だとこの辺りらしいが………」

その頃バルトは、1人ドームを出てドーム周辺に出来ている人だかりへとやって来ていた。

「そろそろ時間だから始まるはずだが………」

そんなことを呟いているといきなり『オオオッー』と大声が聞こえパシャパシャとシャッター音が絶え間なく響き始めた。

「始まったか!!」

バルトは人混みを力ずくでかき分け、中心へと向かう。

「おおおーっ!!」

バルトが見たのは何かのアニメのキャラクターの格好をした女性が中心でポーズを決めていた。
際どい服で、胸の谷間も大きく見え、下も白い太ももが露になっている。

「何てエロい………」

そう呟きながら写真を取り、次の人だかりが出来ている場所へ向かう。

「何と………」

またも力ずくでかき分け、一番前列に向かうバルト。当然周囲の人は嫌な顔をするが本人は特に気にしない。
文句を言おうとする人もいたが、バルトの顔、体つき、雰囲気に圧倒され、押し黙ってしまう。

「なるほど………ネコ耳付けると確かに違うな………」

そう呟き、また写真を取り、次の場所へと移動する。
さて、ここまで言えば分かると思うが、今バルトが居るのはコスプレイヤーの撮影が行われている広場。
こういったアニメのイベントになるとこぞって集まり会場に負けない熱気があり、盛り上がっている。
バルトは最初はイベント会場内で行われていると思い、ヴィヴィオの相手をしながら探していたのだが、外でやると移動の際、たまたま聞こえ、トイレと称して1人会場外にやって来たのだった。

「くそっ、エローシュの言う通りだ………まさかここまで凄いとは………」

因みにバルトはここのコスプレイヤーがどんなキャラの格好をしているのか全く知らない。
コスプレ自体、くだらないと言っていた男なのだが、エローシュによるコスプレの素晴らしさ、エロさを長々と説明され、実際今日見に来たのだ。

「おっ、あっちの子、何て薄い格好で!!」

目を光らせ、次の場所へと向かうバルト。
そんな時だった………

「あん?」

大きな爆発がドーム会場の方で巻き起こり、悲鳴が上がる。

「何だ!?」

さっきとは違い、真面目な顔で爆炎が上がっているドームの方を見る。
爆炎の中から現れる複数の影。

「ちっ、安息の時間はねえのかよ………ったく………」

その影を見たバルトはそう呟きながらドーム内へと入っていった………  
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