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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第18話 ベーオウルブズ

 
前書き
こんにちはblueoceanです。

今日も仕事なのに、少し寝てしまった所為で、今の時間まで起きちゃいました(笑)
今日持つかな………? 

 
「何で私が出掛けるとこうなるの………」
「まあまあ………」

恨めしそうな目で見つめるヴィヴィオをなだめるなのは。
以前と同じ様に逃げ遅れた人達はドームの中心に集められ、その人達をバリアアーマーを着た冥王教会のメンバーが固めていた。
その数40人程。

「なのはお姉ちゃん、デバイスは?」
「あるけど………取り敢えず様子を見ないとね。ここだとみんなを巻き込んじゃう………」

そう言って少し俯くなのは。
変装しているとはいえ、アイドル並の人気のあるなのは。まだ気が付かれていないのは人質の多さによる影響である。

(だけど何が目的なんだろう………?)

人質を囲む、バリアアーマーを見ながらなのははそう思った………









(ほう………やはり数が多いな………)

巡回しているバリアアーマーから上手く隠れながら進んで行き、スタンドに着いたバルトは低い体制で、グラウンドのイベント会場を観察していた。

(流石にこの距離からじゃなのはやヴィヴィオがどこにいるかは分からねえか………それにしても………)

そう思いながら自分の近くを通り過ぎたバリアアーマーを見る。

(まるで機械みたいだな。とても人が動かしているとは思えない………)

そう思えるほど機械的な動きをしており、動かないものは身動きすらとっていない。

(管理局の報告だと、バリアアーマーを使ってる奴はみんな自害していたってあったが、あれはガセだって事か?………まあ取り敢えずこの状況をどうにかするのが先だな………)

そう決めたバルトは静かにグラウンドの方へと向かっていく。
そして一番前の手すりまで来たときだった。

(あれは………なのは!?)

なのはがバリアアーマーに持ち上げられ人質の中から連れ出されていた………









「オンナ………タテ………」

誰だか把握できないようにしているのか機械音でなのはに命令するバリアアーマーを着た1人。

「なのはお姉ちゃん………」
「大丈夫よ」

ヴィヴィオを心配させまいと笑顔でそう告げるなのは。

「私に何かご用ですか?」

普段とは違いおしとやかに受け答えするなのは。
変装と話し方で機動六課の高町なのはだとバレないように、咄嗟になのはがしたのだ。

しかし………

「ニンソウシキベツ………タカマチナノハ93%」
「うぐっ!?」

先ほどと同じ機械音がそう響くと、なのはの首を持ち掴み持ち上げた。

「なのはお姉ちゃん!!」

なのはは苦しいのか呻きながら暴れるがバリアアーマーにはびくともしない。

「やめて!!死んじゃう!!」

ヴィヴィオが座っている人混みをかき分け、なのはを助けようとするが小さい体ではどうしても進むのに時間がかかってしまう。

「なのはお姉ちゃん!!」

抵抗も少なくなっているなのはに声をかけるが反応が薄い。

「助けて………助けてバルトー!!!」

ヴィヴィオが大きく叫んだ瞬間、ドームに大きな地響きが巻き起こった。

「ギギ………」

その地響きと共になのはとなのはを持ち上げた腕が一緒に地面に落ちた。

「全く………何をしてるんだか………」

バリアアーマーの腕を斬り落とした張本人、バルトは呆れながらなのはに声を掛けた。

「けほけほけほ………」
「ほら、大丈夫か?」

地面に尻餅ついたなのはの手を取り、持ち上げる。

「あ、ありがとうございます………」
「ったく、もう少し様子を見て行動しようとしたのによ………お前が持ち上げられてヴィヴィオが叫んだせいで思わず出てきちまったじゃねえか」
「ご、ごめんなさい………」
「はぁ………」

そう溜め息を吐いてバリアアーマーを見る。

「………流石のテロリストも人が足らなくなったか?巡回している奴もスタンドにいる奴も妙にロボットみたいな動きをしていると思ったらマジでそうだったとはな………」

バルトが斬った腕から火花がほとばしっている。

「機械………?」
「まあロボットを利用するってのは普通考えるよな。人とは違い、簡単に作れ、必ず命令通りに動くから効率が良い。………それが逆にあだとなる場合もあるが………まあ取り敢えず今は………」

そう言いながらバルトは周りを見渡す。
全てのバリアアーマーがこちらに銃を向けている。
………それも人質にも向けて。

「………まあそうするよな。俺だってそうするさ。だからこそもう少し様子を見たかったんだが………」
「ごめんなさい………」
「もう謝んなくたっていいっての。………ぶっちゃけ他の人質なんて個人的にはどうでも良いんだが、無視したら機動六課の評判が落ちるからな………まだ碌に給料も貰ってねえんだ、その前に解散は勘弁して欲しいんでな。守るのは苦手だが………」

そう言って懐からヴォルフバイルを展開する。

「立てなのは。人質を逃がしながらコイツらを殲滅するぞ」
「は、はい!!」

バルトに言われ、慌てて立ち上がるなのは。
レイジングハートを取りだし、セットアップ。

「人質を囲み、守りながら数を減らす。………どうだ?」
「それしかありませんね………ってバルトさん!!」
「ボルティックランサー!!」

囲んでいた1体のバリアアーマーが座っている人質に向かって実弾を発射してきた。
バルトがすかさず雷の槍を発射し、防いだが………

「実弾か………」
「不味いですね………この数、私達だけじゃとても防ぎきれませんよ………?」

その射撃を皮切りに順番に射撃を始めるバリアアーマー達。
なのはもすかさずアクセルシューターとプロテクションで人質の人達を守り始めた為、その場から無闇に動けなくなった。

バルトもなのはも共に実弾を防ぐことはできるが、人質達は違う。
バリアジャケットもなければ季節が春というのもあり、薄着の人が多い。
魔力がある人は魔力の攻撃に多少耐性があるもので、殺傷設定でも大怪我、死傷になる確率が多少下がるものである。

だが実弾は別だ。
だからこそミッドチルダでは基本質量兵器は禁止なのだが………

「ちっ………」
「攻撃に転じられない………」

防戦一方の2人。
しかしそんな状況でバルトは違和感を覚えた。

「………おかしい」
「バルトさん?」
「おかしいぞ明らかに。何故奴らは一斉に攻撃してこない。守りは2人しか居ないんだ。殲滅しようとすれば簡単に出来る筈だ」
「だけどそれだったら最初から殲滅すれば良い話ですし、人質を利用してまだ何かするつもりとか………」
「………」

なのはの言うことも一理あるのだが、バルトはどうしても腑に落ちなかった。

「ううっ………」
「何してんだよ管理局、しっかりしろよ!!」
「お願い、私は良いからこの子だけを………」

「皆さん落ち着いて!!」

徐々に冷静さが欠けてきた人質の人達が不安で声を上げ始めた。
なのはも守りながら声をかけるが、効果は無い。

「不味いぞなのは!このままじゃパニックになって何をされるか分からん!!」
「皆さん落ち着いてその場から動かないで下さい!!必ず守り通しますから!!」

なのはの懸命な言葉も届かない。
混乱は増すばかり。

「なのは、このままじゃどっちにしても持たん。俺が一気に突っ込み殲滅する」
「えっ!?でも………」
「任せろ。俺の強さは分かってるだろ?」

バルトの力強い視線に少し考え込むが直ぐに答えは出た。

「分かりました、お願いします!!」

なのはにそう言われバルトも覚悟を決めた。

『バルバドス、行くぞ』
『………いいのか?』
『四の五の言っていられる状況じゃねえ。良いから力を貸せ!』
『………分かった』

念話で話し、バルバドスを展開しようと動こうとした時だった。

「えっ!?」
「何?」

スタンドから爆発連続で聞こえた。
そして現れる5つの影。

「あれはあの時の赤い鎧か………」

ニヤリと笑みを溢したバルトの視線の先には、両肩の大きなスラスター、頭に角、右腕にステークを装備した赤いバリアアーマーがいた………









『こちらウルフリーダー。これより一般人を保護しながら敵を殲滅する』
『了解した。幸運を祈る』

そう淡々と通信を終え、赤いバリアアーマーの男、アルトアイゼンの桐谷は真っ直ぐグラウンドの方を見た。

「隊長、あの2人は機動六課の………」

そんな桐谷に集まるバリアアーマーが4体。桐谷がレジアスに提出したバリアアーマー、『ゲシュペンスト』だ。
それぞれ色が黒、赤、青、緑。狼のマークが右肩に書かれていて、それぞれナンバーが黒から順に1,2,3,4と書いてある。

「おおっ!!管理局のアイドル、高町なのはもいるぜ!!俺的にはフェイトちゃんの方が好みだがなのはちゃんも中々………」
「ウルフ2、キモいから止めて」
「き、キモって………リーネテメェ………」
「ウルフ3です」
「隊長どうする?このまま散開して殲滅するか?」
「ウルフ2、ウルフ3、ウルフ4は人質の避難誘導をしつつ、敵の殲滅を。俺とウルフ1が囮となって敵を引き付ける」
「分かりましたぁ~」
「お姉………ウルフ4………シャキッとしてよもう………」
「頼みますぜ、ウルフ1」
「任せておけ」
「じゃあ皆、しっかり頼むぞ」
「「「「了解!!」」」」

そう話しあった彼ら、『べーオウルブズ』はスタンドから一気に駆け出した………










「ああっ!?突っ込んで来るのか!?」
「そんな!!人質も居るのに!!」

まさかの行動にバルトとなのはは思わず大声で驚いてしまったが、バリアアーマー達はべーオウルブズに向かって一斉射撃を始めた。

「何だと!?」

そんなバルトの驚きも気に留めず、敵のバリアアーマー達は一斉射撃を続ける。

「行くぞ!!!」

そんな弾丸を避ける事無く、真っ直ぐ突っ込む桐谷。
そのまま銃弾を受けながらステークで敵のバリアアーマーを貫き、沈黙させた。

「プラズマステーク!!」

そんなアルトアイゼンに続いて突っ込んで来たのがウルフ2と呼ばれた黒いバリアアーマー。
桐谷と同じようにステークを相手に打ち込み、電撃を流し、相手を沈黙させる。

「あっという間に………」
「ちっ!!」
「バルトさん!?」

そんな2人に続くかのようにバルトもヴォルフバイルを振り上げ、バリアアーマーを横なぎに一刀両断した。

「なっ!?」
「一刀両断!?」
「凄いですぅ………」

避難誘導しながらそんな様子を見ていた緑、赤、青のゲシュペンストの3人。
そんな3人の後方にピンクの砲撃魔法が通り過ぎた。

「よそ見しないの!!早く避難誘導を急がせて!!」
「「「は、はい!!」」」

3人はなのはの指揮の元、避難誘導を始めた………









(あの戦い方………まるで………)
「隊長………?」
「いや、何でもない」

ウルフ1に声を掛けられ、余計な考えを振り払う桐谷。
桐谷達2人とバルトの3人で殆どのバリアアーマーを沈黙させた。
人質も既に避難を完了しており、後は残りのバリアアーマーを鎮圧するだけだった。

「やはりレジアス部隊長の考えが理解できませんか?」
「当たり前だ。こんなやり方までしてあの人は自分の思い通りにしたいのか?本末転倒もいいところだ」
「ですが、こうもしなければバリアアーマーの優位性を一般人に認識出来ない。部隊長にとってバリアアーマーこそ、ミッドチルダを守護する力としたいのです」
(その考え方が危険なんだ………)

そう思いながら左腕のマシンキャノンで魔力弾を発射する。
連続で着弾した敵バリアアーマーは動かなくなり、爆発した。

「まるで茶番だ………」
「次が来ますよ隊長!!」

3体の敵バリアアーマーが桐谷に向かっていく。

「離れてろ……クレイモア!!」

両肩のスラスターから大量の魔力弾が撒き散らされる。
大量の魔力弾を前に3体全て避けきることは出来ず、耐えきれなくなって爆発した。

「流石ですね……これなら敵も直ぐに鎮圧出来るでしょう」
「敵か………油断するなよウルフ1」

そう言われ、2人共敵に向かっていった………










人質の避難はそれほど苦労は無かった。
敵は人質など目にも止めず、桐谷達に集中していた為、敵も少なくなのは1人でも問題なかった位でドームの外へと危険少なく誘導できた。
外もバリアアーマーの部隊が居たのだが、それは機動七課の別の部隊が既に片付けており、問題は無かった。

「それじゃあヴィヴィオちゃん、私は中のバルトさんを援護しにいくからここで大人しく待っていてね」

そう言って、再び中に行こうとするなのは。
しかしヴィヴィオの様子が少しおかしかった。

「なのはお姉ちゃん………わ、私………ううん、何でもない」
「ヴィヴィオちゃん?」

何か言おうとしたヴィヴィオだが言葉をにごらせ、 そのまま何でもないと自分の内に留めてしまった。

「バルトをお願いね、ヘタしたらドームごと壊すくらい暴れちゃうかもしれないから!!」
「う、うん!そうだね!!急いで止めてくるね!!」

ヴィヴィオの元気な声を聞き、なのははドームへと向かう。

「ごめんなさいなのはお姉ちゃん………一体誰なの私を呼ぶのは………」

ヴィヴィオはそう呟いて1人、なのはとは違う方向からドームへ駆け出した。

「ヴィヴィオちゃん何処へ………?」

そんなヴィヴィオになのははこっそり追跡するのだった………











「轟天爆砕、クリティカルブレード!!」

勢い良く上空から降り下ろされたバルトの斬撃で敵のバリアアーマーの頭から縦に真っ二つにした。

「轟天爆砕って言うよりは一刀両断だなこりゃあ。チビッ子副隊長の言葉を使ったがイマイチだぜちくしょう………」

と1人呟くバルト。

「何て強さ………」
「………」
「隊長………?」

隣のウルフ2が驚いている中、桐谷の鎧の中で別の事で驚いていた。

(似ているあまりにも………だが彼はバルトマンよりも明らかに若い………いったいどういうことなんだ?魔法は若返る事も可能なのか?………………試してみるか……)

そう思った桐谷はステークを構え、バルトに向かって駆け出す。

「隊長!?」

そんな桐谷の行動に驚くウルフ2。
しかし桐谷のスピードに付いていけず、止められなかった。

「うん?………!?てめぇ!!」

慌ててヴォルフバイルで防ぐバルト。
何とか仰け反るのを防いだバルトだったが、怒りが顔に出るほど、怒っていた。

「てめぇ………何の真似だ?不意打ちはされる側がボーッとしてたのが悪い。………だがお前は手加減したろ?どういうつもりだコラァ!!」
「………何故手加減したと?」
「さっきとは違って攻撃に覇気がねえんだよ!俺を舐めてんのか!!」

そう言い返し、ヴォルフバイルを構え向かって行くバルト。

「真っ向から来るなんてな………」

そう呟きながら両肩のスラスターを展開する。

「クレイモア、行け!!」

向かってくるバルトに向かって魔力弾をまき散らした。
真っ直ぐ向かってくるバルトにとって広範囲に向かってくる魔力弾の雨を避けることはとても無理。

「なっ!?」

しかし発射した直後、バルトの姿が消え、クレイモアは全て空振りとなった。

『マスター!!』

レミエルに言われ、咄嗟に左手を上げると左腕に衝撃が走った。

「ほう………優秀なデバイスに助けられたな」
「速すぎる………前のバルトマンはここまで速くは………」
「バルトマン?………なるほど、俺を見て、試したって事か………ちっ………」

桐谷の言葉を聞いたバルトは興が削がれたのか斧を下ろし、頭をかいた。

「だからか………つまらねえ、せっかく今日の憂さ晴らしが出来ると思ったのによ………ったく………」
「あなたはバルトマンじゃない………?」
「まあ似てると言われたら確かに似てるが、俺は違うぜ?バルトマンは俺みたく若くないだろ?」
「………そうですね。失礼しました」

そう言って桐谷はバリアアーマーを解除した。

「では改めまして。機動七課、ベーオウルブズ隊長加藤桐谷です」
「俺はバルト・ベルバイン。ガチな戦いはいつでも歓迎だぜ」

そう言って互いに握手する2人。
バルトの顔は笑みがこぼれたが、桐谷の顔は険しいままだった………










「何ここ………?」

ヴィヴィオにこっそり付いていくなのは。
ドームの関係者のみ立ち入りできる場所。今は職員は誰もおらず、出入り自由状態だ。そんな状況の中、ヴィヴィオはまるでドームの職員みたく知っている道を歩くように一度も止まらず歩いていた。

「何処へ行くつもりなの………?」

ヴィヴィオの行動に今の所特に変わりはない。
なのはは警戒しながらもヴィヴィオに付いていった。

「………あった」

ヴィヴィオが立った場所は何もない普通の壁。
なのはは物陰に隠れ覗いていると………

「えっ!?」

ヴィヴィオが壁に触れ、何か話したと思ったら、壁に魔方陣が現れ、下に続く階段が現れた。

「まさか………!!」

ヴィヴィオは下に降りていき、なのはも慌ててそれに続く。

「えっ………」

そこでなのはが見たのは、近代的な機械で覆われた一室。しかも今のミッドチルダには無い技術で出来ていた。

「なのはお姉ちゃん来ちゃったの!?」
「ヴィヴィオちゃん………?」

驚いてその場に立ち尽くしていたなのはに声をかけるヴィヴィオ。

「これって何なの?」
「………分かんない。だけど私を呼ぶ声がしたの。知らない筈なのに懐かしくて温かい声………そしたら………」

そう言ってヴィヴィオが中心を見ると、そこには白い双剣が台に鎮座されていた。
しかしその双剣はかなりボロボロで所々欠けており、とても使える状態では無かった。

「何これ………」
「君も使い手を待っていたんだね、そんなにボロボロになりながらもバルバドスの様に………」
「バルバドス………?ヴィヴィオちゃん一体何を言って………」

ヴィヴィオの雰囲気も代わり、話にもついて行けずなのはは混乱するばかり。

「………私を呼んだって事は使い手がこの近くに居るって事だね………分かった、私が連れてってあげる」

そう言ってヴィヴィオは双剣の方へと進む。
そして双剣に触れると双剣は腕輪状態へと変わった。

「デバイス………なの?」
「………お姉ちゃん行こう。これを渡さなくちゃ!!」
「えっ!?う、うん………」

ヴィヴィオに言われ、その後に続くなのは。
そして外へと出ると、先ほどの階段は消え、再びただの壁へと元に戻った。

「うそ………」
「行こう!!」
「ま、待って!!」

先に行くヴィヴィオはなのはは慌ててついて行った………











「さて、せっかくの休日にまた金にならねえことしちまったな………」

戦闘が終わり後始末を機動七課に任せたバルトは状況の説明のために、その場に留まっていたが、結局敵対している機動六課のバルトを蚊帳の外に好き勝手始める機動七課。

「もう帰っかな………」

そんな事を呟きながら立ち上がる。

「バルト!!」

そんなバルトに声をかける小女。

「ヴィヴィオか!!テメェ一体何処に………」
「ねえねえ、加藤桐谷って言う人どこ!?」
「桐谷………?ああ、あの赤い鎧の奴か。………って奴に何の様だ?」
「桐谷君!?桐谷君がここにいるの!?………って何で桐谷君?」
「このデバイスを桐谷って人に渡さなくちゃいけないの」

そう言って先ほどドームの地下から持ってきた腕輪をバルトに見せるヴィヴィオ。

「何だこの腕輪………ってこれは!!」
「バルトの持ってるバルバドスと同じ!」
「同じ!………じゃねえよ!!こんなのどっから持ってきたんだ?」
「ドームの地下から」
「はぁ!?」

ヴィヴィオの言っている事がイマイチ理解出来ないバルト。

「バルトさん本当だよ。隠し階段があって、そこから下に降りたらボロボロの双剣が置いてあったの。それをヴィヴィオちゃんが持ってきて………」

なのはの説明を聞いて、何とか納得しようとするバルト。………と言うより別の事が頭によぎった。

(まさかバルバドスの時みたいな事がまた………)

「なあなのは、その時、ヴィヴィオ何か変な事言ってなかったか?」
「えっ!?うん、言ってたよ。『君も待っていたんだね使い手を』って」
「ヴィヴィオお前は覚えているか?」
「えっ?………うん。何でそんな事知っているのか分からないけど………」

それを聞いたバルトは腕を組んで思考する。

(前とは違いヴィヴィオも口に出した事を覚えていた。無自覚にオリジナルの記憶が復元され、上書きされているとか………?もし、このまま回収を続けて記憶がどんどん復元されていけばヴィヴィオは………)

「バルト?」

子犬の様に首を傾げるヴィヴィオを見て、バルトは小さく笑みをこぼした。

「考え過ぎだな。最近余計な事まで深く考えちまう………」

そう言って空を見上げた。

「取り敢えずそれを加藤桐谷に渡せば良いんだな。だったらさっさと渡しちまってずらかるぞ。これ以上休暇を邪魔されてたまるか」
「うん!!今日はシャルゼリアに行こう!!!」
「えっ、また!?」
「うん!!新作の春野菜スパゲッティ食べるんだ!!」

そんなヴィヴィオの明るい声になのはは笑みを、バルトは軽く溜め息を吐いた………












「隊長お疲れさんっス!!」

ウルフ2こと、赤いゲシュペンストを纏うリーガル・ジストはベンチでドリンクを飲む桐谷の隣に座って声をかけた。
身長170cmほどで金髪の小モヒカンの少年でティアナとスバルと同期である。魔力ランクもAと、将来を期待されている陸の局員だが、いかんせんお気楽過ぎ、上官にはよく叱られていたりする。
ただ人見知りをせず、誰であろうが同じ態度をとるリーガルは機動七課のムードーメーカー的な存在だ。

「ああ、リーガルもお疲れ」
「いやぁ、俺はテンション上がりっぱなしですわ!!まさかあの機動六課の高町なのはと一緒に仕事出来るとは………管理局の三大美女………伊達じゃ無いっすね!!!」

「少し黙りなさいよね………頭が痛くなるわ………」

そう言いながらリーガルの反対側に座る水色のショートカットの少女。
ウルフ3、青いゲシュペンストを纏うのがリーネ・マクリティだ。
ベーオウルブズ最年少14歳で魔力ランクAとリーガルと共に将来を期待されている新人だ。
年齢にそぐわない口調と高飛車な態度であまり友人となる人物がいないが、認める相手には最大級の敬意を示す。

「隊長、お疲れ様です。タオルをどうぞ」
「ありがとうリーネ」

リーネからタオルを渡され、首にかける。

「おーおー相変わらず隊長びいき。妬けるね………」
「そう言えばさっき機械のオイルを拭いた雑巾があったような………」
「どんだけ俺の事嫌いなの!?」

ギャーギャー騒ぐ両サイドに挟まれる桐谷に向かってくる1人の女性。

「隊長~データ整理終わりました~」

語尾を伸ばす話し方をする薄い緑色のボブヘアーの女性、。ウルフ4、緑のゲシュペンストを纏うフィーネ・マクリティだ。
リーネの姉であり、ギンガと同じ訓練校にいたギンガの親友。
のほほんとしているが、機械操作、情報収集に長けており、ベーオウルブズでもその役割を担う。
ちなみにギンガに負けず劣らずのスタイルで訓練校でもかなりの人気があったり。

「ありがとう」
「でも凄いですねぇ………こんな人相手に来年戦わなくちゃならないんですよね………ギンガちゃんも居るし勝てますかね~?」
「やるしかないだろう。バルト・ベルバインの相手は俺がどうにかするよ」
「隊長だけに任せる訳には………」
「アホリーネ、俺達は隊長の邪魔をさせないように他の奴等をどうにかするんだよ。それに新人の中にはあの佐藤加奈も居るんだぜ」
「分かってるわよ。あんただけにはアホ言われたくないわ………」
「そうなのよね~加奈ちゃんも居るのに私達勝てるのかしら………?」

同時にため息を吐く3人を見て苦笑いをこぼす桐谷。

(まあ確かに勝てないだろうな………)

実際桐谷から見ても勝てるとは思っていなかった。
最初こそ、加奈だけならば何とかなると思っていたが、今日、実際バルトと接触してその考えは無残にも崩れさった。

「取り敢えず今の状態では1%でも勝てる確率が無いことは明らかだ。先ずは連携の強化と操作の向上。それを集中的に訓練していく。ゲシュペンストは性能的に見れば、バリアアーマーの中でもかなり優秀だ。………だからこそ後は使い手次第って訳だ」

「そうですね………」
「やるっきゃ無いっすね」
「大変なの~」
「リーガルの言う通り、やるしかない!明日もキツイだろうが頑張ろうな!!」
「「「はい!!」」」

そんな桐谷の言葉にしっかりと頷く3人だった………












「すいません!」
「はい何でしょうか?」

機動七課の移動車。
なのははヴィヴィオを連れ、バルトと共に未だに作業を続ける機動七課へとやって来た。

「桐谷く………加藤桐谷さんは何処にいますか?」

そんな中、なのはは一番近くで作業していた20代前半位の男性の局員に話しかけた。

「隊長に………?失礼ですがあなたは………いや名乗らなくても良いです。高町なのは一等空尉ですね」
「はい」
「分かりました。ご案内しますが、隊長も任務終了後なのでお話は手短に頼みます」
「分かりました」

そう言われ、なのは達はその男性局員について行った………












「隊長、お疲れの所済みません、お客様です」
「お客様?」
「桐谷君!」
「なのは!久しぶり、無事で何よりだね」

嬉しそうに話すなのはと違い、落ち着いた口調で話す桐谷。
それでも会えた事には嬉しそうで笑みが溢れていた。

「ボ、ボ、ボウカーさん!!ボウカーさん!!!」

リーガルにボウカーと呼ばれた男性局員。
なのは達を案内した彼こそウルフ1、黒のゲシュペンストを操るボウカー・カウフマンだ。
新人ながらレジアス直属の部下となり、レジアスからも信頼されている局員で、ベーオウルブズには未だに桐谷に警戒しているレジアスが監視の意味も込めて送り出した人物でもある。

「何だ、とうとう盗撮がバレたかリーガル」
「そう、女子更衣室に取り付けた………ってそんな事してないわ!!!」

ノリツッコミをするリーガルだったが、なのはを含めた女性陣の視線が冷たい。

「何だがエローシュみたいな奴だな………」

バルトの呟きに頷くヴィヴィオだった。

「で、なのはどうしたんだ?わざわざ挨拶………ってわけじゃなさそうだな」
「うん、ちょっとこの子が桐谷君に会いたいって」

そう言ってバルトの後ろからおずおずと現れるヴィヴィオ。

「君は………確かヴィヴィオちゃんだったっけ?」
「あれ?桐谷君知ってるの?」
「零治から聞いていたからな。『なのはに子供が出来たって』」
「違う!!もしかしてそれ、お父さん達には言ってないよね………?」
「………多分な」
「………会ったら久々にオハナシなの………」

黒いオーラを放つなのはを置いて、桐谷はヴィヴィオを見る。

「桐谷さん。………これ!!」
「これは………腕輪かな?」
「うん!!あげる!!」
「良いのかい?」
「うん!!その子は桐谷君を待っていたから」
「?」

その言葉を不思議に思いながらも腕輪に触れる桐谷。

『えっ………?』

驚いたのは桐谷では無く、桐谷のデバイスセレンだった。
眩い光を出したと思えば、受け取った筈の腕輪は無くなっていた。

「何だったんだ?」
「確かに渡したよ」

そう言ったヴィヴィオはトコトコとバルトの方へ歩いていく。

「何だったの………?」
「お姉ちゃんも分からないわ………」

リーネとフィーネも不思議そうに桐谷の方を見るが桐谷には特に何の変化も無い。
ただ………

「セレン………?」

桐谷が呼びかけてもセレンの返事は無かった………  
 

 
後書き
性懲りもなく、新たなオリキャラ出しちゃった………
ベーオウルブズのメンバーの説明が詳しく出ましたが、メインで出すことは無いので、こんなのがいたな………って感覚で良いと思います。


………多分。 
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