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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第58話

麻生は基本的に自分の好きな時間帯で起きる。
学校などある日はギリギリまで寝ている。
なので基本は八時以降の起床などザラだ。
だが、そんな麻生の生活基準が常盤台の生活基準に通用する訳がなかった。
午前七時。
コンコン、と扉をノックする音で麻生は目が覚める。
時間を確かめると午前七時。
眠たそうな顔をしながら麻生は扉を開ける。
そこには昨日、食堂まで案内してくれた女子生徒が立っていて一礼をして言う。

「おはようございます。」

「ああ、おはよう。」

「寮監からの指示で常盤台の生活を知らない麻生さんに今日は色々教えるように言われました。」

眠っていた頭が徐々に覚醒していく。
麻生は常盤台の生徒としてこの女子寮に泊まっている。
泊まっているのならこの女子寮のルールに従わなければならない。
女子生徒は言葉を続ける。

「まず七時起床、三〇分以内に身だしなみを見苦しくない程度に整えてください。
 午前七時三十分までに食堂へ集合、点呼を取ってから午前八時までに食事を完了させてください。
 これが朝の常盤台女子寮の決まりです。
 今回は初めてなので私が起こしに着ましたが明日からはご自分で起床してください。
 ちなみに、一秒でも遅れると罰則が与えられるのでお気をつけてください。」

「常盤台の遅刻の時間は何時以降だ?」

「八時二〇分以降になります。」

つまり、さっきの女子生徒が言ったように行動しないと遅刻する可能性が高くなる。
それにこの「学舎の園」は広い。
バスに乗り遅れてしまうと本気で走らないといけなくなる。
麻生は朝から面倒くさい、と思ったが此処の生徒として扱われるのなら仕方がないと無理矢理割り切る。

「大体は分かった。
 朝からすまなかったな。」

「いえ、それでは遅れないように支度してください。
 それでは。」

再び一礼をして女子生徒はどこかへ行ってしまう。
麻生は大きく欠伸をすると顔を洗いに洗面所に向かう。
寝癖を直し、昨日貰った常盤台の制服に着替える。
麻生からすれば支度するのに三〇分も必要ない。
そもそも、大抵の男性が支度するのにそんなに時間はかからないだろう。
だが、女性は違う。
化粧から髪型のセット、服装の身だしなみなどやる事が山ほどあるだろう。
それもお嬢様となれば普通の女性よりも時間がかかってしまう。
案外、彼女達からすれば三〇分は短い時間なのかもしれない。
まだ時間はあったが麻生は部屋を出て、食堂に向かう。
十五分前に食堂に着いたがそれでも麻生よりも早く食堂に着き、座席に座っている生徒がいた。
麻生が食堂に入るとその場にいた全員が麻生に視線を向けるが、無視して昨日座った座席に座る。
時間が経つにつれ生徒が食堂に入ってきて、三〇分になるときには全員が食堂に着席していた。
点呼を取り、食事が運ばれ、食事をとる。
普通に食事を取っていると周りからひそひそと話し声が聞こえてくる。
麻生には聞こえない声だがそれでも、麻生の顔を見てニヤニヤと笑みを浮かべている。
そして、前にいる生徒が麻生に話しかけてくる。

「あら、まだ帰っていなかったのですか?
 昨日の食堂から出て行った時は泣きながら帰っているとばかり思っていましたわ。」

その生徒の言葉に周りの生徒はクスクスと笑い始める。
麻生は気にせず黙々と食事を続ける。

無能力者(レベル0)であるあなたがこの常盤台中学にいる資格なんてないのです。
 さっさと自分の高校へ帰るべきではありませんか?」

寮監に聞こえない声で麻生を罵倒する。
だが、麻生は一切反応することなく食事を続ける。
一切の反応を示さない麻生に苛立った生徒は声を荒げて言う。

「何か言ったらどうですの!?」

さすがに声を荒げたので寮監の耳にも届いたようだ。

「そこで何を喋っているのですか?」

声を荒げたので何事かと寮監が聞いてくる。
内容が内容なので言う訳にはいかず、適当にごまかす。

「い、いえ、何も・・・大丈夫です。」

「・・・・そうですか。
 食事中ではあまり大きな声で喋らないでくださいね。」

少し疑いの目をしていたが聞いても無駄だと考え、少しだけ注意して終える。
その女子生徒の嫌味事はその後、言ってこなかったが食事が終わるまで麻生を睨んでいた。
食事を終えると、鞄を肩で背負いバス停まで歩く。
麻生がバス停に着くと同時にバスがやってくる。
バスの中は女子生徒しかない。
麻生はもう諦めた様な表情を浮かべながらバスに乗り込む。
席には座らず、じっと窓の外の流れる風景を見つめながらバスが常盤台中学前に着くまで外を眺めていた。
常盤台中学に着くと麻生は職員室に向かう。
昨日貰った資料には授業を初めて受ける、その日に職員室に向かうように書かれていた。
おそらく、麻生が編入する教室などを案内する為だろう。
職員室に着き、ノックをして入る。
常盤台の職員も女性で統一されていた。
一人の職員が麻生が入ってくるのを見かけると近づいてくる。

「あなたが麻生さんですね。
 私があなたが編入するクラスの担任の水谷と言います。
 よろしくお願いますね。」

年齢は愛穂とそれほど変わらなさそうな黒髪のショートヘヤーの女性が近づいてきた。
右手を差し出されたので握り返す。

「早速、あなたはクラスに移動して貰います。
 もうじき、授業も始まりますからね。
 さぁ、私について来てきてください。」

水谷という女性先生は職員室から出て行き、麻生もそれに着いて行く。
二階に上がり、2-Aという教室札で水谷先生は足を止める。

「このクラスが今日から二週間、一時編入するクラスです。
 何かこの学校で分からない事があればこのクラスの人に聞いてください。
 私が先に入るので指示があるまで待機してください。」

そう言ってクラスに入る水谷先生。
麻生は欠伸をしながら指示を待つ。
おそらく、麻生がこのクラスに編入してくることを説明しているのだろう。

「麻生さん、入ってきてください。」

声が聞こえたので扉を開ける。

「皆さんも既に知っていると思いますが改めて紹介します。
 彼がこのクラスに一時編入する麻生恭介さんです。
 この学校で分からない事があると思いますので、皆さんしっかり面倒を見てあげてください。」

麻生は教室中に視線を向ける。
その中に見知った顔が一人いた。
相手もすごく何か言いたそうな顔をしているが、必死に堪えている。
水谷先生は狙っているのか、いないのかよく分からないがこう言った。

「そうですね・・・・麻生さん、御坂さんの隣の席が空いているのでそこに座ってください。」

それを聞いた、女子生徒、御坂美琴は驚いた表情を浮かべる。

「ちょうどいいですから、御坂さん。
 あなたが彼にこの学校の事を教えてあげて下さい。」

それを聞いた美琴はついに耐え切れなくなり大きな声で叫んだ。

「何であんたがこのクラスに来るのよおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」

どこかで聞いた事のある台詞を聞いた麻生だった。








大声で叫んだ美琴は水谷先生に注意された。
先日も理事長に「学舎の園」を案内するように言われ、そして今日は麻生に学校の事を教える役を押し付けられた。
何か陰謀があるのではないかと本当に考える、美琴。
対する麻生は眠たそうな顔をしながら授業を受けていた。
レベルが高いという事は簡単に言うと頭が良い。
強能力者(レベル3)以上の能力者を持つ常盤台の授業のレベルも必然と上がっていく。
最初の授業は数学だが、内容は麻生が通っている高校のレベルを遥かに超えていた。
そんな中、麻生はノートを取る事なく、欠伸をしながら授業を聞いてた。
美琴は麻生の様子を窺いながら、授業を聞いていた。
ちなみに今日の美琴の時間割り(カリキュラム)は他の学生と変わりない。
おそらく、麻生の面倒を見るための配慮だろう。
一方通行(アクセラレータ)を倒すくらいの能力者ならこれくらいの問題は余裕で解けるはずだ、と美琴は考える。
数学の先生は問題を書いて、こちらに振り向く。

「それじゃあ、この問題を誰かに解いてもらいましょうか。」

数学の先生は視線を教室全体に向ける。
どうせ、適当に当てるだろうと麻生は思ったが。

「先生、此処は麻生さんに解いてもらいましょう。」

誰かがそんな事を言い出した。
数学の先生はその事を聞いて困ったような表情を浮かべる。
彼ら教職員は麻生が居た高校の成績を知っている。
そのデータが正しいのなら麻生にこの問題は解けない。
それこそ逆立ちしてもだ。
その生徒も分かっているのかニヤニヤと笑みを浮かべている。
麻生の無能力者(レベル0)だと知っているのでおそらく解けないだろうと思っているのだ。
美琴は昨日心配していた問題が起こっている事に気づく。
何とかして助けられないかと考えた時だった。
ガタッ、と席を立つ音が隣から聞こえた。
視線を向けると麻生が席を立ち、黒板に向かって歩いていた。
数学の先生は麻生の行動に戸惑い、言い出した生徒はさらに笑みを浮かべる。

「あらあら、無能力者(レベル0)のあなたの頭でこの問題が解けるのかしら?
 無理せず分かりません、と言ってもいいのよ。」

その生徒の言葉に何人かがクスクスと笑い声を上げる。
美琴はその生徒達の差別的な態度にムカッ、ときた。
だが、その笑みは次の瞬間に消え去る事になる。





「つまり、この公式をこの数式、αからβに入れる事で答えを導き出す事が出来ます。」

麻生はチョークで黒板に答えを書きながら説明をする。
それを聞いた先生を含めた教室全員が唖然としている。
それもその筈、麻生は先生が出した答えを完璧に答えたからだ。

「これでいいですか?」

麻生がそう言うと数学の先生はハッ、と正気に戻る。

「え・・ええ、ありがとうございます。」

先生がそう答えると、麻生は席に戻る。
その後は少しぎこちない感じで授業が進んだ。
問題を簡単に解いた事が気に喰わないのか、何人かの生徒は授業が終わるまで麻生を睨んでいた。
もちろん、麻生もその視線に気がついていたが無視している。
数学の授業が終わると、美琴はすぐに麻生に聞いた。

「あんた、あんなに頭良かったの?」

「たまたま知っている問題だっただけだ。」

そう麻生は答えたが美琴は信じられなかった。
都合良くあの問題を知っている何て偶然はない美琴は思う。
美琴はさらに質問しようとしたが、次の授業の先生がやってきて質問するタイミングが無くしてしまう。
本当に何者なんだと、美琴は改めて思った。 
 

 
後書き
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