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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第59話

その後の麻生はまさに圧巻の一言だった。
クラスの生徒が嫌がらせとばかりに麻生に問題を解かせようとするが、麻生はそれを全て完璧に答える。
模範解答どころか教師も顔負けの教え上手でもあった。
嫌がらせをしようとした生徒達は自分の思い通りに事が運ばない事に苛立ち、美琴やそれ以外の生徒は純粋に麻生の頭の良さに感服していた。
その後の昼休み。

「あ、あの・・・・麻生君。」

「何だ?」

麻生は後ろの方から名前を呼ばれたので振り返る。
そこにはノートを胸に抱えた女子生徒が立っていた。
何か言いたそうにしているが、恥ずかしいのか顔を少し赤くしながらもじもじとしている。

「俺に何か用があるんだろう?」

「え・・・えっと、さっきの授業で分からない所があったので・・・・その・・・教えてほしいかな、と思いまして・・・・」

どうやら麻生の頭が良いから分からない所を聞きに来たみたいだ。

「どの問題だ?」

麻生がそう言って手を差し出す。
女子生徒はゆっくりとノートを開けて、分からない問題を麻生に見せる。
すらすらと問題を解きながら丁寧に教えていく。

「あ、ありがとうございます!」

さっきよりも顔を赤くしながらお礼を言って、おそらく友達であろう何人かの女子生徒の元に向かう。
彼女らは何やら麻生の方をちらちら見つつも、嬉しそうな笑みを浮かべて何かを話している。
そんな事を気にせずに麻生は昼休みをどう過ごすか考えていると。

「そろそろいいかしら?
 あんたに校舎の中を案内するように言われているんだけど。」

隣から声が聞こえたのでそちらに視線を向ける。
美琴は腕を組みながら腰を自分の座席に預け麻生を見ていた。
心なしか睨んでいるように見える。

「ったく、何で私があんたの世話をしないといけないのよ。
 それに他の生徒と仲良くしちゃって。」

「何か言ったか?」

「何も!!
 さっさと行くわよ!!
 早くしないと昼ご飯が食べられなくなるわよ!!」

なぜ美琴が怒っているのかさっぱり分からない麻生は、美琴が怒っている理由を考えつつ後を追う。
常盤台の校舎はとても広く、麻生や上条が通っている高校とは比べ物にならなかった。
麻生が行動できる範囲は決まっているのでそれほど案内に時間はかからなかった。
時間も時間なので食堂に向かう事になった。
普通の学校の食堂とはガヤガヤ、とした雰囲気で長いテーブルが設置されているのが一般だ。
しかし、この常盤台中学はお嬢様学校、他の学校の食堂と比較してはいけない。
まず、床に引いてある絨毯は一級品で天井には幾つものシャンデリアが設置されている。
次に長いテーブルではなく、直径二メートルくらいの丸テーブルに椅子が数個、置かれている。
常盤台の生徒はそのテーブルに座り、紅茶などを呑みながら他の生徒と話をしたり食事をしている。
周りにはメイドもいて、注文や料理を運んでいる。
雰囲気など何もかもが違った。
麻生と美琴が食堂に入ると視線が二人に集まる。
それもその筈、美琴は常盤台のエースで麻生は突然一時編入してきた生徒だ。
嫌でも注目は浴びてしまう。
麻生はもう慣れたのかいつも通り気にすることなく近くの席に座り、美琴も相席に座る。
近くのメイドを呼び、適当に注文を頼む。

「ねぇ、あんたってあんなに頭良かったのね。
 意外と言えば意外ね。」

「人を見かけで判断すると痛い目に遭うぞ。」

「見かけで判断してないわよ。
 ただ、あそこまでスラスラと答えれる姿を見て驚いただけよ。」

「さっきも言った筈だ。
 たまたま知っている問題だっただけだ。」

「たまたま知っている問題が何度も続くものなの?」

「続くときは続くんじゃないか?」

「前から聞きたかったんだけどあんたって本当に何者なの?
 いろんな能力を使ってくるわ、頭はいいわ、普通の一般人Aとは思えないのよね。」

美琴は前々から気になっている事を麻生に問いただす。
麻生はどうしようかと迷う。
正直に答えたとしても説明が長くなるし、何より星の事をあまり説明したくない。
麻生はあの地獄を思い出したくないのだ。
いつもの様に適当にはぐらかそうとした時だった。

「あら、こんな所にいたのですね。」

その声に二人は視線を向ける。
そこには麻生に嫌がらせをしているクラスのメンバーと、他にかなりの数の生徒達が麻生達のテーブルの近くに立っていた。
おそらく、麻生の一時編入などの事を認めていない生徒達だろう、と麻生は考える。
しかも麻生はデータ上、無能力者(レベル0)で登録されているので、より一層認めていないのだ。

「この常盤台中学に一時編入する前に恥をかかないよう必死にご勉強でもしたのでしょう。
 何とも無駄な努力ですわね。」

どうあっても、麻生の学力は付け焼刃だと考えたいみたいだ。
生徒は矛先を麻生から美琴に向ける。

「美琴さんも美琴さんです。
 こんな負け犬の落ちこぼれを相手にしているだけ時間の無駄ですよ。」

その言葉を聞いた美琴は少し頭にきた。

「あんた達ね、いくら何でも言い過ぎじゃないの。」

「あら、そうですか?
 落ちこぼれにお似合いの言葉だと思ったのですが。」

その言葉に生徒達が笑い出す。
美琴はその見下す態度を見て完全に頭にきた。
だから、つい口走ってしまった。

「こいつは私に勝った事のあるのよ!!」

その言葉にその場にいた生徒達の笑いが一瞬で収まる。
麻生も麻生で何を言っているんだ、と顔で訴えるが美琴の言葉は続く。

「前に私が戦った時は手も足も出なかったんだから!!」

自分の敗北を自慢げに言っても恥ずかしいだけだが、そんな事は美琴の頭に入っている訳がない。
その場にいる生徒達やそれ以外の生徒達も美琴の言葉に信じられないといった感じだ。
美琴は学園都市で第三位。
その第三位に麻生は勝ったのだと、美琴は言っているのだ。
例え本人からその事を聞いても簡単に信じる者はそうはいない。

「何をご冗談を。
 美琴さんがこんな無能力者(レベル0)に負ける訳がありませんわ。」

「これが本当なのよ。
 信じられないようなら今度、能力測定の日に確かめればいいじゃない。」

「おい、本人そっちのけで話を進めるな。」

麻生はそう言うが美琴は全く聞こうとしない。
売り言葉に買い言葉なのか、話は徐々にヒートアップしていく。

「よろしいですわ!
 もし私達と彼が勝負して彼が負けたらこの学園を去る。
 これでよろしいですわね!!」

「ええ、受けて立つわ!!」

麻生の承諾を得ずに勝手に勝負する事になってしまった。
その集団が食堂から出て行き、麻生はハリセンを創り美琴の後頭部を思いっきり叩く。

「いった~~い!!!
 何するのよ!?」

「それはこっちの台詞だ。
 俺の了承も得ずに勝負を決めているんだお前は。」

ハリセンを持ちながら、麻生は呆れた表情を浮かべている。

「だって、あんたはあれだけ言われて悔しくないの!?」

「全く。
 データ上ではあいつらの方がレベルは上だ。
 だったらあいつらの勝ちでよくないか?」

「全然良くないわ!!
 あんたはこの私に勝っているのよ!!
 それなのにあんな奴らに負けを認めるなんて私が許さないわ!!」

面倒くさい事になってきた、と麻生は思う。
能力測定は四日後に実施されるらしい。
どう転ぼうが麻生にとって面倒な事に変わりなかった。






同時刻、職員室。
昼休みの時、麻生のクラスで授業をした教師が集められていた。
教師達が話し合っている内容は麻生恭介に関する事だった。
机の上には麻生の学校での成績などが書かれた資料が配られていた。

「これを見た限り彼は普通の無能力者(レベル0)の高校生です。
 なのに、彼は此処の問題を難なく答えました。」

「私の授業でも同じでした。
 とても無能力者(レベル0)の学力とは思えませんでした。
 理事長は何か聞いておられるのですか?」

「いえ、何も。
 上層部に聞いても良い答えが返ってきませんでした。
 おそらく、上も彼について有力な情報を持っていないのでしょう。
 だからこそ、この一時編入という名目を利用して彼の能力などを少しでも知ろうとしているのかもしれません。」

麻生に関する情報は高校などの成績や生活についての資料しかなく、能力などの資料は一切なかった。

「能力の演算と学力とでは違いがあります。
 もしかしたら彼は演算計算が苦手な生徒なのかもしれません。」

要するに能力を発動するための演算能力が低いが、学力に関しては申し分なしといったタイプの生徒かもしれない。
この学園都市には学力はあるのにそれを演算能力に活かせていない生徒もいる。
麻生はそっちのタイプなのかと、教師達が考えた時、一人の女教師が慌てて会議室に入ってくる。

「大変です!生徒達が四日後にやる能力測定の日に麻生君と能力で勝負させてください、と言っています!!
 もし、自分達に麻生君が負けるようならばこの学園から追い出してほしいとの事です!」

その報告を聞いて全員が驚く。
一時編入には反発が多いと予想していたがここまでとは思ってもいなかった。
教師達はどうやって静めようかと話し合おうとした時、理事長が言う。

「その対決を認めましょう。」

理事長の言葉に一同は唖然とする。

「理事長!何を言っているのですか!?
 もし麻生君が負ければ彼はこの学園を追い出されるのですよ!!
 そうなれば上が黙っていません!!」

「確かにそうですがこれは彼の能力を知るチャンスかもしれません。
 私も一教師。
 彼の能力を知る事が出来れば更なる能力を開発できるかもしれません。」

「でも、もし負けてしまう事になってしまったら・・・・」

「その時は私が何とかします。」

理事長の固い決意に教師達は何もいなかった。
理事長は思った。
なぜ、上層部が突然このような編入を導引したのか。
それは麻生恭介という未知の存在について少しでも知る為に、この編入を行ったのではないのかと。
この勝負で何かが分かるかもしれないと、そう思う理事長だった。








同時刻、食堂。

「女王、派閥内で何やら騒いでいるみたいですよ。」

「う~ん?どういうことぉ?」

「何でもあの編入生をこの学園から追い出そうとしているみたいです。」

「ええ~、私はまだ挨拶もしていないのに。」

「そんな事をしなくても良いんですよ、女王。」

食蜂操祈は少し残念そうな顔をしている。
情報によるとその編入生は無能力者(レベル0)
どう足掻いても彼女達に勝つ事は出来ないだろう。

「追い出される前に顔だけでも見ておこうっと。」

少し笑みを浮かべながらケーキを食べるのだった。 
 

 
後書き
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