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とある誤解の超能力者(マインドシーカー)

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第6話 別れ




牧石は、空港にいた。
牧石が前回空港に来たのは、目黒に誘拐されたかのように強引に連れ去られて以来のことであり、空港の様子について、あまり把握できていなかった。

サイキックシティ国際空港は、サイキックシティと日本や世界へとつなぐ唯一の空の窓口である。
国内線と国際線の二つのターミナルと4本の滑走路という、日本でも最大級の規模を持つ空港である。

もともと、小さな地方空港が巨大化したことから、敷地の問題、騒音問題等、空港拡張に多くの問題を抱えていた。
だが、サイキックシティはこれらの問題を、科学技術によって解決してきた。
現在では、この空港は24時間稼働している。

もっとも、出入国のチェックは非常に厳しく、サイキックシティの外から来た人たち、特に日本人にとって、「厳戒態勢以上であると」不満をもらす人も多かった。

原因は、サイキックシティの科学力がほかの世界よりも数十年進んでいることによる。
笑い話として、「サイキックシティのコンビニで買った、あめ玉を税関で没収された」という冗談があるくらいだ。

牧石が、空港に来た原因の人物も、手荷物検査で時間をとられたと苦笑していた。
牧石は、その話を聞いたとき、自分もサイキックシティの外からきたという設定を思いだし、愛想笑いをしたものだ。


牧石が空港に来た理由については、そばで荷物を預けている黒井の付き添いのためだった。

夏休みの最終日、黒井は飛行機で研究学園都市に帰ると言っていた。
黒井は日本政府が2番目に(サイキックシティを含めれば3番目に)作られた研究学園都市に住んでいる。
拠点は、東京都青梅市を中心にしており、成田空港から2時間で自宅に帰ることができる。

目黒は見送りに行く予定だったが、妹から、
「お兄さま。
夏休み最終日だというのに、課題が全く手つかずのようですね。
今日1日、家から出ることを禁止します」
と宣告されたため、ここにはいない。

ついでに言えば、黒井はすべての課題を終わらせてから、サイキックシティに来ているし、牧石は毎日少しずつ課題をこなし、8月の上旬には終わらせてある。

黒井は、牧石と最初に出会ったときのように、白を基調にしてゴスロリを少しだけ取り入れたような、ワンピースを身につけていた。
牧石は、黒井の姿を眺めながらよく似合っていると考えていると、
「牧石。
何を考えていた?」
黒井は、牧石に少し睨みつけるような表情で追及する。

「何を考えているかなんて、僕の頭の中をのぞき込めばわかると思うが?」
牧石は、余裕の表情で黒井に返事する。

黒井は悔しそうな表情で牧石を見つめる。
「いつの間に、防御が完璧になったの?
牧石のくせに、牧石のくせに!」
「黒井君。
君の攻撃がいけないのだよ。
いつもいつも攻撃を受けていれば、耐性も付くというもの。
残念だったねぇ」
牧石は、黒井の頭を軽くたたきながら、勝利宣言を行った。

とはいえ、牧石の心の中は、安堵を浮かべていた。
人の心を見透かされるというのは、わかっていても気持ちの良いものではない。
黒岩に初めて心を読まれたときから、思っていたことだ。

力を求めるため、サイランドで「超魔召喚エピソード0 ~新時代の幕開け~」などをやりこんだり、偶然図書館で出会った黒岩に拝み倒して、サイリーディングを受けたりもした。

「超魔召喚エピソード0」のフェゾ様エンディングのあまりのむごさに「前作の感動を返せ」とわめいたり、黒岩に拝み倒したときに周囲から変質者と勘違いされたり、ゲームで全身筋肉痛になったりと、いろいろな災難があった。

ミナコから、冗談で薦められた「超能力でアイドルをプロデュースするゲーム」もあったが、おさげの眼鏡委員長風の少女をAAランクマイナスに仕上げたところで中断している。

いろいろあったが、牧石は、苦労のかいあって対サイリーディング能力を新たに身につけた。
牧石は精神を集中し、体の回りに外部からの攻撃を保護するという薄い膜をイメージで展開することで、アイテムに頼ることなく相手からのサイリーディング攻撃から身を守ることができる。

外部からの、精神的な攻撃に対して身を守るのであれば、頭部を中心に膜を展開すれば問題ない。
牧石が全身に膜を展開するのは、直接肌に接触する相手からも思考を読みとられないようにするためのものである。
これだけは、現在のサイキックシティにおける科学力でも対策ができないものである。


だから先ほどまでのように、黒岩に手を握られても、今みたいに正面から抱きつかれても牧石は平然としていられた。
いや、さすがの牧石も別の意味で、抱きつきには耐えられなかった。

黒井から、嗚咽の声がする。
「どうして、心を閉ざすの?
あたしに心を開いてくれたのは、牧石とお兄ちゃんだけだった。
あたしの能力は生まれつきのものだった。
あたしの能力のことがわかると、みんなあたしの事を避けていた。
あたしは、そんな世界が嫌だった……」
「黒井……」
「牧石は、お兄ちゃん以外で初めてあたしを受け入れてくれた。
受け入れてくれたと、思っていた。
・・・・・・でも、違ったのね!」
黒井は、激しく泣きながら牧石の胸をたたいた。

牧石は黒井の気持ちを知り、強く動揺した。
牧石は、自分の力を高めるため、自分の秘密を知られないため、心を読まれないように様々な特訓を自分に課してきた。

牧石は、そのこと自体は誤っているとは思っていない。
ただ、周囲への配慮が足りなかったということを理解した。
だから、牧石は黒井に理解を求めるために説得を試みた。


「黒井。
それは、違うぞ」
牧石は、心で黒井に話しかける。
「誰だって、知られたくない秘密はある。
黒井にだって、知られたくないことくらいあるだろう。
だけど、僕は黒井を受け入れる」
「嘘!」
黒井は牧石の言葉を否定する。
「信じられないのなら、好きに僕の心に入るがいい」
牧石は、展開していた心の壁を取り払った。

黒井は、牧石の胸に握った手を当てて、静かに想いを読みとった。
「牧石……」
黒井は、ようやく落ち着きを取り戻し始めた。

「僕は、どこにでもいるような高校生だ。
たいした事は、考えていない。
それでも、黒井を泣かせるような事はするつもりはない」
「牧石のバカ……」
黒井はしばらく牧石を抱きしめていた。

搭乗手続きを知らせる空港のアナウンスが聞こえた。
「黒井。
そろそろ、手荷物検査の時間だぞ。
急がないと、荷物だけ搬送されるぞ」
「わかっているわよ、そんなことくらい」
「なら、さっさといけ」
牧石は黒井の背中を押した。

「牧石……」
「また、休みになったらサイキックシティに来い。
適当に相手になってやる」
「あたしには、お兄ちゃんがいるから大丈夫よ」
「そうかい」
牧石は、なきやんだ黒井を見送った。


牧石の夏休みは終わった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



空港での牧石と黒井のやりとりを遠くから観察していた女性がいた。
黒い服をまとった磯嶋と、福西だった。

「磯嶋さん。
いいのですか、顔をあわせなくても」
福西はゴーグルで二人を眺める磯嶋に声をかける。
「牧石は、私の敵です」
磯嶋は、視線を動かすことなく福西に答える。
「そうですか、……」
「あなたは、私よりも牧石を選ぶといったわよね。
私の計画を、伝えるつもりなの?」
磯嶋は、挑発的な表情で福西に答える。

「俺がメールで送った内容は「研究ならば磯嶋さんを支援する」という内容です。
今は研究の話なので、磯嶋さんを支援することに変わりはありません」
福西は、たんたんと述べる。

「そう……。
君もおもしろい人ね」
磯嶋は表情に笑みをみせる。

「さて、磯嶋さん。
ここで、時間をつぶしてもいいのですか?
今日は、大事な研究成果の仕上げの日ではありませんか?」
福西は、疑問を口にする。

「もう調整は済ませたわ。
今頃は、君の友人の家で手伝いをしているはずよ」
「なるほど、さすが磯嶋さんというところですか」
福西は感心しながら、磯嶋を見つめる。

磯嶋は、観察用のゴーグルをはずすと、福西にも聞こえないようにつぶやいた。

「手に入らないのなら、いっそ……」 
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