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IS インフィニット・ストラトス~転生者の想いは復讐とともに…………~

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number-40 gears of destiny

 
前書き


運命の歯車。


 

 


麗矢はスコールと離れた。
その途端に通信機器に連絡が入る。
それに肩をビクゥと大きく揺らしたところをスコールに見られてしまった。
恥ずかしかったが、悶えるのは後にして電話に出る。


『やっほーれーくん。ちょっといいかな? まあ、話は聞いてないけどっ。ねえれーくん、いっくんと戦ってくれない?』
「どうしてまた、そんなことを……」
『だってぇ、れーくんが今までみんなに隠してたこと言っちゃったんだもん☆』


束が自分の知らないところでほかの人にカミングアウトしていたことに唖然として、その次に語尾に星をつけたことにいらっと来て、電話を切ろうとした。
それを感じたのか、止められたが。


「まあ、いいか。分かったやってやる。で? 時間はいつだ」
『明日のちょうど昼ぴったしっ!』
「分かった、じゃあな」


麗矢は束からの連絡を切ったところで誰かに見られているような違和感を感じた。
その原因はすぐに分かったが。


遠くから建物の陰に隠れて、頭だけをこちらに出して様子をうかがっている少女。
それが先ほど感じた違和感の正体だった。
スコールも麗矢の目線を追いかけて、あの少女を見つける。
あの、織斑千冬にそっくりの少女を。


おそらく、あの少女はクローンであると簡単に予想がつく。
何処から千冬のDNAを持ってきたのかは知らないが、亡国企業の上層部はこんな黒いことまでやっていたのかと思うと怒りを通り越して、呆れてしまう。
麗矢は額に手を当てて、あの少女をどうするかを考えるが、その前に名前を知らなければいつまでも不便だった。


「ねえ、君。名前は?」


怖がらせること無い様に落ち着いて、優しく語りかける。
安心させるようにゆっくりと、相手の目を見て。
もう一つ大切なこと、目の高さも合わせる。
麗矢は振り返り、スコールにも同じようにやるように促す。
何で私が・・・・とか何かぶつぶつ言っていたけど、ここはあえて無視して聞こえないふりをする。
これは必要なことだから。


「わ……わたしの名前は……マドカ、織斑マドカ」
「マドカちゃんか。じゃあ、マドカちゃんは何処に行きたい?」
「私の……お姉ちゃんのところ……」


見たところここ最近ポットから出てきたばかりだと思う。
でなければオータムに触発されて、凶悪な性格になっていたはず。


麗矢はスコールを見る。
スコールは麗矢に向かって頷く。
たったそれだけで意思の疎通ができたのか。
長い間パートナー同士だっただけはある。もはや、お互いの気持ちなんて手に取るようにわたるのだろう。


「よし、行こうか」
「う……うん」


麗矢が差し出した手を躊躇いがちに取り、
スコールが差し出した手も、同じように開いた手で取った。
真ん中にマドカ、右側に麗矢、左側にスコール。
右から、銀、黒、金と髪の色はばらばらだが、その姿は親子に見えなくもなかった。


      ◯


「いいってよ、れーくん。最後の余興だって」


束は顔は笑っているが、目が笑っていない。
目に浮かぶは悲しみ。
涙がこぼれ、笑っているのに涙をこぼしている姿になった束。


幼いころからの親友にも見せたことの無い涙。
束は思い出す。
これで泣いたのは二度目ということを。


一度目は世界から指名手配されて、恐怖におびえて泣いてしまった時。
二度目は今。麗矢は自分の死に際を分かっている。そして、束もそれを分かっている。
麗矢は、死に場所を一夏との戦闘に賭けた。
そして、楯無も裏に身を置くためか、束の表情から読み取れた。
麗矢のことを――――


だが、一夏はそんなこと知らない。
束がそれとなく麗矢のことを示唆するようなことを言ったのに、全く気付くことがなかった。
ただ、純粋に麗矢との戦闘を楽しみなようだ。
麗矢が考えていることが分からないがための楽しさなのだろう。


束と楯無はみんなが寮に帰るまで、気丈に振る舞った。
その間は麗矢のことについて全く触れようとしなかったが。
そして、寮に帰るときになって、束と楯無は残った。
適当に言いくるめて、先に帰るようにと言った。


「君は気付いたんだね……」
「はい……それと私にはちゃんと更識楯無っていう名前があるんですけど」
「はははっ、ごめんごめん」
「………まあ、私の本名を知っている人は少ないですが」


楯無は更識家17代目当主。故に本名は名乗れない。
それを束は何処から知ったのか、すでに分かっていた。


「……束さん」
「……うん、そうだよね。たっちゃん」


二人は抱き合う。
そして、互いに顔を隠すようにしてから、涙をこれ以上人に見せないように泣いた。
永遠と涙が枯れるまで泣く事を止めなかった。


二人に麗矢を止めるという選択肢はない。
ただ、麗矢の意思を尊重して、何も言わない。
こんな悲しみを今、味わうのは私たちだけでいい。


麗矢が好きな者同士、だけどまだあとの二人には教えない。


月明かりが総合病院のエントランスロビーにいる二人を照らし続けていた。


      ◯


千冬は自分に割り当てられている寮室でとある映像を見ていた。
ここに来てからの麗矢の戦闘記録である。


千冬は麗矢の攻撃に違和感を持っていた。
どこか引っかかるような感じのものを。
『ジェノサイド』からおかしかったのだ。


「――――ん?」


千冬は麗矢が大技を使う時の共通点を見つけた。
麗矢本人が光るなんておかしい。
コンソールを使って、調べていく。


「こっ、これは……!」


千冬も麗矢の真実にたどり着く。
それと同時にあのマイペースな幼馴染を殴ってやりたくなかった。
これは次に会った時に伝える必要がある。
たとえあいつがこのことを知っていたとしても言ってやらなければならない。


これからのことを考えると気分が重くなってくる。
なぜなら、千冬はまた生徒を守れないのかもしれないのだから。


不意に時刻を確認する。
23時41分。
そろそろあいつらが戻ってくるころだろうか。
千冬は気分が下がって重くなった腰を上げ、寮の入り口に向かった――――


      ◯


麗矢は思う。


本物の主人公と偽物の主人公。
勇者と偽勇者。
勝つのは本物と相場は決まっている。


だが、負けるわけにはいかない。
人生最後の戦いを黒星で終わらせるわけにはいかないのだ。
たとえ自分が偽物だとしても。





――――外れていた運命の歯車は音を立てて、廻り始めた。




 
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