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IS インフィニット・ストラトス~転生者の想いは復讐とともに…………~

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number-39 conclusion

 
前書き


決着。


この場合は、夜神鳥麗矢。

 

 


「強すぎるよ、お前。ここまで歯が立たないなんて思わなかった」
「……オータム。お前はここで死ぬべきではない。どこにでも行け」
「……ちっ。分かったよ、じゃあな」


麗矢は女性――――オータムに向けていた《デストラクター》を引っ込めた。
オータムは、ISを解除して麗矢の横を通り過ぎ、闇の中へ消えていった。
もうあいつと会うことはないだろう。


麗矢は一抹の寂寥を覚えたが、すぐに振り切って前に突き進む。
だが、その足もすぐに止まる。
止まった麗矢の前に以前の同僚が立ちふさがった。


「今度はお前か、スコール」
「……その様子じゃあ、オータムを倒したようね」


スコール。麗矢の目の前にいる女性、本名、スコール・ミューゼル。
組織<亡国企業>に属するもの。


麗矢はISの待機形態であるブレスレットを突き出すが……スコールは、ISの待機形態を地面に投げた。
戦う意思はないようで、麗矢の道を阻むつもりではないようだ。
ただ、麗矢にとっての誤算があった。


スコールは前々から組織のやり方に不満を持っていたらしい。
麗矢に同行すると言い出したのだ。
麗矢は否定することも考えた。
だが、スコールは一度決めたことは頑なに諦めようとせずに最後までやり通そうとする性格でもあることを知っている。
そのことから拒否しても無駄だった。


「……分かった。行こう」


麗矢を阻む者はいない。
復讐を果たすため、麗矢は最後の扉を開いた。


     ◯


「どういうことだよ……どういうことだよそれぇっ!!!」


一夏が聞いたものはあまりにも非情なものだった。
シャルロットをあんな目に遭わせたのは、自分が目標にしている存在だった。
爆発に巻き込まれたような衝撃が一夏を襲う。


楯無はそれ以上口を開くことはなかった。
その楯無の代わりにセシリアが後を継ぐ。


「落ち着いて聞いてくださいね? ……麗矢さんは、デュノアさんの実の親を殺していたそうです。その場に居合わせたデュノアさんは、麗矢さんが親を殺した人だと見抜きました。そして、私たちが麗矢さんと会っているときに、やはり我慢が出来ないそうで銃口を麗矢さんに向け、引き金を引こうとしたのです。この時、麗矢さんはISを展開していません。代わりに学園に放とうとしていたクラスター爆弾を持っていました」


ここまでゆっくりと言葉を紡いでいくセシリア。
事細やかに一夏に説明していく。
セシリアは一つ間を置き、再び言葉を紡ぎ始めた。


「……麗矢さんは転がっていたクラスター爆弾をデュノアさんに向けて投げつけ、それをデュノアさんもろとも長刀で斬り伏せたのです。……これぐらいです、私が知りうることは」


一夏はラウラにも顔を向けた。
目があったラウラは首を静かに横に振り、口を開いた。


「悪いな、私もそれぐらいしか知らんのだ」


一夏は強く手を握りしめる。
虚空を睨むその瞳は憎しみの籠った殺気立ったものだった。
――――麗矢を殺す。
それだけが一夏の頭を占めていた。


それでも我を失うことはなかった。
とりあえずこのやりようのない怒りをどこかに――――壁を叩きつけることで発散させた。
そして再び楯無と向かい合う。


「麗矢は何処にいる。俺はあいつを殺してやるんだ」


一夏は怒りで自分を抑えることが出来ない。
ただ、怒りの矛先が麗矢に向いたことだけは、楯無は知ることが出来た。
楯無は憔悴しきったこの体に鞭撃って立ち上がる。
だが、楯無はすぐに同じように椅子に座ることになる。


「いっくん。その必要はないよ。だって、れーくん。もうすぐ死んじゃうから」


篠ノ之束から発せられた衝撃の事実と共に。


      ◯


――ドゴオォ!!


轟音と共に扉が強引に開け放たれる。
開けたのは麗矢。
対峙するは初老の男性達。


「なっ――――! お前、ここがなんだと――――」


一番手前にいた男の言葉は最後まで続かなかった。
麗矢が一刀のもとに斬り伏せたのだ。


「お前ら全員殺してやる」


麗矢はISを展開、ここに来るまでにチャージしていた八門の超電磁砲を扇形に広がるように放つ。
光が収まり、紫電も止むとその場には麗矢とスコールしかいなかった。
塵一つ残さずこの世から消えたのだ。


「あっけないわね。こんなものにこき使われていたなんて思うと反吐が出るわ」
「まあ、いいさ。終わったのだから」
「ふふふ、そうね」


スコールがさりげなく麗矢に寄り添う。
麗矢は振り払おうとするが、スコールの肩が震えているのを見ると、その気も萎えた。
大人しく好きなようにさせる。


この場面をオータムに見られたら、嫉妬で怒り狂うだろうなとか、関係ないことを思いながらスコールの腰に手を回した。


(――――母さん、父さん。俺やったよ……)


      ◯


「――――ッ! それはいったいどういうことですか!?」


いち早く我に戻った楯無が束に聞いた。
束はいつも通りの心の内が読めない表情をしているが、そこにもどこか陰りがあった。


「言葉の通りだよ。れーくんが使うISはエネルギー源が生命なんだ。それを分かったうえでれーくんは使い続ける。余命は長くて半年ぐらいかな……」


ここで束の表情が崩れた。
一夏は見たことはなかった。束がここまで感情を表に出す所なんて見たことがなかった。
そしてそれは箒も一緒である。


束と箒の仲は険悪と言ってもいい。
ここ数年言葉さえ交わしたことがない。
そんな仲であった束がいきなり現れたことに箒は動揺を隠しきれない。
一方束は、そんな箒の気持ちなんぞつゆ知らず話を進める。
――――まるで意図的に避けているように。


一夏は束の話を聞いて愕然とした。
シャルロットの敵であるあいつの命があと半年なんて予想すらできなかったことである。
心の中であいつを殺すという意思は急速に静まっていく。
しかし、その代わりに最後にまた麗矢と戦いたいという気持ちが芽生えてきた。
そして一夏は、その心に芽生えた気持ちを隠すことはせずに束に告げた。


「束さん、俺、麗矢とも一度戦いたい」


驚愕で目が開かれたが、すぐに元通りになってどこかへ連絡を取り始めた。
その時に楯無が見た束の表情は今までニュースなどで見たことがないほどの笑顔だった。


 
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