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好き勝手に生きる!

作者:月下美人
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第十八話「ゲーム開始! 血祭じゃー!」

 
前書き
今回はちょいと長めです。 

 
  

 決戦当日。僕は朱乃お姉ちゃんの家でのんびり過ごしていた。そういえば、ここ最近は自宅に帰っていないなー。それもお姉ちゃんの家やイッセーの家、小猫ちゃんや木場くんの家なんかに泊まったりする日々が続いているからだ。なんか家に帰るとシーンとしていて落ち着かないんだよね。


 現在は夜の十時。決戦は二時間後の深夜零時だ。それまで暇だー。


 お姉ちゃんはいつもの如く後ろから僕を抱きしめ、頭をナデナデしている。ちなみに僕たちの格好は制服です。なんでもリアスちゃんが「私たちのユニフォームは駒王学園の学制服ね。オカルト研究部だもの」とのことらしい。


「レイくんは相変わらず抱き心地がいいですわね」


「んー、そお~?」


「はい、ずっと抱きしめていたいくらいですわ」


「お姉ちゃんがしたいならいいよー」


「うふふ、レイくんは優しいですね」


 あー、ナデナデ気持ちいいな~。


「そういえば、レイくんはどなたか気になる女の子は居ないのですか?」


「んー? どうしたの急に」


 お姉ちゃんからこんな話を振ってきたのは初めてだよね。イッセーとは松田くんたちから訊かれたことはあるけれど。


「この間一緒にお風呂に入ったとき、珍しくコレに興味津々でしたので。レイくんは女の子に興味なさそうでしたから」


 そう言って僕の頭にその大きいおっぱいを乗せる。あーうー、重いよ~。


「うー……僕もちょっとよく分かんない。あんなに興味が引かれたのは初めてだったからね。あと、気になる女の子はいないかなー。仲良くしたい女の子ならいるけど」


「あら、誰ですか?」


「んっとねー、お姉ちゃんと小猫ちゃん!」


「あらあら、私と小猫ちゃんですか」


 少し顔を赤らめたお姉ちゃんが頬に手を当てた。


「うん! 朱乃お姉ちゃんは初めてできたお姉ちゃんだし、小猫ちゃんはよくお菓子のお話しするもん」


「ああ、なるほど。そういう意味ね……」


 ん? どうしたの、苦笑して。


 お姉ちゃんは僕をギューッと強く抱きしめた。


「私も大好きですよ」


「おー」


 それは嬉しいねぇ!





   †                    †                    †





 時刻、深夜十一時四十分。


 旧校舎の部室に集まった僕たちは各自思い思いに過ごして時間を潰していた。


 イッセーとアーシアちゃんは椅子に座って静かに時間になるのを待ち、手甲と脛あてを付けた木場くんは壁に寄りかかって目を閉じている。学生服に手甲と脛あては微妙だと思うんだけど……。


 小猫ちゃんは本を読んでおり、その手にはオープンフィンガーグローブ。年季が入ってます。


 お姉ちゃんとリアスちゃんは優雅にティータイムです。アッサムティーが美味しかったです。


 そして僕はあるものを小瓶に詰めていた。水色の綺麗な液体だ。久しく使わなかったから腐ってないか心配。


 小瓶に詰める作業はものの数秒で終わったため、その後はぼへーっと虚空を見つめていると、部室の床に魔方陣が浮き上がった。


「皆様、準備はお済みになられましたか?」


 光とともに現れたのはフィアちゃんだ。皆が立ち上がる。僕は座る。


「間もなくゲームが始まります。開始時刻になりましたら戦闘フィールドへ転移します。異空間に作られた使い捨てのフィールドですので、派手になさって構いません。思う存分にどうぞ」


 おー、それは助かる。暴れて賠償請求されたら困るからね。


「そういえば部長、部長にはもう一人『僧侶』がいるんですよね。その人はどこに?」


 うん? 『僧侶』ってアーシアちゃんの他にもいるのかな。というか、なんで皆そんなに黙り混んでるの?


「残念だけど、もう一人の『僧侶』は参加できないわ。そのことについてもいずれ話さないといけないわね」


 何やら訳ありのようですな。フィアちゃんが再び口を開く。


「今回のレーティングゲームでは各両家の皆様も中継でご覧になられています。さらには魔王ルシファー様もこの一戦を拝見しております」


 その言葉にリアスちゃんが反応した。


「お兄さまが?」


 へー、ゼッくんも見てるんだ。ゲームが終わったら会いに行こうかな。


「えっ!? 部長のお兄さんって魔王様だったんですか!?」


 イッセーが素っ頓狂な声を上げる。


「部長のファミリーネームが違うから混乱するだろうね。サーゼクス・ルシファー、『紅髪の魔王』の異名を持つ最強の魔王様だよ」


 僕は縮めてゼッくんって読んでるけどね。


「そろそろお時間です。皆様、陣の方へ」


 フィアちゃんの声に促されて魔方陣に立つ。


「なお、あちらに着きましたら、ゲームが終了するまで魔方陣での転移は出来ませんので、ご注意ください」


 はーい。さてさて、噂のレーティングゲーム。どんなものかな?


 閃光が止み、目を開けると部室の中だった。


 んー? 今回の舞台って学校なの?


『皆様、この度グレモリー家およびフェニックス家のレーティングゲームの審判を致します、グレモリー家使用人のグレイフィアと申します』


 おー、フィアちゃんが審判役なのか。見ればいつの間にかフィアちゃんがいないし。


『早速ですが、フィールドの説明をさせて頂きます。今回のバトルフィールドはライザー様の意向の元、リアス様が通う人間界の学舎、駒王学園のレプリカをご用意いたしました』


 ……へぇ、随分と嘗めたまねをしてくれるじゃないの、あの坊っちゃん。


『両陣営の転移された先が本陣となります。リアス様の本陣が旧校舎のオカルト研究部の部室、ライザー様の本陣が新校舎の生徒会室です。〈兵士〉の方は相手本陣まで進出なさった際に〈プロモーション〉を可能とします』


 ふむふむ。イッセーは敵陣営に放り込まないといけないと。ちなみに『プロモーション』とは『兵士』が相手陣地の最深部に到達したときに発動できる特殊な設定だ。これによって『王』以外のすべての駒の特性を引き出すことができるらしい、リアスちゃん談。


「全員、これをつけなさい」


 リアスちゃんから渡されたのは小型のイヤホンマイク。これで随時連絡を取るのかな。


 耳につける。


「指示は随時このマイクを通じて与えるわ。なくさないようにね」


『お時間となりました。なお制限時間は人間界の時刻で夜明けまでとなります。それでは、ゲームスタートです』


 開始の言葉とともに学校のチャイムが鳴り響く。おお、ここまで再現しているんだね。


「さて、作戦を立てるわよ。祐斗」


「はい」


 リアスちゃんに促されテーブルの上に地図を広げた。おー、校舎の見取り図か。


 リアスちゃんは旧校舎と新校舎に丸で印をつけると説明を始めた。


「ここが私たちとライザーの本陣よ。私たちの本陣付近に森があるけど、ここは私たちの領土と思って構わない。逆に新校舎に入った瞬間に相手の領土に入ったと思ってちょうだい。校庭は校舎から丸見えだからここを通るのは危険ね」


「じゃあ、裏の運動場から侵入しますか?」


 イッセーが訊ねる。


「いいえ、止めておきましょう。当然、相手もそう来ると分かっているはずだから、下僕を配置しているでしょうね。恐らく配置数は四名以上。それなら運動場全体を把握できるわ」


「では旧校舎寄りの体育館はどうですか? 先に占拠することができれば、新校舎へのルートは確保出来ます。新校舎と隣接しているので相手への牽制にも繋がりますし」


 木場くんが地図と睨めっこしながら申し出る。


「ええ、私もそう思っていたわ。まずは体育館を確保する。場所からして『戦車』が有利ね。室内だから機動力に優れる『騎士』よりも破壊力に優れる『戦車』が適しているでしょう」


 リアスちゃんは一旦顎に手を当てて黙考すると、すぐに顔を上げて指示を出した。


「祐斗と小猫は森にトラップを配置。予備の地図を持っていって仕掛けた場所に印をつけて。後でみんなにコピーを配るわ」


「「はい」」


 木場くんと小猫ちゃんは部室の隅に置いてある道具入れと地図を手に取ると、早々に部室を出ていった。トラップってどんなのかな? 地雷のような近代兵器?


「他のみんなはトラップの設置が終わるまで待機していてちょうだい。それと、朱乃は本陣周辺に霧と幻術を掛けておいて。もちろん、ライザーたちだけが反応するようにね」


「わかりました」


 お姉ちゃんが頷く。自分たちだけなにも指示をもらっていないからか、イッセーとアーシアは手持ち無沙汰のようだった。


「あ、あの部長、俺はなにを……」


「そうね、イッセーは『兵士』だから『プロモーション』しないといけないわね」


「はい!」


 元気よく返事をするイッセーに微笑んだリアスちゃんは自分の膝をポンポンと叩いた。


「ここに座りなさい」


 なにやら愕然としたイッセーは次の瞬間、滂沱の涙を流しながら勢いよく膝に頭を乗せた。俗に言う膝枕の姿勢。僕もよくお姉ちゃんにさせられています。


「うっ、くっ……」


「もう、なにを泣いているの?」


「いえ、美女の――それも二大お姉様の部長に膝枕をさてもらえるなんて、感動で涙が……。ううっ、地球に生まれてよかったぁ」


 そこまでなの!? さすがイッセー、感じることが半端ないね。スケールが大きい。アーシアちゃんは頬を膨らませてイッセーを睨んでいらっしゃるし。


「あらあら。では私はレイくんにしようかしら」


 ソファーに座ったお姉ちゃんが僕の手を引いて頭を膝の上に置かせる。強制イベントですか?


 優しく前髪を撫でるお姉ちゃんの指が気持ちよかった。って、なんだか一人取り残されてるアーシアちゃんが涙目になっているんですけど。そして、リアスちゃん。なぜ頬を膨らませてるんですか?


「……朱乃たちは相変わらず甘々ね。私もあとで甘えさせてみようかしら……。――さて、イッセー。今からあなたに掛けてある封印を少しだけ解くわ」


「封印、ですか?」


 リアスちゃんが人差し指をイッセーのおでこに当てると、指先から魔方陣が展開された。同時にイッセーから感じられる気配が少しだけ濃くなる。


 イッセーも自身に起きた変化に戸惑いを感じているようだ。


「貴方の駒の消費量は八つというのは覚えているわね? 以前のイッセーは悪魔として未熟すぎたから、駒に制限を掛けていたの。ただの人間から転生したばかりの貴方は駒八つ分の力を受け入れるだけの体が出来上がっていなかった。けれど、今回の修行である程度器が出来上がったから、少しだけ封印を解いたわ」


 あー、なるほど。確かに以前のイッセーだったら自身の駒に潰されていたかも。


「良い、イッセー? 相手が女の子だからって手加減しないこと。あちらも手加減なんてしてこないわ。全力で当たるのよ?」


「わ、わかりました!」


「うん、よろしい。『プロモーション』は『女王』になりなさい。最強の力を持つ女王なら戦況も変わってくるわ」


「オッス! 俺、絶対部長を勝たせてみせます!」


「ええ、期待しているわ。私のかわいいイッセー。……さて、うちのかわいい僧侶さんがむくれてるから、膝枕はこれでお終いよ。続きはアーシアにしてもらいなさい」


 リアスちゃんの言葉に視線を向けると、確かにアーシアちゃんが涙目で頬を膨らませていた。見てるとその頬を押して見たくなりますね。


 そんなことを考えてると、視界に紅色が映った。


「ところで朱乃、私にもレイを抱っこさせてもらえないかしら?」


「あら、急にそんなこと訊ねてくるだなんて、どういう心境の変化?」


「心境に変化はないわ。前々から羨ましいって思っていただけで表に出していなかっただけだもの。朱乃はいつもレイと一緒なんだから、少しくらいいじゃないの」


「まあ私は構いませんけど。レイくんはどうですか?」


「んー? いいよー」


 リアスちゃんに抱っこされた経験ってあまりないし、今は嫌いじゃないからウェルカムだよ。


「なら、お言葉に甘えて」


 朱乃お姉ちゃんから退いた僕は両手を広げるリアスちゃんの膝上に座った。すかさずお腹に手を回して、身体全体で包み込むようにハグするリアスちゃん。お姉ちゃんとはまた違ったいい匂いが鼻孔を擽った。


「なんだかこうしてると安心するわね……朱乃がいつも抱っこしてる理由が分かる気がするわ」


「あら、いくらリアスでもレイくんは渡さないわよ?」


「いいじゃないのちょっとくらい。あなたたちいつも一緒に居るんだから。なんならレイ、私のこともお姉ちゃんって呼んでいいのよ?」


「それとこれとは話が別よ。それとレイくんを誘惑しないでちょうだい。彼の姉は私一人で十分よ」


 じ、仁義無き女の戦いが勃発しました! あわわわわ……!


 まあ、僕としてもお姉ちゃんは朱乃ちゃんだけだから、リアスちゃんを姉と呼ぶのはちょっとどうかと思うのですよ。と、馬鹿正直に言ってみたらリアスちゃんが膝をつきました。


 なぜか勝ち誇った顔をしていた朱乃お姉ちゃんですが、「でもリアスちゃん良い匂いだし、抱っこするのは歓迎だよ~?」と告げると今度はお姉ちゃんが膝をつきました。


 ゲーム前からこれで大丈夫かなと、他人事のように考える僕です。





   †                    †                    †





 さてさて、作戦タイムも終わり、各自が行動に移っている。イッセーと小猫ちゃんは体育館へと向かい、木場くんはその辺の雑魚を狩りに山へ芝刈りに。あれ? 違ったっけ?


 ちなみに僕の役割は遊撃だそうです。その辺を巡回して適当に雑魚を潰せとアバウトなご指示を頂きました、ありがとうございます。


 まあ、僕の『力』はまだ教えていないし、みんなと違って戦闘経験豊富だから適当に敵を見つけて潰しつつ、味方を援護しろとのことだ。


 そういうわけなので現在、僕は自身にステルスを掛けて体育館へと向かっている。別に、イッセーが心配だからじゃないよ? ホントだよ?


 そうこうしている間に目的地へと到達。すでに戦闘が始まっているのか、中が騒がしい。


「バラバラバラバラ!」


 って、怖っ! なにあの子、笑顔でチェーンソーなんか振り回して! 一体どういう教育をしているの!?


 なぜか体操服姿の低身長の女の子が二人、チェーンソーを片手に満面の笑みでイッセーに斬りかかっていた。顔が同じだから、双子かな?


 対するイッセーは冷静にそれらを対処できている。少し離れたところには棍を持ったチャイナ服の女の子が小猫ちゃん相手に戦っていた。


 う~、僕も混ぜてもらおっと!


 ウズウズする衝動のまま駆け出し跳躍、空中でクルッと一回転するとそのままチェーンソーを持った片割れの女の子に跳び蹴り!


「――っ! 避けろ、ルナ!」


 チャイナのお姉ちゃんがいち早く危険を察知し警告する。チェーンソーの女の子は寸前に跳び退くことで回避に成功した。


 ――ドンッ!


 イッセーと女の子の中間点に衝撃を響かせながら着地する。あまりの威力に床が放射状に凹んでいた。


「なんだ……!?」


「なに急に!」


「なんもないよ~?」


 イッセー達が驚いた様子でこちらを見ている――って、そっか、ステルス解除してなかった。


「やっはー」


 ステルスを解除した僕はイッセーたちに手を振りながら姿を現した。


「レイ! 来てくれたのか! って、どっから現れたんだ?」


「気がつきませんでした……」


「にはは! レイくんはステルス機能搭載なのです!」


 戦闘機よりも高性能なのですよ、ぶいぶい!


「こいつ、ライザー様に楯突いてたムカツク人間じゃない?」


「解体しちゃいましょう~!」


 どうやらイッセーから僕にシフトチェンジした模様。チェーンソーの音を響かせながら背後から襲いかかってきた。


 フェイントもなく攻撃は直線的だし、ずば抜けて身体能力が高いわけでもない。避わすのは容易も容易。それこそベリーイージーというやつだ。


「このっ、ちょこまか動いて全然当たんない!」


「さっきの男より生意気~!」


 それは君たちが弱いからです。


 いい加減つまらなくなってきたので、手刀でチェーンソーの刃の部分を根本から叩き折る。


「きゃあ!」


「イッセー、パース」


 小さく悲鳴を溢す二人の腕を掴み、そのままイッセーに向けて投げ飛ばした。


「ナイスだレイ!」


 向かってくる彼女たちのお腹に拳を叩きこんだイッセーは踞る彼女たちの後ろで何やらポーズを取り出した。


「食らえ! これぞ修行で得た俺の必殺技、『衣装破壊』ッ!」


 天に掲げた片手で指を鳴らすと、女の子たちの服が弾け飛んだ。

 
 下着も破け生まれた姿となった彼女たちの裸を見て、イッセーの鼻から鮮血が吹き出した。相変わらずの変態っぷりだね……。


「「イ、イヤァァァァァ――――――!!」」


 己の体をかきいだいて踞る二人。そりゃ、悲鳴の一つや二つ出るわな。


「ハーハッハッハッ! 見たか! これぞ俺の必殺技、『衣装破壊』だ! 脳内に保存した女体を細部まで想像し、女の子の着ている服を消し飛ばすイメージを延々と繰り返した結果得た技だ!」


 うわー、自信満々に胸を張っていう内容じゃないよね? 下手したら捕まるよ、お巡りさんに。
 

「……最低です、変態先輩」


「だねー。ところで小猫ちゃん、チャイナ服の女の子と戦ってたよね? いつの間に僕の背後に回り込んだの? しかも僕の目を塞いで」


 棍を持ったチャイナ服の女の子と接戦を繰り広げていた小猫ちゃんはいつの間にか背後に立ち、その小さな手で僕の両目を覆っていた。


「先輩は見ちゃダメです……」


「いや、見てもなんとも思わないよ? 別に興味ないし」


「……それでもダメです」


 うーん、よくわからないけど難儀だねぇ。


「ところでアレは出来るようになった?」


「はい、丁度先輩にもお見せしようと思っていました。……見てもらえますか?」


 おー、気合いが入ってるねぇ。


「もちろん、ここで見てるよー」


 背後で頷く気配がすると、目を覆っていた手が退かされる。


「……わかりました。ですが、あっちは見ないで下さい」


 最後まで釘を刺すことを忘れない小猫ちゃん。


「……一気に片付けます」


 駆け出した小猫ちゃんは繰り出される棍を掻い潜り懐に潜り込んだ。


「レイ先輩直伝、崩撃……!」


 大地を踏み抜くほどの震脚を利かせ、腰だめに構えた拳が相手のみぞおちに突き刺さる。


「かはっ――」


「ミラ!」


 チャイナ服の女の子は口から血を吐き、地面に崩れ落ちた。蹲っている女の子が悲鳴を上げる。


『ライザー・フェニックス様の〈兵士〉一名、リタイア』


 アナウンスとともに女の子の体が次第に透けていき、この場から消えた。うんうん、ちゃんと練習を怠らなかったようだね、感心感心。


『イッセー、小猫、レイ、聞こえる? 私よ。朱乃の準備が整ったわ。今から大技を放つから、その場から退避して』


「了解です!」


 耳に付けたイヤホンからリアスちゃんの声が聞こえた。イッセーが返事をすると僕たちに目配せをする。


 頷いた僕たちは一斉に中央口へと駆けだした。


「逃げる気!? ここは重要拠点なのに!」


 後ろでギャーギャー騒いでいるが、そんなの無視。


 中央口から飛び出た途端、閃光が駆け抜けた。


 ――ドォオオオオオオンッ!


 轟音とともに天から巨大な雷が降り注ぎ、体育館を跡形もなく消し飛ばす。


 おーおー、さすがお姉ちゃん、派手にやるねー。


「撃破」


 空からお姉ちゃんの声が。見れば黒い翼を広げて右手を天に翳していた。その手は未だ電気が走っている。


 僕が手を降ると振り返してくれた。


『ライザー・フェニックス様の〈兵士〉二名、リタイア』


 そりゃ、あれを食らったら一溜りもないよね。


「よっしゃ! やったな、レイ、小猫ちゃん!」


 ガッツポーズをするイッセーに小猫ちゃんの冷たい視線が突き刺さる。


「……こっちを見ないでください、変態先輩」


 蔑んだ声でイッセーを責める小猫ちゃん。その後輩の様子にイッセーの額に冷や汗が浮かんだ。


「い、いやだな、小猫ちゃん。味方には使わないよ俺」


「それでも最低です……」


 一言の下に切って捨てた小猫ちゃんは僕に向き直る。地面に手をついて落ち込むイッセーは無視するようだ。


「どうでしたか……?」


 表情はあまり変わっていないが、その声からは不安の色が窺えた。


「そうだねぇ。少し魔力の浸透が甘かったかな。でも減点はそれくらいだし完成度もかなり上がってたよ」


 崩撃は魔力を宿した拳を相手に叩き込み、魔力を流し込むことで内部と外部を同時に攻撃する技だ。近接格闘を得意とする小猫ちゃんにうってつけだと思い修行中に覚えさせました。


 うっすら頬を朱くした小猫ちゃんがおずおずと口を開く。


「では良くできたので、『ご褒美』を下さい……」


 頭を差しだす小猫ちゃん。


「ん、なーでなーで」


 修行中に良くできた時に頭を撫でてあげたら味を占めたらしいのです。それ以降、ことあるごとに『ご褒美』を催促されるようになりました。


「小猫ちゃんより背が小さいレイが頭を撫でるって、シュールだなー」


 復活したイッセーが何やらニヤニヤした顔で見てくるので、お腹にパンチ。なんとなくムカッとしました。


 踞るイッセーの頭を突っついていると、インカムからリアスちゃんの声が聞こえた。


『みんな聞こえる? 朱乃が最高の一撃を見舞ってくれたわ、ここまでは作戦通りよ。あの雷は連発できないわ。朱乃の魔力が戻り次第、私たちも前に出るから、それまで各自お願いね。さあ、次の作戦に移るわよ!』


 ちなみに先程の作戦というのは自分たちを囮にして敵を誘き寄せ、ある程度戦闘をしたら退避し上空からお姉ちゃんが体育館ごと敵を一網打尽にするというもの。次の作戦は覚えていなかったりする。まあ流れに便乗してれば大丈夫でしょう。


 じゃあ僕もそろそろフラッと行こうかな。次は木場くんのところにしようか。


 イッセーたちに別れを告げようとした時だった。


 ――っ、魔力反応!


「危ない!」


 咄嗟に小猫ちゃんを突き飛ばす。刹那、突き飛ばした僕の右手が爆発した。いや、これは空間を爆発させたのか。


「レイ!」


「レイ先輩っ!」


 イッセーたちが駆け寄ってくる。僕はそれを無事な左手で制して、上空を見上げた。


「あら、とんだ邪魔が入ったわね」


 視線の先にはフードを被った女の子が翼を広げて空を舞っていた。


「ふふふ。双方に明らかな人員の差があるなら『犠牲』が有効。多少の駒を捨ててでも確実に相手の駒を取っていけば、勝敗は自明よね」


「……」


 嘲笑の顔でこちらを見下すフードの女の子に小猫ちゃんが無言で拳を構えた。無表情だがその瞳の内からは底知れない怒りの色が感じられた。


「小猫ちゃん、僕は大丈夫だよ」


「先輩……」


 いつものように右手の怪我を『無かったこと』にした僕は元に戻った手で小猫ちゃんの肩を叩いた。


「それに小猫ちゃんとは相性が悪いからね、僕が殺るよ」


「あなた、どうやって腕を治した……?」


 フードの女の子が訝しげに訊いてくる。


「さてね、教えてあげないよーだ」


 あっかんべー、と舌を見せ、ポケットから小瓶を取り出す。


 中身を煽ろうとすると、背後から声を掛けられた。


「いえ、彼女のお相手は私がしますわ。レイくんたちは祐斗くんのもとに向かいなさい」


 お姉ちゃんだった。漆黒の翼を広げ、上空へと飛び立つ。


「僭越ながら私がお相手致しますわ、ライザー・フェニックスさまの『女王』、ユーベルーナさん。それとも『爆弾王妃』とお呼びしたほうがいいかしら?」


「その呼び名はセンスがないから好きじゃないわ『雷の巫女』。あなたとも戦ってみたかった」


「それは光栄ですわね。――さあ行きなさい!」


 お姉ちゃんの好意に甘えてこの場を離脱する。背後で爆音と雷鳴が鳴り響いた。


 途中で小猫ちゃんとも別れた僕らは木場くんの元に向かう。


 ゲームは中盤に差し掛かろうとしていた。


 
 

 
後書き
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