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自由気ままにリリカル記

作者:黒部愁矢
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二十三話~一騎打ち~

「そういえば邦介はなんであんな所にいたんだ?」

現在俺はアースラの食堂にてクロノ、隠と一緒にいる。
何故俺がアースラにて他の転生者と共にいるのかというと……これは、俺が海上へ出た後にクロノと連絡を取った時のこと。


やはり手伝いたいという旨を伝えたのだ。

その時のクロノの表情は嬉しさ半分、今頃かという呆れの気持ち半分だった。
だが、クロノは俺が前に皆に知られたくないと言ったことを覚えていたのか、幾分か心配そうな表情をしながら、

「いいのか? 手伝うことになれば、みんなにその事を伝える必要になるが」

と、言ってきたのだ。
まあ、心配してくれるのは嬉しいが、俺がそう言った理由が、行動する際に他人に見られれば動きにくくなる。という特にどうでもいいような物であったため、ばれること自体は今となってはもういいのだ。

……それにアリシアがまだ、成仏せずに生きている理由を聞いてしまっては、なんとしてでも時の庭園に入らなければならない理由が出来てしまった。
三日前にアリシアから、何故そこまでジュエルシードを集めるのに固執しているのか聞かされ、そして手伝って欲しいと頼まれた。
その願いが叶いされすれば俺に憑くのは止める。と、真剣な顔で頼んできたのだ。
引き受けない道理がない。
それに、フェイトにも家族関係で手伝えることがあれば、手伝ってやると言ったのだから本腰入れて頑張らなければならないだろう。


シャワーを浴びて体のベタベタ感をなくした後、俺はアースラ乗組員全員に民間協力者として紹介され、ジュエルシードを三つ提供してくれたとも言われた。

隠と高町は純粋に驚いた顔をして、津神と佛坂、縁は俺を睨み、神白は俺を何か見定めようとするかのように俺を見ていて、どうやら俺がアースラに乗る前に乗り込んだらしい秋山は不自然にも素敵な笑みを浮かべて歓迎するかのように拍手をしていた。

また、アースラ隊員の人には一度来た時のことでも覚えてくれていたのか、笑顔で手を振ってくれた。勿論笑顔で会釈する。


その後すぐに解散して、現在は夕食の時間。
食堂にいくと、クロノ、隠から一緒に食べないかと誘われて今に至る。

周囲を見ると、津神、佛坂、秋山が同じ席で食べており、ユーノ、高町、神白、縁が同席しているが、高町は少し迷惑そうに苦笑している。


そして、他のグループは楽しそうな、真剣そうな表情にしろ何か会話している中で、俺達は黙って手を合わせた。
そこで、ふと気づく。隠の前にはスパゲティが置かれてあるが未だにバイザーは外さない。

「なあ、隠……だっけか? ちょっと聞いていいか?」
「なんだ?」
「それ、つけたまま食うつもりか?」
「邦介の言う通りだ。あなたは口元を布で覆ったまま物を食べるつもりか?」

クロノも便乗するが、隠は何やら得意げな雰囲気を醸し出し始めた。
そして、まあ黙って見てろ。とでも言いたげに麺をフォークに巻き付けて……

口を開けるのに従って、布もその部分のみがひとりでに割れて、隠は口元を晒さずともスパゲティを食べてしまった。
そして、ドヤ顔をした。
バイザーと布で顔を隠しているのにも拘らずそう見えたのだ。

「お、おう……」
「っな……」

俺達の表情に驚きよりもむしろ、呆れの色の方が強かったのに隠が気づいたのか、すぐに食べ始めた

そして、俺も食べ始めようとするとクロノがふと、思いついたかのように話しかけてきた。
「そういえば邦介はなんであんな所にいたんだ?」
「ああ、そうそうすっかりその事を言うの忘れてた。俺さ、海中にいたんだよ。そこでこれ探してたの」

ほれ、とクロノに封印済みのジュエルシードを三つ手渡す。

「……道理で残りが六個のはずなのに三個しか無かったわけだ」

探す手間が省けたと、俺に礼を言いながらデバイスの中へ三つのジュエルシードを収納した。

そして、どうやってこんな広大の海から探したのかという質問に対して、適当に偶然だと答えながらも、食器の中は空っぽになったため、俺はその場を後にし、与えられた部屋へと戻った。



部屋の中には誰もおらず俺一人だけ。

ここなら丁度いいな。

―――何するの?―――

ちょっと、お前の妹ために呪いのブツを作るんだよ。

―――……一体何するつもり? 妹に何か危害を加えたらいくらホースケでも容赦しないよ?―――

安心しろ。ただ「破壊すれば見えないモノが少しの間見えるようになる」呪いが付与された石を作るだけだ。

―――……もしかして!?―――

言っとくが俺は手助けはするが、プライベートにまで口出しする気は無いからな。
その辺りは自力で頑張ってくれ。出来る限りのお膳立てはしてやる。

―――っ!! ……ありがとう―――


涙目のアリシアからのお礼を背中で受け、そのまま俺は呪いのブツを作って寝た。
アリシアに言った呪いに後一つだけ呪いを付け加えたが、これが吉と出るか凶と出るかは……あの家族次第。未来は自分の手で切り開けなければ意味は無い。

そして、呪いのブツを作っている際に、リニスと繋がっていた魔力ラインが消えた。




それから、三日後。俺達は臨海公園にいて、今は高町とテスタロッサがそれぞれ集めたジュエルシード全てを賭けて、全力を尽くし、海の上で戦っている。
これは、テスタロッサと高町がジュエルシードを賭けて戦い、そのジュエルシードを黒幕が自分のいる場所へ転送する瞬間を狙ってアースラ側が逆探知して居場所を突き止めるという魂胆らしい。

そして、アースラ側はボロボロになって時の庭園から逃げ出したアルフの証言により、黒幕がテスタロッサの母であるプレシア・テスタロッサであると突き止めた。
そこでこの戦いへと至る。今まで何度も戦ってきた高町とテスタロッサの最後の戦いとなるだろう。


まずは挨拶代りとばかりに両者魔力弾を打ち出し、それを高町が素早く避けると、防御していたテスタロッサに、またも砲撃を繰り返す。

しかし、テスタロッサは素早く飛び回りながら鎌型のデバイスでそれを切り裂き、なのはへと襲いかかるが高町はラウンドシールドという円形の魔法陣を前方に作り出し、それで容易く、テスタロッサに気付かれぬように切り裂かれなかった魔力弾を手動で操り、背後から襲いかからせる。

だが、寸前でテスタロッサが後ろを向き、魔法陣を出して防御するが、向きなおった先にシールドを展開していたはずの高町はいない。

『Flash move』
「せえええええええい!!」

気合の声と共に高町がやってくるのは上空。
杖型デバイスであるレイジングハートでフェイトに殴りかかる。


『あああ……近接向きのデバイスじゃないのにあんな無茶しちゃ駄目ですってば……』
「お前が心配するのもおかしなもんだな。ルナ」
『んぐ……。そこの所突っ込まないで下さいよ。マスター』

それから続く一進一退の攻防。最早実力で言えばテスタロッサに差し迫る程のものを、この短期間の間で身に着けた高町だが、経験の差から高町が押され気味だ。

そして、テスタロッサが覚悟を決めたような表情をすると、テスタロッサの周囲には十数個の雷球が浮かび上がり、それに動揺した高町にバインドを掛けて縫い付けると、そのまま何かの詠唱を始める。

「ライトニングバインド……まずい。フェイトは本気だ!」
それを見たアルフが焦ったように言うと、すぐさまユーノがサポートに向かおうとするが、バインドに縫いとめられている高町が断る。自分とフェイトの一騎打ちなのだから手を出すな。ということらしい。

―――漢らしい女の子だねー。あの子は―――

……そりゃ主人公ですから。

―――ん? 何か言った?―――

なんにも。

―――……それより、リニスってどうなってると思う……?―――

……多分死んだと見た方が良いだろうな。お前も聞いただろ? 時の庭園からボロボロの状態で逃げてきたアルフの言葉を。

アルフは最初、鞭で実の娘のフェイトを打っていたことにとうとう我慢出来なくなり、プレシアの所へ乗り込んだが、そこにいたのは最早瀕死の状態のリニスとそれを見て苦々しげな顔をしているプレシアがいたらしい。
それでも激情に身を任せて殴りかかると、雷で返り討ちに遭い瀕死の状態に。
そして、止めを刺そうとしたプレシアを見て諦めたアルフだったが、最早動ける状態でないはずのリニスがプレシアを足止めし、逃げろと念話で伝えてきたために、ほぼ条件反射で転移して、逃げたということのようだ。

その話を聞いた時アリシアは不思議な程穏やかな表情でその言葉噛みしめていた。
今まで一緒にいたリニスが死んだと理解しているはずなのに。


「フォトンランサー、ファランクスシフト」

考えている間にもテスタロッサは詠唱を終えると、その周りには密度の高まった雷球があり……

「打ち砕け。ファイア!!」

テスタロッサの声と振り下ろされた右手と共に、それらが一斉に射出される。
しかもそれらは断続的に雷球を射出し続け、軽く見積もっただけでも八百は弾数を余裕で超えるそれが、バインドのお陰で動けない高町に向けて全て直撃する。

さすがにあれだけの威力の魔法を打ち出すのは至難の技なのか、テスタロッサは辛そうな表情でいるが、更に周りに浮かんでいる残りの魔力を一箇所に集め、止めの一撃をさそうとするが、テスタロッサの魔法により上がった煙が晴れた先には……


「いったー。撃ち終わるとバインドってのも解けちゃうんだね」

無傷の高町がいた。

―――かったーーー!!? え!? 硬過ぎるでしょあの子!?―――

思わず叫ぶアリシアを余所に高町は容赦なくディバインバスターを打ち込み、テスタロッサは魔法陣を寸での所で展開し、かろうじて、ボロボロになりながらも耐える。

そして、上にいる高町を見上げるとそこには先程のディバインバスターよりも更に巨大な魔法陣を展開した高町の姿が。

「受けてみて。ディバインバスターのバリエーション……」

そう言いながらテスタロッサをバインドでその場に縫い止め、高町は周囲に撒き散らされたテスタロッサと高町の魔力を寄せ集め、収束し始める。

「これが私の全力全開……」

そして、テスタロッサに向けてディバインバスターの数倍もある砲撃を……

「スターライト……ブレイカーーー!!」

打ち出した。

その砲撃はテスタロッサをいとも容易く呑み込み、海へと着弾したその場所はまるで、爆弾でも落としたかのように波を荒れ狂っている。

最早災害レベルの威力と言っても問題無い威力である。

「あんなもの食らいたくないなあ……」

背中を嫌な汗が流れる。

『あはは……なんといいますか、すみません』
「なんでルナが謝るよ。あれは高町なのは自身が生み出した凶悪な魔法であって、お前は作るのに関与してないだろう?」
「そう……ですか? ……そうですね。はい」

どうやら納得したらしいルナから目を離して、テスタロッサの行方を見ると、先程の砲撃で生きていたようだが気絶し海へと落ちる所をすぐさま飛び出した隠が助ける所だった。

「……ん……」
「大丈夫か、フェイト」
「い、隠? うん。だいじょうぶ」
「一人で飛べるな?」
「うん。ありがとう」

そして、テスタロッサが隠にお姫様抱っこされた状態から離れて、自分で浮かび上がると、テスタロッサのデバイス、バルディッシュがテスタロッサの持っていたジュエルシードを出して、空中に浮かべた。

「私の、勝ちだね」
「……そう……だね」

二人が会話を交わし始めると、空は一瞬で暗雲が立ち込め紫色の雷がテスタロッサに向けて落ちてきた。

「フェイト!! うおおおおおおおおおお!!」
「隠! それに……母さん……」

瞬時に隠がテスタロッサを庇うようにシールドを展開して防ぎ、テスタロッサは空を見て、呆然と今起きている事が信じられないとでも言うかのような表情をしてボソリと誰にも聞こえない大きさで呟いていた。


―――フェイト……もう少し……もう少しお姉ちゃんが助けてあげるからね―――

 
 

 
後書き
どうしよう。疲れてきた。
だけど、ここで書くのを止めたらもう完結は望めないだろうし・・・

後およそ、一万ちょいで終わるかもしれないのでもうひとふんばりですね。 
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