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IS インフィニット・ストラトス~転生者の想いは復讐とともに…………~

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number-34 recall the past

 
前書き


過去を思う。



この場合は、夜神鳥麗矢。


 

 


9月1日。
一か月以上にも及ぶ長い夏休みを終え、全校生徒が集う。
だが、そこに夜神鳥麗矢の姿はなかった。


一夏は学園内を探し回った。
なのに見つからなかった。一昨日まではいた。
昨日も麗矢の姿は見たんだ。
今日になって麗矢の部屋に行ったら、いなかった。荷物があるが、それでも生きるために必要最低限の生活品がない。携帯とか、ISとかそのあたり。


このことはすぐに千冬に報告した。
千冬は驚き、この件については教師に任せろという。
一夏は遣る瀬無い気持ちになりながらも自分に言い聞かせた。


      ◯


「本当にいいの? れーくん」
「……ああ、もういいんだ」


束は開け放たれた窓のサッシに座っている。
座っているとはいっても、景色を眺めているわけではない。部屋の内側、もっと詳しく言えば麗矢のことを見ている。
何処となく嬉しそうに、それでいて悲しそうな感じになっているが、麗矢は気にすることない。
それを分かっているのか束も麗矢に何か聞こうとはしなかった。


麗矢はISに粒子変換して必要なものをしまっていく。
麗矢の部屋にはもともと学園から支給されたものが多い。そのせいか麗矢の持ち物は少なかった。


荷物はまとめているのには理由がある。
麗矢は人の目がある前で一夏の命を狙っているのだ。しかも実の姉の前で。
ISが既に解除されているのに、超電磁砲で過剰に狙ったのだ。
それでお咎めなし。どうかしている。


麗矢は一夏の命を狙った時から決めていた。
あの矛盾した依頼のどちらを取るか。
『織斑一夏の暗殺・誘拐のどちらか』と『織斑一夏の護衛』
究極的には一夏の生死剥奪権を麗矢が持っているといってもいい。
そして決めた。
『織斑一夏の暗殺・誘拐』のほうに。


「よし、終わった。……行くぞ、束」
「……心残りはないの?」


心残り。
ないと言っては嘘になる。
誰にも言うことはなかったが、幼いころ麗矢は楯無のことが好きだったのだ。
初恋の相手。
その思いは伝えることはない。そしてこれからもない。
楯無の気持ちは分からないこともない。
しかし、セシリアやラウラはどうなる。
あいつらも麗矢に対して明確な恋心を持っている。


麗矢は自分の気持ちが自分で分からなくなっていた。
誰のことが好き? ……分からない。
あいつらの気持ちは分かる。でも自分の気持ちが分からない。
今でも楯無のことが好きなのか。
何度も自分の問いた。


「それはあるさ。でも、俺は止めれない」
「……そっか」


麗矢はISを展開する。
普通であれば学園のモニターに映られるが、束に頼んでビーコンを外してもらっている。
束を背中に乗せて、麗矢は機械の翼を羽ばたかせ宙へと飛びだった。


キィィィンと風を切る音だけが響く。
麗矢は束が落ちない様にスピードを調節しながら進む。


「…………ねえ、れーくん。君は何のために生きているの?」


束からの問いかけに麗矢はすぐに答えることはなかった。
考えているのだろうか、それは麗矢にしか分からない。


「……復讐のため。俺には親がいたんだ」


束の問いには麗矢の過去を話す必要がある。
麗矢は束には話してもいいかと思ったようでポツリポツリと話し始めた。


麗矢の親は仲が良かった。
だから周りと容姿が違う麗矢が生まれてきてもか変わることはなかった。
親は放任主義だった。


心の奥で気味悪がっていたとしても麗矢を親との仲は変わることはなかった。
会話を交わすことは少なくなっていたが、学校行事には必ずと言っていいほど来てくれた。
周りの親は麗矢のことを冷たい目で見ていたが、両親だけは変わることはなかった。


全てが変わったのは両親が借金を抱えた時からだ。
親たちが消えてから、麗矢もいなくなった。
麗矢の親はある企業にいたんだ。
そこで絞れるだけ絞られて、極潰しのように使われて、挙句の果てに殺された。


それでいて恨まずにはいられない。
だからあいつらの言いなりになっていたんだ。
あいつらの狗になって、ある程度信用を得て殺すと決めたんだ。


「こんなものさ、満足したか?」
「……そんなに苦労していたんだね……」


束は麗矢の過去を聞いて涙が止まらなくなっていた。
麗矢は束の顔を見ようとはしない。
真っ直ぐに前を見て進み続けた。


「……もうすぐ着くよ」


束は涙を隠そうとしながら、麗矢に目的地が近いことを伝える。
目的地に近づく。




――――ついたよ、れーくん。


――――あれが今の“亡国企業”の基地だよ。





物語の歯車は回り始めていた――――




 
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