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ソードアート・オンライン 《黒の剣士と白の死神》

作者:桜狼
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第一部 全ての始まり
  第二話 デスゲームの幕開け(後編)

だんだんと青い光が薄れてきた。

《転移》した先は、中世風の街だった。

舗装された道。といってもコンクリートでは無く、石畳。

その道の脇に生える街路樹。

現代のような物は無く、変わりに木造の家や店が立ち並ぶ。

そして正面にそびえ立つのは《黒鉄宮》。



間違いなくここは、アインクラッド一層の、《始まりの街》の広場だ。

隣を見ると、口をあけたクラインと、困惑しているキリトが見えた。

あたりを見れば、いかにもファンタジックな美男美女たち。

ほんのわずかの間、人々―――恐らく俺たちと同じ、閉じ込められた者―――は、静かにしていたが

それもつかの間、すぐにざわつき始めた。

無理も無い。ログアウトできない状況で、強制テレポートなんかさせたら。

あっという間に不安になるはずだ。

と、そんな群集の不安を晴らすかのように、システムアナウンスがでてくる。

が、俺の予想を裏切る事態が発生した。

システムアナウンスの真っ赤な文字が、急に溶け出したのだ。

それは街におちることはなかったが、粘度の高そうなそれは、突然姿を変えた。

___________________________________________

それは、巨大なローブだった。

中に人は存在しなく、薄暗い闇が広がっていた。

アバターを表示できなかったかもしれないが、その様は不気味。恐ろしさすら感じる。

そして、困惑する俺たちに、それは声を投げかけた。

『プレイヤーの諸君。私の世界へようこそ。』

俺は、はあ?、と言いそうになった。

この非常事態の時に、そんな事言ってどうするんだよGM。

と、俺の心の声が聞こえたかどうかは知らないが、また答える。

『私の名は茅場晶彦。今やこの世界を唯一コントロールできる人間だ。』

―――茅場晶彦!!!―――

若きながらにして、弱小ゲーム開発会社だったアーガスを、数年で最大手と呼ばれるまでにした、

その原動力だった、天才ゲームデザイナー兼量子物理学者。

そして、SAO開発ディレクターであり、ナーヴギアの開発設計者!

……まさか茅場晶彦が黒幕とはな。だが、身代金や、テロ目的は少なくても無いだろう。

なぜなら彼は、―――――――――――――――。



俺の、頭のどこかで、鍵を入れられた感触がした。



『―――諸君らの脳を破壊し、生命活動を停止させる。』

その瞬間、俺は、違和感を感じた。

だが、それも、会話で掻き消える。

「そ、そんなわけできるわけないだろ…タダのゲーム機で!」

「原理的には可能だけど…でも、はったりに決まってる。…」

クラインの質問に答えるキリト。だが、

「ハッタリじゃ無いと思うぞキリト。ハッタリでできると思うか?こんな馬鹿な事。」

「…キョウヤ、無理だろう。そうだとしても、電源コードを引っこ抜きでもしたら、

そんな高出力の電磁波は大容量バッテリでも内蔵されて無い限り……」

キリトの言葉が止まった。

「内蔵……してるぜ。ギアの重さの三割はバッテリだって聞いた。けどよう…んなもん瞬間停電でもあったらどうすんだよ!」

答えるようにローブ―茅場晶彦―が話す。

『より正確には、―――』

そこで俺は、考えるのを止めた。なぜか?やつの真の目的を暴くためさ。

茅場……恐らく目的は、金銭などの物質ではないだろう。

それに加えて、社会的立場等も無し。どこかの組織から、というのも無いだろう。

あの天才が人の下につくとも考えられない。

これで選択肢は狭まった。

大方、精神的なものだろう。それも、異常な。



茅場晶彦はまさに絵に描いたような誠実なやつだ。

途中聞こえるメディアだの何だのから、やる所はしっかりしている。

この1万人を飲み込んで、彼は何かをする。

『第百層までたどり着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアするとよい。』

《ゲームをクリアして》!?

その瞬間、俺の違和感の正体がはっきりした。

と同時に、鍵が押し込まれた。

まさか…

『諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ。』

周囲のやつらがいっせいにアイテムストレージを開き、電子音が広場に鳴り響く。

俺も、思考をいったんやめ、アイテムストレージから『それ』を出した。

『それ』は手鏡だった。

それ以外は何の変哲も無く、普通だった。

俺は、キリトとクラインに目を合わせた。

剛毅な要望の侍と、勇者顔の青年がいたが、それもつかの間、白い光が包み込んだ。

__________________________________________

俺が目を開けたとき、目の前にいたのは↑の彼らでは無く、

……野武士と大人しそうな男の子がいた。

「おめぇがキリトか!?」

「お前がクラインか!?」

どちらの声も、声が変わっていたがまあ無視しよう。

「……で、お前らの本当はそれだったのかよ。」

「え…」

「なにぃ!?」

俺は自分の本当の姿になっていることを忘れ、二人に言う。

「ん?どうしたお前等。俺の顔を見て。」

「「お前誰だ!?」」

「キョウヤだが?」

「おめえ…女だったのか?」

「ど阿呆かクライン…バリバリの男だ。」

「キョウヤ…でも顔が…」

「顔?顔がどうしたキリ…ト……」

俺は今やっと、自分が本当の姿になっていることに気がついた。

「あ、ああ……」

俺は手鏡を凝視する。

そこにいたのは、

短髪の青年ではなく、肩まで長い髪を持ち、

金の目と髪ではなく、黒色の艶のある髪と目。

りりしい顔ではなく、未だに悩む可愛らしい顔。

まさに正真正銘、俺の顔だった。

「キョウヤ…お前…」

「うるさいキリト。お前こそ女っぽいぞ。」

「おめえ…男の娘d」

ズドン!!!

「圏内だから大丈夫だろ。」

「…………」(キリト)

俺は、クラインを地面に叩きつけた後、茅場の言葉を聞いた。

あと少しだ。あと少しで解けそうな感じがする…

『―――この状況こそが、私にとっての最終的な目標だからだ。』
           ・・・・・・・・・・・・


―――カチリ。―――



扉が、開いた。

『―――以上で、《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の―――健闘を祈る。』

一秒後、静寂が包んだ。

数秒後、NPCの楽団が演奏する、市街地のBGMが聞こえてきた。

十数秒後―――広場は、声の暴風と化した。

そんな中、俺は、

笑っていた。

おかしくなった訳ではない。ただ、心のどこからか、そういう感情が出てきただけなのだ。

と、「クライン、キョウヤ、ちょっとこっち来い。」とキリトが読んだ。

俺は笑みを収め、いつもどうりに行った。


《キリト》サイド


街路の一本に入ると、俺は話し始めた。

「…クライン、キョウヤ。」

二人が俺を見る。

「いいか、良く聞け。俺はすぐにこの街を出る。」

その言葉で、クラインが目をむき、キョウヤは目だけ反応する。

「……結論から言う。お前たちも一緒に来い。そして次の村を拠点にしたほうがいい。」

クラインは驚愕の瞳をむけ、キョウヤは分かっていたかのようにうなずく。

「クライン、これから生き残るためには、アイテムや経験値を集めなきゃならない。

俺は、道や危険なポイントは全て知っているから、レベル1の今でも安全にいける。」

クラインは、数秒後に顔をゆがめて話し出した。

「でも…でもよお。」

「俺は行くぜ。」



《キョウヤ》サイド

「俺は行くぜ。」

俺はそう言い、クラインに目を向けた。

「俺はついて行く。クラインはどうする?」

「俺は……他のゲームでダチだったやつがいてさ。俺は…置いてけねえ。」

クラインがそういう。

キリトは、うつむいた。恐らく、迷っているのだろう。

「そうか…クラインは、行くんだな。」

「ああ…俺だって前のゲームじゃギルドの頭張ってたんだしよお。

これ以上、キリトの世話になるわけにゃあいかねえよな。」

「……そっか。なら、ここで別れよう。何かあったらメッセージ飛ばせよ。……じゃあ、またな、クライン。」

キリトは、目を伏せ、振り向こうとした。

「キリト!!」

キリトは、いちど手を振り、体を次の村のほうへ向けた。

「おい、キリトよ!おめぇ、案外カワイイ顔してやがんな!結構好みだぜ俺!」

「お前もその野武士面のほうが十倍にあってるよ!」とキリト。

俺もキリトを追って歩こうとすると、クラインが、

「キョウヤもその口調直せばカワイイぜ!」

俺は振り返らずに、

「お前も、その顔と性格直して向こうで来いよ!」

そう言い、後にした。



しばらく歩いたところで、キリトが後ろを振り向いた。

「心配か?キリト。」

「いや……あいつなら大丈夫だよ。」

「……そうか。よし。」

俺は、キリトにある言葉を投げかけた。

「キリト、お前は先に次の村に行ってろ。」

「え……」

「何、別れじゃあないだろ。すぐ追いつくから先に行ってろ。」

「……絶対にだぞ。」

「ああ……分かってるよ。……じゃあな。」

そういい、俺は別の方向へ向かっていった。

《まあ、すぐに再開するのだが、それはまた、別のお話。》 
 

 
後書き
シリアスかと思いきや、中盤ボケ入りました。

このペースで書きたいと思います。

あと、感想等お願いします。 
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