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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第四十八話 導かれる魂、銀河で

             第四十八話 導かれる魂、銀河で
ラミア=ラヴレスはロンド=ベルに戻った。
しかし地球圏の戦乱に終息の兆しは見えないでいた。
シャドウミラーだけではなく百鬼帝国や邪魔大王国もその蠢動を見せていた。
またバルマーも以前とその影を見せており油断はできなかった。
そして遥か星々の彼方。
地球を発った超長距離移民船団の一つが辿り着いた惑星A-7、通称ソロ星。
今そこで人知を超えた強大な力が動き始めていた。
銀河系オメガ星団ソロ星。その森の中だった。
「待ちなさいよコスモ、デク!」
金髪の少女カーシャが赤いアフロの少年のコスモともう一人の小さな少年デクに叫んでいた。
「カーシャ!」
コスモがそのカーシャに叫ぶ。
「ついてくるのはそっちの勝手だ!俺達に待つ義理はないぜ!」
「そういうこと!」
デクも言う。
「カーシャは移民船団の出迎えでもしてなよ!」
「!?おかしいわね」
カーシャは直感から二人が怪しいと察知した。
(ベスにしても、コスモにしても何かあるんだわ。あの慌てぶり)
だが何かあるまではわからない。その時森では。
「軍の調査だ」
青緑の髪の若者が大人の女に話していた。
「発掘現場を調べさせてもらう」
「とうとう気が付いたってわけね」
その女シェリルが若者であるベスに応えていた。
「移民法第十七条」
ベスは言う。
「兵器及びそれに準ずる装備、車両は全て軍に届け出るべし」
さらに言葉を続ける。
「それに違反したものは強制労働2年だ」
「そんなことまだわかっていないのよ」
シェリルは顔を顰めさせてそれに抗議する。
「ようやく復元できた物を届け出など出来はしません」
「じゃあ聞くが」
ベスは顔を顰めさせてそのシェリルに問うた。
「ここにある巨大な車両を冗談で造ったというのか?」
「造ったんじゃありません。復元したんです」
シェリルはこう述べる。するとベスは驚いた顔になった。
「するとだ」
そして言う。
「地球から持って来てここで組み立てたということか?」
「まさか」
流石にシェリルもそれは否定した。
「信じないでしょうねこれはソロ星のこの場所から発掘された遺跡なの」
「遺跡!?」
ベスはそれを聞いてまた声をあげた。
「大昔のソロ星人が遺したものだというのか?これを?」
「そうよ」
「おいおい、それはまた」
ベスはそれを聞いて笑い出した。嘘だと思っていた。
「このソロ星には知的生物がいないからって移民がはじまったんだぞ」
それを話に出してから語る。
「遺跡があってたまるものか」
しかしここにコスモとデクが来た。そしてベスに対して言うのだった。
「何もわかっていない軍人さんが大きな口を叩くのは止めた方がいいぜ」
「何!?」
馬鹿にしたような言葉に顔を顰めさせるベスであった。
「この遺跡は父さん達がずっと前から調査していたんだ」
「子供が大人の話に口を出すな!」
ベスはこうコスモに言い返した。
「これは大人の話だ!」
「ベスの言っていることが大人の言うことかよ!」
しかしコスモもこう言い返す。
「だったらちゃんと言い返してみろ!大人なんて言わずにな!」
「そうね」
そしてシェリルもコスモに同意してみせてきた。
「今はコスモ君の言うことの方が正しいわね」
「くっ・・・・・・」
「名乗っておくわ」
ここでシェリルはまたベスに言ってきた。
「私はフォルモッサーシェリル。覚えておいて」
「わかった。しかしだ」
だがベスはまだ言う。」
「もう一つの発掘現場にも既に軍の調査団が派遣されている」
「えっ!?」
それを聞いたカーシャが声をあげる。彼女も来ていたのだ。
「こんな発掘現場が他にもあるの!?」
「へえ、ますますもって驚きだね。この星って」
デクもこれに驚く。だがその時だった。
不意に数機の戦闘機が。遠くに見えた。
「何だあれ?」
最初にそれに気付いたのはデクだった。
「戦闘機みたいだけれど」
「もうすぐ到着するっていう移民船団の機体かしら」
カーシャはこう考えてきた。しかし。
その戦闘機達は遺跡の方に来た。それから攻撃を浴びせてきた。
「きゃあっ!!」
「あいつら撃ってきた!」
コスモも叫ぶ。
「撃ってきたぞ!」
その頃。戦闘機の中では通信でやり取りが行われていた、一人が同僚に問う。
「何故撃った」
「この近くにカララ様が降りたんだ!」
撃ったパイロットが同僚の問いに答える。
「カララ様に若しものことがあってみろ!」
彼は言う。
「我々は降格どころか悪くすれば自爆させられるんだ!」
どうやらそのカララというのはかなりの要人らしい。
「わかってるだろ、やるしかなかったんだ!!」
そういうことらしい。その時コスモ達の前に見たことのない女がいた。
「あれは!」
「人がいる!」
ベス達も気付いた。そしてパイロット達も。
「いたぞ!」
「あそこだ!」
戦闘機達が前進する。それを見てベスが咄嗟に動いた。
「いかん!」
「ベス!」
コスモがそのベスに対して叫んだ。
「何処へ行く!?」
「こちらへ来るんだ!」
その女を保護して叫ぶベスであった。
「そんなところにいたら奴等の的になるだけだぞ!」
「・・・・・・・・・」
だが女は答えない。ベスはそれを見てすぐに察した。
「ショック症状か」
そう判断したのだった。
「仕方ない。我慢してくれよ!」
そう叫んで女を保護する。パイロット達もそれを見て焦り出す。
「まずいぞ!」
撃った者が叫ぶ。
「異星人がカララ様に接触した!」
「追うぞ!」
「ああ!」
彼等もすぐに判断を下した。
「カララ様を取り戻すんだ!」
「わかった!」
彼等はコスモ達に進む。デクがそれを見てコスモに叫ぶ。
「コスモ!」
「ああ!」
コスモもそれに応える。
「このままじゃ俺達やられちまうよ!」
「来いデク!」
コスモはそれに応えて叫んだ。
「何をする気なのコスモ!?」
「こいつに乗るんだよ!」
こうカーシャに応えた。その遺跡に。
「このまま黙って死ぬよりかマシだろ!」
続いてこうカーシャに叫んだ。
「御前も死にたくないのなら早くしろ!」
「う、うん!」
カーシャもそれに頷く。ベスもシェリルもそれに続いた。
中は巨大なコクピットだった。意外なことに。
「何だここは」
ベスが中を見回してまず呟いた。
「まさかこんなものが中に」
「ええと。これで」
その間にシェリルは内部をチェックしていた。そして皆に告げた。
「このサブコントロールシステムで動いてくれる筈なんだけど」
「あっ!」
コスモが叫んだ。コクピットにあるゲージが緑に光ったのだ。
「!?」
「あのゲージが点いた」
「シェリルさん!」
コスモはそのゲージを見てシェリルに叫ぶ。
「何なんだよこのゲージのサインは!?」
「これがイデオンのサイン」
「イデオン!?」
「それはそうとこれは」
ベスはその中で問うた。
「動くのか!?」
「動いてしまっている」
シェリルはこう呟いた。
「まさか・・・・・・」
「ええい、使えるならこれで居住地まで逃げる!」
ベスはこう判断した。
「いいな、それで!」
「待って!」
しかしここでまたシェリルが叫ぶのだった。
「このパネルもコントロールシステムも私達が付けたものなの。まだ!」
「動きゃいい!」
しかしベスはこう言うのだった。
「今は!」
「コスモ!」
コスモ「行け!!」
コスモが動かす。それで何かが動いた。
「動いたわ!」
「そんな・・・・・・」
驚くカーシャとシェリル。シェリルは驚愕さえしていた。
「この半年間調べに調べてもこの第六文明のメカニズムは動かなかったのよ!」
「現に動いてるじゃないか!」
だがベスはそれに叫ぶ。
「今こうして!」
「本当に動かなかったのよ!」
それでもシェリルはベスに言う。
「それがどうして」
「コスモーッ!」
またデクが叫ぶ。しかしコスモは言うのだった。
「うるさい!」
一括した。
「黙ってろ!!」
その時だった。またゲージが光った。
そして。二つのマシンが来て合体する。そうして赤い巨大なロボットとなったのであった。
「これは!?」
「まさか」
シェリルはここで何かを悟った。
「巨神ってこのことだったのね」
(まさか)
その中で謎の女も思っていた。
(これがイデの巨神!?)
「何だあれは!?」
「わからん!」
戦闘機のパイロット達もまた叫んでいた。
「兵器のようだが」
「奴は兵器か!?」
それを察すると彼等は一気に警戒態勢を強めた。
「それとも伝説の巨神か!?」
「馬鹿を言え!」
それはすぐに同僚が否定した。
「そんなものがいるなぞ!」
「どちらにしろやるぞ!」
中の一人がこう叫んだ。
「あんな巨神にバッフ=クランが侵略されることを考えてみろ!」
「そうだな」
「そうだ!」
また叫ぶ。
「やられてたまるか!」
「バック=フランの名にかけて!」
彼等はそのマシンに突き進む。コスモ達がそれを見ていた。
「コスモ!」
ベスがコスモに対して問う。
「やれるか!?」
こう問うのだった。
「御前のシートが操縦席のようだ!」
「あ、ああ!」
そしてコスモもそれに応えて頷く。
「このまま好き放題やらせてたまるか!」
そう言って攻撃に入る。近寄る戦闘機達にその巨大な拳を向けた。
「うおおおおおっ!」
「来たぞ!」
「うわあっ!」
よけきれずにまず一機その拳で叩き潰された。コスモはそれを見て何とかいけると思った。
「いける、ひょっとしたら」
「いけるのか!?」
「いける!」
こうベスに応える。
「やってみせる!生きる為に!」
「ああ、頼むぞ!」
「今度はこれだ!」
ミサイルを放った。それが忽ちのうちに敵を捕捉し撃墜していった。
「うわああああーーーーーーっ!」
「ま、まさか!」
これで戦闘機はなくなった。しかしであった。
「やったのか!?」
コスモはまだ実感していなかった。
「やったが何なんだ」
今度はそれを思うのだった。
「このメカは。このロボットは」
「イデオン・・・・・・」
シェリルはこう呟いた。
「これこそがまさに」
「それにしても」
カーシャもまた何が起こったのかわかりかねていた。
「あたし達、何をしたの!?」
(こんなもの)
女がその中でまた心の中で呟いていた。
(こんなものがイデの伝説の巨神である筈がない)
顔を顰めさせて心の中で呻く。
(こんなものが。無限の力であってなるものか)
しかしそれは誰にもわからなかった。彼女の中だけであった。
その頃バルマーの宮殿奥深くの玄室において。霊帝とシヴァーが会っていた。帝は瞑想を暫く中断したうえでシヴァーと会っているのである。これは異例のことであった。
「陛下」
シヴァーはその帝に対して問うた。
「何用でしょうか」
「来てくれたんだね、シヴァー」
「はい」
まずは帝の言葉に頷いた。
「その通りです。陛下の御呼びとあれば。それで」
こう述べたうえでまた問うのであった。
「如何為されました?」
「鼓動が聞こえた」
彼は言った。
「鼓動?」
「そう」
シヴァーに答える。
「無限力」
そしてまた言った。
「アルファであり、オメガである力のね」
「アルファであり、オメガであると」
「そう。つまり」
また述べた。
「神鳴る門、クロスゲートの出現」
次に出た言葉はこうであった。
「ここ数年に渡る破壊神共の急激な増殖。もしやとは思っていたが」
「では」
「ああ、最後の試練の時が近づいているようだね」
「最後の試練の時が」
「そうなんだよ」
またシヴァーに述べた。
「この銀河、いや宇宙に終焉が訪れるんだよ」
「ならば無限力の源を一刻も早く突き止め、我等のものに」
「無限力を手に入れるのかい」
「そうです」
シヴァーは現実的なことを述べたつもりであった。
「そうすれば我等もまた」
「残念だがそれはできない」
しかし彼はこうシヴァーに告げた。
「!?では一体」
「あれは手に入れるものじゃない」
これが帝の言葉であった。
「滅ぼすべきものだよ」
「でなければ我々が消滅することになると?」
「そうなんだよ」
今度はこう述べた。
「でなければ僕達は永遠に繰り返される死と新生の輪廻から逃げられない」
「この輪廻から」
「だからシヴァー=ゴッツォ」
彼の名を呼んだ。
「計画を急ぐんだ。無限力に導かれし者達の意思を」
今度はこう述べた。
「その僕達をあまねく世界から消し去る為に」
こう告げるのだった。
「死と新生の輪廻を断ち切る剣を僕の下へ」
「御意」
シヴァーもその言葉に一礼する。これで彼等の会話は終わった。
「さて。僕はこれで」
「戻られますか」
「うん。イデが出たのなら話はいよいよはじまる」
不敵に笑いながらの言葉であった。
「だから。また瞑想に入るよ」
「わかりました。それでは」
そう言って姿を消す。彼等も何かが動こうとしているのを感じていたのだった。
イデオンと呼ばれる巨神と異星人バッフ=クラン。彼等もまた導かれていた。
終焉の銀河に響く戦鐘は新たな戦雲を呼ぶのであった。
その頃超長距離移民船団の一つマクロス7船団の旗艦であるマクロス7においても何かが起ころうとしていた。
彼等は巨神の目覚めに呼応するかの様にはソロ星へ到着しようとしていた。
「新西暦二二六年」
エキセドルが言う。彼がこの艦の艦長なのだ。
「メギロード船団と別れて三十五年」
言葉はただ事実を述べただけの無味乾燥としたものであった。
「我々マクロス7船団は地球から遠く離れたこの星系にて同胞である地球人類からの通信を受けた」
そう言葉を続けながら航海日誌を書いている。
「彼等は我々と同様に超長距離移民船団の一員であり居住可能な惑星を発見したとのことだ」
さらに書く。
「そして彼等は発見した惑星A-7に移住を開始し既に二年が経過していると聞く」
彼にとっては喜ぶべきニュースである。
「我々は彼等の好意に甘えA-7に立ち寄ることとした」
また書く。
「この長い戦いにおける暫しの休息として」
こう書いてここは終わりとした。
「マクロス7船団艦長エキセドル=フォルモ。航海日誌」
書き終えたところで。紫の髪の女が入って来た。知的でクールな印象の女だ。顔立ちが非常に整っている。まるでモデルの様でありその丈の短いスカートの軍服がよく似合っている。マクロス7の艦橋オペレーターであるサリー=S=フォードである。マクロスの中では美人で有名だ。
「艦長」
そのサリーがエキセドルに声をかける。
「間もなく予定地点にフォールドアウトします」
「わかりました」
エキセドルはその言葉に頷いた。
「ではすぐに私も用意を」
「了解しました」
こうして彼等はフォールドアウトに入る。エキセドルはまた言った。
「これで数時間後には我々も待望の緑の大地を踏むことになります」
やはり感情はない。事実を述べているだけだ。
「惑星A-7、いや彼等が付けた名はソロ星ですか」
そのソロ星において、騒動はさらに続いていた。
「一体何がどうなっているんだ!?」
コスモは遺跡の中で叫んでいた。
「異星人が攻めて来て遺跡に埋まっていたメカが動き出した」
そのことを言う。
「何なんだよ、これって」
「しかも」
シェリルがここで言った。
「見て」
「!?」
「あのマークが消えていく」
その通りだった。ゲージが消えてしまったのだった。それを見たベスがまた言う。
「どういうことなんだシェリルさん」
そうシェリルに問うのだった。
「地面の底に埋まっていたメカがいきなり動き出して合体した」
「ええ」
「これをどう説明するんだ?」
「・・・・・・わからないわ」
しかしシェリルの返答はこうであった。
「調査中だって言ったでしょう」
「調査中、調査中か」
ベスはシェリルのその言葉に舌打ちした。
「全く」
「よせよベス」
しかしコスモはそんなベスに対して言うのだった。
「今はシェリルさんに当たっても仕方ないだろ」
「コスモ」
だがベスは納得しない顔でコスモに言葉を返すのだった。
「御前の親父さんは科学長官だったな」
「ああ」
コスモも彼のその言葉に応える。
「何か知っていることはないのか?」
「俺だって何も聞いちゃいないさ」
だがコスモはこう言葉を返すだけであった。
「親父は親父、俺は俺だろ?」
「それもそうか」
「そういうことさ。俺も何一つ聞いちゃいないさ」
「とにかくよ」
次に口を開いたのはカーシャであった。
「今はこのソロ星に現れた謎の敵」
「あいつ等か」
「ええ。異星人の相手をすることが先決じゃないの?」
「そうだな」
ベス葉少し忌々しげだがその言葉に頷いた。
「癪に触るがその通りだ」
「そういうことよ」
「技術者だ」
彼はあらためて言った。
「技術者!?」
「そうだ。技術者を呼ぶんだ」
今度はこう言いだした。
「そしてこのメカを調べさせるんだ」
「おいおい、それかよ」
コスモは急にこう言い出したベスに呆れた。
「また急だな、おい」
「急なだけじゃないわ」
シェリルはコスモよりはっきりと顔に出していた。言葉にも。
「勝手なよ」
忌々しげに言い捨てた。
「何なのよ」
「非常事態だ」
だがベスも退かない。言葉が毅然としている。居直りではあっても。
「仕方ない。それにだ」
「今度は何?」
「資料は渡してくれるんだろうな」
次にシェリルにこう問うた。
「そこはどうなのだ?」
「非常時よね」
「そうだ」
そこを念押しする。
「つまり。軍がだ」
「最後まで言わなくていいわ」
それ以前に聞きたくもなかった。
「わかったわよ。じゃあそれでね」
「そうだ」
「仕方ないわね」
言葉には多分に諦めもあった。
「今は」
「こっちはわけのわからん敵とも戦わなきゃならんのだぞ」
ベスはこうも言うのだった。
「だからだ。必死なんだ」
「必死なのはわかるけれどな」
だがそれでもコスモは言いたいのであった。
「もう少し謙虚さが必要なんじゃないのか?ベスには」
「ふん」
それを言われてまた面白くなさそうな顔になった。
「何とでも言え。状況が状況だ」
「そうかよ」
「でもさ」
そんな彼等の間に入るようにしてデクが言ってきた。
「もうすぐソロ星には別の移民船団。マクロス7船団ってのが到着するんだろ?」
「ああ、そうね」
「そういえばそうだったな」
カーシャとコスモがそれに頷く。
「やっとって感じだけれど」
「マクロスはかなりの戦力でもあるよな」
「その人達と協力すればさ」
またでクは言う。
「あの程度の敵位はさ」
「おいおい、馬鹿を言うなよ」
しかしコスモはそんなデクに言うのだった。
「違うの?」
「当たり前だろ。いいか?」
そしてこう言ってきた。
「さっき現れたのが敵の全部のわけないだろ」
「その通りだ」
ベスは今度はいい意味で軍人として言う。
「あれは偵察部隊と考えるべきだ」
「偵察なんだ」
「そうだ。とにかく今は」
そしてまた話す。
「居住区に戻るぞ」
「居住区に?」
「そうだ。この調子じゃ」
さらに言葉を続ける。
「向こうもどうなってるかわかったもんじゃない!」
最後は言い捨てていた。それで歩き去るのであった。カーシャはそんな彼を見送って口を尖らせていた。
「何あれ」
反発を露わにしている。
「カリカリしちゃってさ」
「軍人ってのは皆あんなもんさ」
コスモは己の中にある軍人蔑視を隠そうともしない。
「怒鳴り散らすぐらいしか能がないんだ」
「ところでコスモ」
「何かな」
シェリルがコスモに声をかけてきた。
「頼みがあるの」
「頼み?」
「ええ。このメカを運んで欲しいのだけど」
こう頼むのだった。コスモはそれを受けてまずは問うた。
「それはいいけれどさ」
「何?」
「運ぶって何処へさ」
問題はそこであった。それを問うのだった。
「こんなでかいのをさ」
「第二発掘現場よ」
それがシェリルの返事であった。
「あそこに御願いするわ」
「そこに何があるの?」
「行けばわかるわ」
カーシャにも答える。
「それでね、カーシャ」
「ええ」
「デクもだけれど」
「僕もなんだ」
「そうよ。貴方達も手を貸してもらうわよ」
「何かな」
コスモはそんなシェリルの言葉を聞いて首を捻って言う。
「あんたもベスに劣らず勝手な人だよ」
森林で。ベスはぼやいていた。今の自分達の置かれた状況に。
「全く!」
苦い顔で呻いている。
「ソロ星に来て二年、折角同胞が来るというのにこんな事態になるとはな!」
歯噛みさえする。その時だった。
「!?誰だ!」
木の葉が揺れる音に顔を向けると。そこに先程の女がいた。
「危ない!!」
咄嗟に何かが襲って来たので彼女を庇う。それから女の顔を見ると。
「御前は」
ここで彼女に気付いた。
「さっき発掘現場にいた」
「私は」
「見慣れない顔だな」
ベスは彼女に構わず言葉を続ける。
「マクロス7船団の者か?」
(この男)
女は女で考えていた。
(巨神に乗り込んだ者の一人)
「マクロス7じゃそんなファッションが流行ってるのか?」
「ファッション!?」
「今厄介なことが起こってるんだ」
ベスはここでも彼女に構わず自分の言葉を続けた。
「向こうへは近づかない方がいい」
「そうなの」
「ああ、名乗ろう」
ここで自分で言葉を続けるベスであった。
「俺はジョーダン=ベス」
こう名乗った。
「士官候補生だ。あんたは何て名前なんだ?教えてよ」
「名前?」
「そうだよ」
女に対して応える。
「こっちから名乗ったんだし。別にいいだろう?」
「カララ=アジバ」
女はベスに応えて名乗った。
「いい男」
「ははは、そりゃどうも」
そう言われてベスも悪い気はしなかった。それで笑って言葉を返す。
「あんたみたいな美人に言われるのは嬉しいが今はデートは出来ないんだ」
「デート・・・・・・」
「そうさ。ここをまっすぐ行けばニューロピアの街への近道だ」
またここでも言葉を続ける。
「危ないから帰った方がいいぞ」
「そう・・・・・・」
「ありがとうって言ってさ」
また言葉を返すベスだった。
「帰ってよ。デートは明日しよう」
「ありがとう、ベス」
「全く」
カララが去るのを見送ってからまたぼやくのであった。
「こんなことがなけりゃ」
そうは言ってもはじまらなかった。そして今度は謎の戦艦の中でのことである。
「この辺りではあのロゴ=ダウが最後の星だ」
一人の男が話していた。
「イデが存在すると考えられる星。となればカララ様が焦る気持ちはよくわかる」
「しかしだ」
もう一人の男がそれに言葉を返す。
「だからと言って異星人と接触することはなかった」
「ああ」
男は同僚と見られるその男の言葉に頷いた。
「ギジェ」
同僚はその彼の名を呼んできた。
「御前はカララ様の親父のドバ総司令の引きがあるからカララ様にも甘い」
「それは」
「一つ言おう」
彼はさらに言ってきた。
「若しロゴ=ダウにいる異星人の軍事力が我々より上だったら」
「有り得ん!そんなこと!」
「問題はだ」
彼はまだ言う。
「そのロゴ=ダウに同族らしきものの艦が接近しつつあることだ」
「ということはだ」
ギジェは彼の言葉を聞いて一旦考えてから述べた。
「どうやら連中はこの銀河に散らばり各地で入植を開始しているようだな」
「下手をすれば終結されて面倒なことになるか」
「よし」
ギジェはそこまで聞いて決断を下した顔になった。
「私は出動する。ロゴ=ダウに降りたカララ様の安否だけでも確認しなければならん」
「それがいい」
男もギジェの言葉に賛成してきた。ドバ様に対する貴様の面子もあろうからな」
「ダミト」
「何だ」
ギジェの真面目な顔に顔を向けるダミトであった。
「俺は自分の野心の為にカララ様を救いたいのではない」
「それはわかっている」
ダミトもそれは認めるのだった。それからまた言う。
「カララ様にもしものことがあったら私も責任は免れんな」
「そういうことだ」
彼等もそれはわかっていた。彼等も彼等で動いていた、
「また御前か」
ベスは目の前のイデオンを見てコスモに声をかけた。
「あのメカを動かしたのか?」
「そっちのシェリルさんに頼まれてね」
「三体のメカを調べろと言ったのは貴方です」
シェリルは傲然とベスに言葉を返した。
「その通りにさせてもらいました」
「じゃあここも第六文明人の遺跡と言うのかい?」
「ええ」
「そうか。しかしだとしても」
ベスはここでも顔を顰めさせて言う。
「今まであんた達が散々調べても動かなかったものがこうも簡単に使えるとはな」
「俺にだってわからないさ」
コスモは一旦はこう前置きする。
「だけどあのゲージが点いたんだ」
「イデオンのゲージ」
ベスはそう呼んだ。
「そう言っていたな」
「ギリシア文字風のパターンでそう読めなくもないってこと」
「ああ、そういえば」
コスモは今のシェリルの言葉であることを思い出した。
「あんたは言語学の専門だったな」
「そうだったな」
「ってことはだ」
またコスモは言う。
「巨大ロボットになった時の名前なんじゃないの、イデオンってさ」
「そうかな」
「遺跡に残された第六文明人の言葉の中にイデオンって出てくるけど」
シェリルはコスモとベスに対して首を傾げてからまた言った。
「本当の意味はまだ」
「言語学者の卵ともあろうお方がこの半年に何を調べてたんですかね?」
「それは」
ベスの嫌味にも顔を顰めるだけだったがここで。また二人やって来た。
「よお」
「来たかベス」
「どうだジョリバ、テクノ」
二人の若い軍人に対して声をかける。
「少しはこのメカについてわかったのか?」
「設計図のコピーはシェリルさんからもらったよ」
「後は各メカに操縦席と武器を取り付けておいた」
「しかし」
コスモは二人の説明を聞いてもまだ顔を顰めさせていた。
「このメカやたらと隙間があるんだけど」
「武器を付けるのを忘れたんだろ?」
ジョリバはこう考えていた。
「これを造った第六文明人とかがさ」
「そうか」
ベスはジョリバのその言葉に頷いた。
「武装化されたなら戦力として期待出来るな。モエラ」
今度はモエラに言葉をかけた。
「御前はここに残ってあいつの操縦方法を調査してくれ」
「わかった」
「じゃあ後は頼んだぞ」
ベスはここまで言い伝えてその場を後にする。しかしコスモとジェリルはそんな顔を苦い顔で見送って言い捨てるのだった。
「軍人め!」
「私達の基礎調査がなければ何にも出来ないくせに!」
これは偏見だった。その偏見を表に出した二人のところにデクがやって来た。
「コスモーッ!」
「何処へ行ってたんだデク!」
コスモはそんなデクを叱った。
「勝手に動くんじゃない!」
「それどころじゃないわよ!」
しかしそこに来たのはデクだけではなかった。カーシャもいた。
「この遺跡すごいものが埋まっているんだから!」
「すごいもの!?」
「ジョリバさん」
シェリルはそれを聴いてすぐにジョリバに顔を向けた。そうして言う。
「エンジニアである貴方に見てもらいたいものがあります」
「その埋まっているすごいものって奴をか?」
「ええ」
そう言ったところで。またサイレンが鳴った。
「今度は何だ!?」
「このサイレンは」
モエラが顔をしかめさせる。それから言った。
「敵襲だ!」
「何だって!?」
「空を見て、コスモ!!」
カーシャが上を指差す。するとそこにいたのは。
「あいつ等この前の奴等だ!」
「通信機がさっきから道の言語を拾っているわ」
シェリルはこの時通信機を見ていた。
「その中に頻繁にバッフ=クランって言葉が出てくるわ」
「そうか」
デクはそれを聞いてすぐに勘でわかった。
「きっとそれがあの異星人の名前だよ!!」
「バッフ=クラン」
カーシャは敵対心をもう顔に浮かべていた。
「それがあたし達の敵」
「くそっ!」
それにコスモも続く。彼もカーシャと同じ顔になっていた。
「そっちがその気ならやってやる!」
「戦うのねコスモ!」
「モエラ!」
コスモはすぐにモエラに声をかけた。
「デクとBメカを頼むカーシャはCメカだ!」
「お、おう!」
「見てらっしゃいよ!」
カーシャはその敵対心をさらに激しいものにさせていた。その顔で言い放つ。
「返り討ちにしてあげるから!」
「頼んだぞコスモ!」
ジェリバはコスモに声をかけた。
「俺とシェリルさんは発掘現場に避難する!」
「わかった!」
(あの編隊)
その中でカララだけは。冷静に戦闘機達を見ていた。
(ギジェも来たか)
「コスモーッ!」
そこにまた二人来た。そうしてコスモに声をかける。
「ロッタ、それにリン!」
コスモが彼等に声をかける。
「何やってるんだ!?」
「畑仕事をしてる時にいきなり敵がやって来て」
「何っ!?」
「それで」
「どうなったんだ!?」
身を乗り出してロッタに問う。
「パイパー=ルウのお母さん達はニューロピアの街の様子を見に行ってしまったの」
「だあ、だあ」
ルウがここで赤ん坊の声をあげる。それを見て一同は冷静になるどころかさらに落ち着きを失ってしまった。今度はデクが彼等に対して問うた。
「アーシュラやファードもいるの!?」
「う、うん」
「デクこそ何でこんなのに乗ってんの!?」
「話は後だ!」
しかし今はそれどころではなかった。コスモは急いでそこにる皆に声をかけた。
「すぐにこいつに乗るんだ!」
「わかってるわ!」
「じゃあすぐに!」
越すもの言葉に従いイデオンに乗り込む。ロッタはコスモに続いてAメカのコクピットに乗り込む。彼はその中を見てまずは驚きの声をあげた。
「これの中こんな風になっているんだ」
「おい待てよ!」6
コスモはコクピットの中を見てすぐに怒りの声をあげた、
「ジョリバの奴!操縦席を付けたって言ってたが肝心のゲージが点かないじゃないか!」
「動かないのコスモ」
デクが彼に問う。しかしそのコスモは頭に血が登っていてそれどころではなかった。
「黙ってろ!」
デクに対して叫んだ。
「今配線を調べている!!」
そう怒鳴ったところで。爆発音が聞こえてきた。それと共に衝撃がイデオンを襲った。
「きゃあっ!!」
「くそっ!」
コスモは何とか起き上がりながら怒りの声をあげた。
「こっちを狙っていやがる!」
「う・・・・・・」
コスモはそれだけで済んだ。しかしルウはそうはいかなかった。
「ひぐっ・・・・・・うえええええっ!」
「ルウ!」
ロッタが声をかける。その時だった。
イデオンのゲージが点いた。コスモもそれに気付いた。
「ゲージが点いた!?いけるぞ!!」
それを見て。すぐに他のマシンのメンバーに声をかけた。
「モエラ、カーシャ!」
まずは彼等にだ。
「行くぞ!!」
「わかった!」
「それじゃあ!」
二人もそれに続く。イデオンが動き三つのメカが合体する。そうして出来上がったのは赤い巨大なマシンであった。
「やったぞ!」
コスモはイデオンが合体したのを見て声をあげた。
「成功だ!」
「どうなってるのデク!?」
リンは今何が起こったのかわからず驚きの声をデクにかけた。
「合体したんだよ!」
「合体!?」
「そうだよ!イデオンになったんだ!!」
そう答える。カララもその中にいて驚きの顔をしていた。
(あの姿)
カララはその姿を見て言う。
(まさしく巨神)
「何ということだ!」
驚いていたのはコスモやカララ達だけではない。対峙するダミト達も同じであった。
「イデ捜索のロゴ=ダウで異星人の巨神と出会うとは!」
「まさか」
ギジェもまた同じだった。驚きの顔を見せている。
「イデの巨神では。いや」
だがギジェは。すぐに自分の言葉を打ち消した。そうして言うのだった。
「ち、違う!あんな機械的なものがイデの伝説の巨神であってたまるものか!」
必死に否定しようとする。しかし。
「うわああああん!」
「ロッタ!」
コスモがロッタに対してまた怒鳴る。
「ルウを泣かすな!」
「御免なさい!」
「こっちだってな!」
コスモはまたロッタに対して怒鳴った。感情が止まらない。
「操縦で神経使ってるんだ!」
「見てコスモ!」
またデクがコスモに対して声をかける。
「街の人達が発掘現場に避難してるよ!」
「大変だぞ!」
今度はモエラがコスモに対して叫ぶ。
「ニューロピアの街は奴等の別働隊にやられたらしいぞ!」
「何だって!?」
「コスモ!」
それを聞いたカーシャがコスモに怒りの声をかける。
「蹴散らしちゃいなさいよ!侵略者の異星人なんか!」
「わかってる!」
コスモも同じ激情を以ってそれに応える。
「行くぞ!!」
「ええ!」
「喰らえ!」
手近にいた一機を拳で粉砕する。その時にまたルウが。
「うあう・・・・・・」
また泣きだした。
「うあああ・・・・・・うう!」
「さっきから言ってるだろ!」
コスモがルウが泣くのを聞いてまた怒鳴る。
「ルウを黙らせろ!気が散ってうまくいかなかったら皆死ぬんだぞ!」
「無理言わないでよコスモ!」
しかしロッタがコスモに怒鳴り返すのだった。
「こんな時に怯えない方がどうかしてるわ!」
「何だよこれって!」
コスモはいい加減怒りを爆発させてきた。
「どいつもこいつも!!」
「むっ、コスモ」
モエラはレーダーを見てコスモに報告してきた。
「レーダーに反応だ」
「レーダーに!?」
「そうだ。これは」
「今度は何だ!?」
出て来たのは巨大な戦艦だった。それは。
「マクロスだ!」
「ええ、あれは!」
モエラとカーシャはそれを見てすぐに察した。
「間違いないわ。あれマクロスよ!」
「ってことは」
デクはそれを聞いて顔を晴れやかにさせた。
「例のマクロス7船団がソロ星に来たんじゃないの!」
「艦長!」
マクロスの中でも黒髪の小柄な少女めいた美女がエキセドルに声をかけていた。
「あの赤いロボットはこの星に配備された特機でしょうか?」
「さて」
だがエキセドルはそれを見ても首を傾げるだけであった。
「あんなものは。データにもありませんが」
「ゼントラーディ側にもメルトランディ側にもですか」
「そうです」
こう答えるのだった。
「美保美穂君」
「はい」
ここでその美女の名を呼んだ。
「彼等は少なくとも地球人を守っているようです」
「ということは私達にとっても味方ですね」
「はい。ですからここは援護します」
彼の下した決断はこれであった。
「宜しいですね」
「わかりました。それではすぐに」
こうして彼等の行動は決定した。すぐにイデオンの方に向かい参戦するのだった。
「おい見ろコスモ!」
「ああ!」
モエラの言葉に応えて顔を向ける。
「どうやら俺達を援護してくれるようだぜ!」
「いや!」
だが。コスモの激情は収まらない。
「ここは俺達が入植した星だ!」
彼は言うのだった。
「余所者なんかに頼らずに俺達で侵略者を叩き出すぞ!」
「幾ら何でもそれは」
「いえ、違うわモエラ」
カーシャがここでコスモに言おうとするモエラを逆に止めた。
「そういう意気じゃないと駄目よ!」
「そうか」
「そうよ。だから今は!」
モエラを引っ張って行く。そうして戦いが本格化していった。
ギジェのマシンと戦闘に入る。だがギジェは流石に手強い。イデオンの拳もミサイルも何なくかわしてきた。モエラはそれを見てコスモに対して叫ぶ。
「コスモ!」
「何だよ!」
「何をやってるんだ!しっかりやってくれ!」
「御前が言うな!」
しかしコスモは逆に彼にこう言い返す。
「パイロットとしての基礎訓練は受けてるんだろ!子供をあてにすんじゃないよ!」
「馬鹿野郎!」
だがモエラもモエラで怒鳴り返すのだった。
「俺はパイロットでも補欠だったんだ!」
「自慢になるかね!」
「むっ」
彼等のその連携の悪さはイデオンにも影響が出ていた。ギジェはそれを見て指示を出すのだった。
「どうやら巨神は上手く動けぬようだな。各機円形陣で一気に叩くぞ!」
「了解!」
「目を潰せ!」
ダミドもダミドで指示を出す。
「コントロールシステムの全てが集中している筈だ!メカの作りは我々と似たようなものと見た!」
「やられてたまるかよ!」
目を狙われているとわかりコスモは必死に操縦しながらまた叫ぶ。
「上昇するんだイデオン!上昇しろ!!」
「ふああああああん!」
「だから言ってるだろ!」
またコスモは怒鳴る。
「ルウを泣かせるな!」
「怒鳴らないでよ!」
そしてロッタが怒鳴り返す。
「こっちもやっているんだから!」
「理由になるか!」
「ふむ」
彼等の中で冷静なのはエキセドルだけであった。イデオンとバッフ=クラン軍の動きを見て判断を下すのであった。
「ここは指揮官機を狙いましょう」
「敵のですね」
「はい。おそらくあれです」
ギジェの機体を指し示して言う。
「あれさえ撃墜すれば戦いは終わります」
「了解です」
「それでは」
美穂だけでなくサリーも言葉を返す。これで決まりだった。
マクロス7の攻撃はギジェ、そしてダミドの機体に集中した。イデオンだけでもてこずっていたところにその攻撃を受けたのだからたまらない。彼等は忽ちのうちに大きなダメージを受けてしまった。
「くっ、致し方ない!」
「このままでは!」
二人はここでは同じ判断を下した。撤退である。
「退くぞ!」
「致し方ない!」
こう部下達に告げて撤退させる。こうして一先イデオンにとっての脅威は去った。
「やったか」
「凄いよコスモ!」
「凄いのはコスモじゃないわ」
カーシャがデクに対して言う。
「このイデオンの力よ!」
「艦長」
サリーがエキセドルに報告する。
「敵異星人と思われる部隊は撃退しました」
「お疲れ様です。しかし」
ここで彼は言った。
「ソロ星に着いた途端に戦闘に巻き込まれるとは」
「船団から離れ単独で降下したことは不幸中の幸いですね」
美穂がこう述べた。
「はい。しかし」
ここでアキセドルは自分の記憶を辿りなおし。ふと思った。
「何処かで見たのかも。若しかして」
だがその考えは中断せざるを得なかった。
「艦長!」
また美穂が報告する。
「大気圏外にデフォールド反応!」
「先程の異星人のものと思われる艦が降下を開始しています!」
「危険ですね」
サリーの言葉も聞いて考え込みだした。
「今この場でソロ星の住民を守って戦うのは得策ではありません」
「艦長!」
考えているところに今度はサリーが報告してきた。
「地面より反物質エンジン反応!戦艦クラスの物体が浮上します!」
「何ですと!?」
そして出て来たのは黄色い巨大な戦艦であった。それは。
「見てよカーシャ!」
またデクが叫ぶ。
「あれって!?」
「嘘、あれって!」
そしてカーシャもまた。
「あたし達が発掘現場で見た宇宙船じゃない」
「じゃああれか」
コスモもそれを聞いて叫んだ。
「あれが御前達の言っていたすごいものか!」
「おいジョリバ!」
ベスがジョリバに問う。
「メインエンジンがかかったのか!?」
「知らん!」
しかし彼の返答はこうであった。彼等は今その巨大な戦艦の中にいる。
「俺はシェリルに言われてエンジンを調整中だったんだ!」
「何っ!?」
ベスはそれを言われて顔を顰めさせた。
「じゃあ何で動いたんだこの艦は」
言いながらシェリルに顔を向ける。そして。
「シェリル!」
「何よ!?」
「俺達に何を隠してる!?」
「隠してないわよ何も」
彼女はすぐにこう言い返した。むっとした顔で。
「皆教えたわよ!」
(待て)
カララはその戦艦を見ながら。また一人思索に入っていた。彼女も艦内にいるのだ。
(この艦も地下に埋まっていた。イデの巨神と関係があるのか?)
その時だった。艦内のゲージが光った。それもかなり強く。
「な、何だ!?」
ハタリがそれを見て最初に驚きの声をあげた。
「このゲージは!」
「これは」
だがベスには。それが何なのかすぐにわかった。
「あのロボットと同じものだ!」
「あのロボット!?」
「そうだ、イデオンの。むっ!?」
話すその側から。また異変が起こるのだった。
「か、艦長!」
サリーが驚きながらエキセドルに報告する。
「あの艦は亜空間飛行に入る模様です!」
「いけませんね」
エキセドルはそれを聞いて冷静に述べる。
「本艦も緊急フォールドです。このままでは巻き込まれます」
「駄目です!」
しかし美穂が言う。
「間に合いません!」
「それでしたら」
それを聞いても。彼の冷静さは変わらない。
「総員対ショックです」
「は、はい!」
「わかりました!」
こうしてイデオン達は何処かへと消えた。その時ギジェ達は母艦に戻って上官に対して報告をしていた。モニターに赤い髪の気の強そうな女がいた。
「では妹は」
その女は話を聞きながら述べていた。
「カララはそのロゴ=ダウの異星人の艦に乗っていると申すか?」
「はい」
ギジェが彼女に報告する。
「カララ様がお持ちになっております発信機の信号から察するに」
「そうか」
「ハルル様」
ここでギジェは女の名を呼んだ。それからまた報告する。
「発信器は約十万光年の探知範囲を持っています」
「十万年光年か」
「そうです。奴等がDSドライブを使いこの銀河の何処へ逃げようともカララ様を発見し必ずや保護します」
「待て」
「!?」
しかしハルルはここでギジェを制止するのだった。
「何か」
「その必要はない」
「どういうことですか、それは」
「聞けば妹の行動は身勝手ゆえのもの」
それがハルルの考えであった。
「巨神を手に入れる為なら妹の犠牲も厭わぬ」
厳しい言葉でギジェに告げる。
「つまらぬことに囚われ好機を逃すなよ」
「左様ですか」
「そうだ、わかったな」
「わかりました」
ギジェがその言葉に頷く。ハルルはその彼にさらに告げるのだった。
「必要とあらば増援を送る」
軍事の言葉だった。
「期待しているぞ」
「了解しました」
「そういうことだ。それではな」
ここまで話したうえでハルルはモニターから姿を消した。ダミドはそれを見送ってから話すのであった。
「相変わらず厳しい方だ」
「うむ」
ギジェも彼のその言葉に頷いた。硬い顔で。
「実の妹に対しても容赦がない」
「そうでなければ女性でありながらあの地位に就くことは出来んだろう」
「そうだな。全く」
ギジェの言葉に頷いてからまた述べる。
「御父上のドバ総司令も男に生まれたらとお嘆きのことだろうよ」
「そうかもな。あそこまでの方ならば」
「うむ。それよりだ」
「むっ!?」
ここで話が変わった。
「ギジェ、どうするつもりだ?」
「どうするつもりだと?」
「そうだ。御前は婚約者であるカララ様をこのままにするつもりか?」
「いや」
だがギジェはその言葉には首を横に振って否定を見せた。
「サムライの面目にかけて巨神の奪取とカララ様の救出をやってみせよう」
「しかしだ」
ここでダミドはあえて言う。
「武器といい抵抗といい相手はかなり好戦的な種族と見える」
「好戦的か」
「俺はそう思う。それもかなりな」
この見方はある程度という段階で当たってはいた。しかし自分達のことについてはあまり考えてはいない。それもわかる見方であった。彼等が気付いていないだけで。
「そういった種族がカララ様を発見し捕らえた場合」
「その場合は」
「捕虜の扱いの礼儀があるとは思えん」
「そうかな」
しかしギジェはそれもまた否定するのだった。
「彼等は我々に近いレベルの科学技術を持っている」
「我々にか」
「少し見ただけだがな。だから」
こう前置きしてまた述べる。
「捕虜をすぐに殺したりはしないと思うな」
「いや、それはどうかな」
ダミドは今のギジェの言葉にも懐疑で返す。
「考え方は見掛けではわからんよ。だが」
こう前置きしてまた語る。
「ことは早い方がいい」
「うむ」
これにはギジェも素直に賛成することができた。
「すぐに追撃の準備に移ろう」
「そういうことだ」
(さて)
ダミドはここで心の中ではあることを考えていた。
(カララ様はギジェに任せればいい)
打算であった。
(その間に俺は巨神を奪取するだけだ。成功すればドバ総司令もハルル様も俺の力を認めざるを得まい)
出世が目的であった。彼は。
(そうなれば出世も思いのままだ)
(カララ様)
そしてギジェもまた。別のことを考えていた。
(巨神、異星人)
彼は出世ではなく。カララや彼等のことを考えていたのであった。
(イデ探索の出撃がまさかこのような事態になるとはな)
ギジェはこれからのことを憂いていた。だが何もわかってはいない。その何もわかっていない中で考えていた。これからのことに。

第四十八話完

2008・3・1  
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