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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第四十九話 ディスコード=ハーモニー

                  第四十九話 ディスコード=ハーモニー
コスモ達はソロシップの中にいた。そこでベスがエキセドルに報告していた。
「ですから」
艦長室において必死な顔でエキセドルに説明している。
「何度も説明した通りこの艦、ソロシップは遺跡から発掘したものであり」
そう述べている。
「先のDSドライブもこちらの意図したものではなく勝手に発動したものなのです」
「貴方は」
表情こそは変えていない。しかしその言葉は別であった。
「それを我々に信じろと言うのですか?」
「信じられないのは我々とて同様です」
ベスもこう反論する。
「あの巨神が動いてから僅か数日の内に入植した惑星から逃げ出す羽目になったのですから」
「わかりました」
エキセドルもここで納得することにした。
「この一件は事故として今後の遺恨としないことを約束しましょう」
「ありがとうございます、エキセドル艦長」
「ただしです」
だがここで彼は釘を刺してきた。
「はい?」
「それはあくまでも代表者同士の間の話であり」
まずはこう前置きする。
「一般市民には通用はしません」
「一般市民には、ですか」
「そうです。何しろ」
彼は言う。
「こちらは先のフォールドで船団の他の艦とはぐれてしまったのですから」
「そうですか・・・・・・」
「それでです」
そうしてまたベスに話すのだった。
「当分の間両艦の市民の交流は管轄下に置かせて頂きます」
「わかりました」
「そしてです」
素直に了承したベスに対してさらに告げるのだった。
「ジョーダン=ベス君」
「はい」
「ソロ星防衛軍の生き残りの方々の中で貴方が最上位の階級にあります
「ええ、それは」
ベスもそれはわかっていた。士官候補生として。
「貴方は今後のソロシップとそれに乗り込む方々を守る義務があります」
「それはわかっています」
「こちらとしても最大限の協力をさせて頂きます」
そしてまた言う。
「我々はメガロード船団と別れて三十五年の航海の末に巡り合った同胞なのですから」
「!?待って下さい」
ここでベスはあることに気付いた。それで言う。
「エキセドル艦長、三十五年とはどういうことです!?」
「貴方も生まれる前とはいえ報告は御聞きの筈です」
エキセドルの考えではそうなのだ。
「メガロード船団が正体不明の敵から攻撃を受け船団が散り散りとなった三十五年前のあの事件を」
「無論です」
これはベスも知っていた。ところが。
「ですがそれは二年前のことでは?」
「何ですと!?」
二年前と言われてさしものエキセドルも表情を一変させた。
「まさか。それは」
「我々の移民団はその戦闘でメガロード船団から別れソロ星に辿り着いたのです」
「そんな馬鹿な」
「エキセドル艦長!?」
「ベス君」
エキセドルは表情を戻しベスに告げた。
「この一件追って調査を致します」
「そうですか」
「ですから当面の間は貴方達の間の時間の認識のズレについては機密事項にしておいて下さい」
「わかりました」
「とにかくです」
エキセドルはあらためて述べる。
「まずは互いの艦の市民達を落ち着かせることが先決です」
「ですね」
ベスもそれに同意して頷く。
「今後の行動についてはその後で改めて検討をしましょう」
「了解です」
こうして話は終わった。しかしであった。
「二つの船団の時間のズレ」
エキセドルは一人になってから呟く。
「そして遺跡から発掘された正体不明のロボットと宇宙船。何もなかった三十五年の次はいきなりの激動ですか」
ソロシップのブリッジに戻ったベスは。すぐに一同の聞き取りに似た質問責めに遭うことになった。コスモが最初に彼に声をかけてきた。
「それでだ」
「ああ」
「わかったことは?」
「ソロシップのことだが」
それを話すことにした。三十五年のことはとても言えなかった。
「それなら私が言うわ」
「シェリルさん」
「いい、皆」
シェリルが皆に対して話しだした。
「これまでの調査でこの艦が反物質エンジンを積んだ宇宙船であることはわかったわ」
「反物質エンジンでか」
「ええ。けれど」
しかしここでシェリルは言い加えるのだった。
「それだけではない何かがこの艦の中心の部分の構造体にあって」
「何かが?」
「そうなのよ。しかも」
さらに言葉を続ける。だがそれは謎をさらに呼ぶものでしかなかった。
「それが全くわからないの」
「わからないだって?」
「遺跡を残した第六文明人の言葉を解く手懸かりをコンピュータから拾い出そうとしたのだけど」
ハタリに応える形でまた述べた。
「専門的な記号ばかりで単語はイデオンという4文字だけしかわからなかったの」
「イデオンか」
コスモはその名を聞いて呟いた。
「やっぱりあのロボットの名前なのか」
「けれどあれよね」
次に口を開いたのはカーシャであった。
「どうしたんだ、カーシャ」
「どう見てもこのソロシップってイデオンと共に造られたものよね」
「だろうな」
カーシャのその言葉にジョリバが頷いた。
「この艦のブリジにもゲージを示すモニターがあるし」
「とにかく調査にはもっと時間が必要だわ」
シェリルはこう結論づけるのだった。
「ソロシップもイデオンについても」
「しかしだ」
だがそれにはベスが異議を申し立てる。
「我々の有様を見てもらいたいな。学術調査的にやっている時か」
「それでもよ」
しかしシェリルも引かない。反論するのが何よりの証拠であった。
「もう少し調べればイデオンのゲージとの関係もわかるかも知れないのよ」
「イデオンとのか」
「そうよ。それに」
さらにその言葉を続ける。
「それにこの艦全体の性能もわかればあの時勝手に発動したDCドライブの原因もわかるかも知れないわ」
「あくまで知れないんだな」
「まあそれは」
ベスの今の問いかけには難しい顔になる。
「そうだけれど」
「知れない、知れない、知れない」
ベスはたまりかねたように言う。
「その可能性を発見する前に敵にやられたらどうするんだ!?」
「でもこのままじゃあ」
「状況を認識しろ」
ベスの言葉は軍人としてのものであった。
「俺達はこの艦の勝手なDSドライブのおかげでマクロス7ごと何百光年もの距離を飛ばされちまったんだぞ!」
「それは私もわかっているわ!」
ジェリルもベスが怒ったに対してムキになって言い返した。
「けれど今はまだ」
「わからないことばかりでどうしろっていうんだ!」
「わからないから調べるのよ!」
「そんな暇があるか!」
「まあ待ってくれ」
「ジョリバ」
言い争いになった二人に入る形でジョリバが加わってきた。彼は少しうんざりとした感じでその二人に対して告げるのであった。
「二人共いいかな」
「あ、ああ」
「私はいいわ」
二人も彼が入ったのを見て大人しくなった。ジョリバはそれを見届けてから話をはじめるのであった。
「艦の制御の方は何とか出来そうだ」
「そうなの」
「ああ。座標さえ合えばDSドライブも使える」
「それだと」
シェリルはそれを聞いてさらに落ち着いた。それでまた言うのだった。
「とりあえずだけれどね」
「ああ」
「この宙域には異星人の影はないわ」
それは彼等にとっては喜ぶべきことであった。
「その間に調査を進めれば」
「しかしだ」
だがベスはそれにまた異議を呈するのであった。
「敵だってDSドライブで追ってくるかも知れん」
「物事を悲観的にしかとらえられない人って嫌いだわ」
「まずいな」
コスモはあくまで衝突を続けるシェリルとベスを見て苦い顔で呟くのだった。
「あの調子じゃ何時まで経っても結論が出そうにないな」
「ねえコスモ」
「んっ!?」
その彼に声をかけてきたのはカーシャであった。
「あんたはどうする気なの?」
「どうする気って」
コスモはそのカーシャに問い返した。あまりわかっていない顔である。
「このままイデオンに乗るのかってことよ」
「それか」
「そうよ。言っておくけれど」
カーシャの今の言葉は強いものだった。
「私はやるわよ」
「やるのか」
「そうよ。私達をソロ星から追い出した異星人がまた来たら」
言葉がさらに強いものになる。その表情もまた。
「その時はあたしの手で奴らを倒してやるわ!」
「そうか」
「ええ、絶対にね」
そんな話をしていると。ブリッジに通信が入った。ベスがそれに出てすぐに切った。その彼にハタリが問い掛けた。
「どうしたんだ、ベス」
「モエラからの通信だ」
「モエラからか」
「ああ。どうやら捜し人が見つかったらしい」
「捜し人?」
「そうだ。若しかすると」
ベスの顔が険しいものになる。その表情もまた。
「敵のスパイかもな」
「何だって!?」
ブリッジが緊張に包まれる。その時ソロシップの艦内通路において。ロッタとカララがルウをあやしていた。
「だあだあ」
「よしよし」
カララがルウを抱いて優しい顔を見せている。
「あばあ!」
「元気な赤ちゃんね」
「すいません、ええと」
「カララよ」
にこりと笑ってロッタに己の名を告げる。
「よかったら覚えておいてね」
「わかりました。それでも」
ここでロッタはまたカララに言うのであった。
「ルウは。うるさかったですか?」
「いいえ」
しかしカララはそれはその穏やかな笑顔で否定するのだった。
「気にしないで」
「有り難うございます。そういえばですね」
ロッタは今度はカララの服装を見た。それからまた彼女に述べる。
「素敵なファッションですね」
「有り難う」
「マクロス7ではそういう服が流行っているんですか?」
「マクロス7!?」
「えっ!?」
ロッタは今のカララの言葉にその目を少し丸くさせてそうしてまた聞き返した。
「知らないんですか?」
「実は」
ここで一緒にいたリンも話すのだった。
「見慣れない人だからソロ星に降りたマクロス7船団の人かと思って」
(ソロ星!?)
カララはそれを聞いて己の中で反芻する。
(異星人達のロゴ=ダウの呼び名か)
そう考えていたカララのところに。ベス達が駆けつけてきた。緊張で強張った顔で。
「あれ、ベス」
「どうしたの?」
「ゆっくりとこっちを向いてもらおう」
ベスはロッタ達に応えることなくその強張った顔のままカララに声をかけた。
「カララ=アジバ」
「ジョーダン=ベス・・・・・・」
「リン」
シェリルもまた険しい顔で妹に声をかけた。
「ロッタとルウと一緒に向こうへ行ってなさい」
「姉さん・・・・・・」
リンは姉のその剣幕にまずは戸惑った。それで彼女に問うた。
「一体何が」
「早くなさい!」
しかしシェリルは答えない。逆にこう言うだけであった。やはり有無を言わせないものがそこにあった。妹も姉にこう言われては従うしかなかった。
「う、うん・・・・・・」
「抵抗する気はないようだな」
モエラが大人しい様子のカララに対して問うた。既にリンとロッタはルウを連れて去っていた。カララと彼等だけになっていたのだった。
「確かめよう」
今度はベスが確かな声で告げてきた。
「マクロス7の降下前に俺は御前と会った」
「ええ」
カララもそれは認める。頷いて。
「つまりだ」
ここからが問題であった。
「御前はマクロス7の人間ではないということになる!」
「・・・・・・・・・」
「聞こう」
沈黙するカララに対してさらに問い詰める。
「御前は何者なんだ何所の人間だ。いや」
言葉をあらためる。そうして問うのは。
「それ以前にだ。御前は地球人なのか!?」
「それは」
「答えなさい」
シェリルも険しい声でカララを問い詰める。
「さもないと」
「わかったわ。それじゃあ」
カララは観念した。そのうえで名乗った。
「我々の民族の名はバッフ族」
「バッフ族!?」
「ええ。バッフ=クランの女よ」
「バッフ=クラン!?」
シェリルはそれを聞いて驚きの声をあげた。
「それがソロ星を襲った侵略者の名前なのね」
「ええ」
こくりと頷いてそれも認めるのであった。
「その通りよ」
「しかし」
ベスはここまで聞いて呟いた。
「目の前で言われても信じられないな」
彼の素直な感想であった。
「君が異星人だなんて。俺は異星人と言えば」
「手が四本、足が六本」
カララはここで冗談めかして言うのだった。
「肌がドロドロの醜い怪獣だと思っていたのかしら」
「いや、そこまでひどくはないが」
それは否定する。しかしだった。
「巨人だったり、角があったり、羽があったり、機械人間だったり」
バルマー戦役でのことだ。
「そんなのだとばかりな」
「どうやら」
カララはそれを聞いて思うのだった。
「貴方達の民族は多種多様な種族と接触されたようね」
「ここ十年で俺達の母星は異星人に何度も侵略されたからな」
ベスもそれに応えて話す。
「だから接触には神経を使うんだ」
「そうなの」
「まさかな。こんな美人だとはね」
「有り難う」
「しかしだ」
ベスの言葉がまた厳しいものになった。その表情もまた。緊迫した空気は健在であった。
「今は人質として監禁させてもらう」
「人質なのね」
「命を奪うつもりはないわ」
シェリルもそれは保障する。
「けれど。ここは地球人の船だから」
「わかってくれるな」
「ええ」
カララは大人しくそれに従うことにした。今ここで下手にあがらっても無駄なのは彼女もわかっていたからだ。
「仕方ないわね」
「わかってくれたらいい」
「それじゃあこっちに来て」
こうしてカララは捕虜になった。とりあえず彼女は捕虜として抑留されるのであった。
マクロス7の艦橋においては。美穂がぼやいていた。
「残念ね」
「残念?」
「だってそうじゃない」
同僚のサリーに応えて述べる。ぼやく顔で。
「折角見つけたソロ星を放棄するしかないなんて」6
「仕方ないわ」
しかしサリーはぼやく美穂に対して慰めるようにして微笑んで告げた。
「銀河はこんなに広いけど」
「広いけど?」
「居住可能な惑星はなかなか見つからないから」
「マクロス7船団なんかあれよね」
自分達の船団についても言った。
「三十五年間も移動と調査の繰り返しだったわけだし」
「しかしです」
ぼやき続ける美穂に対してエキセドルが声をかけてきた。
「新たな母星を見つけるのが我々の務めであり地球の未来の為でもあります」
「それはそうですけれど」
「艦長の仰る通りよ」
サリーはエキセドルに同意するのであった。そのうえでまた美穂に対して言う。
「私達は地球を旅立ったあの日のことを忘れちゃ駄目なのよ
「って言っても」
けれどそれでも美穂は思うのだった。
「マクロス7生まれの私達は地球を見たことないのよね」
「まあそれはそうだけれどね」
「否定はしません。ところで」
エキセドルは話題を変えてきた。
「はい?」
「何でしょうか艦長」
「あの艦に積まれている巨神ですが」
「イデオンのことですか」
「そうです。イデオン」
まずはイデオンの名を呟いた。
「イデオン、イデ。その言葉、確かに私の記憶の片隅にあるのですが」
「記憶の片隅に」
「ですが。中々出て来ません」
それに戸惑っているようであった。表情からはわからないが。
しかしここで。その思考を中断する出来事が起こったのだった。
「艦長!」
レーダー反応があがった。それを聴いた美穂がすぐにエキセドルに報告する。それまでのぼやきは消えて真剣な顔になっている。
「前方の宙域にデフォールド反応!」
「むっ!?」
「戦艦クラスが出現します!」
「ここでですか」
「出ます!」
美穂はさらに報告する。
「あれは・・・・・・」
多くの敵が姿を現わした。それは。
「ソロ星に現れた異星人です!」
「バッフ=クラン」
サリーの報告に応えて呟く。
「ベス君の報告にあったバッフ=クランですか」
「ソロ星から我々を追ってきたのでしょうか」
「けれどあれよ」
美穂がサリーの分析を聞いて述べる。
「数百光年もデフォールドしたのにどうやってこちらの場所を探知したの!?」
「それはわかりません。ですが」
「ですが!?」
エキセドルの言葉に顔を向ける。彼の言葉は。
「今はそれよりも戦闘です」
「そ、そうですね」
美穂も軍人だ。だからそちらにすぐに考えを切り替えた。
「それではすぐに」
「シティ7を切り離し安全宙域に退避させましょう」
「了解!」
「わかりました!」
サリーも美穂も軍人の顔になってそれに応える。
「それではすぐに」
「シティ7、分離させます」
「はい」
こうしてシティ7が分離させられた。そうして後方に退避させられた。
「シティ7、後方へ退避します」
「わかりました。それでは迎撃用意に入って下さい」
「了解。迎撃用意に入ります」
といってもバルキリーはいない。この艦には有人のバルキリーは搭載されていないのだ。それが難点でもあった。
「無人機を出しますか?」
「そうですね」
サリーの言葉に応えて述べる。
「ではデトロイト部隊を」
「デトロイトをですか」
「バッフ=クランの戦闘機はかなりの機動力を誇ります」
これもまたベスの報告から知っていたのだ。
「バルキリーもいいですが接近された時の為に」
「その時に備えてですね」
「そうです」
それが彼の考えであった。
「デトロイト部隊を出して下さい」
「わかりました。デトロイト部隊スタンバイ」
このデトロイトもまた無人機である。だから装備扱いとなっている。
「あと。やはり」
ここで念には念を入れるエキセドルであった。
「バルキリーも用意しておきましょう」
「バルキリーもですね」
「用心の為です」
これもまた彼の考えであった。
「それで御願いします」
「わかりました。それではバルキリーもまた」
「用意します」
美穂とサリーが述べた。デトロイトが出撃しバルキリーの用意が為された。
ところでここで。美穂が不意に楽しそうに話し出したのであった。
「そういえばですね」
「何でしょうか」
「あちらの戦艦ですけれど」
「ソロシップね」
「そう、そのソロシップにね」
サリーに応えるその顔も楽しそうに笑っていた。
「凄い美人の捕虜がいるらしいわ」
「美人の!?」
「一度見てみたいと思わない?」
そうサリーに提案するのだった。
「一度でもね」
「まあ悪くはないわね」
サリーもそれに乗るのだった。意外とミーハーなようである。
「けれど戦闘の後でね」
「戦闘の後ね。わかったわ」
「そういうことでね。そのソロシップだけれど」
あちらでも動きが見られた。
「あの赤いマシンが出て来たわよ」
「イデオンね」
「そう。さて、どうなるのかしら」
彼女はまだイデオンのことをよく知らなかった。だから半信半疑といった顔で見ているのだった。
「かなり強そうだけれどね」
そのイデオンでは。コスモがまた怒鳴っていた。
「くそっ!」
その顔からあまり出撃したくなかったことがわかる。
「俺達はまだロクにこのイデオンのことがわかっちゃいないんだぞ!」
「敵が来てるんだから仕方ないじゃないの!」
しかしそんな彼をカーシャが叱る。
「相手はソロ星を襲ったバッフ=クランなんだからあたしの手でやっつけてやるわ!」
「出てきたか巨神め」
そのバッフ=クラン軍にはギジェもいた。彼は顔を強張らせてイデオンを見ていた。
「こちらも重機動メカを使う以上パワー負けはない!」
「ギジェ」
ダミドがそのギジェに声をかけた。
「手筈通り行くぞ」
「うむ」
「御前はあのロゴ=ダウの地底から現れた艦に取り付け。巨神と戦闘機の相手は俺達がする。」
「頼むぞダミド」
ギジェはその彼の言葉を好意を受け取っていた。そうしてイデオンを見据えて激しい敵意を見せるのだった。
「異星人め、何としてもカララ様を取り戻してみせる!」
「来たわよ!」
「ああ!」
ギジェ達が動いたのを見てカーシャが叫ぶ。コスモもそれに応えた。
「やってやる!生きる為に!」
「コスモ!」
その彼にベスが声をかけてきた。
「マクロス7もいる!無茶はするなよ!」
「ああ!」
こうして戦いに入った。戦いに入りエキセドルはバッフ=クラン軍の中の大型機の一機の動きに気付いたのであった。
「妙ですな。あの大型機の動きは」
「!?あの機体は」
「ソロシップに向かっています」
「ふむ、そういうことですか」
彼は美穂とサリーの言葉を聞いて全てを察した。そうして言うのだった。
「ソロシップに取り付く気ですな」
「えっ!?」
「何の為に」
「中から占拠するかそれとも捕虜を奪還する気か」
「おい!」
ベスはそれを聞いてすぐにハタリに声をかけた。
「聞いたかハタリ!敵の狙いはソロシップらしい!」
「了解だ!砲撃を奴に集中させろ!」
「ねえ、ベス」
シェリルもベスに対して囁いた。
「若しかしてあのカララって女敵にとっても重要な人物なのかしら」
「その可能性もあるな」
ベスも彼女のその言葉は否定しなかった。
「だが今は目の前の敵を倒すことが先決だ!」
「そうね。それじゃあ」
「弾幕を張れ!」
ベスは指示を出した。
「あのマシンを何としてもソロシップに近付けるな!いいな!」
「了解!」
「くっ、ベス!」
ここでコスモが彼に声をかけてきた。
「どうした!?」
「こちらは行けない。敵に囲まれた!」
「何っ!?」
「まずはこの連中を倒す!その間頼む!」
「くっ、イデオンが!」
「御安心下さい」
ここでソロシップにエキセドルが声をかけてきた。
「我々がそちらに向かいます」
「マクロスがですか」
「そうです。ですから御安心下さい」
「すいません。それでは」
何とかソロシップの護衛はついた。しかしそのソロシップにもマクロス7にも多くの敵が寄って来る。その相手で必死の有様だった。特にソロシップは。
「弾幕を増やせ!」
「増やしている!」
ハタルがベスに反論する。
「だがこれ以上は!」
「くっ、ミサイルは!」
「もう充分撃っているわ!」
今度はシェリルが答える。
「それでも限界があるのは当然でしょ」
「そんなこと言っている場合か!」
しかしベスはそれで納得しなかった。また怒鳴る。
「このままではあの機体が来るぞ!」
「巨神がこっちに来てくれれば」
「無茶言うな!」
そのイデオンからコスモが怒鳴る。
「今のままでどうやってそっちに行くんだ!」
「そこを何とかしろ!」
モニター越しにベスが怒鳴る。
「何の為の巨神だ!」
「そんなの俺が知るかよ!」
「くっ、ならいい!」
切れて話を中断した。
「そっちはそっちでやれ。勝手にしろ!」
「そうさせてもらう!」
喧嘩別れの形になった。それでも戦いは続ける。ギジェは懸命に近付こうとするがソロシップの方も必死だった。それで何とか弾幕を張り退けようとするが。
ここでイデオンが動いた。何とかそのミサイルを乱射して敵を減らしその囲みを突破したのだ。それでソロシップに向かい一気にギジェのマシンを叩いた。
「ぐっ、しまった!」
「ギジェ、動けるか!」
「ああ、まだだ!」
ギジェはまだ諦めてはいなかった。作戦の失敗は確実だと彼も読んでいた。しかしであった。
何とかソロシップに接近した。そして。何かを取り付けたのだった。彼等に気付かれないうちに。
「これでよし」
ギジェはそれだけで今回は満足することにしたのだった。
「新たな発信機を取り付けた。これで追跡が続行出来る」
「撤退するか」
「うむ」
少し気が済んだ声でダミドに答えた。
「ではこれでな」
「また。追うとしよう」
バッフ=クラン軍は姿を消した。何とか今回の戦いは終わったのだった。それはコスモ達からも確認された。
「行ったか」
「あいつ等また来るのかしら」
「さあな」
コスモはカーシャの今の言葉には首を捻る。だが言うのだった。
「けれどだとしたら俺達を襲う理由ってのを知りたいもんだ」
「そうね」
そんな話をしていると。またレーダーに反応がった。
「新たなデフォールド反応!」
「またバッフークランでしょうか」
「いえ、違います」
報告をしたサリーはそのままエキセドルに答える。
「こ、これは!?」
「えっ、嘘!?」
美穂が新たに出た敵の姿を見て思わず叫んだ。
「まさかここで!?」
「そんな・・・・・・」
そしてそれはサリーも同じだった。クールな彼女も。
「そんなことって!」
「あれは」
エキセドルも彼等を認めて言う。
「三十五年前にメガロード船団を襲った敵ですな」
「まさかこんな時に」
「どうして」
「遂にです」
美穂もサリーも冷静さを失っているがエキセドルは別だった。いつもの調子だ。
「我々は彼等と遭遇してしまいました」
「エキセドル艦長!」
ベスがエキセドルに通信を入れてきた。慌てた声で。
「ここは一時撤退を!」
「しかしです」
だがエキセドルはそのベスに対して言う。
「我々が退けばシティ7を敵の脅威にさらすことになりかねません」
「うう・・・・・・」
「バルキリー部隊を出します」
ここで切り札を出すことを決定した。
「それで彼等を迎え撃ちます」
「わかりました」
こうして新たな戦いがはじまった。向こう側の相手にはハゲ頭で右目が義眼のいかつい顔つきの男がいた。「
「いい感じだぜ」
彼は人型のマシンの中で不敵な笑みを浮かべていた。
「高純度のスピリチアをそこら中から感じるぜ!そろそろ頂くとするか」
そう言いながらコスモ達に向かう。しかしここで不意にルウが泣き叫ぶだした。
「うえええええええええっ!」
「どうしたの、ルウ!?」
「何が一体」
ロッタ達はそんなルウを必死にあやす。しかし泣くのは止まらない。
「何だ!?またルウが泣いているのか!」
「いちいち怒鳴らないでよ!」
リンがコスモに怒鳴り返す。
「いい加減にしてよ!本当に!」
「戦闘中だ!気が散る!」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「コスモ君でしたな」
「!?」
ここでエキセドルがイデオンに通信を入れてきたl。コスモはそちらに顔を向けた。
「あんたは!?」
「マクロス7艦長グローバルです」
こうコスモに名乗った。
「まずははじめまして」
「あ、ああ」
挨拶からはじまった。
「実は御忠告したいことがありましてこうして参上しました」
「宙国!?」
「はい、今出て来た彼等です」
エキセドルはコスモに対して述べる。
「彼等はこちらを攻撃するとそのパイロットを行動不能にします」
「何だって!?」
コスモはそれを聞いて思わず声をあげた。
「行動不能に!?」
「そうです。攻撃を受けた者は何もできなくなり。そして」
さらに告げる。
「死に至ります」
「な、何よそれ」
カーシャはそれを聞いてまた驚きの声をあげた。
「滅茶苦茶じゃない」
「そうです。ですから御気をつけを」
「そんなこと今更言うのかよ!」
「待って、コスモ!」
八つ当たり気味になったコスモにまたカーシャが言う。
「今度は何だ!」
「来るわ、その敵が!」
「くっ!」
「へへへ」
そのハゲ頭の男であった。
「高純度のスピリチアだ。あっちのデカブツといくか!」
「来たわ!」
「まずい!」
モエラが叫んだ。
「こっちに向かってくる!」
「まずいぞ!」
コスモも危険を感じ取った。
「あのスピードじゃイデオンはかわしきれない!」
「もらった!」
今まさに攻撃を受けようとする。その時だった。
またここでイデオンのゲージが光った。これまでより強く。
「何だ!?」
コスモはイデオンのゲージが光ったのを見て声をあげた。
「いきなりゲージが光ったぞ!」
「なっ!?」
その異変は男も感じていた。突っ込みながら。
「こ、このスピリチア。一体何だぁ!?」
本能的に危険を感じ取った。すぐに後退する。だが姿勢を元に戻して。再び不敵に笑って言うのだった。
「おもしれえ!この船団規模は小さいが俺様の獲物に相応しいようだぜ!」
「くっ、こいつ等」
コスモはその男の動きを見て歯噛みする。
「一体何なんだ!?何者なんだ?」
「いけませんな」
エキセドルはコスモ達の苦戦を見て呟く。
「このままでは三十五年前の繰り返しになります」
「しかしどうすれば」
「ミサイルだ!」
コスモがまた叫んだ。
「カーシャ!」
「どうするの!?」
「まずは距離を置く!」
こうカーシャに告げた。
「ミサイルはモニター十面全部使ってでも当てるんだ!」
「無理言わないで!」
だがカーシャはコスモの主張を否定する。
「相手は小さいのよ。力押しでいけばいいじゃないの!」
「そうは言うがな!」
だがコスモもはいそうですかと引かない。頑迷な程だった。
「あの奇妙な武器に当たったらどうするってんだ!」
「当たらないわよ!」
「弾幕だ!」
そんな話をしていた。だがその間にエキセドルはある準備をさせていた。
「それで宜しいですね」
「わかりました」
「それでは」
美穂とサリーがこれまで以上に真剣な面持ちで彼の言葉に頷いていた。
「これより」
「はじめます」
「そうです。
「関係各位に伝えて下さい」
エキセドルはあらためて告げた。
「マクロス7はこれよりトランス=フォーメーションを行います」
「トランス=フォーメーション・・・・・・」
「遂に」
二人にも緊張が走る。それはポーカーでロイヤルストレートフラッシュを狙う時に似ていた。
「バトル7トランス=フォーメーション緊急配備!」
「関係部署はそのまま持ち場に!」
サリーと美穂が伝える。それと共にマクロス7全体に緊張が走った。
「宜しいですか」
その中でエキセドルはまた言った。
「トランス=フォーメーション終了と同時に一気に勝負に出ます」
「はい!」
「そしてイデオンとソロシップにも通達を」
それも行われた。通信を受けたハタリはベスに声をかけた。
「ベス」
「どうした?」
「バトル7からだ。敵艦とバトル7の斜線上から撤退しろとのことだ」
「そういえば」
ベスはそれを聞いてすぐに察した。流石に軍人のだけはあった。
「あの艦はマクロスの名を冠する艦だ。では」
「おそらくな。じゃあ俺達は」
「ああ」
ハタリの言葉に頷いた。
「エキセドル艦長の御言葉に従おう」
「そうさせてもらうか」
イデオンとソロシップはマクロス7の斜線上から外れた。コスモも大人しく従った。その間に。マクロス7は大きく動こうとしていた。
「トランス=フォーメーション」
エキセドルが言う。するとマクロスが。忽ちのうちに人型の巨大なマシンになったのであった。
「変形した!?」
「そうか!」
カーシャとコスモはそれぞれ叫んだ。それぞれの表情で。
「マクロスの名前は伊達じゃないってことかよ!」
「じゃあ若しかして」
カーシャはコスモのその言葉を聞いてまた言う。
「この後は!?」
「トランスーフォーメーション完了!」
美穂が告げる。
「損害はなしです!」
「わかりました。それでは」
それを聞いてからまた指示を出すエキセドルであった。
「続いてマクロスキャノンを発射します」
「了解!」
今度はサリーが応える。
「マクロス7キャノン発射用意!」
「発射!」
巨大なキャノン砲が構えられ銃口から放たれた。すると一条の巨大な光が起こりそれで斜線上にいる謎の敵軍を一掃したのであった。
「何だあの光は!?」
男もそれを見て驚きの声をあげる。最早残っているのは彼の他は僅かであった。
「戦艦が一撃だと!?くそ、出直しだ!!」
そう言って戦場を離脱する。残った敵もこれに続く。こうして彼等は戦場から姿を消したのだった。
「敵機の撤退を確認」
「周辺の警戒を怠らないで下さい」
エキセドルはサリーの報告を聞いてからまた述べた。
「各機を収容後我々もこの宙域から離脱します」
「わかりました」
「終わったみたいだな」
「ああ」
コスモはモエラの言葉に頷いていた。
「それにしてもバッフ=クラン以外の敵まで出てくるとはな」
「何よあいつ等」
カーシャはその中で暗い顔をしていた。その顔で一人呟く。
「またおかしな敵が出て来たわね」
何はともあれここでの戦いは終わった。イデオンも無人のバルキリーやデトロイトも収納されまた旅がはじまった。とりあえずコスモ達はまた戦いに生き残ることができたのであった。
戦いが終わるとベスはまたマクロス7の艦長室に入った。そこでまたエキセドルと話をするのであった。
「あらためて挨拶させて頂きます」
「はい」
まずは挨拶からであった。
「私はエキセドル。マクロス7船団の責任者でありこのバトル7の艦長でもあります」
「バルマー戦役のことは御聞きしています」
「もう古い時代のことに思えます」
これは謙遜ではなかった。
「それだけ。長い歴史がありますから」
「三十五年ですね」
「そうです。貴方達では二年ですが」
「どうしてなのでしょうか」
ベスはそのことに対して深い疑念を感じるのだった。
「こんな時代の齟齬ができたのは」
「わかりません」
それはエキセドルにもわからないことだった。
「ただ。貴方の報告は驚くべきものです」
「ええ」
それだけは確かなことであった。
「メガロード船団が謎の敵の襲撃を受け散り散りになってから貴方達の船団と我々とでは過ごしてきた時間が明らかに異なっています」
「我々はですね」
ベスは述べる。
「メガロード船団からはぐれてすぐにソロ星を発見し二年の月日を過ごしました」
「そう、二年です」
エキセドルはそこを指摘する。
「我々は実に三十五年もの間入植する星を探して宇宙を旅していました」
「この齟齬は何なのでしょうか」
「わかりません。ですが」
エキセドルはここで仮説を述べた。自身の仮説をだ。
「ブラックホールの周辺では時間の流れが周辺より遅くなる現象が確認されているています」
「そのようですね」
これはベスも知っていた。
「それではそれに近いと」
「考えられます」
その仮定のうえで話を進めるのだった。
「我々と貴方達のいた宙域ではそれと同様に異なる時間経過の流れにいたというわけかも知れません」
「そうとしか説明出来ませんね」
(しかし)
これはエキセドルの心の中での言葉であった。
(何か作為的なものすら感じられますが)
「それでエキセドル艦長」
「はい」
また話が為される。
「私をここにお呼びになられた理由は?」
「今後のことに関してです」
「今後の?」
「そうです。我々の行動に関して貴方の御意見をお聞きしたく」
「そうですか」
「メガロード船団の宇宙移民は地球人類の種の存続を目的としたものです」
これはベスもしっていた。今サラといった話であった。
「そして」
「そして」
「原則として出発後は地球との連絡を絶つことになっています」
「はい、それも」
知っています、そう告げた。
「不用意な連絡は地球の位置を異星人に知らせる結果になるからですね」
「その通りだです。我々はある意味地球という星と決別してこの銀河へ出てきたと言えます」
そう述べたうえで自分のことも語る。
「私のようなゼントラーディの者も含めてです」
「ゼントラーディ人も人間です」
ベスもそれはわきまえていた。確かに感情的な一面はあるが極端な偏見はなかった。
「その通りです。それでです」
「ええ、何でしょうか」
「確かに地球と決別してはいます」
それをまた語る。
「ですが」
「ですが」
「同時に我々は外宇宙の脅威を地球に知らせる任務も負っています」
「はい」
ベスはエゼキエルの今の言葉に頷いた。
「STMCの様な全銀河的な脅威を発見した場合などがそれに該当します」
「その通りです」
「ですから・・・・・・!?」
ここでベスは気付いた。エゼキエルが何を考えているのか。
「まさか艦長」
「人の生きる気力を吸収するあの敵」
声に深刻さが篭っていた。
「このまま放ってはおけません。我々はあの敵に関する報告をするべきではないでしょうが?」
「しかしです」
エゼキエルのその言葉に顔を暗くさせて答えた。
「地球との交信は不可能でしょう」
「不可能だと」
「そうです」
彼は現実的なことを述べた。
「距離の問題もありますがこの辺りの宙域は次元交錯線があまりにも不安定です」
「その通りです」
エゼキエルもそれは承知していた。だから返事は明朗なものであった。
「あまりにも遠いです」
「ええ」
「超空間通信を使用しても地球とコンタクトは取れないでしょう」
「その通りです。ですから」
「しかしです」
しかしエゼキエルはここでまた言うのだった。
「しかし!?」
「方法はまだあります」
「ありますか!?」
「そうです、一つだけですが」
「それは一体」
身を少し乗り出して問うた。するとその方法が語られた。
「残された方法は我々が直接地球に帰還することだです」
「地球へ!?」
「そうです。まず」
ここでまたマクロス7の事情を述べてきた。
「マクロス7単独では移民星探索も事実上続行不可能です」
「不可能ですか」
「あの敵だけではありません」
そう告げる。
「宇宙怪獣もいればバッフ=クランもいます」
「そしてバルマー帝国もですね」
彼等のことを忘れたことはない。人類にとってバルマー帝国は宇宙怪獣と並ぶ脅威であり続けているのだ。その影はベスも常に意識している。
「そうです。ですから単独では無理なのです」
「そういうことですか。それでは」
ベスはそれを聞いて述べた。
「地球に帰還して外宇宙の脅威を計画すると?」
「そうです」
ベスの言葉に頷く。正解であった。
「無論我々が帰還することによって地球圏を危機にさらす可能性もありますが」
「バッフ=クランですね」
ベスは彼等のことを口に出した。
「彼等が迫撃してくるかも知れないということですね」
「そうです。今日の戦闘ですが」
「ええ」
話は今日のことに移った。
「接触したのが最小単位の戦闘部隊であるとするならば」
「あれで最小単位ですか」
「可能性は高いでしょう」
これはエキセドルの読みだtった。
「彼等バッフ=クランの種族としての規模と戦闘力は計り知れないものになります」
「あれが最小単位ならですか」
「そうです。ですから続行不可能なのです」
「わかりました」
そこまで言われて納得した顔で頷いた。しかし明るい顔ではない。
「それなら」
「それでです」
エキセドルはここまで話したうえで話題を戻してきた。
「地球帰還についてですが」
「え、ええ」
「貴方はどう思われますか」
「私の意見ですか?」
「そうです」
ベスのその問いに答えた。
「まずは申し上げておきますが」
「何を」
「移民法に基く私の見解です」
話し方がいささか学者的なものになってきた。
「移民法により入植した惑星は地球連邦を構成する一つの行政体だ」
「地球連邦のですか」
「そうです。その主権はその星の住民にある以上ソロシップの行動は貴方達自身が決める必要がある」
「俺達がですか」
「そうです」
今度は上級士官らしい言葉になった。風格が備わっている。
「即答する必要はありませんが」
「ええ」
「状況は多くの時間を許してくれないことを認識して下さい」
「わかりました」
その言葉に頷いた。沈痛な顔で。
「それではすぐに」
「とりあえずはです」
ベスの言葉を受けてからまた述べてきた。
我々はこの宙域から一二〇〇光年の距離にあるブラジラーへ向かうつもりだ」
「ブラジラーですか」
「そうです」
またベスに答えてみせた。
「移民船団の連絡用拠点として造られた中継基地ですね」
「その通りです。まずは」
また言葉を続ける。
「これまでの状況をあそこから地球へ報告してもらおうと考えています」
「わかりました」
ベスはそれを聞いて頷いた。
「ではソロシップもそれに同行し」
「同行されるのですね」
「はい」
そう判断したのであった。
「今後のことはそこであらためて考えたいと思います」
「わかりました」
「そういうことで」
「それとですね」
ここでエキセドルは話を完全に変えてきた。
「何でしょうか」
「ベス君」
「え、ええ」
あらためて名前を呼んでので少し戸惑ったが言葉は返した。
「例のバッフ=クランの捕虜の件ですが」
「彼女についてですが」
「どうされていますか?」
「現在彼女からバッフ=クランについての情報を聞き出そうとしています」」
「情報をですね」
「そうです。あっ」
ここで一応断るのだった。
「拷問や虐待は一切行っていません。それは御安心下さい」
「それはわかっています」
エキセドルはそれは最初からわかっていた。
「ベス君達はその様な方々ではないということは」
「有り難うございます」
「それは御安心下さい」
「はい。それにです」
ベスはそれを言われてからまた述べた。
「戦うにしても逃げるにしても」
「ですね」
「敵の情報なしではどうしようもありませんから」
「それに関しましては」
エキセドルの言葉が慎重なものになる。
「貴方にお任せします」
「わかりました」
「私が思うとことですが」
次は彼の分析だった。
「明らかにバッフ=クランの行動はソロ星と関連性があります」
「ソロ星とですね」
「そうです」
その分析を聞いてもベスも不思議には思わなかった。彼もそれを考えていたからだ。
「ですからそちらをですね」
「はい、わかっています」
すぐにエキセドルに答えるのだった。
「まずはそれを聞き出します」
「御願いします」
今度はエキセドルが頼むのだった。
「是非共」
「はい。それに」
ベスは答えてからもさらに言葉を続けてきた。
「イデオンについても何か判明したら報告します」
「御願いします」
彼等の話はこれで終わった。しかしであった。その頃あのハゲ頭の男はある巨大な艦の中にいた。その奥の部屋で仮面の謎の男と会っていた。
「ギギルよ」
「はい」
男はギギルと呼ばれた。それに応えたうえで述べてきた。
「ゲペルニッチ様、何でしょうか」
「先程の戦いだったな」
「それですか」
「そうだ。御前が接触した者のスピリチアだが」
「採集できず申し訳ありません」
「それはいい」
それはいいというのだった。
「よいのですか」
「そうだ。むしろ」
ゲペルニッチと呼ばれた男はさらに言う。
「情報を集めよ」
「情報をですか」
「そうだ。これからの御前の任務は」
任務として与えると告げてきた。
「そのスピリチアのデータを引き続き集めよ」
「調査をですか」
「そうだ」
またギギルに対して告げる。
「わかったな」
「わかりました」
そこまで聞いてそれは頷く。しかしであった。
「ですが」
「どうした?」
「ゲペルニッチ閣下」
一旦畏まってから述べてきた。
「御聞きしたいことがあります」
「何だ?」
「五十万年周期の昔より」
まずは彼等の歴史が一言で語られた。
「我々は遭遇したもののスピリチアを奪ってきました」
「そうだ」
ゲペルニッチもそれを知っているのだった。ギギルの言葉に頷く。
「我々は常に獲物のスピリチアを根絶やしにしました」
「そうしてきた」
これが彼等なのだった。
「ですが今回は」
「今回はか」
「そうです。それにも関わらず」
ギギルはそれを問う。
「今回は何故一気に襲わないのですか?」
「それはだ」
「閣下」
ギギルはまだゲペルニッチに対して問うてきた。
「例の船団についても同様に調査を続けていると聞きます」
「そうだ」
ギギルのその問いに頷いてみせてきた。肯定であった。
「何をお考えなのでしょうか」
ギギルはあらためてそれを問う。
「教えて頂けるでしょうか」
「近頃だ」
ゲペルニッチはここで己の考えを言葉に含ませて述べてきた。
「近頃?」
「そうだ。頻繁に夢を見る」
「夢をですか」
「そうだ。それは」
また語る。
「獲物と遭遇せずとも自由にスピリチアを得ることの出来る夢をな」
「まさか」
ギギルはそれを聞いて思わず顔を顰めさせた。そのいかつい顔を。
「だが見ている」
否定しようとするギギルに対してまた述べた。
「私は。よく」
「頻繁に、ですか」
「それが夢か現実かはまだわからん」
一応はこう述べる。
「しかしだ」
「それもまた」
「そう。調査の結果次第だと答えておこう」
「左様ですか」
(何を言ってやがるんだか俺にはさっぱりわからねえ)
ギギルはここで口と頭では全く別のことを述べるのだった。
(獲物は追い回すのが一番だがな)
「若しかすると」
ゲペルニッチは呟いていた。
「あれ等のサンプルが我が夢を叶える存在やも知れぬ」
そう呟いていた。
「我が夢。スピリチアファームの」
だが彼もそれについてまだ信じることはできなかった。願うだけだった。しかしその願いにより彼もまた大きく動くのだった。悠久の銀河の中で。

第四十九話完

2008・3・7  
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