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久遠の神話

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第十話 偶発戦その十


「しかし君は生きたい。ならどうする」
「どうするって。答えは一つしかないだろ」
 構えになりながらだ。中田は返した。
「俺としてもな」
「そうだな。ではか」
「やり方はあるさ」
 こう言ってだ。実際にだ。
 その両手の刀を構えてだ。そこからだ。
 炎を出す。両手のそれぞそれぞれ上から振り下ろして。
 炎の波を出してだ。木の根を撃ったのである。そしてその紅蓮の炎で。
 木の根を焼く。それは忽ち動きを止め燃え上がっていく。それを見てだ。
 広瀬はだ。こう言うのだった。
「水分を蒸発させたか」
「ああ。これは勝負だろ」
「火と水のそれだというのかな」
「ああ、そうだよ」
 まさにだ。広瀬の言った通りだというのだ。
「こうしてな焼き尽くしたんだよ」
「木にある水分ごとか」
「確かに水は火に強いさ」
 これは言うまでもなかった。水は火を消すものだからだ。
「けれどそれでもな」
「木はか」
「ああ。燃えやすいからな」
「水に勝てれば火が木に勝つのは容易い」
「違うかい、それは」
「正しいが全面的な正解ではないな」
 力を破られてもだ。広瀬はこう言うのだった。
「生憎だがな」
「へえ、じゃあまだ何かあるのかい?」
「なければ言わない」
 広瀬は平然として中田に返す。
「俺は大言はしない主義だ」
「いい主義だね。じゃあどうするんだい?」
「それを見てみるか」
 鋭い顔になってだ。広瀬は中田に問うた。
「今から」
「いいな。じゃあ見せてもらうか」
 中田も楽しむ笑みを浮かべてだ。広瀬に応え。
 そのうえでお互い構えに入る。こうして再び闘いがはじまろうとしていた。
 だがここでだった。二人のところにだ。
 上城が来てだ。そして言うのだった。
「あの。止めてくれませんか」
「ああ、君か」
「はい、声を聞きました」
 彼もだ。それによってだというのだ。
「それでここまで来たんですけれど」
「声ねえ。君もそれで来て」
「闘いは止めましょう」
 切実な顔でだ。二人に告げたのである。
「そんなことをしても何の意味もありません」
「まあ君はそうだよな」
 中田は上城に返した。
 それと共にだ。こうも言うのだった。
「俺にはあるけれどな」
「それでもです。争いは」
「わかったよ」
 今度はたまりかねた調子になって返す中田だった。今の笑みは苦笑いだ。
「それじゃあな」
「戦いは止めてくれるんですね」
「俺はな」
 言葉は限定だった。だがそれでもだった。
「そうさせてもらうさ」
「そうですか」
「あくまで俺はな」
 こうだ。限定して言う中田だった。
「俺はだぜ」
「中田さんはって」
「闘いには相手があるだろ」
 そしてだ。上城にこのことを話したのである。 
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