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久遠の神話

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第十話 偶発戦その九


「使うのが如何にも難しい感じだけれどな」
「俺はそうは思わないが」
「それでもか」
「俺にとってはこの剣が合っている」
 そうだというのだ。広瀬自身は。
 それでだ。こう中田に言うのである。
「そのせいだな」
「あんたのその剣の腕はか」
「そう思う。それではだ」
 言いながらだ。彼は。
 剣を離してだ。そのうえでだった。
 突きを幾つも繰り出してきた。それをだ。
 中田はその両手の剣で防ぐ。そうしながらだった。
 二人はお互いにだ。隙を見てだった。力を出そうとしていた。
 まずは中田がだった。その二刀の刀身にだ。
 赤いものを宿らせて。そのうえで振り下ろした。
「さて、お待ちかねだよ」
「炎か」
「言ったよな。炎は木に強いんだよ」
 彼が言うのはこのことだった。
「燃やされるかい?このまま」
「生憎だが」
 どうかとだ。広瀬は言葉を返してだ。
 そのうえでだ。彼はその剣を左から右にだ。右手一本で持っていたそれを一閃させた。
 するとだ。彼の前にだ。
 無数の木の葉が出てだ。上から来るその炎を防いだのだった。
 その木の葉がだ。炎を相殺したのを見てだ。中田は言った。
「ああ、只の木の葉じゃないな」
「それがわかったな」
「あれか。中に水分を思いきり含ませたんだな」
「木の葉といっても色々だ」
 広瀬はにこりともせずこのことを話した。
「こうしてだ。水分を多くすればだ」
「炎にだって勝てるか」
「水を使う剣士もいる筈だ」
 こんなこともだ。彼は言った。
「しかしそれでもだ。水分を使えるのはだ」
「あいつだけじゃないか」
 中田はここで上城のことを思い出した。そのうえでの言葉だった。
「水気を使えるのは」
「その剣士とも戦うだろうな」
 広瀬は上城を知らなかった。それでこう言ったのである。
「だがその時はだ」
「まあその時はな」
「その時はか」
「あんた結構面白いものを見るだろうな」
 上城自身のことをあえて話さずにだ。中田は笑ってみせた。
「まあそれでもな」
「それでもか」
「今の俺の炎を防いだのは凄いな」
 それはだというのだ。
「やってくれるよ。しかしな」
「無意味だというのか?」
「いや、そうは言わないさ」
 それはないという。
「けれどな」
「では何かな。君の言うことは」
「簡単さ。勝つのは俺ってことだよ」
 これだった。彼の言うことは。
「やるからには勝つ。それが信条だしな」
「そうか。その言葉はな」
「あんたがそのまま返すのかい?」
「そうさせてもらう」
 こう言ってだった。実際にだ。
 広瀬は今度は剣を両手に持ちなおしそのうえでだ。大上段で振り下ろした。するとだ。
 木の根がだ。地面を走り中田に迫ってきた。その根を見てだ。中田は言った。
「この根を受ければなんだな」
「君は根に捕まり死ぬ」
 そうなるとだ。広瀬が話す。
「根に絡み潰されてな」
「そうだよな。物騒だよな」
「物騒なのは道理」
 闘いだからだ。そうだというのだ。 
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