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八条学園怪異譚

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プレリュードその十三


「言われたの」
「そうなの。けれどね」
「それって難しいのかしら」
「どうなのかな」
 首を捻りながらだ。愛実は聖花に答えた。
「難しいのかな」
「わからないのね、愛実ちゃんには」
「私も悪いことしちゃったりするけれど」
 子供の。まだ小学生の考えられる範疇でのことだ。愛実も悪戯をしたりする。それでお母さんに怒られたりする、そのことから言っているのだ。
「それでもね。許してもらってて」
「それで終わるわよね」
「そうしたら最後まで信じないといけないって言われても」
 愛実には実感がなかった。そしてそれは。
 聖花もだった。言われた彼女もどうしてもわからずにだ。
 この場でも首を捻っていた。それで言うのだった。
「そうよね。わからないわよね」
「ちょっとね」
 こう言うのだった。
「どういうことなのかな」
「私もなのよ。妬んだら駄目っていっても」
「特にお友達をよね」
「お友達のいいことは絶対に御祝いしなくちゃいけなくて」
「妬んだら駄目なのよね」
「私妬んだりしないよ」
 愛実は今はこう言えた。
「そんなことしないよ」
「そうよね。愛実ちゃんそんなことしないよね」
「人のいいこととか素直にいいって言えるよ」
「それで何で愛実ちゃんのお父さんそんなこと言ったのかしら」
「わからない」
 愛実もだった。首を傾げた。
「何でお父さんそんなこと言ったんだろ」
「私もそう思うから。どうしてなのかな」
「聖花ちゃんのお母さんもね」
「お互いどうして言われたのかわからないわよね」
「そうよね」
 愛実も言い。また聖花も言うのだった。
「私達そんなことしないのに」
「何で言われたのかしら」
「それってどうして」
 二人共わからなかった。それでだった。
 担任の先生、若くて奇麗な女の先生に尋ねた。場所はクラスだ。二人の通っている小学校のクラスには先生の机もあるのだ。聞いたのはそこでだった。
 先生は二人の話を聞いてだ。こう言ったのだった。
「それは今はわからなくてもね」
「今じゃなくてもですか?」
「これからっていうんですか?」
「そうよ。これからわかるわ」
 先生は優しい笑顔で自分の前に立っている二人にこう教えた。
「これからね」
「これからって言われても」
「それお父さんにも言われました」
「私もお母さんに言われました」
「今はわからないって」
「わかる時とわからない時があるの」
 先生は優しい笑顔のまま再び二人に話した。
「今二人共わからなくても仕方ないのよ」
「仕方ないっていうんですか」
「そうしたことも言われましたけれど」
「そう。今はね」
 あくまでだ。今はだというのだ。
「二人共大きくなったらわかるかも知れないわ」
「悪いことをした人が心から謝ったら最後まで信じないといけない」
「お友達を妬んだらいけない」
 聖花と愛実はそれぞれ言った。
「そうしたことがなんですか」
「わかるんですか」
「そう。大きくなるにつれてね」
 そうなるとだ。先生は優しい声で二人で語ってだった。
 二人にだ。こうも言った。
「人はね。ただ大きくなるだけじゃないのよ」
「ただ?」
「ただって何ですか?」
「楽しいことだけじゃないの」
 目の前にいる二人と共に。深いものも見て話す。 
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