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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第77話 広宗決戦

私が精鋭1万5000の兵を率いて、広宗の城の前に着陣しましたが、黄巾賊は城から出ようとしませんでした。

城から黄巾賊を引きずり出すことが出来ず、攻めあぐねた私は部下に命じ、闇夜に乗じ城内の食料庫を全て燃やし、井戸に大量の下剤を入れさせました。

数日後、黄巾賊は全軍総出で城を出てきました。

私達は10万の軍勢と衝突し、1万程度の賊を殺した後、兵を撤退させました。

黄巾賊を釣るため、振雷・零式の威力は普段の半分以下にしました。

「くっ! 全将兵に告ぐ! 一度撤退し態勢を整えるぞ!」

私は四半刻の戦闘の後、計画通りに全将兵に撤退を命じました。

黄巾賊は私が撤退を始めると私を殺そうと殺気に満ちた目で追いかけてきました。

撤退中にも黄巾賊の凶刃に倒れた将兵達がいましたが、私は脇目を振らず撤退行動を遂行し、冥琳達が伏兵を配す場所まで兵を撤退させました。

私と将兵達、そして黄巾賊が目的の場所に辿り着くと、星と真希が2万ずつ率いて黄巾賊を左右から挟撃してきました。

「全将兵、撤退するのはこれで終わりだ! 今こそ、黄巾賊の息の根を止めるとき、敵を殲滅するぞ――――――!」

「オオオオオオ――――――!」

私は黄巾賊を左右から挟撃する自軍を確認すると、反転して黄巾賊に攻撃を仕掛けました。

私は敵陣に向けて振雷・零式で一撃を当てると、そのまま敵陣に乱入しました。

「ヒヒヒィィ――――――! これはどういうことだ・・・・・・」

遠目に悲鳴を挙げ狼狽する敵軍の将を見つけた私は振雷・零式で彼の息の根を止めました。

私はそのまま振雷・零式を乱発し敵陣奥深くまで斬り込んで周囲の黄巾賊の命を狩って行きました。

「賊共死ね――――――!」

私の通った後を自軍の兵士達が怒声を上げながら敵兵に斬りこんできました。

黄巾賊は態勢を整える暇もなく、私の率いる将兵達と左右から攻めて来る自軍によって成す術も無く次々に殺されていきました。

「嫌だ――――――! 死にたくねぇ――――――!」

二刻後、生き残った黄巾賊は三万に減り、戦場から逃げ出す者達がいましたが、自軍が周囲を囲んでいるために、その者達は成す術もなく殺されていきました。

「全将兵達、黄巾賊は一兵たりとも逃がすな! 黄巾賊は殺し尽くせ――――――!」

私は黄巾賊を囲む将兵に最後の指示を出しました。

「オオオオオオオ――――――! 劉将軍に勝利を――――――!」

将兵達は頼もしい大声を挙げ、黄巾賊に斬り込んで行きました。

それから一刻後、黄巾賊の全滅で勝利は決しました。





私は戦勝に湧く陣中を抜け、自分の陣幕に急ぎ戻り、泉と水蓮の戻りを待ちました。

「正宗様っ! 泉と水蓮が戻りましたぞ。お前達はしばらく下がっていろ」

冥琳は陣幕に慌ただしく入って来ると、陣幕のいる衛兵に下がるように命令を出しました。

衛兵達は私と冥琳に敬礼すると去って行きました。

「それで首尾は?」

私は張角達の捕獲が上手くいったかどうか気になり、動悸が激しくなりました。

「正宗様、お喜びください。 張角達は問題なく捕らえることができました」

冥琳は真剣な表情で言いました。

「張角達はどこだ? 直ぐに連れてきてくれ」

「畏まりました。直ぐに連れまいります」

冥琳は一礼して、私の前を去って行きました。

私は冥琳が張角達を連れてくるまで落ち着き無く陣幕の中を歩き回りました。

「正宗様、連れてまいりました。何をぐずぐずしている。さっさと中に入らないか」

「ちょっと、何よ。乱暴にしないでよ!」

冥琳と誰かが言い争う声が聞こえました。

私が椅子に座り直すと張角達は足と手に鉄の鎖を繋がれ泉と水蓮に連れられてきました。

その後に、冥琳、朱里、雛里が陣幕に入ってきました。

「お前達が張角、張宝、張梁だな」

「わ、私はそんな名前なんかじゃないわよ!」

張宝が怒り気味言いました。

「張宝、黙れ! お前は天下の大罪人。今直ぐにでも殺しても良いのだぞ」

私は怜悧な目で殺気を放ち張宝を睨みつけました。

「ヒッ!」

張宝は私の殺気に恐怖を覚えたのか黙りました。

「正宗様、この女がこのような本を持っておりました」

泉が私の斜め前に進み出て、古びた本を私に手渡してきました。

「太平要術の書だな。これで人心を乱した訳だな」

私は怜悧な目で張角姉妹を見て言いました。

「な、何であんたがそんなこと知っているのよっ!」

張宝は驚愕の表情で私に言いました。

「黙れッ! 正宗様に無礼な口を聞くな!」

泉は怒鳴りながら張宝を殴りつけました。

「泉、程々にしておけ。私は彼女達と大事な話がある。怪我をされては困るではないか」

「正宗様、申し訳ございません」

泉は私に向き直ると殊勝に謝りました。

「分かればいい。さて、まずは自己紹介からするとしよう。私は劉正礼。この軍の総指揮官であり、皇帝陛下より左将軍と冀州刺史に任じられている。お前達は張角、張宝、張梁で相違ないな」

「じ、じ・・・・・・地獄の獄吏・・・・・・」

張角達は肩を震わせながら私を恐怖の表情で見ていました。

「お前の罪状を鑑みれば車裂きの上、斬首が適当だと思う。そうは思わないかお前達」

私は張角達に向かって質問をしました。

「りゅ、劉正礼様・・・・・・。私達は何も悪くない・・・・・・です。皆が勝手に村とか町とかを襲ってただけです。だから、助けてください」

天和は震える声を堪えて、私に涙を流して必死に懇願してきました。

「その者達の略奪してきた物に手を出したのではないか」

私は感情の篭らない能面のような表情で天和を見ました。

「そ、それ・・・・・・は・・・・・・」

「図星のようだな・・・・・・。お前は罪の無い者達から略奪した品で良い思いをしていたのだろう」

私は張角に対して冷たく言い放つと、彼女は俯き泣き出しました。

「だ、だから何なのよ! 私達は太平要術の書を使って有名になりたかっただけよ・・・・・・。こんな大事になるなんて思ってもいなかったわ・・・・・・」

張宝が逆切れして私に怒鳴りましたが、直ぐ力なく俯きました。

「・・・・・・思わなかった・・・・・・か。それをお前は黄巾賊の被害にあった者達に同じ事を言えるのか?」

「私達にどうしろというんですか?」

ずっと黙っていた張梁は私に恐怖を抱いている様子でしたが、私を真っ直ぐに見つめて言いました。

「条件次第では、お前達の命を救い、保護してやろう」

「本当なんですか? 条件ってもしかして・・・・・・」

張角が自分の体を両手で抱きしめ、私を怯えた目で見ています。

「あ、あんた最低ねっ!」

張宝は私を悔しそうな表情で言いました。

「張角、張宝・・・・・・、お前達は死にたいのか・・・・・・」

私は勘違いをしている張角を殺気を込めて睨みつけました。

「ヒィ! すいません。すいません」

「はは、冗談です・・・・・・よ。そ、そんな恐い顔しないでください」

張角と張宝は二人で寄り添って震えています。

「本当に助けて下さるんですか? 条件を教えて下さい」

張梁は姉達を無視して、私に質問をしてきました。

私は張梁を見て条件を告げました。

1つ、名前を捨ててもらう。

2つ、2年間、張姉妹を我が領内で幽閉する。

3つ、幽閉が終わった後、張姉妹に10年間の賦役を課す。賦役の内容は我が領内で戦で傷つきし領民を歌で慰問せよ。

4つ、張姉妹に抵抗せし黄巾賊の説得を行うこと。

5つ、折りをみてお前達に巡業する機会を与えるので、そこで得た収益を黄巾賊によって被害を受けた領民の為に使うこと。

この条件を告げた時、張角達は目を点にして私を見ていました。

「あ、あの・・・これを守れば保護してくれるんでしょうか?」

張角は私を怖ず怖ずとした態度で言いました。

「これを飲めば保護してやろう。それと、給金はちゃんと払うので安心しろ。しかし、幽閉と賦役の期間に、お前達が問題を起こしたら、理由如何を問わず斬首にする。これは降伏した黄巾賊にも言えることだが」

「ほ、本当にこの条件を飲めば助けてくれるんですか? 後でやっぱ殺すとか嫌ですよ」

張宝は私を疑うような表情で言いました。

「劉正礼様の利は何なんですか?」

張梁は私に真剣な表情で言いました。

「利か? 利ならある。お前達を通して黄巾賊に降伏を促し、無駄な血を流す必要が無くなる。その上、降伏した者達に賦役を課すことで労働力が手に入る。他にもいろいろな利があるが、それを知る必要はお前達には無いだろう。それで返事はどうなんだ?」

私は怜悧な目で張梁を見て言いました。

「・・・・・・劉正礼様が掲示された条件を全て飲みます」

「そうか・・・・・・。では、今直ぐ名前を捨ててもらおう。お前達の真名を教えろ。今日からはそれがお前達の名前だ。偽名でも良いかもしれんが、お前達がボロを出すとも限らないからな」

「別に気にしないで下さい。私達、芸名を真名にしているので大丈夫です。私は天和です」

「地和です」

「人和です。これからよろしくお願いいたします」

張姉妹は私に頭を下げて、自分の真名を言いました。

「私の真名は正宗だ。これ以後は私のことを真名で呼べ」

私が張姉妹に真名を預けると言うと、彼女達は驚いた表情になりました。 
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