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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第76話 広宗決戦前夜

 
前書き
知人に不幸がありお通夜に行かなければならず、更新が遅れてしまいました。
すいませんでした。
 

 
広宗の城に篭る黄巾賊は10万、自軍の兵数は6万で兵力差は二倍ほどあります。

この戦局を覆すのはかなり難しいと思います。

賈駆の置き土産に怒りを覚えつつ、私はまず周辺に斥候を放ち情報収集をさせました。

数日後、斥候の報告で、ここ最近、旅芸人風の女3人を見かけたという付近の住人の話を聞くことができました。

その住人達は3人の内の青い髪の我が侭そうな女が古びた汚い本を大事そうに持っていたと証言していたそうです。

私はその本が「太平要術の書」であるとにらみ、その旅芸人達が張角、張宝、張梁で間違いないと確信しました。





私はこの広宗で必ず黄巾賊を討ち、張角達を捕らえるべく、冥琳、朱里、雛里を私の陣幕に呼びました。

そして、私は彼女達に「釣り野伏せ」の戦法を提案しました。

彼女達はこの戦法を聞くと驚いた顔をしていました。

「正宗様、この作戦を成功の正否は中央部隊の撤退する時期が重要になってきます。指揮官の指揮能力の高さ、兵士の練度・士気の高さ、そして指揮官と兵士の強い絆、このいずれかが欠けても失敗いたします」

「朱里の言う通りです。その上、正宗様が中央部隊を指揮しなければ意味がないでしょう。他の武将の場合、黄巾賊が警戒して深追いしないと思います」

朱里と冥琳は難しい表情で言いました。

「私は正宗様のこの作戦に賛成いたします。正宗様と兵士の絆は我が軍一です。兵士の中から精鋭を選りすぐり実行すれば不可能ではないと思います。このまま、こまねいていても敵に利するだけです」

雛里は迷い無く私の作戦に賛成しました。

「朱里、冥琳。どうやっても私達と黄巾賊の兵力差を埋めるのは無理がある。黄巾賊に時間を与えれば兵力差は開き続け手に終えない状況になりかねない。ここは寡兵でも黄巾賊を討伐できる可能性があるこの戦法を採るしかない」

私は真剣な表情で2人に言いました。

「正宗様・・・・・・。あなた様の仰ることはわかります。しかし、前回といい、今回といい。あなた様は最も危険な役目を担っております。確かに、あなた様は超人的な能力を持っておられます。ですが、このようなことを続けていてはいずれ死ぬことになりますぞ!」

冥琳は私を厳しい目付きで声を荒げて言いました。

「正宗様、冥琳さんの仰る通りです。正宗様が死なれた場合、私達はどうすればよいのです。もう少し、ご自分の事をご慈愛ください」

朱里は自分の胸に手を当て心配そうに言いました。

「・・・・・・二人の気持ちは分かっている。ここに集まる黄巾賊は冀州方面の主力、これを叩き潰せば、残りの黄巾賊は各個撃破できるし、張角達を捕らえることもできるかもしれない」

私は冥琳と朱里を必死に説得しました。

「例の旅芸人ですね?しかし、その旅芸人が何故、張角達と思うのです」

冥琳は冷静な表情で言いました。

「私も気になっていました。何故、正宗様はその3人が張角達と思われるのですか?」

「私も凄く気になります。何を根拠にそう思われるのです」

朱里と雛里は私に不思議そうに言いました。

「それは・・・・・・」

私が冥琳の方に視線を向けると、彼女は軽く頷きました。

う・・・・・・、冥琳は二人に事情を話した方がいいと思っているようです。

話すしかないんでしょうか?

「実は・・・・・・、私は朱里と雛里に隠していることがある。このことは冥琳を含め、麗羽と揚羽だけが知っていることだ。二人はこの秘密を守る覚悟はあるか?」

私は冥琳の視線に観念して、朱里と雛里に事情を話すことにしました。

「秘密・・・・・・ですか。正宗様、私のあなた様への忠誠は何があろうと揺らぐことはありません。正宗様の秘密をお聞かせくださいませんか?」

「正宗様、お話しください。この鳳統は例え死ぬことになろうと正宗様を裏切ることはございません」

二人とも神妙な表情で私の問いかけに応えました。

彼女達の態度を確認した私は全てを打ち明けました。

「俄に信じられませんが・・・・・・正宗様の仰ることを信じます」

「私も信じます!」

朱里と雛里は強く頷きました。

「正宗様が提案された作戦は未来を知る知識から得た物ということですね」

「私はあらゆる未来の情報を知っている。政治・経済・軍事・医療・農業、知らぬことはない」

「正宗様、私はそのような話は初耳ですが・・・」

冥琳がジト目で私を凝視しています。

「聞かれなかったら気にも留めていなかった・・・・・・」

私は冥琳の視線に耐えれず、バツが悪そうに目を反らして言いました。

「先ほどの話で合点がいきました。正宗様が時々珍しい物を作られるのはその知識のお陰という訳ですね。良い機会です。この戦が終わりましたら、私達に正宗様の知識をご教授していただけませんか。その知識があれば領国経営に必ず役に立つと思います。ただし、知識の活用はしばらく正宗様の所領内だけにとどめたほうがいいでしょう」

「冥琳さん、それは良い発案ですね」

「正宗様、楽しみです!」

冥琳、朱里、雛里は3人で意気投合していました。

「3人とも軍議の最中なんだが・・・・・・」

「コホンッ。正宗様、失礼しました」

冥琳は咳払いを一回するとバツが悪そうに謝りました。

「正宗様、申し訳ありません・・・・・・」

「正宗様、ごめんなさい・・・・・・」

朱里と雛里も謝りました。

「随分、話がずれてしまったが、私の作戦に賛成してくれるか?」

「そうですね・・・・・・。確かに正宗様の仰る通り、このまま座していても敵の兵力差が広がるばかりと思います。それで、張角達のことはどうされるおつもりです?」

「泉と水蓮に1000ずつの兵を与え、周囲を警戒させ、旅芸人を見つけたら捕らえるように命令しておく」

「・・・・・・悪い案ではありませんが、二人に預ける兵の数が多過ぎます。敵に目立ち過ぎますので200ずつに兵を減らしてください。最後に確認しておきたいのですが、正宗様は張角達を捕らえた後どうされるつもりですか?」

冥琳は私を意味深な目付きで聞いて来ました。

「張角達を条件付きで保護しようと思う」

「どうような心境の変化です?」

冥琳は表情を崩さず、短い言葉で聞いてきました。

「前回の戦で沢山の死人が出た・・・・・・。あの光景を見た時、避けれる戦なら回避すべきだと実感した。張角達が起こしたことを鑑みれば死罪が相応しい。しかし、彼女達は黄巾賊の抑えになることも確かだ」

「だから、張角達を無罪放免にすると?」

「そんな気はない。彼女達にはちゃんと罪を償わせるつもりでいる。もし、彼女達がそれを拒否したら、その場で彼女達の首を撥ね、それを洛陽に送る」

私は冥琳、朱里、雛里の目を順番に見て言いました。

「正宗様のお考えも一理あると思います。では、黄巾賊は如何に扱われるつもりですか?」

朱里は指で顎を支えながら言いました。

「広宗での決戦は私達の武威を示す為に、敢えて黄巾賊を殲滅する。しかし、これ以後に降伏をした黄巾賊には10年間の賦役を課し、その間に問題を起こさなければ死罪を免ずるつもりだ。もちろん、労働への対価として賃金を払うつもりでいる。決して奴隷のように酷使するつもりはない」

「正宗様のお気持ちはわかりました。しかし、張角達は逆賊です。彼女達を救うことは正宗様の危険に直結します」

雛里が心配そうな表情で私を見て言いました。

「正宗様、そのお気持ちは一時の感傷ではないでしょうな?」

冥琳は私を真剣な表情で見て言いました。

「まるっきり感傷ではないとは言い切れない。しかし、今のままではいけないと感じたんだ。私はこれから多くの戦を経験することとなるだろう。その度に、敵を殲滅していては私はただの殺戮者になってしまう。それでは民を恐怖で支配しているに過ぎない。私は民が暮らし易い世を創りたいのであって、民が為政者に恐怖する世を創りたいのではない」

私は冥琳に真剣な表情で言いました。

「わかりました・・・・・・。もう、何も言いませぬ。正宗様、その想いをどうかいつまでも忘れずにおいで下さい」

冥琳は私の顔を見ながら軽く微笑みました。

「私も正宗様に協力させてください。張角達を保護するのでしたら、泉さんと水蓮さんに直ぐ指示を出し、直ぐにでも彼女達を我が軍とは別行動してもらいましょう」

「正宗様、私を泉さん達と一緒に同行させてください!正宗様の身に危険を及ばさないように細心の注意を払って張角達を捕らえてまいります」

朱里と雛里も拱手をして私の考えに賛同してくれました。

「冥琳、朱里、雛里。ありがとう」

「正宗様をお支えするのが私の役目です」

「冥琳さんの仰る通りです。私は正宗様の志を実現できるようお支えいたします」

「私も正宗様の志のためにお役に立ってみせます」

冥琳、朱里、雛里は真剣な表情で言いました。

 
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