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FAIRYTAIL-ダークブリングの力を操りし者-

作者:joker@k
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第三話  暴動と脱出




 エルザと初めて出会った日から、だいぶ時は経ち、今日もいつもどおりDBの練習をしていた。

 あれからエルザとは毎日食事の際に一緒に話すことが日課になった。話した内容は普通の他愛もない話から、ここの奴隷に対する扱いや新たに知りえた黒魔導士、いやこの教団の情報だ。

 もちろん、長時間話すときもあるのだが、黒魔導士の連中からは何も言われない。エルザいわく恐くて俺に注意できないらしい。前に鎖を繋がず牢屋に入れられていたとき俺が暴れたことがあったようで、その際にも死人がでたとか。
 
 どんだけ危険な記憶の捏造をしてんだ。と思ったが、それは俺を守るための処置かもしれない……まぁなら最初からこんな牢屋からスタートさせるなという話だが、神様達にもいろいろと都合や思惑があるのだろう……頼むからあってくれ。

 それに一番の謎は何故俺をそこまでして捉えておくのだろうか、ということ。そこまで多大な犠牲を出しているにも関わらず食事は最低限とはいえ出してもらっている。何か理由がありそうだが、今の俺には分からない。



 俺はそんなことを考えながらも並行してDBの練習をしている。DBは使えば使うほど強く威力を発揮することができ、DBPの容量も上がっていくので毎日欠かさず使用している。
 前世では体験したことがない超常現象だ。やはり楽しくないわけがなく、俺の牢屋生活の中では数少ない楽しみのうちの一つだ。

 原作では本来DBというのは一人一つのDB、つまり一つだけの能力しか使えない。もちろん例外もおり、五つのDBを使いこなしたキャラもいたのだが、基本一つだ。なのに何故俺はDBは一つとはいえ、中には全てのDBの能力が詰まっているのに使いこなすことができるのかというと、これは称号とやらのおかげらしい。

 【ダークブリングマスター】この称号が俺に付与されているおかげで、いろいろな、と言ってもまだ普通のDBだけだが(例外はあるが)使えるようだ。

 一通り訓練を終え、空腹も感じてきた。ほぼ毎日同じサイクルなので、俺の腹時計は正確だ。そろそろご飯の時間なのだが、一向にエルザが来る気配がない。ご飯といっても一日一食で必要最低限のご飯だけだ。さすがに食べ逃すと体力的にも精神的にもきつい。

 コツコツコツと足音が聞こえてきた……がしかし、いつもの足音ではないことは瞬時にわかった。つまり、エルザではない他の誰かが俺の牢屋に向かってきているということだ。
いつもとは違い乱暴に扉が開かれる。

 現れたのは黒い衣装に身を包んだ、いかにもな感じの黒魔導士だった。それも4人。恐らく俺を警戒してのことだろう。こいつらの記憶の中では鎖で縛られていなかったとはいえ、お仲間を俺に牢屋で殺されてるからな。警戒してのこの人数なのだろう。それに何よりこいつらの俺を見る眼は……

「怯えているのか? 俺に」

 自然と笑みを浮かべながら、黒魔導士たちに問いかけた。

「ひっ!」

「お、臆するな! そ、その状態では、な、何もできん!」

「態度と言ってることが、ちぐはぐだぜ? 黒魔導士さんよ」

「だ、黙れ!」

 黒魔導士は手に持っている黒革の鞭で俺の身体を何度も痛めつける。が、予想よりも遥かに痛くない。と言っても我慢出来ると言った程度なので痛いことには変わりない。しかしどういうことだ。あの鞭が特殊なのか、それとも……。

「……で? あんたらはわざわざ俺に鞭を叩きにきたわけじゃねぇんだろ? 何のようだ」

 鞭を叩かれたにも関わらず、さも平然としている俺に黒魔導士たちの目はより怯えを見えせていた。こういう似たような状況は前世でも体験済みだ。あの時は友人が助けれくれたが、さて今回はそうもいくまい。

「ば、化け物め。…………こちらもおまえに多大な犠牲を払ってでも捕まえたのは、貴様の特殊な魔法のためだ。その力を使えば我らが念願の楽園の塔の建設は格段に早まるはずだ」

 恐らく彼らが言っているのはDBのことだろう。DBを使って殺された記憶なのかな。

「へぇ、でも俺がその能力を使って逆に暴れるかもしれないぜ?」

「だからこそ、この日のために我らは魔導士の補充を行っていたのだ! 貴様が少しでも可笑しな行動をすれば、魔力を使う片鱗でも見せればその場で処刑する」

 なるほど、だから俺は長い間この牢屋に放置されていたってわけだ。しかしそんな危険を犯さなくてもその補充した魔道士で建設を急げばいいのに。俺はあいつらの記憶の中でどんなことをやらかしたんだよ。

 しかし、魔力か。俺はDBの使用時魔力は使わない。使うのはDBPだ。俺自身体内に魔力があることはわかる。しかし、DBを使う際には魔力をまったく使わないのだが、こいつらは俺がDBを使うところを見ていたんじゃないのか?ならば魔力の片鱗など見えるはずもないのだが……。

 考えられるとすれば、今この場にいる魔導士たちは俺が実際にDBを使う現場にいなかった。もしくは、超常現象=魔法という固定概念にとらわれ勘違いしているかだが。

「おい! 貴様聞いているのか!?」

「あぁ、悪い悪い。少し考え込んじまってな。聞いてなかった」

「き、貴様ぁ! 我々にその態度、本来ならば万死に値するぞ!」


「――できるか? 貴様らに」


 自分でも高揚しているのが分かる。久しぶりの戦闘になるかもしれないのだ。しかも相手は前世と違い魔法という俺の知らない武器を使ってくるだろう。一体どれだけ楽しめるのか興奮してくる。さすがに、後先考えず挑発してしまったのは不味いと自分の理性の部分では思っているのだが、如何せん本能の部分で戦いたい衝動に駆られしまっている。

「ま、まずいですよ。こいつには建設のために役立ってもらわないといけないんですし。それに……相手は金髪の悪魔ですよ。万が一の事があったらどうするんですかぁ」

「なに、死なぬ程度に痛めつければよい。先ほどの鞭もあまり効かぬようだしな。頑丈なのだろう…………それに試すにはちょうどよい」

「た、試すですか?」

 先ほどから俺と話している魔導士の後で怯えていた人物が、涙目を浮かべながら説得している。しかしそんなことはどうでもいい。俺が注目した部分は

「金髪の悪魔? なるほど、俺はそう呼ばれているのか。つくづくルシアの名で正解だな」

「何を」

 魔導士が怪訝な表情で俺に問いかけようとした瞬間、牢屋の扉が勢いよく開いた。

「た、大変です! 奴隷たちの暴動が収まらず第八セクターまで進入しています! 目的は恐らく同じ奴隷仲間の救出かと思われます!」

「ば、馬鹿な! 魔法兵はどうしたっ! たかが、奴隷程度にやられはせんだろうっ!」

「そ、それが緋色の髪の奴隷が魔法を使っていまして」

「情けない! もうよい、私自らが行きなぶり殺しにしてくれる!」

 緋色?まさかエルザか?いや、どちらにしろ俺が今ここでやることは変わらないか。こいつがこの魔導士の中で強者の部類であり、司令塔の役割をもっているのならこいつを今行かせる訳にはいかない。

「誰が、何を殺すって?」

「ひっ!」

 力が溢れてくる、DBが俺に共鳴し俺の身体から黒いオーラのようなモノが噴出してくる。それに伴い力が漲ってくる。黒魔導士共は怯え、すぐにでも逃げ出そうとしている。それでいい、殺すつもりはないが、それ相応の報いは受けてもらおう。


「言っただろ? 暴れるかもしれないってな」


 今ならわかる。本来ノーマルのDBしか扱えないはずの俺にある二つの例外の内の一つ。
あらゆる空間を消滅させる神のマザーDBにして最強クラスのシンクレア【アルシェラ】

「マザーよ俺に力を! ディストーション」

 瞬間、轟音が鳴り響き、この牢屋内に円柱の巨大な黒紫色の光が現れ天を突き破る。瓦礫すら降ってこないほどの圧倒的な破壊力。全てのDBの頂点に立つに相応しい威力。この牢屋を文字通り消滅させ、俺の手足に付いていた邪魔な異物をも吹き飛ばした。だが

「はぁはぁはぁ、さすがシンクレア。これだけの威力でまだ力の一端でしかないとは。正直甘く見てたな……それにかなりのDBPをもっていかれた様だが景気づけには丁度良いだろう」

 このマザーDBの力を本来の十分の一すらも引き出せなかった。確かに天井を突き破った威力は凄まじいが、俺には分かる。あれは中身が空っぽな質の悪いものだった。しかしそれでもあの威力だ。使いこなせる日が楽しみだ。

 辺を見渡すと先程の黒魔導士たちは脱出した後だったのか、この牢屋の残骸の周囲で腰を抜かしていた。ただ一人、リーダー格の男だけは怯えながらも何故か俺を神聖ものでも見るかのように俺に目を向けていた。完全に宗教狂いの目だ。過去に一度似たような目を持つ奴にあったことがある。

「お、おぉ! 素晴らしい! これほどのものとは。やはり貴方様は我等が神のお傍に立てるほどの逸材!」

「た、助けてくれぇ。わ、悪かった! もう拷問したり、人攫いもしない!」

 何やらごちゃごちゃと抜かしてやがるが、こいつらは論点をはき違えてやがる。

「正直、てめぇらが他人に何しようが勝手だがよ。……俺の友、エルザをぶっ殺すって言ったことだけはいただけねぇんだわ。用は俺がムカついたからぶっ飛ばすんだよ。理解したか? 三下ぁああ!」

 俺は勢いよく地面を蹴り、こいつらの顔面を容赦なく本気でぶん殴った。

「ぎゃぁあああ」

「いてぇよ。助けてくれぇ」

「よく言うぜ。てめぇらに助けを求めたやつらが何人いた? それでてめぇは助けたか?でも安心しな殺しはしねぇよ」

 俺は残りわずかのDBPの半分を使いDBを発動させた。

「毒霧のDB、デスポイズン」

 有色の毒霧が辺りを包み込む。本来有色の毒霧は目視出来てしまうため避けられやすいのだが、こいつらは腰を抜かしぶん殴られてるため、避けられないだろう。

「死に至る毒じゃねぇから安心しろ。ただ、てめぇらが今まで与えてきた痛みをこれから先受け続けることになるだろうけどな」


 そして俺はもがき苦しむ魔導士たちを尻目にその場を後にした。目的はもちろんエルザを探し出すこと。


 
 

 
後書き
最初の頃は文字数少なかったんだなと、しみじみ思っています。 
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