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Fate/stay night 戦いのはてに残るもの

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目覚めた先で

 
前書き
今回から介入します。一応前作と話を少し変えてあります。 

 
「…………燃えている全てが」

目を明けると、目の前には一面真っ赤な紅蓮の光景が広がっていた。木々や家、目の前の全てが燃えている。

何故燃えているのだろう。一体何があったのだろうか? 何故こんなに、まるで地獄のような光景が広がっているのだろうか?

幾ら考えても、何も分からず思い出せない。何が起き、何故こんなことになっているのか。俺は何でこんな、一面炎の支配する地獄にいるのかさえ分からない。

歩き出して、周りを見てみるが何処も同じ、炎が全てを支配している。誰も生存者はいないのだろうか? 周りには炎と、崩壊した家とその瓦礫が辺り一面を埋めている。

「あっ」

歩いていると足元に何か当たったと思い、下を見てみると其所には人の腕が転がっていた。更に腕の先には、瓦礫に埋まった女の人の死体があった。

「た…………たす……けて」

女の人はまだ生きていたらしく、光が灯っていない目で俺にそう告げる。この状況に、瀕死の今の状態ではどうやっても恐らく助からないだろう。

「……すいません」

俺はそう一言伝えて、歩き出そうとしたのだが中々歩き出すことが出来ない。女の人を、助けるでもなくただ見続けている。理由は分からない、ただ呆然と立ちながら女の人を見続けていた。

女の人も俺を見続けている、感情などは感じられずただ俺と同じように、呆然と俺を見続けている。
「に……げて…………貴方だけで……も」

突然女の人は、少し笑いながら俺にそう言っていた。……何故この人は、今このタイミングで笑ったのだろうか?

女の人の言葉を聞いた数秒後に、俺は瓦礫を押し上げようと瓦礫に触れる。……熱い、重い、無理。俺は真っ先にこの三つが頭の中に浮かんだ。

「わ……たしの……ことは…………いいか……ら」

女の人は恐らく、自分のことはいいから行けと言っているのだろう。俺はその言葉を無視し、瓦礫を押し上げようと再度力を込める。無論瓦礫は、子供の俺の力などではびくともしない。

それでも諦めずに、瓦礫を退かそうと両腕に力を込める。何故ここまでして、助けたいのか俺自身にも分からない。ひょっとしたら、理由すらなくただの気まぐれで、助けようとしてるのかもしれない。

最初は、何故助けようとしてるのかが分からなかったが、再度俺に逃げろと言った時の、女の人の笑った顔が頭に浮かんだことで理解した。

……俺は恐らく、この女の人を助ける為に行動してるのではなく、何故先程笑ったのかと言う疑問を尋ねる為に、頑張って助けようとしているのだ。

この考えに至った時は、何度もそんなことはないと思いながら、女の人を助けようとしていた筈だった。

だが、頭の中には必死に助けようとする思いよりも、何故先程笑ったのかと言う疑問を、解決したい思いのほうが非常に強かった。

その一瞬、腕の力を弱めてしまい無理に退かそうとした瓦礫が崩れてきた。

「くっ!」

両腕で必死に支えるが、もう押し上げることは恐らく不可能。俺はそれを分かっている筈なのに、まだ何とかしようと考え続けた。

「…………あり……がとう」

女の人の声が聞こえた瞬間、俺は女の人の腕に押され後ろに倒れた。直ぐに目の前を見ると、瓦礫が崩れて女の人を押し潰すところだった。

「くそ!」

立ち上がり、直ぐに瓦礫を抑えようとしたが当然間に合わず、女の人は瓦礫の下敷きになり死んだ。

「……助けれなかった。助けれなかったのに…………何で」

俺は拳を握りしめ、瓦礫を見る。

「……何故だ。何故また笑ったんだ!?」

最後の最期、女の人はまた笑っていた。間違いなく死ぬのは分かった筈、なのにあの女の人はまた笑っていた。……ありがとうと言いながら。

「俺はありがとう何て言われること、出来なかった。なのに何でありがとう何て言うんだ!? 何で助からないのに、笑って俺を見てられるんだよ!!」

気付いたら、女の人がいた瓦礫に向かって大声で叫んでいた。返事など当然返ってくるわけなどない。

分かっていながら、俺はただ女の人が先程まで居た場所に叫んでいた。

叫ぶのを止めて暫く瓦礫を見続けた後、俺は再び紅蓮の光景が支配する大地を歩き始めた。

「……誰もいないな」

何分、いや何時間さ迷い歩いたかすら分からないが、ひたすら真っ直ぐ歩いているが生存者は見当たらない。

次第に歩く力もなくなっていき、上手く歩けなくなってきていた。何とか倒れるのを堪えて歩き続けて、霞みそうな目で前を見る。

「……あ……れは?」

霞む目を凝らして見てみると、前方で一人の男が倒れている少年に光輝く何かを、少年の身体に入れていた瞬間だった。

「あ……れは、…………全ては……遠き理想郷(アヴァロン)?」

光輝く物を見ながら、その物の名前らしき言葉を呟いていた。……あんな物記憶にない筈なのに、それにあの男は……

「……宮…………嗣」
少年を抱きしめている男を見ながら、男の名前らしきものを呟き俺は意識を失った。





紅蓮に包まれた地獄の中で、衛宮切嗣は必死に瓦礫の中や周りを見て生存者を探してる。

聖杯を破壊した結界、聖杯内に溢れていた泥が辺り一面を紅蓮の業火に包みこんだ。

切嗣はまさかこんな結果になるとは思わず、最初は唖然とし炎に包まれた辺り一面を見ていたが、直ぐにわれにかえり生存者を探す為に走り出した。

「誰か! 誰かいないか!?」

切嗣は悲痛な表情で、辺り一面に向かって叫んでいるが何処からも応答はない。

「誰か、誰でもいい! 僕の声に答えてくれ!!」

尚も叫びながら、紅蓮の大地をひたすら走り続ける。途中で倒れていた子供や大人を見かけたようだが、既に死んでいた。切嗣はそれを見る度に泣きながら叫び続けている。

「よかったまだ息がある!」

探し続けて数分、いや数時間が経過した時まだ息がある赤茶色の髪をした少年を発見した。

だが少年は見るからに瀕死の状態であり、何時死んでもおかしくないと言える状態であった。

切嗣は治療魔術が出来ない為に、この少年の傷を治すことは出来ない。瀕死の状態の少年を助ける為に、切嗣は自身の体内に埋め込んでいたセイバーの宝具 全て遠き理想郷(アヴァロン) を体内から取り出し少年に埋め込むことで少年を救った。

「ありがとう。生きててくれて……」

少年を抱きしめながらそう呟く切嗣。その顔は、心から安堵して安心をした表情に見えるだろう。

「………………嗣」

「大丈夫か!」

少年を抱きしめていた時、前方から声が聞こえ切嗣は前を見てみると、少年と同じぐらいの年の黒髪の少年が倒れていた。

慌てて赤茶髪の少年を抱えながら、黒髪の少年に駆け寄る切嗣。少年の状態を確認すると、再度安堵の表情を浮かべる。

「よかった、こっちの子よりも軽症だ。……ありがとう、君も生きててくれて」

黒髪の少年に涙顔でお礼を言うと、切嗣は黒髪の少年も赤茶髪の少年と同じように抱えて走り出した。





目が覚めたら、真っ白い天井が目に入った。先程までいた地獄ではなく、何処か建物の中に俺は寝ているようだ。

上半身だけ起こし、両隣を見てみると同じように身体に包帯を巻かれた、子供達が俺と同じように寝ていた。どうやら此所は病院の中のようだ。

「どうして俺は病院に?」

暫く考えていると、病室の入り口のドアが開いた。中に入って来たのは、黒いコートを着た黒髪のボサボサの髪型の男と、赤茶髪の同い年ぐらいの少年だった。

「やあ、目が覚めたみたいだね。突然だけど孤児院に行くか、知らない叔父さんと一緒に行くのとどっちがいいかな?」

コートの男は笑いながら俺にそう告げる。微かにだが、確かこの人は俺が最後に見たあの時の人だろう。

俺は特に何も考えずに、男について行くことにした。何故だか分からないが、あのまま病院に残っていたら何か自分に、よからぬことが起きるような予感がしたからだ。

それも単純な危ない予感ではなく、後々命に関わるほどのことになる予感がした。

一緒に行くと答えると、男は嬉しそうに笑い手続きをすると言って、病室を出て行った。数分経った後に、戻ってきて荷物を纏めた後男は俺と手を繋ぎ歩き出した。

病室を出る時に、再度振り向き病室内を見た後に、俺は男と少年と一緒に病室を後にした。

「これから宜しく、彩雅(さいが)君」

彩雅? そうか、漸く思い出した。俺の名前は彩雅、しかし苗字が思い出せない。

「こっちの子は士郎って言うんだ。仲良くしてやってくれ」

「宜しく彩雅」

士郎と言う赤茶髪の少年が、俺に軽く頭を下げる。

「宜しくな士郎」

俺も同じように頭を下げると、士郎は笑って頷いた。

「最後に僕の名前だけど、僕は衛宮切嗣。後、家に来る前に二人に最初に言っておくことがあるんだ」

切嗣と名乗った男が、俺と士郎を交互に見て笑いながらこう言った。

「僕はね、魔法使い何だ」

魔法使い。本気でこの人は言っているのだろうか? 最初は何言ってるのだろうと思ったが、何故か途中から嘘を言っていないような気がしていた。

理由は地獄の中で、光る何かを士郎に入れた時のことを思い出したからだ。あれはどう見ても、魔法と言える筈。恐らく重症だった士郎を救ったのは、あれのおかげなのだろう。

士郎は何も言わず切嗣を見ているが、その顔は『魔法を使えるの? 凄いや!』と判断出来るくらいに目を輝かせていた。

こうして俺と士郎は衛宮切嗣に引き取られ、切嗣の養子になった。 
 

 
後書き
また次回も宜しくお願いします。 
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