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Fate/stay night 戦いのはてに残るもの

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魔術鍛錬と新しい生活

 
前書き
鍛錬と生活風景です、では宜しくお願いします。 

 
「此所が今日から二人の新しい家だよ」

士郎と俺は切嗣と手を繋ぎ歩き続けて数十分、大きな武家屋敷に到着した。立派な家だな、一体幾らぐらい金が掛かったのだろうか?

「部屋は二人共、好きな所を使ってくれて構わないよ」

中に入ると、俺と士郎は荷物を持ってそれぞれ部屋に入った。やっぱり和風な家はいいなぁ。荷物を置いた後に、士郎と一緒に居間に向かうと切嗣が、黒コートではなく甚平姿で座っていた。

「さて、二人共此所が自分の家だと思って好きに使ってくれ。ああ、そう言えば二人共僕の養子になったから苗字は衛宮になる。一応義理の兄弟と言うことになるから、ジャンケンで兄と弟を決めてくれないかい?」

ジャンケンで決めていいのだろうか? そういうことを。

「士郎、負けたら弟な」

「分かった」

俺と士郎は、腕を思いっきり振りかぶり!

「「ジャンケン ポン!」」

結果、俺はパーで士郎がグー。つまり俺が兄で士郎が弟で決定したって、本当にこんなので決定していいのか?

「彩雅がお兄さんで士郎が弟か。改めて二人共、これから宜しく。何かと不自由があるかもしれないけど、僕に出来ることがあったら何でも相談してくれ」

俺と士郎の頭を撫でながら、笑顔でそう告げる切嗣。何だか切嗣の笑顔を見ると安心するな。

「じゃあ切嗣、早速お願いしたいことがあるんだけど」

士郎の顔を一瞬見た後、切嗣の顔を見る。

「何だい彩雅?」

切嗣は呼び捨てで呼ばれても特に何も言わず、笑顔で俺を見る。俺は士郎と同時に口を開いた。

「「俺達に魔法を教えてください!」」

士郎と、口を揃えて切嗣にそう告げる。しかし、切嗣は首を縦に振らなかった。

「二人には、僕と同じようになってもらうわけにはいかない。すまないが魔法は教えられない」

切嗣は真剣な顔で、俺と士郎を見る。切嗣と同じ、一体どういう意味なのだろうか? 士郎も俺も納得出来ず、色々と言ってはみたが切嗣は結局首を横に振り続けた。

「さて、この話はこれでお仕舞いだ。二人共お腹が空いただろ? 今日は彩雅と士郎の歓迎会も兼ねて、外で何か美味しいものを食べよう」

切嗣は話を無理矢理終わらせると、俺と士郎に笑顔を向ける。俺と士郎は納得していなかったが、またの機会にお願いしようと思い切嗣と手を繋ぎ、外に飯を食べに行った。

それから数日の間、俺と士郎はひたすら首を横に振る切嗣に、魔法を教えてくれと頼み続けた。

しかし結果はやはり、ダメの一点張りで切嗣は魔法を教えてくれない。理由は何時も通り、自分と同じ道を進ませたくないからだと言う。

毎日士郎と頼み続けた結果、数ヵ月経過して漸く切嗣の首が横以外に振られた。

「二人の熱意には負けたよ、簡単な魔法なら教える」そう言ってまず教えてもらったのは、切嗣の使うのは魔法ではなく魔術と言うものだそうだ。

魔術回路と言う物を体内で構築することで、魔術回路を起動出来魔術を使えるらしい。しかし、回路は毎回一から全部起動させないといけないそうだ。

回路の起動に成功したら、切嗣は簡単な魔術 解析と強化を教えてくれた。しかし解析のほうは何とかなるのだが、強化のほうは中々上手くいかない。やると大体失敗したりする。

魔術回路を毎回一から開くと、切嗣は言っていたが俺は理由は分からないが、何故か一から開くことが途中から出来なくなった。

士郎は毎回一から開いているみたいだが、俺は出来なくなった為にON OFFと切り替えて魔術回路を起動している。

毎回頭の中で、スイッチを押すイメージを思い浮かべると、俺の魔術回路は起動する。

最初は切嗣に言おうと思ったのだが、下手に何かを言うと教えてもらえなくなる危険性があった為に、このことは黙ったままにした。

でも何でだろうか? 回路を切り替えるようになってからは、強化が前よりもかなり成功するようになったんだよな。

魔術の鍛錬をしている最中に、士郎が時折魔力で見た物の複製品を作り出した。切嗣によると、士郎の使った魔術は投影と言い、オリジナルの複製品を作り出す魔術と言っていた。

この投影と言う物は劣化してるとは言え、オリジナルの複製品を作れる魔術の筈なのだが、何故か士郎の投影ではオルゴールなどを投影してみると、外観はそっくりなのだが中身が空っぽの失敗作しか作れない。

俺も真似してオルゴールの投影をやってみたのだが、やはりかなりの劣化品しか出来ず更に士郎とは違い、直ぐに投影物は消えてしまった。

何故かは分からないが、投影した物は直ぐに消える筈なのに、士郎の投影物は何時までも消えなかったりする。

構造が複雑な物では、今の俺では無理なのだと思い台所にある包丁を投影してみたのだが。

「あれ?」

「どうしたんだ彩雅?」

投影した包丁を解析した後に、台所にある包丁を解析してみると、強度や硬度に包丁内の情報などが全く同じだった。

「なぁ、士郎。ちょっとこの包丁投影してみてくれ」

「ああ、分かった」

士郎に包丁を投影させ解析してみるが、やはりオリジナルより色々と劣化している。

「彩雅の包丁、本物と全く同じじゃないか!?」

士郎も、俺が投影した包丁を見て驚いていた。

「どうしたんだい彩雅に士郎。 包丁を投影して驚いてるみたいだけど?」

「あっいや、何でもないよ切嗣」

俺と士郎が驚いていると、切嗣が俺達の所に来た。

「この前も言ったけど、投影は非常に効率が悪い魔術だ。鍛錬するんなら強化と解析にしたほうがいいぞ二人共」

俺と士郎の頭を撫でる切嗣、実は投影は強化や解析よりも効率が非常に悪いらしく、切嗣にやらないほうがいいと言われていた。

あまりやり過ぎると、流石に怒られる危険性もあるので次からは、バレないように隠れて練習しよう。

魔術の鍛錬もしながら、俺と士郎は家事の鍛錬も実はしている。と言うのも、切嗣はほとんど何も出来ないらしく、俺と士郎がやっているからなのだが。

「なあ士郎に彩雅。たまにはハンバーガーとかも食べたいんだけど」

「俺は別にいいんだけど、士郎が許してくれないんだよ」

そう言いながら士郎の顔を見てみると、士郎は首を横に振った。

「ダメだよ爺さんに彩雅。ご飯は身体にいいものを食べないと」

士郎は飯のことにはかなり五月蝿く、ハンバーガーなどはあんまり食べさせてくれない。曰く、体調に良いものを食べて健康でいてもらいたいからだそうだ。

「本当士郎はしっかりしてるよね。彩雅や切嗣さんとは大違い」

夕飯を並べていると、俺と士郎に切嗣の顔を見ながら虎がやって来た。

「だれが虎じゃー! 全く、こんばんは切嗣さん」

「こんばんは大河ちゃん」

この女の人は藤村大河、切嗣の後見人兼女子学生らしい。見た目はまぁ普通かな? でも怒ると、竹刀持って追い掛け回してくるから怖い。

「切嗣、俺も切嗣もしっかりしてないわけじゃないよね? ただたまには、ハンバーガーとか食べたいって言うだけで」

「うん、彩雅の言う通りしっかりしているつもりだけど、士郎がしっかりし過ぎてるからね」

切嗣は笑ってそう言ってるけど、本当にしっかり言ってほしい時は言ってほしいんだけどな。俺と切嗣の立場が危なくなるから。

それにしても、士郎の食事云々には本当に困ったもんだな。……少しくらい、たまにはご飯で出してもいいだろうに。

別に少し食べて、体調を崩すわけじゃないんだからさ。まぁ、健康でいてほしいと言うのも分からんでもないけど。

「士郎の料理は、相変わらず美味しいわね」

おかずを少量口に入れた後、飯を大量に口に入れてる虎。まぁ、確かに士郎の飯は美味いけど。

料理の腕は、士郎のほうが圧倒的に上だと思われる。だって、アイツの作る飯が日に日に美味くなっていくから。

俺の作った飯を食べて、虎や切嗣が毎回俺が作ったと気付くほどだから、恐らく相当差があると思われる。

「今日のホッケは士郎が焼いたのかい?」

切嗣が、ホッケを食べた後に士郎を見る。魚は基本俺が焼くのだが、今日は士郎が焼いたのだ。

「そうだよ、やっぱり気付いちゃうよな」

「やっぱり士郎が焼いたのね、何時もより味が違うと思ったわ」

そう言いながら、まだ食べ続けている虎。口に物入れながら喋るなよ。

「ちょっと寝過ごしちゃってさ。焼けなかったんだ」

眠かったので自室で寝ていたら、飯を作る時間に遅れてしまい、慌ててキッチンに向かったが既に士郎がほぼ済ませていたのだ。

「昼間寝たら夜寝れなくなるのよ」

「分かってるって」

虎に適当に相槌をし、食事を続けようとしたら虎に両頬をつねられた。

「い、いひゃい! やめへふれ!」

「喧しい! お姉ちゃんの言うことこと聞けない子はお仕置きだ!」

痛い! 思いの外地味に痛いから! だが普段のお仕置きもこの程度にしてほしいもんだな。

士郎と切嗣は、笑いながら俺と虎を見ている。笑ってないで助けてくれよ!

そんな何時も通り賑やかな夕食も終わり、風呂に入り部屋に戻って布団に入る。ふと、天井を見ながら思い出す。

ほとんど毎日、賑やかな夕食をするようになってから、俺達の顔は前よりも笑顔に満ちている。

切嗣も士郎も虎も俺も、皆毎日笑顔で一杯だ。あの地獄から生還し、一時はどうなるかと思ったが楽しく暮らせている。

しかし何なのだろう? 何時もするこの胸騒ぎは?

「……何でこんなに楽しいのに、俺はこんなことを思うのだろう?」

胸騒ぎの正体は予感、楽しい暮らしはそう遠くない日に終わる。そして終わった後には…………

「……もう寝よう」

目を閉じ、考えるのをやめて強引に眠りにつく。この時の俺は、予感はしたがまだ知らない、何れその暮らしからかけ離れていくことを。





「状態良好、魔術回路の起動も成功。与えていない、強化と解析も問題なく鍛錬し実用はもう少し先かな?」

机の上の水晶玉に映る彩雅を、管理者はただ見ている。理由としては、現状を知る為に見ておく必要があるからだろう。

「元の記憶と身体能力は共になし、現段階での原作破壊の可能性はかなり低い」

彩雅を見ながら憶測を立てつつ、右手に持っている紙に管理者は目を通す。

紙には、現在の彩雅の身体レベルや魔術回路数などを含めた情報が、びっしりと書かれている。

「与えておいた創造は、現時点でも何の問題もなく使用可能。後の力は後々渡すことにしよう」

紙を手の平から消し、管理者は目の前に椅子を出現させると、腰を下ろしホッと息を吐いた。

「記憶がない為に、創造を投影と勘違いしてる。此方の隠蔽もそのようにしておくとして、後は聖杯戦争が始まってからかな」

椅子に座りながら、水晶に映る彩雅を見る管理者。不意に頭を抱えて彩雅について考え始めた。

「記憶と身体能力はまだいらないだろう。けど聖杯戦争が始まる前に、何らかのアクシデントで死なれても困るし」

うーんと考える管理者だが、中々いい案が思い浮かばないようだ。まぁ、元々彩雅をこのような現状にしたのは彼なのだから自業自得である。

そもそも何故いきなり介入ではなく、切嗣に拾わせ養子にさせたのかが謎だったりする。一体この管理者は、何を考えてこんなことをしたのだろうか?

「とりあえず戦争が始まるまで様子見をしよう。いざとなったら、此方でどうにでも出来ると思うし」

そう呟くと、管理者は水晶玉を持ちまた何処かへと消えた。よく考えて行動してるのか、してないのか結局よく分からない男である。 
 

 
後書き
次回は少々話が飛びます。では次回も宜しくお願いします。 
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