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魔王の友を持つ魔王

作者:千夜
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§XX お久しぶりの閑話です

 
前書き
お久しぶりです。
いやホント、エタるレベルで放置しておりましたが恥知らずにも舞い戻りました。
長期放置で大変申し訳ございませんでした。生暖かい目で見守っていただければ幸いです。
とりあえずリハビリがてら、まったり過去話の誤字脱字等加筆修正から始めたいと思います。


……いやぁ、大掃除ってするもんですねぇ。
紛失してたログインIDとパスワードが見つかるとは…… 

 
 彼がそいつを見たのは、全くの偶然だった。

 春、出会いと別れの季節。慣れ親しんだ母校を卒業する、そんな日の晴れた昼下がり。

 あちこちでみんなが泣いたり泣いたり泣きながら笑ったり。新たな門出を祝い、再会を誓い。彼の例に漏れず旧友との別れを惜しみ。皆と写真を撮った帰り道。

「カァ、カ、カーァ」

「ふーん。なるほどねぇ……田中さん家でそんな事が」

 変人がいた。道端でしゃがみこんでぼそぼそと。最初は独り言かと思ったら、どうやらカラスと話しているらしい。なんだそれ。


「カー、カァ」

「え、なにそれ超ウケるんだけど。……でもそこは見て見ぬ振りしてあげて!」

「カーカー」

「えぇ……しゃーないな。わかった。食パンで手を打とう」


「カー」

「はぁ!? メロンパン!? ちょっとそれは足元見す」

「カァ?」

「……わかりました。メロンパン3つで」

「カァ」

「畜生!!!」

 勝手にキレて走りだすそいつを見て、彼は思った。

--こいつヤバいやつだ。関わらないようにしよう。

 パッとしない外見はクラスカーストで行ったら最下位グループだ。大方、卒業式後のこの時間、親は来てくれずに友達もいなくて暇になり、カラスと話しているフリをしている寂しい奴なんだな、と。その時はそう思った。これから友人と会う予定でった彼はその光景を傍目で見ながらーー通り過ぎた。


***

 そいつと次に会ったのは、なんとその日の夜だった。仲良かった奴ら男女関係なく集まって食べ放題。進学先が一緒のやつも多いから、このメンツで集まってもあまり悲しいカンジはしない。なんなら一か月後も集まってバカやってる気がする。そんな集まり。


「あ。--さん」

 彼の視線の先には小柄なクラスメイト。地味目な容姿だが、強いて言うなら美人、というよりは可愛い系か。そんな彼女は当然、クラスで目立つことも無い。彼も時たま話す程度だ。なんでも兄がオタクらしく、そういう系(・・・・・)にも偏見があまりない、オマケにおおらかで大抵のことは笑って流す良い子、とは友人の談。口さがない人は”オタサーの姫”などと言って笑うが正直言いすぎだと思う。思う分には自由なので訂正したり庇ったりする気はない。そんな彼女を何故見たか。それはいたって単純で。


「あの変なやつが兄か」

 なんとあのおかしなやつが彼女を迎えに来ている。あれが兄か。なるほど。道端でカラスに話しかける変人を兄に持てばクラスの気持ち悪い連中の方が遥かにマシだろう。彼は心の中で彼女に同情した。せめてイケメンなら許されただろうが、ひいき目に見てフツメンだろう、あれは。

「……いやイケメンでもカラス相手にアレはキツいって。しかし迎えに来るってことは兄弟仲が良いのか。ふーん」

 別にどうでもいいのだけれど。他の家と違って親でなく兄が迎えに来るのが意外だ。兄といえども未成年。こんな時間に迎えに来させる、ということは両親が忙しいのだろうか。それともシスコンな兄か。そんなことを思っていた矢先の事だった。

「やっほ、久しぶり」

 女神が、いた。

「お久しぶりです、義姉さん」

 姉!? 彼女にはあんな美人な姉がいたのか!

「誰だあれ……」

「嘘!? ーーちゃんのお姉ちゃん芸能人か何か!?」

 気づけば周りも騒々しい。当たり前だ。こんな田舎でお目にかかれないような超絶美少女。注目されない方が嘘というもの。

「全然似てねぇ。それいや兄貴の方もそうだけど」

 だが兄以上に姉の方は似ていない。兄は(昼間に見た)言動さえ除けばそこらにいそうだ。だが、姉は別だ。こう言っては失礼だが格が違う。腰まで届く濡羽色の髪は艶やかで、深い赤の双眸は美しく。いや、声も、立ち振る舞いもだ。つまるところ、美しいのは存在のその全て。

「……」

 オマケに、でかかった。何とは言わないが。服の上からでも立派に自己主張しているそれは、自分も含めて男子全員がガン見していることだろう。クラスの女子とこうも違うのは、学年が違うからか? いやそれだけでこんなに変わるものか……?

「兄さん。迎えに来てくれるのは嬉しいですけど……義姉さんまで連れてくるのは危ないと思いますよ? もう遅いですし。何かトラブルがあった時、義姉さんを守れると思えないんですが」

「あーごめんごめん、れーとさん最初は一人で迎えに行くって言ってたの。恵那が勝手についてきちゃっただけ。それにれーとさん危ない所避けてくれるから大丈夫だよ」

 至極正論を述べる彼女と兄のフォローに走る姉。おい兄情けないぞ。女に庇われるな。そして心の中で彼も彼女に同意した。パッとしない顔、ヒョロい体躯。不良にあったら姉を奪われてボコボコになる未来しか見えない。そんなんでよくこんな美人を連れて外に出ようと思ったな。不良もいないような田舎で感謝するがいい。

「私の迎えにかこつけてデートするのやめてもらえます? 私くっそお邪魔虫パターンじゃないですか」

 は? デート?

「ねぇ、その人たちお姉ちゃんとお兄さんなの?」

「あー、ちょっと違います。こっちの冴えない男性は私の兄です」

「ねぇちょっと酷くない?」

「兄さんは黙ってて。こっちは兄さんの彼女です」

「か、かの……ッ!!?」

 瞬間、全員の心が一致した。クラスメイトだけでなく、店にいた他の客や店員さん含めてだ。ウケる。いや嘘。全然面白くない。コイツが???彼氏???そんなの信じられるものか!!!

「「「はあああああああああああああ!!!????」」」

 嘘だろ。こんな奴の恋人がこのお姉さん!!??? 満場一致すぎて若干兄が可哀想ではある、がそれとこれとは話が別だ。

「お姉さんお姉さん!!!ちょと考え直そう!!??」

「そうだそうだ!! 脅迫されてるなら俺達に任せてください!!!」

 騒然とする店内。

「……なんだろうこの敗北感。いや頭ではわかるんだけど釈然としない」

 兄の呟きは、喧騒の中に消えていく。

「恵那は!!! れーとさんが……って違、ーーーッ!!?」

 予想外な展開に媛巫女筆頭が思わず口走り、羞恥で絶叫するまであと〇秒




 その後だが。

「処します?処しますか?」

「えぇ……やんないよ……」

「そうは申しますが、王よ。確かにいくら巫女殿でも偉大なる御身の恋人としては役者不足かもしれま」

「ダビィドさんは黙って!!」

「どうしてこうなった……」

 大人気なくキレる狂信者と真っ赤な顔で叫ぶ巫女に挟まれて、遠い目をする魔王様がいたとか、いないとか。






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後書き
パンドラお母様「星を喰らう吸血鬼ことヴァルラコキ君、冷静に考えたら神かお前???ってなったので権能はボッシュートね☆」
黎斗「そんな馬鹿な事があってたまるかぁ!!!!!」

数年ぶり&ブロット紛失につき、ヴァルラコキの名前を思い出すのに時間がかかりすぎた罠
ちくせう! 
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