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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第9章】バルギオラ事変の年のあれこれ。
   【第4節】キャラ設定9: ルーテシア・アルピーノ。

 
前書き
 ついに、このキャラについて語るべき時が来ました!(笑)
 個人的に大好きなキャラの一人なので、独自設定も「盛り盛り」ですが、ここでは初登場の頃にまで(さかのぼ)って、彼女に関する話を「三部構成で」まとめておきたいと思います。 

 

 1)まずは、StrikerSのTVアニメで、ゼストとルーテシアが「レリックウェポンの実験体」と呼ばれていた件に関してですが……。
「同 サウンドステージ04」では、マリエル技官も『ギンガの(中略)レリックに強制融合させられていたリンカーコア(後略)』と語っていますし、TVアニメの方でも、なのはが最後に聖王モードのヴィヴィオを倒した時の映像表現は、『彼女のリンカーコアに融合していたレリックを強制的に分離した上で、破壊した』という描写に見えます。
 そうなると、やはり、ゼストとルーテシアも『レリックを「実験的に」リンカーコアに融合させられていたのだ』と考えるのが最も自然だと思います。
 そこで、この作品では以下のような設定を採用することにします。

 レリックは〈エネルギー結晶体〉の一種であり、本来は『その魔導師の魔力を強化し、同時に、その意識を外部から操作しやすくする』ためのロストロギアでした。しかし、決して誰のリンカーコアにでも自由に融合させられるという訳ではありません。
 基本的には融合可能な魔導師であっても、実際に融合させる際には、「個々の魔導師のリンカーコアの個性」や「レリックのナンバー」に応じた調整が必要になります。
 そして、そうした調整に失敗すると、ただ単にレリックを融合させられないだけではなく、素材にされた魔導師はリンカーコアが損壊し、その上、何年もの間、昏睡状態に陥ってしまうのです。

 なお、新暦67年の「戦闘機人事件」で、生きたままの素材として確保することができた魔導師は、ゼストとメガーヌ、ほか三名の男性陸士のみでした。
 正確に言えば、ゼストは確保した時点で、一旦は心臓も脳波も完全に停止していたのですから、これを『生きたまま』と表現して良いのかどうか、微妙なところなのですが……ともあれ、最初に実験した「死にかけの」ゼストでいきなり成功したのは、実のところ、スカリエッティにとっても「思いがけない僥倖(ぎょうこう)」でした。
 しかし、『何故、成功したのか?』がよく解らないので、成功の条件を特定することができません。そのため、さしものスカリエッティも、改めて「試行錯誤」を何度も繰り返さざるを得ませんでした。
 年内に三名の男性陸士とメガーヌで次々に失敗した結果、スカリエッティはついに成功の条件を特定し、70年に当時5歳のルーテシアを素材とした時には、初めて「計算どおりの成功」を収めました。それらのデータがあったからこそ、ギンガやヴィヴィオの時には「より速やかに、より確実に」融合させることができたのです。

【なお、ルーテシアも母メガーヌと同様に、幼い頃には少し体の弱い子でした。メガーヌが元気になったのは7歳の秋になってからのことだったので、彼女の場合は初等科への就学を一年遅らせなければなりませんでしたが、ルーテシアの方はレリックの影響で(?)6歳の春には、もう随分と元気な体に生まれ変わっていました。】

 また、そもそもジェイル・スカリエッティがレリックを収集した目的は、それを「古代ベルカで失われた〈聖王核〉の代用品」として使うためでした。
(聖王核については、Vividのコミックス第11巻を御参照ください。)
 ゼストやルーテシアのリンカーコアにレリックを融合させたのも、ひとつには『それによって、その魔導師が「兵器として」どれだけ強くなるのか?』を調べるためでしたが、もうひとつには、『レリックが本当に〈聖王核〉の代用品として機能するのかどうか?』を確認するためだったのです。
 そうした「実験体」の、その後の経過を観察するのは、技術者としては当然の行為でした。

【なお、原作には、まるで『古代ベルカの王族が「全員」自分の身体にレリックを埋め込み、生体兵器「レリックウェポン」としての力を身に付けていた』かのようにも聞こえてしまう言い回しがありましたが、この作品では『それはスカリエッティの側の事実誤認で、実際には「古い時代には、そういう王様も(まれ)にいた」という程度の話だった』という設定にしておきます。
(そういうことにしておかないと、『それでは、覇王クラウスもそうだったのか?』という話になってしまうからです。)
 また、この作品では『基本的には、レリックは〈聖王核〉の下位互換である』ということにしておきます。】

 ゼストは、レリックの力で「ほぼ死んでいる状態」から蘇りましたが、もう大人だったためか、魔力の強さも以前とほぼ変わらず、また、外部からの意識操作も全く受け付けませんでした。
 一方、ルーテシアはまだ小児(こども)だったためか、クアットロによる「意識操作」もそれなりに受け付け、また、魔法に関しても、ただ単に力が強くなっただけではなく、その力をより多彩に、より多方面に使えるようになりました。
(結果として、彼女は後に「才能の宝庫」と呼ばれるほどになります。)

 ただし……ギンガやヴィヴィオの場合は、レリックを融合させてからまだ日が浅かったため、それを分離することも比較的簡単にできたのですが……ルーテシアの場合は、すでに何年も経過していたため、現代の技術では、もう分離は不可能でした。
(だからこそ、管理局は〈JS事件〉が終わった後、当分の間、彼女を「保護監察処分」にせざるを得なかったのです。)

 ちなみに、ルーテシアのリンカーコアと融合したレリックは「XI(11)番」です。
 彼女は、ジェイル・スカリエッティから「母親を目覚めさせるには、その番号のレリックが必要だ」と聞かされて、ずっとそれを探し続けていたのですが、それは真っ赤な嘘でした。
 StrikerSのTVアニメでは、ルーテシアはずっと『どれだけ探しても決して見つかるはずがないモノを探し続けていた』という訳です。
(言うまでもないことですが、ジェイル・スカリエッティはただ単に犯罪者であるというだけではなく、人格的にも相当に問題のある人物です。)

 また、三名の男性陸士とメガーヌは、67年以来、ずっと昏睡状態に陥っていた訳ですが、75年の〈ゆりかご事件〉の直後に、スカリエッティのアジトから無事に保護されました。
 しかし、その時点ですぐに覚醒したのはメガーヌだけで、しかも、それは「全くの偶然」によるものでした。残る三名の陸士らは、本局技術部の尽力にもかかわらず、さらに昏睡を続けます。
 結局のところ、彼等はそれから何年も経って、昏睡したのとは逆の順に(それぞれ、79年の11月と82年の4月と85年の8月に)目を覚ますと、メガーヌと同様に、一連の事情聴取を受けてから(リンカーコアが損壊して魔法が使えなくなっていたために)管理局を正式に退役しました。
「プロローグ 第7章」でも述べたとおり、最後に目を覚ましたのが、最初に昏睡させられたバムスタール・ノグリザ元陸曹(昏睡当時、25歳)です。
(なお、他の二人は元々、メガーヌの直属の部下でしたが、彼だけは本来、クイントの直属の部下でした。)


 2)次に、ルーテシアが住んでいる「世界」についてですが……。
 StrikerSのTVアニメの最終回では「第34無人世界マウクラン」ということになっていましたが、Vividのコミックスでは、いきなり「無人世界カルナージ」になっており、この点に関して、Wikipediaの「魔法少女リリカルなのはシリーズの登場人物」の脚注47には現時点(2024年1月初頭の時点)で、『転居したのか、世界の名称が変わったのかは不明』などと書かれています。
 しかし、「リリカルなのはStrikerS サウンドステージ04」によれば、そもそも、〈JS事件〉に関与したことによる彼女への処罰は、「魔力の厳重リミッター処置と辺境世界隔離」だったはずであり、これは本来、「流刑」と言うよりは、むしろ「極めて厳重な保護監察処分」とでも言うべきものです。

【この先、レリックの影響が『どれぐらい現れるのか? あるいは、現れないのか?』がまだよく解っていない状況では、管理局としても、「隔離」それ自体は「やむを得ない処分」でした。
 さらに言えば、もしも魔力のリミッターが外れたら、彼女は「白天王」を召喚することができてしまうので、最悪の事態を考慮すれば、『万が一、それを召喚されたとしても、大した被害は出ないような』辺境の無人世界に隔離しておく必要があったのです。
 なお、実を言うと、この時点では、管理局は必ずしも「白天王の正体」を正しく把握した上で、ルーテシアを〈号天〉から遠ざけた訳ではありません。ただ単に、『もう一人の「竜使い」もスプールスに戻る予定なのだから、万が一に備えて、「対抗手段」である彼女の近くに置いておいた方が良いだろう』と判断したまでのことです。】

 それなのに、彼女はカルナージでは全く自由に魔法を使っていますし、また、Vividのコミックス第2巻には『ミッド首都からカルナージまで、次元航行船で約4時間』という描写があります。わずか4時間の距離では、とても「辺境」とは呼べません。
 以上の点から、やはり、『マウクランとカルナージは全く別の世界であり、ルーテシアは刑期を予想外に早く終えてから、カルナージに転居して来たのだ』と考えるのが妥当だと思います。

 ちなみに、StrikerSのTVアニメの最終回のエンディングでは、ルーテシアがエリオとキャロの許に一輪の花を届けていますが、あの描写から考えると、〈無34マウクラン〉は〈管61スプールス〉へも「個人転送」で行ける範囲内にあるものと思われます。
 おそらくは、『あの時点では、ルーテシアも厳重なリミッターのせいで、何十キロもの質量(自分自身の肉体)を転送することは到底できなかったが、一体のインゼクトと一輪の花ぐらいならば何とか転送することができた』ということなのでしょう。

【なお、この作品の設定としては、ミッドチルダからカルナージも「個人転送」で充分に行ける距離なのですが……それなのに、なのはたちがVividのコミックス第2巻で、わざわざ次元航行船を使ったのは、『その次元航路は二等航路で、個人転送には適していなかったからだ』という設定にしておきます。
(次元航路の等級については、「背景設定5」を御参照ください。)】

 さらに言えば、コミックスの同2巻によると、新暦79年の5月の段階で、「カルナージでの合同訓練」はすでに初回ではありません。
 また、前回の訓練と今回の訓練の間に、ルーテシアは温泉を掘り当てて大浴場まで作っているのですから、その「前回」というのも、たかだか一か月前やそこらのことではないはずです。
 一方、彼女が〈JS事件〉の後に、海上隔離施設からマウクランへと移されたのは、おそらく新暦75年の11月頃のことですから、「厳重な保護監察処分」は、せいぜい丸2年程度で終了し、彼女はその(あと)すぐ、母メガーヌとともにカルナージに転居していたのだと考えるのが妥当だろうと思います。

 しかし、「SSX」では、新暦78年6月の段階で、ルーテシアはまだマウクランに居ます。
(しかも、Vividでの描写とは違って、昔ながらの少し暗めの性格のままです。)
 この矛盾(?)を解消するためには、やはり、『この「SSX」は、正編とは「微妙に別の時間線」の話なのだ』と考えるのが一番でしょう。
 この「SSX」には、ティアナがスターライトブレイカーを使ったり、イクスヴェリアが再び永き眠りに就いたりという、Vividのシリーズに直接つながる話もあるので、「正編の時間線」でも全く同じ時期にほとんど同じ事件があったこと自体は、確かなのですが……この作品では、『この二つの時間線では、ルーテシアがカルナージに転居した時期だけが少しばかりズレているのだ』と考えておくことにします。

 また、『本当に刑期が終わったなら、どうして転居先がまた無人世界だったのか?』という問題ですが、ルーテシアがいくら強大な魔力を持っているのだとしても、Vividのコミックスにおけるカルナージの描写を見る限り、あれだけの施設を「費用ゼロ」で(魔法だけで)すべて建設できたとは、とても思えません。
 コミックスの描写には「レイヤー建造物で組んだ訓練場」も登場しますが、StrikerSのTVアニメによれば、レイヤーで建造物を組むのは「かなり高度なテクノロジー」だったはずです。果たして、これは個人が自由に所有できるような装置なのでしょうか。
(また、『メガーヌが、実はモノ凄い資産家だった』というのも、相当に無理のある設定だと思います。)
 以上の点から考えて、あくまでも個人的な見解ですが、『費用はすべて管理局が出している』というのが、最も自然な考え方でしょう。
 そこで、この作品では以下のような設定を採用することにします。

 カルナージは、元々〈無人世界〉であり、管理局が所有する「物件」でした。
 本局やミッドチルダにも近く、古代ベルカの時代からその存在はよく知られていましたが、人間にとっては極めて有害な害虫(具体的には、「人間にとっては致命的な疫病」を媒介する蚊やダニのような小さな虫)が、惑星全体規模で蔓延していたので、長らく無人のままに放置されていたのです。
 しかし、新暦で前9年の「ミッド北部、疫病大禍(えきびょうたいか)」の後、入念なシミュレーションによって『それらの虫や病原体を完全に絶滅させても、現地の生態系にはほとんど影響が出ない』ということが解ったので、管理局は新暦20年代の半ばから、その「カルナージ改造計画」を実行に移し、半世紀後、〈JS事件〉の頃になって、ようやくその絶滅が最終的に確認されました。

 管理局の側には元々、『惑星カルナージを丸ごと局員用の福利厚生施設として利用する』という一大計画があり、まずは試験的に「モデルとなる訓練施設やレジャー施設」を幾つか造ろうとしてみたのですが……。
 何しろ、あの「悪名(あくめい)高き」カルナージですから、『病原体は本当に完全に絶滅したのか?』という懸念もあって、積極的に移住を志願してくれる建築デザイナーなど、なかなか現れません。
 ルーテシアの「マウクランでの、極めて厳重な保護観察処分」が丸二年で切り上げられたのは、ちょうどそんな時のことでした。

 建築方面にも興味を持ち始めていたルーテシアは、まだ正式なデザイナー資格は持っていませんでしたが、(優遇措置に釣られて?)メガーヌとともに積極的に移住を志願しました。
 管理局は彼女の熱意と卓越したセンスを認めて、「ごく軽い保護監察処分」を続けるためにも、開発を予定している大陸のはるか西方に浮かぶ「南北200キロメートル・東西100キロメートルほどの広さの、絶海の孤島」に住居を与えて、二人をそこに住まわせ、さらには「ものの試し」に、試験的な施設(しせつ)の設計と建築、管理と運営をこの母娘(おやこ)に「丸投げ」しました。
(なお、ルーテシアはこの時点で、管理局の「嘱託魔導師」になりました。)
 そこで、ルーテシアは管理局の潤沢(じゅんたく)な資金を湯水のように使い、わずか1年半ほどであの土地にあれだけの施設をすべて造り上げたのでした。

【Vividのコミックスでは、第2巻と第3巻が「カルナージ編」ですが、この作品では、『あの話の舞台は、大陸ではなく、少し大きめの(日本で言うと、ちょうど四国ぐらいの大きさの)島だった』という設定で行きます。
 また、ルーテシアは第4巻で、IMCSへの初参加に際して『おひさしぶりのミッドチルダ』と発言していますが、この作品では、『保護監察処分はただ単に「とても軽く」なっただけで、その段階でも、なお続いていた』という「解釈」をしておきます。
〈闇の書事件〉が終わった直後の八神家の面々を見れば解るとおり、管理局では保護監察を受けながらでも「嘱託魔導師」として働くことが可能なのです。】

 しかし、コミックスの第2巻にも書いてあるとおり、その島はミッドの首都クラナガンとは7時間もの時差があります。
 そこで、翌80年の4月になると、ルーテシアの仕事ぶりに満足した管理局は「開発を予定していた大陸」の中でも「本局やクラナガンとの間に時差が無い土地」を選び、彼女が造った試験的な施設をモデルとして、その土地にさまざまな施設や住居を建て始めました。
 そうして、時おりルーテシアの意見も聞きながら、6年がかりでそこに「一個の都市」を丸ごと造営し、新暦86年の4月からは正式に、この都市への一般の移住者を募集し始めました。
 これが、現在のカルナージにおける「事実上の首都」なのですが……実際には、政治的に独立した「政府」が存在している訳ではないので、「首都」というのはあくまでも俗称です。正式には、普通名詞で「第一都市」と、もしくは、固有名詞で「ベルーラ」と呼んでおくべきでしょう。

【ちなみに、その前年(新暦85年)の10月、それまでの一連の行為に対する報酬として、管理局はその島の土地とそこに建てられたすべての施設と周辺海域との「一代限りの終身所有権」をルーテシアに正式に譲渡しました。
 決して「完全な所有権」ではないので、勝手に「売却」や「相続」をすることはできませんが、土地の「貸借(たいしゃく)契約」の(たぐい)は可能であり、彼女はこれによって、この島を丸ごと「事実上の私有地」として全く自由に使える身分となりました。
(これ以降は、島の名前も公式に「アルピーノ島」となり、ルーテシアは弱冠20歳にして、ほとんど「島の領主」のような立場となります。)】

 その後は、首都ベルーラの定住人口も順調に増え続け、ミッドや本局との間にも次元航行船の定期便(1日に2便ぐらい?)が開通し、定住者以外にも多くの局員たちが入れ替わり立ち替わり、「個人的なレジャー」や「組織的な合同訓練」のためにその都市を訪れるようになりました。
【要は、『局員が増えすぎて、さしもの〈本局〉も少し手狭になって来た』ということでもある訳ですが……その問題は、間接的にではありますが、後に「第一支局の創設」という計画にもつながって行きます。】

 そんな訳で、86年4月以降、ルーテシア(21歳)の「表向きの職業」は、「本局直轄・カルナージ地上本部」の「ベルーラ都市計画局」に所属する「ゼネラル・コーディネーター」です。
【と言っても、こちらは、単に「所属」しているだけで、実際には「毎日、ベルーラまで出勤」している訳ではなく、何かの時に頼りにされる「特別顧問」とか、「相談役」のような立場であり、後述のとおり、「もう一つの職業(本業)」と兼務している状態です。】


 3)続けて、ルーテシアとファビアの「本業」についてですが……この作品では以下のような設定を採用することにします。

 新暦79年のIMCS第27回大会には、ルーテシア・アルピーノ(14歳)もファビア・クロゼルグ(13歳)も各々「無所属」で出場しましたが、二人とも、それ以降はもうIMCSなどの競技会には一度も出場しませんでした。
 元々、ルーテシアは単に「腕試し」がしてみたかっただけですし、ファビアも当時はまだ「天涯孤独の身」となったばかりで、実は、(クロゼルグの11歳当時の記憶に引きずられた部分を抜きにした「ファビア自身の気持ち」として言えば)ただ単に『クラウスやオリヴィエの記憶を持った人たちとも(二人とも自分より年下のようなので、できれば「上から目線」で!)お話をしてみたい』と思って参加をしただけだったからです。

 その後、同79年の9月に、ファビアは「丸一年間の保護観察処分」を言い渡されました。
(結果としては、これは後に、半年間に減刑されます。)
 そして、11月には、彼女は(ルーテシアの保護観察処分の終了と同時に)正式にメガーヌの養女となり、戸籍上の本名も「ファビア・クロゼルグ・アルピーノ」に改めた上で、ルーテシアと同じ「嘱託魔導師」となって、カルナージに転居しました。
 以来、ルーテシアはファビアからは「ルー(ねえ)」と呼び慕われています。
【コミックス最終巻の「後日譚」における描写とは、やや異なりますが、この作品では、こうした設定で行きたいと思います。
 また、翌80年になると、ファビアはようやくメガーヌのことも「母さん」と呼べるようになりました。】

 また、翌80年の9月になると、ルーテシアとファビアは、エリオやキャロとともに〈管6パルドネア〉のアルザス地方を訪れ、初めて真竜ヴォルテールに会いましたが、この頃から、ファビアは本格的に「ルーテシアの片腕」として働くようになりました。
 その後、ルーテシアが、母メガーヌから「祖母リーファ」の話を聞いて自分の「ルーツ探し」を始めると、ファビアもそれに同行し、全面的に協力することにします。

 翌10月、ルーテシアとファビアは、「空中乱打事件」をやらかした直後のジークリンデと出くわして彼女にいろいろと力を貸した後、まずはミッド中央政府の「移民管理局」でデータを調べ、後に「ザグロス・ディガルヴィ」の妻となった「リーファ・カルザム」が「セクターティからの移民一世」であることを調べ上げました。
 しかし、彼女は、父娘(おやこ)ほども齢の離れた夫「モゲッロ・カルザム」と二人きりで、新暦32年にミッドに移民してから、その「直後に」離婚しています。
 これは、典型的な「移民のための偽装結婚」の手法でした。

 管理世界の住人が、合法的に他の世界へ移民するためには、まず「今いる世界の市民権」を持っていなければなりません。そして、市民権を得るには、一般には『その世界の公用語を習得し、かつ、その世界に5年間「実際に」居住する』ことが必要です。
 つまり、『他の世界からその世界に移民して来た人物が、さらに別の世界へ「再移民」しようと思ったら、その世界に5年間は「足止め」をされる』ということです。
 ただし、この規定には、ひとつだけ「抜け道」がありました。
管理世界では、一般に「男女は平等、ゆえに、夫婦も平等」が大原則なので、『市民権の持ち主と結婚した者には、自動的に市民権が与えられる』のです。

 そして、新暦81年。改めてセクターティに赴き、そちらの「移民管理局」で調べてみると、案の定、『新暦32年に「モゲッロとリーファ」という名前の夫婦がミッドに移民した』というデータは見つかりませんでした。
 ミッドチルダでは古来、新移民に「改名する権利」を認めています。それは本来、「政治犯」や「無実の罪で追われている人」などを(かくま)い、救済するための制度だったのですが、今では悪用されることも少なくありません。
 ルーテシアはやがて「モゲッロとリーファ」の元の名前が「ハクラムとロメイニア」であったことを突き止めましたが、このロメイニアも「本名」なのかどうかは、よく解りませんでした。どうやら、彼女は「難民」として保護された人物だったようです。
(管理外世界からの難民であれば、その場で適当な偽名を使ったとしても、そのまま登録されるだけです。何しろ、確認の取りようが無いのですから。)

 ハクラムも、新暦27年に難民としてセクターティに来た人物でしたが、その5年後に市民権を得るなり、新難民のロメイニアと出逢って結婚し、間もなくミッドチルダに移民していました。
 あるいは、二人は昔からの知り合いだったのでしょうか。『最初からロメイニアを素早く逃がすことを目的として、ハクラムが事前にセクターティに来ていた』という可能性すら考えられます。
 もう何もかもが怪しい状況でしたが、セクターティの「移民管理局」における情報管理はかなり杜撰(ずさん)な代物で、わずか50年ほど前の出来事だというのに、『二人が難民となる前には、どの世界に住んでいたのか』を追跡することが全くできなかったため、ルーテシアとファビアはやむを得ず、一旦はカルナージに戻りました。

 そして、〈特務六課〉が4月末にトーマたち三人を保護してから、しばらく〈エクリプス事件〉が小康状態を保っていた頃の出来事ですが……ルーテシアとファビアは、わずかな手がかりを見つけて、再びミッド地上に向かいました。
 そして、やがて「モゲッロ・カルザム」の、その後の消息が判明します。
 彼は新歴32年、18歳のリーファとともにミッドへ移民して来た時点で、すでに41歳でした。享年は73歳という話ですから、ルーテシアが生まれる前の年(64年)までは生きていた、という計算になります。
 どうやら、彼は「形式的に」リーファと離婚した後も、保護者も同然に彼女を見守り続け、新暦35年に彼女が「すでに親も兄弟も無い」ベルカ系ミッド人のザグロス・ディガルヴィと結婚してからも、その5年後にようやくメガーヌが生まれてからも、ずっと彼女の近くに住んで、いささか体の弱い彼女を(かげ)ながら見守っていたようです。
 リーファとザグロスが定期的に引っ越しを繰り返す度に、モゲッロもそれを追いかけるようにして引っ越しをしていました。

 ルーテシア「これって、多分、『元の世界からの追手』か何かを警戒していたんだろうけど……知らない人が見たら、相当に悪質なストーカーよね」
 ファビア「と言うか……この様子だと、元の世界では『お嬢様と(じい)や』のような関係だったのかも知れませんね」

 メガーヌが物心つく頃になって、リーファとザグロスは、ようやく転居を繰り返すことを()めました。おそらくは、その頃になって『もう元の世界からの追手は来ない』ということが最終的に確認されたのでしょう。
 新暦47年の末、リーファとザグロスが(当時はまだ体が弱かった)娘メガーヌの「一年遅れの就学」に合わせて、ザグロスの従兄(いとこ)たちが住む(まち)へと「最後の転居」をした時には、モゲッロ(当時、56歳)はもうそれに付き合いませんでした。彼の「(つと)め」は、もう何年も前に終わっていたからです。
 その後、彼は妻を(めと)ることもなく、17年に及ぶ余生をメブレムザ地方の森の中で、隠者のようにただひっそりと、木を()り、炭を焼いて過ごしたのだそうです。

 そこまで知った時点で、ルーテシアにはもう、祖母の故郷について「おおよその見当」がついていました。
 それでなくても、自分と母メガーヌの髪の色から考えて、候補は最初から(しぼ)られていたのですが……逃げた〈竜使いの巫女〉に追手をかけそうな世界など、彼女の知る限り、この〈次元世界〉には一つしかありません。
 さらに調査を進めると、案の定、生前のモゲッロやリーファを知る年配の人々からは、以下のような複数の証言を得ることができました。
『あの二人は、普段から意図的に「つかず離れず」を保っていたようだが、ごく稀に、二人きりでこっそりと話をしていることがあった』
『内容までは聞き取れなかったが、あの二人の会話は、確かに「号天語」だった』
 つまり、リーファは〈外35号天〉における〈竜使いの巫女〉であり、白天王は〈号天〉を守護する真竜だったのです。

 こうして、同81年の7月末、「ルーテシアのルーツ探し」を一段落させた二人は、ミッド首都圏で「ヴィヴィオ襲撃事件」の阻止にも関与した後、〈本局〉で一泊して、8月の初日には、またカルナージへと戻って来たのでした。
(なお、カルナージでガリューが二体に増えたのも、この年の5月頃の出来事です。)

 そして、ルーテシア(16歳)とファビア(15歳)は、10月にまたミッド首都圏で八神家の新居の(はらえ)に手を貸した後、11月には八神司令(謹慎中)の要請で「秘密裡に」正式な管理局員となりました。
 二人の「名目上の所属」は、近々創設されるはずの「本局直轄・カルナージ地上本部」に属する「離島警邏隊」ですが、ここでいう「離島」とは「アルピーノ島」のことなので、現実には、今はまだ『何か具体的な職務がある』という訳ではなく、ほとんど「予備役(よびえき)」のような扱いです。
【正式には、その島がその名前で呼ばれるようになるのは、「85年10月」以降のことなのですが、この項目では便宜的に「将来の名前」を先取りして、そう呼んでおきます。】

 ルーテシアとしては、当時ようやく首都ベルーラの造営が軌道に乗って来たところだったので、『まだしばらくは、そうした「表向きの職業」をも兼務できる』ことを条件に、八神司令の要請を受け入れたのでした。

 そして、新暦82年。
 八神司令は半年間の謹慎が解けると、ルーテシアとファビアを「秘密の切り札」として育成すべく、折りに触れてこの二人を〈ヴォルフラム〉に乗せ、あちらこちらの世界へと連れて行くようになりました。
【同年の7月に、ブラウロニアたち一行がコリンティアからミッドに帰化した際にも、この二人は〈ヴォルフラム〉に乗り込んでいたため、ブラウロニアは、この二人を自分の「先輩格」として認識し、また、『主君はやてにとっても、この二人は「八神家の〈御家族〉に次ぐほどの重要な存在」なのだろう』と正しく理解することになります。】

 また、83年になると、ルーテシアは将来を見越して、管理局の了承の(もと)に「簡易型の次元港を南端部とし、ホテル・アルピーノを北端部とする一帯」の大がかりな土地区画整理を始めました。
 ゆくゆくは、この一帯を一個の「(タウン)」にするつもりなのです。

 さらに、84年の秋には、ルーテシアは万全の準備をした上で、「捜査官試験」と「一般キャリア試験」を続けざまに受け、これに合格。翌85年の春には、(かつてのメガーヌのように)捜査官と准尉の資格を得ました。
【とは言うものの、それらの資格を実際に使うのは、86年に正式に「離島警邏隊」が発足した後の話となります。】

 なお、同85年の9月には、「プロローグ 第7章」でも述べたとおり、ルーテシアとファビアはまたキャロたち一行とともに〈管6パルドネア〉のアルザス地方を訪れ、再びヴォルテールに挨拶をして来ました。
 その後は、また地元で(ユーノ司書長まで参加して!)大がかりな合同訓練を行ない、そこで「二体のガリュー」や「白天王の正体」や「自分のルーツ」や「一代限りの終身所有権」や「島への移民募集」などについても、皆々にひととおりの説明をしました。

 また、同年の末には、退役したバムスタール・ノグリザ元陸曹がカルナージを訪れ、メガーヌともいろいろと話をしました。
(彼は、戸籍の上ではもう43歳ですが、18年間も昏睡していたので、肉体的には今でもほとんど25歳の頃のままです。)
 年が明けてから、リハビリが終了すると、バムスタールはそのままカルナージに転居して、正式に「ホテル・アルピーノの従業員」となりましたが、ルーテシアとファビアにとって、これは正に「渡りに舟」でした。これから先、管理局員として忙しくなって来たら、二人にはもうホテルの手伝いなどしている余裕は無くなってしまうからです。
 彼が「通常の接客」をこなしてくれれば、それ以外の「下働き」はおおよそ二体のガリューとプチデビルズたちが何とかしてくれることでしょう。

 そうして、新暦86年の4月には、いよいよカルナージの首都ベルーラとアルピーノ島で「一般移住者の受け入れ」が始まり、ルーテシアもそれに合わせて、「二つの職務」を兼務する身となりました。
 首都では「都市計画局」のゼネラル・コーディネーター。地元では「離島警邏隊」の隊長兼捜査官です。
 今はまだ「隊長一名、隊員一名」という「ルーテシアとファビアだけの部隊」でしたが、彼女は将来を見越して、次元港の西側の、計画上は「(まち)外れ」となる場所に、それなりに立派な隊舎を建て、首都ベルーラと〈本局〉とで局員から志願者を募りました。
 意外にも、ほんの三か月ほどで、総勢が二十名を()える「それなり」の小部隊が出来上がりましたが、住民がまだほとんどいないので、「警邏」の仕事もまだほとんどありません。
 ルーテシアは熟練(ベテラン)の下士官ザムガ・ダルド陸曹長(41歳)を副隊長に()えて、当面は、地元の「(まち)づくり」(土木工事)を進めて行きました。
【また、同時に、法制度として『カルナージを「本籍地」とする』ことが一般に認められたため、アルピーノ家の三人やバムスタールは、4月のうちに戸籍の上で「本籍地変更」の手続きを取りました。】

 そして、87年の1月には、80年の秋にIMCSで「永久除名処分」を受けてから六年余に(わた)って行方(ゆくえ)をくらまし続けていたジークリンデ・エレミア(24歳)が、八神提督とも秘密裡に相談をした上で、一人ひっそりとアルピーノ島にやって来ました。
【その六年余の間、彼女が『どこで何をしていたのか』については、また第二部で述べます。】

 ルーテシアは事前に八神提督から「秘密の要請」を受けていたので、それに従い、まず警邏隊の方では、副隊長らにすべての仕事を「丸投げ」にして、ファビアとともに「半年間の長期休暇」を取りました。
『予想外に、もう一方の仕事が忙しくなっちゃったの。悪いけど、あなたたち、後は頼んだわよ』
 そう言い残して来たので、おそらく、ザムガたちは『多分、ベルーラに長期出張なんだろうな』などと勝手に「思い違い」をしてくれたことでしょうが、実際には、ルーテシアとファビアは二人がかりで『当分の間、ジークリンデを保護し、彼女の要求どおりに彼女の衣食住の世話をする』という秘密の役職(?)に就いたのです。

 ルーテシアはちょうど、この「(タウン)」からは東へ何キロメートルか離れた場所にある「森と泉に囲まれた絶好の土地」に、南向きの凹の字型をした「秘密の別荘」(相当な豪邸)を建てたところだったので、その西棟を気前よくジークリンデに進呈して、自分はファビアと一緒に東棟の方で、ともに身を(ひそ)めて静かに暮らすことにしました。
 必要な物資の買い出しなどは、もっぱらバムスタールに頼むことにします。
 一方、メガーヌは普段は「(タウン)」の北端部に位置するホテル・アルピーノの方で暮らしており、同87年の3月に「スバルたち9名」と「スラディオたち7名」が泊まりに来た時などにも、バムスタールとともに、何食わぬ顔でルーテシアとファビアとジークリンデの「居留守(いるす)」に協力したのでした。
(なお、メガーヌはこの時点で、スラディオから『デヴォルザム第二大陸の東部辺境で暮らすベルカ系の住民に、アルピーノ島への移民を呼びかけてみる』という約束を取り付けました。)

 そして、同87年の7月に、ジークリンデはそこで密かに女の子を出産しました。
(ミッドでは、ちょうどトーマとメグミが結婚した頃のことです。)
【なお、この年の4月から8月にかけて、はやては「長期の出張任務」で中央領域を長らく留守にしていました。】

 その出産に触発されたのか。あるいは、翌88年4月のヴィヴィオとアインハルトの結婚に触発されたのか。
 新暦89年の7月末、〈バルギオラ事変〉の最中(さなか)には、ルーテシア(24歳)とファビア(23歳)もまた、この別荘で密かに、それぞれ女の子を出産しました。

【なお、ルーテシアは、88年の秋に「広域捜査官」の試験にも合格していたので、その気になりさえすれば、翌89年の4月から、その種の職務に就くこともできたはずなのですが……彼女はそれに先立って、ファビアとともに、89年の3月から正式に「産休」を取得していました。
 さて、この三人の女の子たちの父親(?)は、それぞれ一体誰なのでしょうか?(笑)
 ちなみに、エレミアの一族に関しては少し特殊な設定を用意してみました。詳しくは、また第二部でやります。
 また、新暦90年以降の「ルーテシアとファビアとジークリンデ」については、「キャラ設定10」を御参照ください。】


 
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