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色々と間違ってる異世界サムライ

作者:モッチー7
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第7話:ロアーヌ伯爵の娘マリアンヌ

セツナperspective

あのウンコセインが大嫌いな私は、ウンコセイン率いる白ノ牙(ホワイトファング)加入を目指してレベル最大値激増方法を求めるノノと共に、次の目的地であるアイナークの近くに在る遺跡に向かっていた。
世界にはかつて高度な文明が栄えていたらしいけど、何故か文明は滅んで彼らも消えてしまった。
が、そんな古代文明は様々な遺跡を残し、冒険家が跋扈する事態を作ってしまった訳よ。

因みに、私はレベル200でツキツバはレベル300だけど、ステータス偽装でレベル30と言う事になっている。もし鑑定スキルで覗き視されても、どこにでもいる冒険者にしか見えないだろう……
……は、流石に無いか?
やっぱ、ツキツバの衣装と性格がねぇ……
この前なんか、
「セイン殿、もし望みの物を手に入れてからでも構いませんので、ぜひとも某と戦って頂きたい!」
怖いわあの子!
ツキツバのジョブはサムライらしいんだけど、少なくとも、私はそんなジョブは知らない。
その上、戦いの中で死ぬ事を気高き誉と呼ぶ程の戦闘狂。
なんなんだこいつ……とも思えるが、あのウンコセインがとんでもない事をやらかす前に戦って欲しいとも思える。

と、私が考え事をしているとツキツバが前方に向かって駆け出していた。

どうやら、1台の馬車が山賊に包囲されていた。
「そこの者!其処で何をしている!?」
「何だテメェら!おいお前ら、こいつらをやっちまえ!」
山賊の親玉らしき男の指示を合図に戦闘が始まるが、
「そこもとらの力量……下の下!」
ツキツバの圧勝だった。
寧ろレベル差が酷過ぎて観てられないくらいだ(汗)。
「相手になりませぬ!出直す事をお奨めする!」
そこで、ノノがようやく敗走する山賊の存在に気付いた。
「……あんた……やっぱり戦闘に―――」
私がそう言うと、ノノが照れ臭そうにしながらわざとらしく馬車を心配する。
「そ!……そんな事より、馬車の中は大丈夫かなぁ!」
認めたくないのね……白ノ牙(ホワイトファング)の仲間と勘違いされる心配が無い事を……

しばらくしてから馬車のドアが開けられた。
「どなたか存じませんが、助けて頂きありがとうございますわ」
ピンクのドレスを着た女性が出てきた。
絹の糸の様な金色の髪に優しさが溢れ出ているかの様な少し垂れた眉、動く度に遊佐りと揺れる大きな胸……
「気になさるな。あれでは合戦の邪魔です」
な!?
ツキツバ!?アンタの勘はどうなってるんだ!?
よくよく考えたら、あの馬車に最初に気付いたのはツキツバだし!
「申し遅れました。わたくしロアーヌ伯爵の娘マリアンヌと言う者でございますわ」
私は完全に不意を衝かれた!
……やっぱり、他事を考えながら行動しちゃいけないね(笑)。
「この度は襲われているところを助けて頂き感謝いたします」

ノノ・メイタperspective

ヤバい。急に緊張してきたぞ。
これから往く地下遺跡の探索は、ロアーヌ伯爵の許可が必要。その娘が目の前にいる!
粗相が無い様にしなければ。
「それにしても御2人はお強いのですね。とても驚きましたわ」
「武芸全般修めてこそ武士。特に弓など、那須与一に憧れて、それはもう死ぬほど修行したのですよ」
誰?
「当然だ。ツキツバは選ばれし御方なのだ!」
「選ばれた?何にでしょうか?」
おい!セツナさん!余計な事を言うなよ!
マリアンヌ様が首を傾げただろ!
「ツキツバ様はどちらへ向かわれていたのですか?」
「取り敢えず、あいなーくへ行く予定でした」
「では、我が屋敷にお招きするのは御2人に都合が良かった様ですわね。もしよろしければ、今夜は屋敷にお泊り下さいませ」
おぉーーーーーい!
なんなんだこの急展開!?
「すまぬが」
まさか……断るの?
下手に断ってマリアンヌ様がへそを曲げるはやめてよ!
「某は2人ではなく、ノノ殿を含めた3人だ」
え?
僕もお泊り決定?
そんな事をされたら、緊張し過ぎて何も出来ません!
「それに、乱暴そうな山賊が出て来たので、つい横槍を入れてしまい申した。少々期待外れでしたが」
ツキツバさん……貴女が強過ぎるだけです。
後、マリアンヌ様の隣のメイドさんが、もの凄く怖いんですけど……
「とは言え、某に断る理由はありませぬし、ノノ殿とセツナ殿は如何か?」
「え!?……そんな急に―――」
「ま、野宿は疲れるし、私もそれで良いよ」
「えーーーーー!?」
「では話はまとまりましたわね。今夜は精一杯おもてなしを致しますので、楽しみにしていてくださいませ」
「えーーーーー!?」
ロアーヌ伯爵の機嫌が怖過ぎて何も出来ないんですけど僕!

月鍔ギンコperspective

マリアンヌ殿達に連れられて遂にあいなーくに到着したのですが……
「おお……煌びやかですなー!この世界の街と言うのは!」
建物は高いし色も鮮やか。
「ツキツバが言っていたエドもこんな感じか?」
「いや、もっと平べったいです」
その間も、某達を乗せた馬車は街の中心部を抜け、そのまま最も奥の本丸御殿へと向かう。
「これもまた厳かな!」
「そうですか?これでも上流階級の中では小さい方だと思うのですが」
「これで小さい……私には想像も出来ない世界だよ」
セツナ殿のお気持ち、某には解ります。
「あ、でも我が家は数ある伯爵家の中で、1番大きい屋敷を有していると聞いた事がありますわ」
……やはり某には無縁な話だ。
それに、初めて鬼に出遭った村やノノ殿に連れられただんじょんよりも、明らかに血の匂いが少ない。
ノノ殿の話では、この世界ではマモノが人の天敵だそうだが、この街にはマモノが攻め入る隙が無いのか?
領主……ロアーヌ殿の器がうかがえる。
そして、馬車が本丸御殿の前に着くやいなや、マリアンヌ殿は当然とばかりに優雅に馬車から降りた。
これもまた、ロアーヌ殿の教育の賜物なのだろう。
……平和な街だ。
……某の居場所ではない。
「さ、ツキツバ様。どうぞ中へ」
その時、某は迷った。
本来ならば、相手の謝意に甘んじるのが筋なのだろう。
でも、某は侍として戦い、侍として死ぬ事を望んで生きてきた。
だが、ここに死は無い。
ここに誉は無い。
ここに合戦は無い。
やはりここへ来る事を拒むべき―――
「お帰りなさいませお嬢様」
「セバス、お父様はいるかしら」
「書斎にてお仕事をされております」
「ありがとう」
……どうやら、某達はこの馬車に乗ってしまった時点で、選択肢は無かった様だ。
マリアンヌ殿の代わりに傍にいた女子が某達に一礼する。
「自己紹介が遅くなりました。マリアンヌ様の専属使用人ウララでございます。これよりお3人のお部屋へとご案内いたしますのでついて来てください」
「某は月鍔ギンコ。侍です」
「私はセツナ。誇り高き氷狼族だ」
「ぼっぼっぼぼぼぼぼぼぼぼ、あいた!?」
ノノ殿は、緊張し過ぎて名乗りになっておられぬ様だ。

?perspective

上の連中は暢気なものだぜ。
既に地下水路は俺達の物になったって言うのによ。お陰で、格段にこの国を落とし易くになった。
それに、こっちは程良く育ったトロールナメクジまで用意してある。
後は……あの邪魔な領主を始末するだけだ。
アイナークの人間共よ、魔王の配下に怯えるがいい!
ぐははははは! 
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