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X ーthe another storyー

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第十八話 秘密その五

「私達はね」
「無理強い出来ないですね」
「そうよ、だからね」
 それでというのだ。
「私達はね」
「封真、彼にもですね」
「彼が言いたくないと言うなら」
 そして聞かないでくれとまで言うならというのだ。
「本当にね」
「私達はですね」
「何もよ」
 それこそというのだ。
「出来ないわ」
「そうですね」
「今の日本にはそうしたおかしな警察もないしね」
「特高警察も正直そこまでしませんでしたね」 
 征一狼は戦前の話もした。
「案外穏やかでした」
「ナチスやソ連の秘密警察と比べるとね」
「遥かにです」
「そうだったわね、特高警察も」
「彼等も法律の下で動いていましたし」
「それじゃあね」
「警察でもない僕達がです」
 それこそというのだ。
「する権限も資格もなく」
「性格的にもね」
「誰も出来ないです、そうなりますと」
「ええ、もうね」
「僕達は待つしか出来ません」
「また言うけれど性分じゃないわ」
 待つことはとだ、火煉はまたこう言った。
「けれどね」
「今はです」
「私達は待つしか出来ないわね」
「はい、まことに」
「ではね」
「ええ、待ちましょう」
 征一狼は達観した声で述べた。
「そうしましょう」
「そうでんな、ほな今は待ちましょう」
 空汰も真顔で述べた。
「それも戦いのうちですし」
「そうですね、動かざること山の如しといいますが」
「動いたらあかん時は動かへん」
「それも戦いです」
「そうでんな」
「では待ちましょう」 
 こうしてだった、天の龍の五人は。
 今は剣が出て来るのを待った、そのうえで彼等のすべきことをしていった。具体的には最後の天の龍を探した。
 小鳥は学校で神威に尋ねていた、昼でこの日も屋上で一緒に小鳥の作った弁当をベンチに並んで座って食べている。
 ここでだ、小鳥は神威に尋ねた。
「沖縄ではどうだったの?」
「どうして暮らしていたか、か」
「ええ、おばさんとね」
「母さんはいたが一人だった」 
 神威は遠い目で語った。
「あちらにいた時もな」
「そうだったの」
「お前と封真と別れて」
 そうしてというのだ。
「それからはずっとな」
「沖縄じゃ一人だったの」
「そして家が突然だ」
 神威は小鳥が作ったサンドイッチを食べつつ話した。
「隣の失火が来た火事に巻き込まれてな」
「それでだったの」
「隣の家に空き巣が入ってその空き巣がだ」
「火を点けたの」
「何でも間違って出したらしくてな」
 そうだったというのだ。 
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