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神々の塔

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第十三話 塔の中の時その八

「言い出したんや」
「自分は欠片もなくてか」
「選手の時は自分が成績よかったらな」
「それでええな」
「そやけど監督になったら」
 その時はというのだ。
「勝つことがや」
「自分の評価になるな」
「そやからな」
 その為にというのだ。
「チームプレイで勝ってな」
「結果を出す」
「それで言い出したんや」
「あくまで自分の為やな」
「それで采配出来る人も呼んで」
 牧野茂という、巨人の黄金時代を支えた名参謀として知られている。
「自分はな」
「そう言うだけか」
「もう石橋を叩いても渡らん」
 そうしたというのだ。
「慎重極まる采配を王さん長嶋さんの戦力でやってく」
「圧倒的な戦力でか」
「そうして勝っていってな」
「結果出していったんやな」
「それでライバルはな」 
 自分の監督の座を脅かす様なだ。
「どんどんや」
「蹴落としてったんやな」
「言い掛かりもつけてな」
 例えば別所投手コーチ追放劇だ、選手が不始末をして川上に謝らせるとそれが暴力だの言われ解任に追い込まれたのだ。
「それこそな」
「次々に追い出してか」
「あとよそから選手獲ってきて」
「あのチームのお家芸か」 
 メルヴィルは嫌そうに応えた。
「ヤンキースみたいな」
「ヤンキースはもっと酷かったらしいな」
「オーナーがそんなおっさんでな」
 スタインブレザーという、その為球界永久追放の処置が下されそれが解除されての繰り返しにもなっている。
「巨人よりもな」
「酷いらしいな」
「ああ、しかし巨人は」
「そや」
 まさにとだ、中里は忌々し気に答えた。
「昔からな」
「ヤンキースみたいなこともやな」
「しててな」
「他チームから選手掠め取ってか」
「主力選手の当て馬にしたりな」
「少し主力に使ってやな」
「ポイやった」 
 実に巨人らしい手法である、巨人は所詮生え抜きそれもスター選手しか大事にしないチームということだ。
「まさにな」
「そうやったな」
「それでや」
 まさにというのだ。
「他チームから選手も掠め取って」
「利用してか」
「使い捨てもやってな」 
 若しくは主力の当て馬だ、太洋からの桑田は長嶋のそれであった。
「勝つだけ勝って」
「それでか」
「勝てん様になったと見ると」
「監督辞めたんやな」
「それでもう後はな」
 川上退任後の巨人はだ。
「もうな」
「かつての勢いはなかったか」
「長嶋さんのおらん巨人を長嶋さんが率いてな」
「ああ、あの人な」
 羅は長嶋茂雄の名前を聞いてこう言った。 
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