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星河の覇皇

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第八十三部第二章 撤退の果てにその五十六

「社会秩序の形成にはです」
「重要ですね」
「むしろマウリアでは必要とです」
 そこまでというのだ。
「考えらているんで」
「だからですか」
「ジャバル副主席もです」
「粛清等はですか」
「お考えではないです、若し多くのカーストを粛清すると」
 即ちそれぞれの職業にある者をというのだ。
「国家も社会も成り立ちません」
「そうなってはですね」
「本末転倒です、多くの革命でそういった事態に陥りましたね」
「フランス革命でもロシア革命でも」
「そして最悪なのは」
「それはまさか」
 バールは酒を少し口に含んでから八条に問うた、日本酒の独特の味が口の中を支配した。だがその味よりも今は危惧めいたものを彼は感じていた。
「ポル=ポトですか」
「あの人類史上最悪の粛清と言われる」
「あの政権の為したことですね」
「あれは最早狂気でした」
 八条は暗い顔で話した。
「農民だけがいいとして」
「何もかもを否定しましたね」
「宗教も文化も文明も」
 そういったもの全てをというのだ。
「そしてでした」
「知識人を殺戮しましたね」
「そして恐ろしい数の人を殺し」 
 そしてというのだ。
「誰もいなくなりました」
「そうなりましたね」
「その後カンボジアは非常に苦労しました」
 長い戦乱がありその後で復興となったがだ。
「人材がいなくなっていたので」
「まさに最悪の事態に陥りましたね」
「これはあくまで最悪の事例ですが」
「少なくとも特定の職業が社会からなくなることは」
「それだけで国家、社会に深刻な問題を生じますので」
 そうなるからだというのだ。
「ジャバル副主席程聡明な方なら」
「そうしたことはですか」
「されないです」
 決して、というのだ。
「ただ支配層になる」
「そうお考えですか」
「虐げられた者達が支配者になる」
「カタルシスですね」
「そのカタルシスを堪能されたいかはともかく」
 そこまではわからないがというのだ。
「あの方には怨念があり」
「その怨念を晴らす為にですか」
「動いておられます、ですがその怨念が連合の害になるなら
「防ぐ」
「それだけです、では国防省は」
「徹底してですね」
「彼等に技術を渡さず」
 そしてというのだ。
「連合の外にも出さない」
「そうなる様にしていきますね」
「必ず、連合の国益を守ります」
 八条はバールに誓う様に話した、そしてだった。
 国防の他のことも話していった、その話が終わってから本格的にすき焼きを食べ酒も飲んだ。マウリアの話は連合のその中でも行われていてそこから動きがはじまっていた。 
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